No.468456

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 外伝~祝賀会の夜~中篇(後半)

soranoさん

外伝~祝賀会の夜~中篇(後半)

2012-08-11 01:33:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1280   閲覧ユーザー数:1197

~グランセル城・空中庭園~

 

「……それにしても、本当にお前の”今の家族”の名前を伏せる事でいいのか、イリーナ。お前の”今の旧名”を公にすれば、お前の祖父の苦労も減ると思うが……」

「………はい。お祖父さまとも相談しましたが、やはり伏せる事にしました。……確かにあなたの言う通り、私の”今の旧名”を公にすれば、クロスベルの状況も変わるかもしれませんが、やっている事は結局両国と変わりません。だから、お祖父さまやクロスベルの事は気にしないで下さい、あなた。お祖父さまも『こちらの事は気にする必要はない。お前は自分の幸せだけを求めなさい。』とおっしゃっていましたし……」

「……そうか。”今”はよい家族を持ったものだな……」

「あら。”以前”の家族――エクリアお姉様やセリーヌお姉様も素晴らしい家族でしたよ?」

「……………」

イリーナの言葉を聞いたリウイが複雑そうな表情をしていたその時、自分達に近づいて来た人物――ヨシュアに気づいた。

「ん?お前は……」

「あら、ヨシュアさん。どうしたのですか?」

「……お久しぶりです、リウイ陛下、イリーナ皇妃。リベール各地の復興の兵達の出兵、ありがとうございました。……それにお二人とも先頭に立って、積極的に復興を手伝ったとも聞いていますし……」

「その事か。……同盟国として当然の事をしたまでだ。」

「ええ。私達は自分達のできる事をしたまでです。」

ヨシュアにお礼を言われたリウイは静かに答え、イリーナは微笑んだ。

「そういえば……プリネの話だと、あいつの前世の弟がお前だったな。……ラピスとリンが転生した人物――エステルの伴侶がプリネの前世の弟とは奇妙な縁だな……」

「フフ、世の中は広いようで意外と狭い証拠ですね。」

ヨシュアを見て呟いたリウイの言葉を聞いたイリーナは上品に笑った。

「………姉さんの事、これからもよろしくお願いします。」

「言われなくとも。あいつは俺にとっても大事な娘だからな。」

「勿論私にとっても、プリネは恩人であり、大事な臣下の娘でもありますから。」

ヨシュアに頭を下げられた2人はそれぞれ口元に笑みを浮かべて答えた。

「あの……先ほどお2人の会話が聞こえて少し気になったのですが……イリーナ皇妃はクロスベルと何か関係があるのでしょうか?」

「聞いていたのか。………イリーナ、どうする?」

ヨシュアの疑問を聞いたリウイはイリーナを見て尋ねた。

「そうですね………ヨシュアさん。私の旧名は訳あって伏せる事にしたのですが、エステルさんの恋人のあなたならいずれ知ると思いますし、話しても構いませんが、その代り他言無用でお願いできますか?」

「はい。」

「………私の旧名ですが……”イリーナ・マグダエル”です。”マグダエル”の名に聞き覚えはありませんか?」

「”マグダエル”。…………………!!まさか……!クロスベル市長の縁者の方なんですか!?」

「ええ。私はクロスベル市長――ヘンリー・マグダエルの孫娘にあたります。」

驚いているヨシュアにイリーナは静かな様子で答えた。

「………なるほど………確かに現クロスベル市長の縁者がメンフィル皇家――しかもリウイ陛下に嫁ぐなんて事が世間に知れ渡ったら、クロスベルの状況も大きく変わりますね……だから、伏せる事にしたんですか?」

「ええ。公にすればお祖父さまはメンフィル帝国という後ろ盾を得て、カルバード、エレボニアの両国の圧力に対抗できるのですが、お祖父さま自身、それをよしとしませんでした。……お祖父さま自身、そのやり方をよしとしないのもありますが、嫁ぎ先であるリウイ達に迷惑をかけたくないという親心があったのかもしれません。」

