No.470547 戦う技術屋さん 十三件目 コンビネーションgomadareさん 2012-08-15 16:53:49 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2219 閲覧ユーザー数:2040 |
機動六課の戦技教導官。高町なのはの考えた新人フォワード四名の教導メニュー。
一日の訓練は早朝、午前、午後と三つの訓練に分かれており、更にその中で何段階かに分かれている。そして現在行われている早朝訓練の第一段階は、なのはVSフォワード四名の弾丸回避訓練シュートイベーションで閉める事が大半である。自動追尾弾やなのはの操る思念弾を相手に、五分間被弾せずに回避し切るか、なのは本人へのクリーンヒットがクリア条件のこの訓練。早朝訓練の名のとおり、朝早くから行われている訓練でボロボロの四人が五分間逃げ切れる等、本人達も露ほども思わず。ならば一撃入れて終わらせようと全員一致で考えるのはいつもの通りであった。
「準備はいいみたいだね。それじゃあ、レディ……ゴー!!」
と威勢のいいなのはの声と共にアクセルシューターが放たれ、弾丸回避訓練がスタート。
六課起動から二週間で培われた四人のコンビネーションは単純明快。スターズ二名が前線に立ち隙を作り、ライトニングがその隙をつく。単純だが、最も効果のあるコンビネーションだ。
「全体!散開回避!二分で決めるわよ!」
ティアナの号令と共に四人が散開。隠れたその場で、ティアナはフェイクシルエットを、スバルがウイングロードを発動する。
『行くわよスバル!』
『おお!』
ウイングロードを空中のなのはへ伸ばし、その上をフェイクシルエットで作り上げたスバルの幻影に走らせると同時、魔力弾を作る自身の幻影を作り、その銃口をなのはへ向ける。
しかし、当然そんな単純な手が効果のある相手ではなく、なのははアクセルシューター二つを自身に攻撃しようとしているスバルとティアナへ向け放ち、アクセルシューターが体を貫いた直後、二人はその姿を消してしまう。
「フェイクシルエット……。やるね、ティアナ」
随分と生成時間が早くなったものだと感心してしまう。そんななのはの背後へ伸びるウイングロード。振り返ったなのはへ襲いかかるのは、オプティックバイトで姿を消していたスバルである。リボルバーナックルのついた右腕を振り上げ、ほぼ垂直のウイングロードを駆け下りながら、勢いのまま拳を叩きつけようと動き、それに対応してなのははラウンドシールドを発動。拳の勢いを受け流すように受け止めながら、なのははシューター二つに命じ、左右からスバルを強襲させる。
しかしそれに反応したスバルはいち早くシールドの突破を諦め、ウィールを逆回転させ、逆走。ウイングロードを駆け上がるようにシューターを避けてそのまま反転するも、バランスが崩れる。
(うぇ!?)
