<狼鬼サイド>
今俺は洛陽にいる。
暗の部隊に任せた策が完了した事を聞き、それから虎牢関から少しずつ物資を洛陽に搬送していき
夜の静けさと共に洛陽へ撤退した。
「お帰りなさい、狼鬼さん。それに皆さんもご無事で何よりです。」
俺達を迎えてくれたのは、戦の疲れなんて吹っ飛ぶような月の笑顔と。
「やっぱり、あんたを軍師にした僕の目に狂いは無かったわ。虎牢関での策の内容聞いたけど、
普通の人じゃ考えられないわ。」
という、詠の遠回しな賞賛の声だった。
「あんがとよ。しっかし疲れたな~正直指示してるより暴れる方が楽だしよ。
肩こった。」
軍師も嫌いじゃねぇがやっぱし、頭使うより拳だろ。
「あ、狼鬼さん。皆さんが帰ってくるって聞いてお風呂の準備をしておきました。
先に入られてください。」
「お、風呂か。俺は後でいいよ、テメェ等先に入れよ。」
こういう事は古来よりレディファーストってな。
「そう、なら僕達が先に入りましょう。霞達も疲れてるだろうし。」
「ほんなら、お言葉に甘えさせて貰いますかいな。」
「馬騰さん達もご一緒にどうですか?」
「そうじゃの~儂は遠慮しておこう。」
そして何故か俺の方を見てニヤニヤしだす飛翠。
「え、いいんですか?遠慮なんてされなくても。」
「儂は旦那様と一緒に入るからの。」
・・・・・・このパターンか・・・・・・
ギャルゲーの主人公になった覚えはねぇぞ。
「飛翠、馬鹿言ってんじゃねぇよ。そういうのは大事な時に取っとけ。」
「なら今がその時じゃの。旦那様の背中は儂が洗ってやるから安心せい。」
いや、全然安心じゃねぇ。
「あ、じゃあじゃあ蒲公英も!お姉さまも一緒に入ろ!」
「★■※@▼●∀っ!?ななな、なに言ってんだよ蒲公英!」
・・・なんつーか、翠は初心なんだな。
顔を真っ赤にして狼狽える翠を見ながらそう思った。
「・・・皆で一緒に入ればいい。」
ここで恋が原爆を投下!月、詠、華雄、翠は顔を真っ赤した。
「それは名案じゃ恋!皆もそれでいいかの?」
「ウチはええで。おもろそうやしな。それに狼鬼ならウチはかまへんし。」
俺なら構わないって。
俺、そんなに無欲な人間に見られてんのか?人並みの性欲はあるつもりだが・・・
「ちょ、ちょっと待った!狼鬼、あんたは嫌じゃないの?」
詠が元に戻って聞いてくるが。
「まぁ一応俺も男だし、オメエ等みてぇな可愛い奴等と風呂に入れるのは嬉しいぜ。
それに、俺の居た世界には混浴なんて風習もあったし。」
今じゃそんなの殆どねぇけどな。
「「「「「か、かわ//」」」」」
「決まりじゃの。まぁ無理強いはせん。一緒に入りたい奴だけ来ればいいんじゃよ。
では旦那様、先に行っていてくれるかの?儂等は着替えを持ってくるので。」
「おう、んじゃ。」
・・・騒動の予感がする。
チャプンッ・・・・・
「ふぅ~やっぱ風呂はいいもんだ。・・・で、結局全員来たと。」
「へぅぅ~お背中流しましょうか//」
「月がどうしても入るって言うから、ついでよ!つ!い!で!//」
なんのついでだ・・・
「にゃはは~皆狼鬼の事好きなんよ。」
「はぁ~なんで私まで//」
「・・・恋も背中洗う。」
「恋殿と湯浴みなど、言語道断ですぞー!」
ねね、お前さっき事後処理で居なかったのになんで来てんだよ。
「うぬぅ~恋敵が多いのぅ。正室は翠に任せて側室を狙うかのぅ。」
「あら、貴方にしては諦めが早いわね。まぁ私たちみたいな女よりも、姫みたいな
女の子の方が良いかもしれませんけど。」
「いや、オメエ等みてえなのも好みだぜ。」
俺の好みは格好良くて、時たまに可愛い奴だからな。
「ですって、よかったわね飛翠。私達にも機会はあるわよ。」
