No.470003

武装神姫「tw×in」 第八話 ハカセ×成果=

風麦梟さん

武装神姫のゲームにおいて、引き分けという結果は滅多に起こることはありません。互いの攻撃で体力が、同時に、ゼロになる、あるいは同じ体力で、時間切れになるか……自分も一度しか経験したことはありません。

2012-08-14 16:03:21 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:487   閲覧ユーザー数:479

学校が終わり、放課後。

オレは三人を鞄に入れてある所に訪れていた。

「ここは……あの人の研究所か」

スレイニが建物を見て気付いたらしい。

そう、オレを呼んだ人物は、この研究所の中に居るんだ。

「また何か実験の手伝いですか?」

「うん、でも今回はいつもとは少し違うみたいだ」

入り口の自動ドアを抜け、受付で呼ばれた旨を話してから研究室へ向かうエレベーターに乗り込んだ。

「今回はどんな実験何でしょうね」

ルミアはわくわくしている。

「テストバトルだって昨日は言ってたけど。それに、ついにアレが出来たとも言ってたよ」

「アレ……とは何ですか?」

エンルが首を傾げた。

「それは、着いてからのお楽しみって事で」

エレベーターが目的の階に到着。

扉が開くと、

「いらっしゃーい、よく来てくれたね」

一人の神姫が出迎えていた。

クセのある緑色の髪を頭の上の方で2つ結んだ髪型に緑色の瞳。

アルトアイネス型の神姫で、名前はルーフェ、オレ達を呼んだ人物の神姫だ。

「ハカセは研究室に居るよ、わざわざ来てくれてありがとー」

ルーフェの後を追って研究室へ向かう。

「別にいいよ、案外楽しい事もあるからね」

「まぁ、中には酷かったものもありましたけどね」

スレイニがため息混じりにぼやいた。

「わたしはどれも面白かったですよ」

ルミアは更にわくわくしている。

「今回はバトルなんですよね?」

「うん、ハカセの試作品とね」

エンルの疑問にルーフェが答えた。

「と言っても、既存品に手を加えただけだけどね」

「え? それはつまり、神姫の改造……違法行為じゃ……」

「うん、そうだよ」

あっさりと答えるルーフェ。反してエンルは慌てる。

「ま、マスターはそれを知ってるんですよね?」

「うん、その試作品ってのが違法なのは分かってるよ」

「えぇ!? わ、分かっててその手伝いをするんですか!?」

「落ち着いてエンル、別に本当の違法改造ではないから」

「え……? 本当の違法改造じゃない?」

「違法改造は、神姫に直接手を加えて既存ではないプログラムを組み込んで攻撃力を強化したりする事。けど、ミルートがやってるのはただデータの中でだけ、直接神姫に手を加えたりはしてないんだ」

もちろんそれでも公共の場で使えば違反、だからこうして自身の研究室に神姫マスターを招いてテストをするんだ。

「そ、そうですか……」

エンルが落ち着いたところで、研究室の扉の前へ到着。

「ハカセー、上木さん達が来たよ」

扉横のモニターにルーフェが声をかけると、ロックの外れる音がして扉が開いた。

再びルーフェの後に続いて中に進む。

部屋の中は数台のパソコンに、何に使うか分からない機械、神姫バトルの筐体や武装や素体がズラリと並んでいた。

研究室の中央で椅子に座りパソコンへ向かっている部屋主を発見。

「ハカセ、お連れしたよ」

「あぁ、ありがとうルーフェ」

椅子が回って顔が見えた。

「ようこそボクの研究室へ、歓迎するよ」

「そっちが呼んだんだよ」

「え? ミルートさんがマスターを呼んだんですよね?」

「マスターは呼ばれて来たんですよ」

「アンタがマスターを呼んだんでしょうが」

「ハカセが呼んだんじゃん」

オレ、エンル、ルミア、スレイニと、ルーフェにまで総ツッコミを受ける。

「ははは、分かってるよ、一度で言ってみたくてね」

けらけらと笑う彼女こそ、オレを呼び出した張本人、冥王(めいおう)ミルート。

自身の一人称が『ボク』な、いわゆるボクっ子、と自分で言っていたり、神姫の新たな可能性を信じて様々な実験を計画してはオレ達にテストを頼んだりと、奇行の多いミルート。