「そうだったのですか………ヘンリー市長も、アリシア女王陛下のような素晴らしい為政者なのですね。」

「ええ。私にとって自慢の祖父です。」

ヨシュアの言葉にイリーナは微笑んだ。そしてヨシュアは次にリタに何かを聞いているセオビットの所に向かった。

 

「……主と別れて、ナベリウスと一緒にずっと”冥き途”の門番をしていますが、今までその2人はこちらには来ていません。セオビットさんのお父さんは”魔人”とはいえ、元は”人間”なんですよね?でしたら、もし死んだのなら魂が私達の所に来るはずです。勿論亜人族の魂も来ていますから、エルフの方の魂も来ていますがセオビットさんが尋ねた特徴の方は来ていません。」

「……そう。なら、2人とももしかしたら、まだ生きているかもしれないという事ね……」

リタの答えを聞いたセオビットは複雑そうな表情をしていた。

「あら?ヨシュアさん。」

そしてリタは自分達に近づいて来たヨシュアに気づいた。

「やあ、2人とも。今は挨拶回りをしている所だけど……珍しい組み合わせだね。”グロリアス”での行動を見る限り、セオビットはレンとエヴリーヌと親しかったように見えたけど……」

「……この娘が死した魂が集まると言われる”冥き途”の門番だって事を思い出してね。少し知りたい事があったから、聞いてみただけよ。」

ヨシュアの疑問にセオビットは静かに答えた。

「知りたい事?一体何なんだい?」

「……私の両親の事よ。」

「実はセオビットさんは”この時代”の方ではなく、本来なら数百年前にいるはずの方なんです。」

「え!?じゃあ、どうやって今の時代――”未来”に来たんだい!?」

リタの説明を聞いたヨシュアは驚いて尋ねた。

「異世界のあなたに言ってもわからないと思うけど、私達の世界には”転移門”という別の場所へ一瞬に移動できる装置があってね。その装置の調子がおかしくなって、今の時代に飛ばされたのよ。」

「そうだったんだ……じゃあ、両親もいなくなった君を心配しているだろうね。」

セオビットの話を聞いたヨシュアは心配そうな表情をしたが

「………それはないんじゃないかしら。」

「え?」

寂しげな笑みを浮かべたセオビットの言葉を聞いたヨシュアは呆けてセオビットを見た。

「私の父親――イグナートは自分以外を”駒”として見ていたし、それは私も同じ事。私自身を見てもらう為に多くの戦場で活躍していたけど、結局私を見る目は変わらなかったしね……」

「えっと……セオビットのお父さんって一体……?」

「一国の”王”よ。……けど普段は自らを強化する魔術の研究ばかりしているわ。政治もしていたけどリベールやメンフィルと違って、最悪と言ってもおかしくない政治よ。」

「……一体どんな政治をしていたんだい……?」

セオビットの話を聞いたヨシュアは真剣な表情で尋ねた。

「策謀を巡らして、戦争を仕掛け他国に侵略し、そして侵略した国の宝や財産を根こそぎ奪い、王族達は処刑、そして民を奴隷として扱い、さらには侵略した国や攫ってきた姫君を魔術の実験として犯していた最悪の”暴君”よ。」

「…………………………」

セオビットの説明を聞いたヨシュアは信じらない表情で黙っていた。

「……母――シルフィエッタ・ルアシアは真偽は定かではないけどイグナートが納める国、”ザルフ・グレイス”に戦を仕掛けたエルフ国――”ルア・グレイスメイル”の姫君で、戦で敗北した祖国を守る為、シルフィエッタは父の元に来て、父の魔術の研究の為に犯されていたのよ。……で、その結果孕んで産んだのが私という訳。」

