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IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第15話

Lさん

第15話です。

プロローグ
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2012-08-10 16:28:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10056   閲覧ユーザー数:9699

二人の転校生が来た日の放課後、キラ達は職員室に戻っていた。

キラは書類作業をしながら転校してきた、シャルルとラウラの事を考えていた。

 

(ラウラ・ボーデヴィッヒ……千冬さんがドイツで教官を務めていた時の教え子)

 

キラはラウラが何故、あのような行動したのかラウラの教官を務めていた千冬に訪ねた。

そして、千冬はラウラの過去を話してくれた。

ドイツで行われた遺伝子強化試験体として、ただ戦いの為だけにラウラは作られ、育てられ、鍛えられた。

そして、ISの登場によりドイツはIS適性を上げる為、擬似ハイパーセンサーとも言える『越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』を眼球に植えつけた、だが結果として、ラウラの左目は赤から金へと変色し、そして、制御不能へと陥ってしまった。

この暴走とも取れる『事故』によってラウラは『出来損ない』の烙印を押された。

 

(何処の世界でもやる事は同じか……)

 

何処の世界でも人間を道具にする者がいる事に悲しむキラ。

そして、ドイツで教官する事になった訳も話してくれた。

第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』の決勝戦の事だった。

決勝戦の日、一夏は目的も正体も不明の組織に誘拐された。

その事を聞きつけた千冬は決勝戦会場から飛び出し、監禁されていた一夏を助けだした。

千冬は決勝戦を放棄して不戦敗となり、『二回目の優勝』を逃した。

そして、一夏の監禁場所を提供したのはドイツ軍であった。

借りが出来た千冬は一年間ドイツで教官をする事になった。

その時に、担当した部隊にラウラが居た。

千冬の教えを忠実に守ったラウラは最強の座に君臨した。

そして、ラウラは千冬をどこまでも尊敬した。千冬にどこまでも憧れた。

千冬を尊敬するあまり千冬の経歴に傷を付けた一夏を恨んでいる。

だが、千冬を尊敬しているとはいえ、初対面である一夏に殴るのはやはり良くない。

ラウラが何らか起こす事をキラは予感した。

 

(シャルル・デュノア……一夏に続いて二人目の男性操縦者)

 

キラはシャルルに違和感を感じていた。

体格は小さく、妙に高い声等、男の子にしては女の子に近い。

一夏の話では着替えの時に何故か顔を赤くするなど女の子の様な反応したという。

 

(男の子でも女の子の様な反応する子だっているし、それにカガリだって女の子なのに、男ぽかったし、人は見かけによらないからな)

 

男でも女の様な反応する人も居るのでシャルルの様な男子が居ても可笑しくはない。

とにかく、当分は様子を見る事にするキラであった。

 

 

シャルルとラウラが転校してきて五日目の土曜日。

午後に解放されたアリーナで一夏達は特訓をしていた。

キラ、シン、ルナマリアは職員室で仕事が残っているので来ていなかった。

一夏はシャルルに軽めの手合わせとIS戦闘のレクチャーを受けていた。

 

「一夏の白式って後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

「ああ、キラに調べてもらったけど拡張領域(パスプロット)が空いてないらしい、だから量子変換は無理だって言われた」

「多分単一仕様(ワンオフアビリティー)に容量を使っているからだろうね」

「たしか、たった一つの特殊能力だよな」

「うん、ISと操縦者の相性が最高の時に発動される能力のこと、でもそれが発現するのは第二形態(セカンドシフト)からでそれでも発現しない機体が多いからそれ以外の特殊能力を使えるようにしたのが第三世代型ISなんだよ」

「『零落白夜』がそれに当たるのか……」

第一形態(ファーストシフト)から発現しているのは前例がないからね、しかも織斑先生と同じ能力なんでしょ?」

 

千冬と同じ武器で同じ能力なのは姉弟だからでは説明つかない。

それでも一夏は因縁めいている事を感じていた。

 

単一仕様(ワンオフアビリティー)の文字通りコピーできるものではないからね」

「確かにそうだが、今は考えても仕方ないし置いておこうぜ」

「そうだね、じゃあ射撃練習をしてみようか。はいこれ」

 

手渡されたのは五五口径アサルトライフル『ヴェント』シャルルのISの武装の一つだ。

 

「あれ? 他の機体の武装って使用出来ないんじゃなかったっけ?」

「所有者が使用許可を出したら使えるよ、今一夏と白式に許可発行したから撃ってみて」

 

シャルルに指示されながらに射撃姿勢を取りながらメニューを開いて射撃武器とのリンクを行わせようとするのだがいくら探しても見つからなかった。

 

「うーん、なら目測でやるしかないね」

 

シャルルに事情を説明してから一度深呼吸をして引き金を引く。

その物凄い火薬の炸裂音に一夏は驚いてしまった。

 

「弾丸はISよりも小さく空気抵抗が少ないからその分速いんだね、だから一夏は動きを読まれてカウンターを食らうんだよ、あ、ほら脇を閉じないと反動に負けるよ、1マガジン分撃っていいから」