その実態は、現在神姫開発における人達に一目置かれた、わりと凄い研究者だ。

「今何か引っ掛かる言葉を聞いた気がするな」

しかしそういう肩書きを持ちながら、外見は中学生くらい、実際の年齢も14と、普通の中学生だ。

「まぁ学校にはたまに行くくらいだけどね、週4くらいだ」

結構行ってる。

「ボクの頭脳にはすでに神姫開発におけるプログラムでいっぱいだ。だから中学の勉学を入れる隙間なんか無いのさ」

前に中学三年生の数学を見せた時、解こうとして四時間くらいかかってたな。

つまりミルートは、神姫関連に対して秀でた才能を持つ人物というわけだ。

「まぁそれはさておき、早速だがボクの研究成果を見てくれ」

椅子から立ったミルートは部屋の奥にある筐体へ、その片方にはライドシステムとは違う機械が取り付けられていた。

「研究の末、ついにボクは産み出してしまった。誰かが一度は夢見た、神姫と神姫の良いとこ取りをした神姫を!」

誰もが、じゃなくて誰かが、なんだな。

「それがコレだ! 見たまえ!」

機械のボタンが押され、三ヶ所がスライドして中身が見えた。

まず下に二人、神姫が目を閉じた状態でいる。片方はルーフェと同じアルトアイネス型で、青色の髪の種類。もう一人はアルトアイネス型と姉妹機と言われる神姫。腰まで届く程長い青色の髪を持つ、アルトレーネ型の神姫だ。

この二人は姉妹機と呼ばれるだけあって、同じ会社で造られた神姫。武装も所々似ているが、今見る二人は武装は一切していない素体の状態で目を瞑っていた。

そしてその二人の上にも一人の神姫が居た。

ただし、それは何かちゃんとした名称がある訳ではなく、特別カラーリンクもされていないネイキッド素体だ。

「名付けて、二神(にしん)一対(いっつい)()、『ツインワン』だ!」

ばーん! と効果音が入りそうにミルートは胸を張った。

「へぇー」

だが正直、コレだけ見ても何がどうなるのかよく分からない。二神一対姫ということは二人の神姫が一人になるということだろうけど。

「コレはまだプログラム上での完成でしかない。こうした過程だけ見れば理解不能なプログラムの羅列のようだが、結果を見れば複数のプログラムで動くゲームソフトのような姿を見る事が出来るのだ」

ミルートは二人の神姫に触れた。

「今まで色々な神姫で試して来たが、会社が異なればプログラムの書き方が違うし、同じ会社の神姫でも型が違えば所々異なる。だが、この二人はそのどちらの条件もクリアしていたのさ」

アルトレーネ型とアルトアイネス型、外見は異なるが二人は共に同じ会社、ディオーネコーポレーションで造られた、共に戦乙女型の神姫だ。

「ここまであっさり行くかというくらい上手く噛み合ってね。二人の戦闘スタイル、行動、得意武器、そして感情プログラムを上の 素体に組み込んで出来上がった『ツインワン』試作機第1号、名付けてアルトレイネスだ。ボクはレイネスと呼んでいるよ」

「ふーん、それで、このレイネスとバトルすればいいの?」

「その為に呼んだのさ、そちらは誰を使ってもいいし、好きな武装で構わない。ただし一対一で来てくれよ」

「言われなくても、一人ずつしかライド出来ないから」

「ふっふっふっ……その言葉、いずれ過去の産物になるだろうね」

怪しげな笑みを浮かべるミルート。どういう意味だ?