「そうじゃのぅ真琴。これはうかうかしれられんぞ。」
つか改めて見ると天国みてぇなところだな。
全員美女、美少女の部類に入るし。
そんなこいつ等が布一枚で皆一緒に風呂に入ってるとか。
つか、やっぱし布一枚だと色々と・・・こう・・・
見えるか見えないかっつうギリギリの感じ。言葉じゃ表せねぇな。
混浴が無くってきてる理由が分かるぜ。自制心の無い奴とか居たらもうアウトだな。
ふと、思って翠の方を見てみた。
翠も出る所は出ていて、引っ込む所は引っ込んでるし。
つか、馬家の三人が髪を下ろしてる所始めて見た。
「うう~あんまりジロジロ見るな~//」
俺の視線に気づいた翠が恥ずかしそうに口元まで湯に浸かる。
そんな翠の後ろから。
「そんな事言わないで全部見せちゃいなよ!」
蒲公英が襲いかかり、翠を守っていた布が剥ぎ取られる。
俺は咄嗟に後ろを向く。
「うわああああ!!何すんだ蒲公英!返せ!//」
「旦那様、儂が背中を流して差し上げますぞ。真琴、ほれ手伝え。」
「そうですね、僭越ながら。」
「狼鬼、酒持ってきたから飲もや!」
「霞!前隠せ前を!」
「・・・恋も。」
「恋殿、布を取ってはだめですぞー!」
「へぅぅ~//」
「僕が特別に背中洗ってあげるから感謝しなさい!」
ったく、賑やかな所だな。
今もこの瞬間も連合は迫ってるっていうのに。
「まぁ、いいか。楽しけりゃ。」
そんな感じで、久しぶりの風呂は終わった。
二日後・・・
ゾロゾロと来ましたね連合の奴等。
先頭は袁紹か。まぁ予想通りだから問題ねぇとして、後は弟の晴れ舞台しっかり見届けてやらねぇとな。
「開門しろ!連合の奴らを中に入れろ!んで、後は住民の安全確保に行け。
連合の奴等が暴れないとも限らねぇからな!」
門番達が忙しく動き出し、洛陽の城門が開き出す。
そして、城門が完全に開ききった後門番や城壁の上に居た兵が街の中に消えていく。
「さて、この状態は普通罠があると入るのを躊躇うが、相手は袁紹。
さっさと入ってくるだろ。」
<連合サイド>
「遂に董卓さんも観念したんですわね!ではこの総大将の私が引導を渡して差し上げますわ!」
袁紹は今上機嫌だった。
今まで自分の率いる連合は董卓軍に敗退してきた。だが、それでも何とか難攻不落と言われた二つの関を抜き、
この洛陽までやって来た。
そして、自分は何としても洛陽に入りたかった。
一番乗り。
これさえ自分が取れればそれでよかった。
他の諸侯は、伝令の報を聞き董卓の暴政が嘘だと確信し一番乗りでもしたら洛陽の民の不満を買うと
理解していて、あえて誰も一番乗りに声を上げなかった。
ことこの事に関しては袁紹の思惑通りだった。
「皆さん、雄々しく、勇ましく、華麗に前進ですわ!」
そんな上機嫌の袁紹の後ろに控える二人は洛陽に疑問を抱いていた。
「ねぇ文ちゃん。敵が居ないよ。」
「そうだな、城門も空いてるし。本当に諦めたんならいいだけど。」
文醜と顔良は相手の本拠地に近づいているのに敵が一人もいなく、さらには城門まで開いた事に疑問を抱いていた。
そして、袁紹軍は洛陽に一番乗りを果たした。
そこで見たのは今まで見たことも無い洛陽の町並みだった。
「なんですの・・・ここは。」
紛いなりにも名門袁家。
洛陽には何度も来たことがあったが、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
だが今の洛陽は自分の領地よりも遥かにいい街だと、馬鹿の袁紹でも理解した。
その街並みに多少の動揺を見せるものの、袁紹達は宮廷へと足を向けてただ歩を進める。
すると、一人の人間が道を遮る。
