No.470778

IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第19話

Lさん

第19話です。
今回は非常に短いです。

プロローグ
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2012-08-16 00:24:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8866   閲覧ユーザー数:8610

(力が、欲しい)

 

遺伝子強化試験体C‐0037として生まれ、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』という『記号』を与えられたラウラは、ただ戦いの為だけに作られ、育てられ、鍛えられた。

常に優秀で有り続けたラウラは、ある処置によって一度『全て』を失った。

越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』と呼ばれるそれは、擬似ハイパーセンサーとも言える眼球へのナノマシン移植処理。

理論上では危険性は無く不適合も起きないはずだったが、ラウラの左目は赤から金へと変色し、制御不能へと陥ってしまった。

この暴走とも取れる『事故』によってラウラは『出来損ない』の烙印を押された。

より深い闇へと落ちていったラウラが、初めて目にした光。それが千冬との出会いだった。

千冬との出会いでラウラは変わった。千冬の教えを忠実に実行するだけで再び最強の座に君臨した。

千冬を、どこまでも尊敬した。千冬に、どこまでも憧れた。

喩え理由が無くても、ただ一緒に居ようとした。

それだけで十分だったから、ラウラの中から沸々と力が湧いてくるのを感じるから。

だが千冬の笑顔を見た時、ラウラは『違う』と思った。

ラウラが憧れる『千冬』ではない。強く、凛々しく、堂々としているのが、『千冬』のはずだった。

ラウラは許せなかった。千冬にそんな笑顔をさせる存在が。

理由なんかどうでも良かった。その存在を破壊する。喩えそれが千冬の『弟』であるとしても。

 

(力が、欲しい)

 

ラウラは力が欲しいと願った。

 

『――願うか……?汝、何にも負けない力を求めるか?』

 

ラウラの中に蠢くナニカが言う。悪魔の囁きの様に。

ラウラは力が得られるのなら、全てくれてやる覚悟だった。

 

(だから、力を……比類無き最強を、唯一無二の絶対を私に寄越せ!!)

 

『Damage Level‥‥D.

Mind Condition‥‥Uplift.

Certification‥‥Clear.

《Valkyrie Trace System》‥‥‥boot.』

 

【VTシステム起動】

 

その瞬間、アリーナが震えた。

 

「あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

ラウラの絶叫が響き渡り、シュヴァルツェア・レーゲンが火花を散らしながら形を変え始め、ラウラを飲み込むと、その姿を完全に変えてしまった。

全身装甲の姿で雪片弐型に似た武器を持っていた。

無意識のうちにシャルルはアサルトライフルを構える。

それに反応してか、黒いISがシャルルの懐に飛び込んで来た。

 

「シャル!!!」

 

シャルルと黒いISの間に一夏が割り込んで、振り下ろされる"雪片もどき"を"雪片弐型"で防ぐが、それに繋ぐように縦一閃に振り下ろされ、一夏は防ぎきれずに"雪片もどき"の斬撃に左腕に当たり吹き飛ばされた。

 

「一夏!!!」

 

吹き飛ばされた一夏をシャルルが受け止めるが、先ほどの斬撃で白式のシールドエネルギーが底を着き強制解除された。

シャルルは受け止めた一夏の左腕を見ると血が垂れていた。

 

「一夏、血が!?」

「大丈夫だ、シャル」

 

一夏とシャルルは黒いISの方を見るが黒いISは動こうとしなかった。

その時、一夏とシャルルの後ろからISを展開したキラ、シン、ルナマリアそれから教師部隊がやってきた。

 

「一夏、シャルル、無事か」

「シン、僕は大丈夫だけど、一夏が怪我を」

 

シャルルが説明している間に教師部隊は黒いISを取り囲むが、黒いISは一向に動こうとしなかった。

 

「アレは危険よ、二人は直ぐに避難して」

「箒は?」

「既に避難している、僕達があのISを相手するから君達はその間に避難しているんだ」

 

だが、一夏はシャルルから離れながら言った。

 

「嫌だね」

「一夏!?」

「あいつ……ラウラがあんな訳の分からない力に振り回されているのは気に入らね、一発打っ叩いてやらねえと気が済まねえ」

「理由は分かるが、白式のエネルギーも無しにどうやってやるんだ!」

 

シンの言葉は最もだった。

相手はIS、それに対して一夏は生身である。

だが、キラが意外な言葉を掛けた。

 

「シャルル、エネルギーが残っているのなら白式に譲渡して」

『キラ(さん)!?』

 

まさかキラが一夏に戦闘に参加しろと言い始めた。

 

「僕達の武装では威力があり過ぎる、ここは白式の零落白夜でシールドエネルギーを削った方が、安全にボーデヴィッヒさんを救出が出来る」

 

キラの言葉にシャルルは一夏に近づいた。

 

「分かった、一夏、白式を一極限定モードにして、そうすれば零落白夜を使えるようになるはずだから」

「頼む、シャル!」

 

シャルルのリヴァイブからケーブルが伸びて待機状態の白式へと繋がれ、エネルギーが送られてきた。

リヴァイブに残っていたエネルギーが全て白式に送られると、リヴァイブは光の粒子となって消え、代わりに白式の右腕と"雪片弐型"のみが構築された。

エネルギー量を考えるとチャンスは一回が限度だった。

 

「一夏、絶対に負けないと約束して」

「もちろんだ、ここまでお膳立てしてもらったからな」

 

シャルルから離れた一夏は"雪片弐型"を黒いISに向けて構えた。

そして、黒いISを取り囲んでいた教師部隊はキラの指示で離れていた。

 

「一夏、俺達が動きを止める、その隙に決めろ」

「ああ、分かった」

 

シンがアロンダイトを構えて黒いISに向かっていく、黒いISはシンの動きを感じ取ったのか動きを見せるが、キラとルナマリアの援護射撃で動きを封じられた。

接近したシンはアロンダイトを振り上げると黒いISが持っていた近接ブレードを弾き飛ばした。

 

「一夏、今だ!」

「応!!」

 

一夏は零落白夜を発動させ黒いISに突撃した。

一夏の突撃に黒いISが反応したが、キラとルナマリアの援護射撃により黒いISは動きを止めていた。

そして黒いISの懐に近づいた一夏は黒いISに"雪片弐型"を振り下ろした。

黒いISは真っ二つに割れ、中から眼帯が取れ金の瞳が顕になったラウラが倒れてきたのを一夏が受け止めた。

その目はひどく弱々しかった。助けを求める様だった。

 

「まあ、ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」

 

それを悟ってか、一夏はそう呟いた。


 
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