「ちなみにレイネスは素体のある神姫じゃないからボクがライドすることは無い、元になった二人の感情を組み合わせたようなプログラムが代わりに行動してくれるようになっているぞ」

ミルートの言葉を聞きながら、オレは武装の入った鞄を筐体の横に置いた。

ツインワンの機械を見ていた三人を見る。

実力ならスレイニだけど、ルミアに昨日の負けを晴らさせるのもいいか。

あ、でもやっぱり、せっかくだから試してみるか。

「エンル、いいかな」

「え? 私、ですか?」

呼ばれたエンルはきょとん顔。

「うん、せっかくだから昨日買ったリアパーツを試してみようよ」

「分かりました、頑張りましょうね、マスター」

 

 

 

 

Ride on!

 

 

ステージはテストにぴったりな神姫実験場。砂漠くらいの広さに遮蔽物が一切無いスタンダードなステージだ。

『エンル、リアパーツの調子はどうかな?』

「はい、正常に動いてますよ」

昨日買ったばかりのリアパーツの性能を確かめる。

ふむ、ダッシュのスピードはともかく、防御力と体力も上がってるみたいだ。

それに、エンルにこのリアパーツを着けた時、新しいレールアクションが使える条件が揃った、アーンヴァルMk.2型固有のレールアクションだ。

その最後1ピースが、この武器。パイルバンカー:LSレーザーソード

コレと小剣:M8ライトセイバー

ランチャー:LC3レーザーライフル

この3つがエンルの武器だ。

その時、前にネイキッド素体が現れた。

見ていると、素体は光を帯びて姿を変えていく。

アルトレーネ型のような長い髪を、アルトアイネス型のように2つ結びにして、二人のボディカラーを合わせたようなカラーリングがされていく。

「あれが、ツインワンの姿なんですね……」

やがて光が消えると、ツインワンへと姿を変えた素体―――アルトレイネスが目を開け、エンルを見つけて口を開いた。

『キミがボクの相手なのです?』

「は、はい」

二人を合わせたような口調だった。

特殊丁寧語のアルトレーネ型と、若干強気口調のアルトアイネス型、この二人を合わせて、更に変わった口調になってるな。

『じゃあちょっと待っててなのです。すぐに武装つけるからねなのです』

レイネスが両腕を横に拡げると、再び先ほどの光が現れてレイネスを纏った。

光が形を変え、レイネスに武装が施されていく。

基本は元になった二人の武装の融合らしく、レッグとボディは白と黒のカラーリングにされただけに見える。最も異なるヘッドパーツには、3つのバイザーが付いた。

そしてリアパーツ、コレは二人ともほぼ同じ形をしているので形状はそのままだが、右側が白、左側が黒にカラーリングされていた。まさに、二人を一人にした、という感じの武装だった。

『お待たせーしたのです』

光が消え、完全武装したレイネスがよく見えた。

『あー、もしもし、聞こえる?』

その時、ステージの上の方からミルートの声が聞こえた。

『聞こえるよ』

「はい、聞こえてます」

『なら良かった、じゃあ今からテストバトルを始めるけど、本気でやっちゃっていいからね、その方が良いデータ取れるかもだから。レールアクションとかばんばん使っていいから。ただし、レイネスにも3つレールアクションが組んであって、内2つは元になった二人の固有レールアクションで、もう1つはそれらの融合技、ツイン固有レールアクションみたいなのだから気を付けてね』

「つ、ツイン固有レールアクション?」

とんでもないものを造ったなミルート。

『じゃあ始めのアナウンスだすね』

ミルートの声が消えた。

オレは前にいるレイネスを見る。

『どうやら本気で行かないと不味そうだね、やるからには勝ちに行くよエンル』

「はい! マスター!」

 

 

 

Ready…………GO!

 

 

 

『楽しいバトルにしようねー、なのです』

 


 
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