「それにしてもシャルルのISってラファールとは違うように見えるけど同じ機体なのか?」

 

『ラファール』とは正式名称『ラファール・リヴァイブ』で『疾風の再誕』の意味を持つデュノア社製フランス第二世代型ISだ。

真耶が使っていた機体もそうだが第三世代機にも劣らない高い性能と汎用性が売りで世界シェア第三位であり、操縦の簡易性によって装備次第では役割や戦場を選ばないのが特徴だ。

本来のラファール・リヴァイブはネイビーカラーに四機の多方向推進翼が特徴的なんだがシャルルのはオレンジで多方向推進翼が背中に一対、中央から二つに分かれるようになっておりアーマーも大分シェイプアップされている。

そして四枚付いているはずの物理シールドは全て取り外され左腕に一枚の大型物理シールドが取り付けられている、逆に右腕はスキンアーマーのみだ。

 

「ああ、僕のは専用機だからかなりいじってあるよ、正式にはこの子の名前は"ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ"、基本装備をいくつか外して拡張領域が倍にしてあるんだ」

「倍に!? ちょっと分けて欲しいくらいだ」

「あはは、あげられたらいいんだけどね、今量子変換してあるだけでも二十くらいあるよ」

「まるで武器庫だな、インパルスと似てる」

「えっ、そうなの?」

 

一夏は以前インパルスのデータをルナマリアから見せて貰った事があったが覚えきれるものではなかった。

因みにシャルルも授業の時以外ではキラ達の事を名前で呼んでいる。

 

「ルナマリアのインパルスは換装する事で使える武器が変わるんだ、でもまあ、あまり動かしている所は見たことはないけどな」

「聞いているだけでも不思議な機体だね、僕達のとは違うような……」

 

そんな会話をしながら一夏はマガジン一つ分撃ち続けた。

その時、アリーナに変化が訪れた。

 

「ねぇ、あれ……」

「うそ……ドイツの第三世代型」

「まだ本国でトライアル段階だと聞いているけど……」

 

周囲が騒がしくなっているのに気付いた一夏とシャルルは視線を移した。

 

「………」

 

そこに居たのはもう一人の転校生であるラウラであった。

ラウラは漆黒のISを展開して一夏とシャルルに向っていた。

転校初日以来誰とも会話しない孤高の女子。

 

「おい」

「……なんだよ」

 

ラウラはISのオープンチャンネルで一夏に声を掛けた。

 

「貴様も専用機持ちだそうな、ならば話が早い。私と戦え」

「嫌だ、理由がねえよ」

「貴様には無くても私にはある、貴様がいなければ教官の大会二連覇という偉業が成し遂げられたのは容易に想像出来る。故に私は貴様の存在を許さない」

 

千冬の経歴に傷を付けた一夏にラウラは許せなかった。

一夏自身も誘拐された時、無力だった自分が許せなかった。

だが、それだけの理由でラウラと戦う理由にはならない。

 

「また今度な」

「ふん、ならば戦わざる得ないようにしてやる!」

 

ラウラはISの肩の大型レールカノンを一夏に向けて放たれた。

一夏は雪片弐型で弾丸を弾き、軌道を逸らした。

 

「ほう、やるな!」

「何のつもりだ!!」

「言ったはずだ、戦わざる得ないようにしてやるとな」

 

再びISの肩の大型レールカノンを放つラウラ、しかし、その弾丸は上空から放たれたであろうビームによって撃ち抜かれた。

 

「何!?」

 

弾丸が撃ち抜かれたことに驚くラウラ、その瞬間青いビット兵器がラウラを取り囲んだ。

 

「っ! 馬鹿な……この私が一瞬で包囲されただと!?」

「そこまでだよ、ボーデヴィッヒさん」

 

アリーナに居た全員が声がした方に向くとそこにはISを展開したキラの姿があった。

 

「キラ・ヤマト……!」

「ボーデヴィッヒさん、これ以上やるというなら容赦はしないよ」

 

ラウラの事情を知っているキラだが、さすがに他の生徒が居る中でISで攻撃するのは危険な為、止めに入った。

 

『そこの生徒、何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

騒ぎを聞きつけた監督の先生がスピーカーで怒号が飛ばす。

 

「……っ、ふん、今日の所は引いてやる」

 

興が削がれたのかラウラはあっさりとゲートへ去っていった。

 

「一夏、大丈夫?」

「あ、ああ、助かったよ、キラ」

「そう、なら良かった」

「一夏、今日はもうあがろっか、そろそろアリーナの閉館時間だしね」

「おう、銃ありがとな。参考になった」

「いいよ……じゃあ、先に着替えて戻ってて」

 

シャルルは転校初日以外、一夏と一緒に着替えようとはしなかった。

一夏が誘っても断られている。

 

「たまには一緒に着替えようぜ」

「い、イヤ」

「つれないことを言うなよ」

「一夏、本人が嫌がることを強制しないほうが良いよ」

「うおっ!?」

 