「袁紹よ!劉協様がお呼だ!今すぐ連合に集まった諸侯の代表と共に宮廷に来るがいい!」
一人の文官が袁紹に声をかけた。
「分かりましたわ。」
そして、袁紹は直ぐに各軍に伝令をだし全員が揃った時点で宮廷へ歩みを進めた。
ある者はそこで帝からお褒めの言葉を賜り、そしてその帝を自らの手中に収められることを考えて。
ある者はこれからの自分の行く末に一抹の不安を抱いて。
<劉協サイド>
「袁本初。只今参上仕りました。」
それから袁術、曹操、孫策、劉備などの主な連合の代表達が臣下の礼を取って行く。
「袁紹よ、貴様が連合の総大将、及び発起人で違いないか?」
「はっ!」
「ならば朕は貴様に問ふ。何故董卓を討とうとした?董卓の暴政などただの戯言。
貴様も先程洛陽の様子を見ただろう?」
そう言うと、袁紹は狼狽し他の諸侯達も狼狽え始めた。
「それは、ですわね。董卓さんが洛陽にて民に暴政を働き、劉協様を傀儡としてると聞きこうして救出に参った次第です。」
「・・・聞こえなかったか、董卓の暴政など戯言と朕は言ったぞ。袁紹、お主の勘違いで朕の居るこの洛陽に剣を向けたというのか?」
そう厳かに、けれどその声に残る幼さは隠せずに、劉協は言う
「そんな事は!『もう良い。お主だけに聞いても時間の無駄じゃ。』っ!」
「董卓をここに。」
傍に控えていた侍女にそう告げて、待つことほんの少し。
「董仲穎。お呼びにより馳せ参じました。」
そう言った董卓を見て、連合の者達は驚きに顔を染めた。
そしてその後ろには賈クと狼鬼が控えていた。
「さて袁紹よ。朕は荒みきった洛陽の復興の為に董卓と共に二ヶ月間、内政を行ってきた。
そして、その後貴様から洛陽が暴政により荒みきっているという檄文が流れたぞ。
つまり貴様は朕の行った政が暴政、と言いたいのだな?」
そう言った途端、袁紹の顔は真っ青になり、後ろに控えていた文醜と顔良も同様となった。
「いや、袁紹だけではないな。連合に参加した者すべての意思と取っても相違ないか?」
劉協の言葉に今度は連合の諸侯の顔が青ざめた。
「そ・・それは・・・」
そう言ったきり袁紹は黙り込んでしまった。
「・・・そうですわ。天の御使い。董卓さんは天の御使いなんて訳の分からない男を配下にしていますわ。
不遜にも帝しか称する事の出来ない天を語って。ですから私は『黙れい!』っひ!」
「貴様、朕の義兄である狼鬼をも愚弄したな!」
「協!」
董卓の後ろに控えていた狼鬼が声を上げた。
「取り乱してんじゃねぇよ。」
狼鬼は自分の事を思って叱ってくれたのだろう。そう思うと、冷静になることが出来た。
「・・・そうじゃったの。」
本当は謝りたいが、今ここでは国の長。その長が誰かに頭を下げるなど言語道断。
「袁紹よ。貴様は朕のいるこの洛陽を不当な理由で犯そうとした。
他の諸侯もどんな理由であれ、朕に剣を向けた事許せる事ではない。そしてだ、袁紹よ。十常侍から救ってくれた
董卓に牙を向き、剰え朕の大切な兄を愚弄した。信賞必罰、これ即ち国の基盤。
よって、袁紹、並びに連合に参加した者達に罰を与える。」
そして、董卓の方を向き。
「して、罰を与えるのじゃが朕はまだまだ経験が足りん。どの程度の罰を与えれば良いか、相国董卓よ。意見を聞きたい。」
「はっ!しかし私もまだまだ未熟者の域を出し得ません。ですので、私の優秀な軍師二人なら劉協様に納得していただける
意見を出してくれるかと。」
「ふむ、ならば賈ク。お主の意見から聞こう。」
そう言うと、賈クは一歩前にでて眼鏡の位置を直し。
「はっ!今回のこの連合。恐らく劉協様の救出だけでなく、自らの躍進の為に参加した者も多いと考えられます。