自分がバランスを崩した事実に驚きながらも、スバルは体勢を立て直し、ウイングロードの上を走り始める。それを追うのはなのはのシューター二つ。
『馬鹿!スバル、危ないでしょ!』
『ごめん!』
『待ってなさい。今、撃ち落とすから』
そう言って隠れた場所からアンカーガンをスバルの方へ向けるティアナ。狙いはスバルを追うシューター二つ。速度はあるが、撃ち落とせない速度ではない。
魔力球を作り、引き金に指を掛け。狙いを定め引き金を引いて――
ポンッ。
あまりに間抜けな音と共に魔力球が無残した。
「……え?」
不発?カートリッジ?あれ?こんなこと今まで――
「ティーアー!援護ー!!」
「っ」
呆然としかけたティアナの耳に届く相棒の切羽詰まった声に、我に返ったティアナは慌ててアンカーガンから不発に終わったカートリッジを出し、新たに二発を装填。魔力球を四発作り出し、慌てて撃つ。
(あー、もう!なんでこんな肝心な時に)
心中で悪態をつくティアナ。その視線の先では弾丸回避のため、ウイングロードから跳ぶスバルと、外れたアクセルシューターを追う自身の魔力球。そしてそれを満足そうに眺めるなのはの姿があった。そんななのはへ、残った自動追尾式の残り二発が迫り、それをなのはは踊るように回避。その回避先目掛けフリードのブラストフレアが放たれるも、それすらも回避したなのははポジションを変えるためか方向転換し、そこへ迫るのはエリオとストラーダ。キャロのブースト魔法により加速のついた愴騎士は、スバル同様に勢いのまま、なのはへと突っ込み、レジストしようとしたらしいなのはの魔法と共にストラーダを被っていた魔力が爆発。
吹き飛ばされたエリオが廃ビルに着地する中、爆煙の晴れたその先に、なのはは悠然と飛んでいた。 失敗したのか。全員が不安になる中、『mission complete』と告げたのはなのはの愛機であるレイジングハート。そしてなのはもまた、お見事と賞賛の言葉と共に、「ミッションコンプリート」と、訓練の終了を告げた。その言葉に一番信じられないのは、突っ込んでいったエリオ。戸惑いの言葉を上げるエリオに、なのはは自身の着るバリアジャケットの一点。白のジャケットの中では一際目立つ一点の汚れを示した。
「ほら。ちゃんとバリアを抜いて。ジャケットまで通ったよ」
なのはが言うのであればその通りなのだろう。その言葉にライトニング二名は顔を明るくするも、スターズ二名の顔は何故か晴れない。
なのはの集合の合図に従い集まるも、ティアナの視線はアンカーガンへ注がれ、何故かフリードがきゅくるーと一鳴き。
「フリード、どうしたの?」
どうやら疑問を抱いているらしい。そんなフリードに追随するようにエリオが焦げ臭くないかと告げれば、全員がその異臭に気がつき、視線を匂いの発生源、スバルのローラーへと向ける。
「って、うわ!熱っ!?」
感じた違和感はこれだったのだろうと、スバルは確信した。バランスを崩した時、どこかイかれたのか、その前にイかれていたのかは分からないが、胴体制御のサポートに重点を置いたと言っていたカズヤのローラーを使って、バランスを崩す程だったのだから、よほどのことなのだろう。
かなりの熱量を誇っているローラーを慌てて脱ぎ、眺めるも原因は分からず。落ち込むスバルへ「後で技術スタッフに見て貰おう」と告げてから、なのははティアナへ視線を移す。
「ティアナのアンカーガンはどうかな?」
「正直、ギリギリかもしれません」
こちらも、スバルのローラー同様に、カートリッジの不発なんてカズヤらしくない事象が起きた以上、認めるしかない。自分のアンカーガンはギリギリだ。最近メンテをサボリ気味だったツケが回ってきたのだろうか。
「四人とも、訓練にも慣れてきたし……。そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかな?」
誰に言うでもなくそう呟くなのは。その言葉に反応したスバルが反射的に声をあげようとし、隣にいたティアナに押さえ込まれる。
「どうしたの?」
「いえ。なんでもありません」
同じ分隊の人間の口を抑えながらヘッドロックを決めていてなんでもないなどあり得ないとは思うのだが。聞いても無駄かなと判断したなのはは特に何も言わず。訓練の終了を告げるのだった。