そしてセオビットは皮肉気に笑って説明をし終えた。

「えっと………ゴメン……君の出生がそんな壮絶とは知らず、安易に聞いちゃったみたいで………」

「ふふっ……別に気にする必要はないわ。以前の私はそんなの全然気にしていなかったし……」

「……じゃあ、”今の”セオビットさんは両親の事はどう思っているんですか?」

謝るヨシュアにセオビットは口元に笑みを浮かべて答えたが、リタがある事を尋ねた。

「ふふっ……痛い所をついて来るわね………そうね………父の事は振り向いてもらう為にいくら努力しても無駄だとわかったし今の私にはリウイ様がいるからもう、どうでもいいわ。今思えば、なんであんな男に振り向いてもらうために努力していたのか、今の私には過去の私を理解できないくらいよ……逆に今まで蔑ろにして来た母――シルフィエッタがもし今も生きているのなら今まで邪険にしていたことを謝って……シルフィエッタ――”母様”自身が許してくれるのなら、本当の”母娘”として接したいわね……今思えば、母様は憎んでいる男に無理やり犯され、孕んで嫌々産んだ娘である私に対して、憎しみの言葉を一つもぶつけずに一応親らしい事をしていたし………」

「………………」

「セオビットさん………」

寂しげな笑みを浮かべているセオビットに2人はかける言葉もなく、セオビットを見ていた。そしてヨシュアは静かに離れ、カーリアン達の元に向かった。

 

「あら、ヨシュアじゃない♪どうしたのかしら?」

「こんばんは、カーリアンさん、大将軍。今は挨拶回りをしている所です。」

「そう。……その謙虚さの一部でも見習ってくれないかしら?」

ヨシュアの答えを聞いたファーミシルスは頷いた後、嘲笑を浮かべてカーリアンを見た。

「ちょっと……誰の事を言っているのかしら?」

「フン。そんな事もわからないなんて、所詮ただの戦闘にしか役にたたない馬鹿ね。」

「なんですって~?」

ファーミシルスの言葉を聞いたカーリアンはファーミシルスを睨んだが、ある事を思い出してヨシュアを見た。

「そういえば、プリネと付き合っている男………レーヴェだっけ?あいつから話を聞いて思い出したけど、あんたとレーヴェ……以前私達が”教団”の拠点を潰す時、私達を隠れて見張っていた2人だったそうね?」

「……ええ。結社の指示で本来なら僕達が”教団”の拠点を潰すために来たんですが、先に貴女達がいましたから……様子見の為に隠れて見張っていたんですが……貴女達には意味がなかったですし……あの時は驚きました……隠行が得意な僕の気配すらも気付いたんですから……」

「フフ、まあ私達でないと気づけないほど、見事だったわよ。自分の力を誇りなさい。」

「……ありがとうございます。」

ファーミシルスの言葉を聞いたヨシュアは静かに頭を下げた。そしてヨシュアはリスティやチキ、サフィナ達に挨拶をした後、リフィア達の元に向かった。

 

「む?ヨシュアか。どうした。」

「やあ、リフィア、エヴリーヌ、レン。今、今までお世話になった人たちに挨拶回りをしている所なんだ。」

「ふ~ん……めんどくさい事をしているんだね。」

「……お前は少しはヨシュアの性格を見習ってほしいものなのだがな……レンは今回の祝賀会でちゃんと挨拶回りをしていたぞ?」

「うふふ、リフィアお姉様に褒められちゃった♪」

ヨシュアの話を聞いて答えたエヴリーヌの言葉を聞いたリフィアは呆れ、レンは口元に笑みを浮かべた。

「やだよ、めんどくさい。大体エヴリーヌは”客将”なんだから、そんな事をする必要はないでしょ?」

「……”客将”といえど、挨拶回りは必要だぞ?……まあいい。それよりヨシュア。エステルから別離した時の罰……余達は忘れていないぞ?」

エヴリーヌの答えを聞いたリフィアは溜息を吐いた後、不敵な笑みを浮かべてヨシュアを見た。

「えっと……できれば、お手柔らかにお願いしたいんだけど……駄目かな?」

リフィアの言葉を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて尋ねた。

「フフ、大丈夫だ。そんな大した事ではないし、今与える訳ではないからな。」

「キャハッ♪ま、その時を楽しみにしていたらいいよ♪」

「うふふ、リフィアお姉様にヨシュアの罰を聞いたけど、素敵な罰よ♪レンはその時が来るのを楽しみに待ってるわ♪」

「ハハ………(い、一体どんな罰なんだろう……?)」

リフィア達の話を聞いたヨシュアは冷や汗をかきながら、苦笑していた。そしてヨシュアは次にペテレーネとティアの元に向かった。

 