ですので、劉協様に仇なす不忠者達は処断されるのがよろしいかと。」
処断。その一言で場は凍りついた。
「成程、では狼鬼よ。お主の意見はどうじゃ?」
「そうだな。俺はこいつ等の領地で今後一年間税の徴収を禁ずる事を罰として進言するぜ。」
「「「「っ!!」」」」
一年税が取れない。税は政をする上でもっとも大事なもの。
それを徴収出来ないとなれば、間違い無く破綻する。
「ふむ、理由を聞いても良いか?」
「賈クのいう事も最もだが、ここに居る奴らの中にも、この国の先を背負える程の人材は多くいる。
そいつ等を処断しちまったら、この先俺たちだけでこの大陸を統べる事になるが、絶対的に人材が足りない。
だが、罰を与えないのでは本末転倒だ。だから、この一年税を取らず、且つ民の生活を安定させられる程の人間が居れば、
その人間にはそれだけの才があるという事。できなければその程度の人間だったって事だ。」
狼鬼の言を聞いて、何人かの顔にやる気が点って言った。
「成程。この大陸を任せるに相応しい人間を搾り出すと言う事か。
・・・よし、それでは連合軍に対しての罰を言い渡す。
貴様らの領地で一年間税えを徴収する事を禁ずる。よいな。」
「「「「「はっ。」」」」
「では、貴様らへの用はもう済んだ。しばらく洛陽にて休息を取った後、自らの領地に戻り一層励むが良い。
下がってよいぞ!」
そうして、連合の者達は下がっていった。
「お疲れさん。」
「ふぅ~。」
やっと終わったと思ったら、力が抜けてしまった。
「そうじゃ、お主らへの褒美を考えねばな。」
今回の董卓軍の働きは目を見張るものがある。それ相応の物でなくては。
「なにか欲しいものはないか?」
「いえ、私は特にはありません。」
それでは困る。褒美を渡さねば朕の器量を疑われる。
「そうだな。なら、益州討伐の許可くれねぇか?」
「奇遇ね。僕もそう考えていたわ。」
益州。今は劉璋が収めているがその評判は良く無い。
「そんな物でよいのか?」
「ああ、これから強ぇ奴等とやり合って行く中で、あそこを他の奴等にやるのはちっと惜しいからな。
早めにもらっとこうと思ってよ。」
「まぁ益州の評判は良くないわ。内輪揉めを理由に連合に参加しない程だし。」
「・・・よし、ならば朕が命ずる。董卓よ、民を虐げる劉璋を討ち、益州に平穏を導け。」
「御意。」
「さて、疲れたな。協、もう仕事終わったろ飯行こうぜ飯。
二人も一緒にどうだ?」
兄ちゃんは切り替えが早い。羨ましいぐらいに。
「ではお供させて頂きます。」
「おっしゃ!何食いたい?!」
「えっと、じゃあラーメンで。」
「んじゃ、行こうぜ!」
こうして一緒に居られるのもあと僅かか・・・・・・
あとがき
ネタが全く浮かばず頭がパンクしそうな荒紅です・・・
今回は劉協君メイン回でした。
もう疲れた。
それで、次回は拠点を書きたいと思っています。
凪の処遇は次回の狼鬼さんの拠点で。
そしてまたまたアンケート。
キャラが増えてきて全員の拠点やれる程の文才を持っていないので、何人かに絞ります。
申し訳ございません。
取り敢えず次回の狼鬼さんのは決定で。
1、月 2、詠 3、霞 4、華雄 5、恋とねね 6、飛翠と真琴 7、翠と蒲公英
8、小恋と暗
三つ位かな?
上位三つの拠点を書きたいと思ってますので、コメントしていただけると嬉しいです。
それではご感想などコメしてもらえるとありがたいです。
んじゃ
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今回は洛陽のお話です。
ほのぼのとちょっとシリアスです。