***
毎度お馴染み108部隊屋外演習場。空中に張り巡らされたウイングロード。その色から、それを張った者はギンガだと分かる。ならその上を走っているの者もギンガかと言えば、それは否。そのギンガは地上から感心した様子で空を、ひいてはウイングロード上を駆けるカズヤを眺めており、その視線を受けているカズヤは、胴体が二回り程小さくなった上、ウィールのついた完全に某バーローのあれになっているM-10
「へぇ、得意なのは知ってたけど、あそこまで上手いのね」
そう呟くのはギンガ。『Nun.(そうですね)』とI-01も答える中、カズヤは最後にウイングロードから飛び出すようにして中へ躍り出ると、重力に引かれるまま地面に降りて上手く着地。衝撃を逃しつつそのまま滑ってギンガの元へと戻ってくる。
「すいません、ギンガさん。お時間を取らせてしまって」
「いいわよ。今は基本的に隊舎での待機がメインになってるし、カズヤの言うとおりだしね」
さて、何故カズヤがわざわざウイングロードをギンガに張らせたうえで、そこをM-10χで走っていたのか。
事の発端は昨日。いつも通り摸擬戦を終えた後のことである。
……………………
昨日。カズヤがギンガへI-01を渡してから一週間ほどが過ぎており、二人のコンビネーションもかなりあってきた頃、実質一対二のような状況でも続いていたカズヤVSギンガの模擬戦闘。ギンガ自身、教導の経験は皆無であるから、積める時に戦闘訓練を積んでいこうという二人の共通意識からもはや日常的に行われているこれをこなし、やはりボロボロになったカズヤが、ギンガに治療されながらふと告げた一言。
「あの、ウイングロードをあまり張られると飛びづらいんですけど」
もちろん実戦ならば構わない。空戦魔導師と敵対するならば、その制空権を得るためにウイングロードを張り巡らし、自分の足場を確保すると共に相手の行動範囲を狭める。理にかなった行動である。
だからこそ模擬戦闘でカズヤと戦う場合、M-10を用いた飛行能力のあるカズヤに対してウイングロードを張るというギンガの行動に何ら問題は無い。無いのだが、それはあくまでVSカズヤ、空戦魔導師や飛行能力のある相手と戦う時の話である。
「俺がギンガさんの正式な副官になったってことは、戦闘等の有事の際も、ギンガさんと共闘するって訳ですよね?でしたら、あまりウイングロードを張り巡らされると、M-10での飛行がしづらくなるのは困るんですけど」
「……そうね」
陸戦魔導師は当然のことながらそれぞれが対空用の手段を用意しているものだ。ギンガやスバルのウイングロードがそれだし、カズヤのM-10、ティアナのアンカーも少なからずそう言った意図がある。だが共闘のためとはいえ、片方の空戦手段の為にもう一方の空戦手段を削ぐというのは、どう考えても本末転倒といった話。
だがこのまま何も策を講じなければ、やはり本末転倒には変わりない。しばし悩み、そういえばとギンガはある事を思い出す。
「カズヤ、自前のローラーを持ってるじゃない。空戦、それじゃあダメなの?」
「あー……。ギンガさんの邪魔をしてしまいませんかね?同じローラーですと」
「そう?一度試してみないことには何とも言えないけど」
「そもそも俺のローラーはあくまでギンガさんのローラーのプロトタイプですから。どうしても劣化といいますか。I-01が居ませんし。外殻のG-04だけだと、どうしても重いだけでして。スペックをフル活用出来ませんから、実戦投入は難しいです」
「……改めてだけど、本当にオンリーワンなのね、この子」
『Ja.(はい)』
感心した様子で、首元に紐を通して下げられた待機状態の自身のデバイスを見て、感心した声を出すギンガ。肯定の返事をだすI-01にギンガは苦笑を浮かべる。この一週間で色々話してみてわかったが、どうやらこの子はカズヤに作られたということを誇りに思っている節があるようであった。おまけにカズヤにそうプログラムされたわけではなく。『Die anderen Ingenieure wissen es nicht.Aber, im Vergleich zu den genauen Angabe verschiedener Geräte im Netz bin ich trotz der Spezialisierung Heiss-Küßchen.Dann sagen Sie, daß was Sie ohne bezüglich Kazuya respektieren, der es wie es machte?(他のデバイサーは知りませんが。ネット上の様々なデバイスのスペックと比較しても、私は特化とはいえ、ハイスペックです。なら、そのように作ってくださった、カズヤを尊敬せず、何を尊敬しろと言うのですか)』というのは数日前の彼女の談。108部隊で部隊長をしているゲンヤを尊敬している自分と似た心境だろうかと、その時のギンガは理解した。