「そうなんですか……お母様は”幻燐戦争”の頃から変わらない方だったんですね……」

「ええ………共に戦場を駆け巡って、兵士の方達の傷を治癒した仲……でしょうか?私にとってティナさんは数少ない友人でした……」

「フフ……お母様もペテレーネ様の事は自分にとって大切な友人だとおっしゃっていましたよ。」

「……そうですか……」

ヨシュアが2人に近づいた時、2人はそれぞれ微笑みながら会話をしていた後、ヨシュアに気づいた。

「あら、ヨシュアさん。」

「……ペテレーネさん、ティアさん。”異変”や復興作業で傷ついた人達をそれぞれの宗教の最高指導者であるお二人自ら率先して、魔術を使って傷を回復していたと聞きます。……リベールの為にありがとうございました。」

ペテレーネに声をかけられたヨシュアは静かに頭を下げてお礼を言った。

「あ、あのヨシュアさん。私達は当然の事をしたまでですし、私達はあくまでゼムリア大陸のそれぞれの宗教の指導を任せられているだけで、最高指導者だなんて、そんな恐れ多い身分ではありませんから……私は本来、単なる司祭の一人ですし……」

「私もティアさんと同じですよ、ヨシュアさん。……確かにアーライナ様は異世界で宗教を広める事に成功した事をお褒めになられていましたが、それでも立場は以前と変わらず、アーライナ様より新たな力を授かり、ゼムリア大陸の宗教の指導を任されただけですよ。」

ヨシュアの言葉を聞いた2人は苦笑しながら答えた。

「お2人はこれからも変わらずそれぞれの活動を?」

「ええ……傷ついた方達を癒す……それがイーリュンの信徒である私がすべき事なのですから……」

「……私も以前と変わらず、リウイ様とイリーナ様の傍に仕え、そして神官長としてアーライナ様の教えを広げるのが私の役目ですから……そういえばヨシュアさんはプリネにとって前世の弟でしたね。」

ヨシュアの言葉に2人は静かに頷き、ペテレーネはヨシュアに尋ねた。

「はい。……こんな事を言うのはおかしいかもしれませんが、姉さん――プリネを産んで下さってありがとうございます。お蔭で姉さんと生きて再会できました。」

「……プリネは私にとってリウイ様と出来た念願の可愛い娘です。そんな娘が誰かの喜びとなってくれるだけで、あの娘を産んだ身として、嬉しい限りです。……これからも仲良くしてあげて下さい。」

「……はい。」

ペテレーネの言葉にヨシュアは静かに頷いた後、2人から離れた。

 

「……大体、挨拶は済んだかな。話し込んでいる人もいたから、後でもう一度回った方がいいだろうけど……」

挨拶回りを終えて、独り言をヨシュアが呟いたその時、ヨシュアの背後からナイアルが忙しそうに駆け回っていた。

「おっ、いたいた。ドロシー、次はいよいよリウイ陛下とイリーナ皇妃だ!……オラ、急げ!」

ナイアルの怒鳴りに答えるかのようにドロシーがよろよろとナイアルに近づいて来た。

「せんぱ~い……なんだか……おなかがタポタポしてきました~………ううっ、気持ち悪いですぅ……」

「……ガブ飲みばっかしてるからだろ。オラ、もたもたするな!」

「は、はぁい……」

そして2人はどこかに向かった。そしてヨシュアが2人を見守っていると、ある人物がヨシュアに近づいて、声をかけて来た………

 

 

 

セオビットはリウイ達の優しさを受け続けた影響か、かなり温厚になっています。まあ、レン達と共に笑いながら敵を殺しまくる奴が温厚と言えるかは疑問を感じるかもしれませんが原作と比べれば温厚になりました。そしてリフィア達がヨシュアに与える罰、感のいい人なら気づくかもしれません♪(笑)


 
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