「いっそ変形機構を突っ込むのもありかもですね」
「え?何の話?」
「いえ。ですから、対空技術でどうにも噛み合わない話です」
「ああ。そういえばそうだったわね。でも、なんでそこから変形機構に?」
「M-10。あれに少し手を加えようかと。災害担当の頃から考えてはいたんですが、実行までには移さなかったんです。カートリッジシステム搭載のA-20シリーズと噛み合わせが悪くても、安定性のあるローラーをメインに使っていましたから」
「……確かに」
足甲をつけていたらローラーがつけられず、ローラーをつけていたら足甲がつけられないという既に開発段階でのミスとしか言いようのないデバイス達を使い続けてきたのだカズヤは。なんでデバイスを組むのはギンガでは口にするのもはばかられる技術と名状しがたいデバイスパーツのようなもの……もとい、卓越した技術と不思議な形状のデバイスパーツを使って良い品を作るにも関わらず、そのデバイス同士を組み合わせるのが苦手なのだろうかと、ギンガは思わずにいられない。
ローラーに関してはスバルのプロトタイプであり、A-20シリーズも強化改造に成功したと嬉々としてA-21シリーズを見せられたのが昨日の話なのだから、今更言っても無駄なのだろうが。自分が使う可能性があるなら、そこらへんも考えるべきだったのではとギンガは言いたい。
「なので変形機構を。具体的にはフォルムをいくらか小さくしてウィール装着版と現状のM-10を行ったり来たり出来るようにしようかと」
「確かにそれならウイングロードを使っても問題無いけど……。大丈夫なの?」
「俺は自分で使えないものは作りません」
「作ったじゃない。G-04」
「……例外はあります」
「例外多そうね」
……………………
そんな訳で作られたM-10χ。素直に『改』と書けばいいものだがそこら辺はカズヤの美学に反するのか、わざわざ当て字をしてまで『χ』にした。ならM-11ではないのか、と言われれば、「別に強化したわけではないから」と返す気満々のカズヤである。
「とりあえずこれで行こうと思います。少しの間なら飛行も可能なままなので、ギンガさんに合わせられるかと」
「そう、分かった。ところで、対空戦についても関係してくるんだけど」
「はい?」
「コンビネーションっていうの?貴方がティアナやスバルと一緒にやっていたクロスシフトみたいな。そういうのは考えなくていいかしら?基本的に単独でしか戦わないから、そう言うのに疎くって」
「あー……。クロスシフトはティアナが考えたのを三人で実行してたに過ぎないので……。俺もそういうの考えるのは疎いんですが……。あったら便利ですし、考えますか?」
「考えましょう。暇だし」
「なんですよねぇ」
何故部隊長は自分達に隊舎待機を命じているのだろうか。
ここにはいないゲンヤの顔を思い出し、同時に溜息を付くギンガとカズヤであった。
*補足
I-01はあくまでAIの識別名コールネーム。そしてG-04は外殻。AIの入っているローラーの識別名です。
なので、I-01+G-04ではじめてインテリジェンスデバイスなのです。まあ、本編では基本的にI-01で名前統一されてますが。
この作品ではそんな感じですから、今後ギンガのデバイスに個体名称がついても、それはI-01とは別物です。なので本編中にカズヤやギンガがI-01と呼びかけても、それはAIに話しかけているのだと、そう考えて頂ければ。まあ、つかない可能性もあるので、脳の片隅にでも置いておいてください。
……ここまで予防線を張れば、大丈夫だろう。デバイスに名前つけたけど、作者が気に入らなくて、I-01って呼び続けてる理由になるはず。そもそも名前考えてないんですけどね、まだ。
そして後書きでオリジナルの新しい単語を出すのは如何なものだろう。
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十四件目→まだだよ~
十二件目→http://www.tinami.com/view/468177
三十件目と三十一件目を終えて漸く書けた二十九件目(仮)。
それと関係無しに二ページ目に補足があります。
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