一夏はキラに腕を掴まれ引っ張られていった。

 

「一夏ってもしかしてそっちに興味が……」

「不潔ですわ……!」

「キラ、あたしが落とすまで一夏を上手く抑えてね……」

 

そんな一夏を見た、箒達に誤解されるのであった。

 

 

一夏と別れたキラは一人アリーナの入り口に向かって歩いていた。

 

「簪さん……」

「キラ先生!」

 

ISを展開していた際、アリーナの入り口から簪が一夏達の様子を見ていたのに気付いたキラは何をしていたのか聞く為に簪に近づいた。

 

「それで、簪さんは此処で何をしていたの?」

「……他の専用機持ちのデータを取っていました」

「"打鉄・弐式"に取り入れるためだね」

「はい……」

 

簪は小さく呟くのであった。

そこでキラは"打鉄・弐式"の開発状況を聞くことにした。

 

「"打鉄・弐式"は何処まで開発が進んでいるの?」

「……ISは完成していますが……武器関連がまだ……」

 

これでは今月末に行われる学年別トーナメントに間に合いそうにない。

クラス対抗戦はISが完成していなかったので不参加している。

キラは簪に次の学年別トーナメントに参加してほしいと思っていた。

そこでキラは簪に提案をする。

 

「もし、良かったら、僕も協力するよ?」

「え!? でも……」

「君一人でやりたいという気持ちは、理解出来るよ、だけど、時には誰かに助けを求めるのも必要な事だよ、それを恥だなんて思う事は、何もないよ」

「……じゃあ、お願いします……打鉄・弐式の開発、手伝ってくれますか?」

「勿論だよ」

 

簪が差し伸べてきた手を、キラは優しく受け止めるのだった。

その時、簪の頬が赤くなったのをキラは気づいていなかった。

 

 

キラと簪は整備室に居た。

 

「じゃあ先ずは現状の開発進行状況とOSを見せてもらえるかな?」

「はい」

 

キラは端末から打鉄・弐式の開発進行状況と武装、システムの完成度、OSの画面を開いた。

高速でキーを叩くキラの姿を見て、簪は呆気に取られてしまった。

あまりに速すぎて、一度だけ見た事がある楯無のキータッチよりも何倍も速かった。

 

「あ、あの……どうですか?」

「正直な感想を言わせて貰うと……全体的に中途半端かな」

「中途半端、ですか……」

「うん、先ずこの春雷と呼ばれる連射型荷電粒子砲だけど、このままだと3~4発、連射しただけで砲身が融解してしまうね、それから夢現は想定している振動数がこの状態だと出せないよ、後は山嵐はマルチロックシステムが未完成で本来の性能を発揮出来ていない、ブースターや推進システムも出力が低すぎる、OSは全然駄目かな、これだとまともに動かないと思う」

 

簪はキラの駄目出しを聞いている内に俯いていき、目尻に涙を浮かばせていた。

 

「でも……」

「っ、ぐす……え?」

「ここまで形に出来たのは凄いと思うよ、普通なら一人で此処まで形にするとしたら何年も掛かるのに、元々倉持研で開発途中だったのを考慮しても充分凄い事だよ」

「そ、そう……ですか?」

「君の努力の賜物、誇って良いよ、後は僕が協力して、完成させるだけだね」

 

簪は初めて努力を認めてくれるキラに驚いた。

今まで誰一人として簪を努力を認めるものは居なかった。

楯無は確かに簪を褒めてくれたが、楯無にコンプレックスを持つ簪は素直に受け入れられずにずっと誰にも褒められない事が辛かった。

キラは確かに駄目出ししてはいたが、それでも純粋に褒めてくれた、簪の努力を認めた。

 

「この山嵐はストライクフリーダムのマルチロックオンシステムを使えば従来の設計以上の効果が期待でるね、それと荷電粒子砲はフリーダムのレール砲の砲身を参考にすれば何とかなるかな、それと夢現は超振動か……これは山田先生に概要を聞いてみた方がいいか、OSの構築は、これくらいなら一日あれば完璧に仕上がる」

 

キラはあっと言う間にこれからの開発スケジュールと設計資料を作り上げてしまった。

因みに真耶は整備と開発に関する知識はIS学園の中で一番詳しい人物である。

 

「あ、あの……」

「大丈夫、これなら今月末の学年別トーナメントまでには完成するよ」

「さ、三週間で……!」

 

簪は驚きを露にした。

簪ですら此処まで造るのに何ヶ月も掛かったのに、キラは此処から完成まで三週間で終わると言ったのだ。

簪は年内に完成するのは無理と半分諦めかけていた。

だがキラはそれを三週間、今度は別の意味で涙を浮かべた簪はキラに向けて深く頭を下げた。

 

「ありがとう、ございます……」

「それじゃあ、頑張ろう? それでお姉さんをビックリさせるんだ」

「え、それは……」

「実際に組み立てるのは簪さんだよ、僕がするのは設計をするだけ、簪さんで組み上げて、お姉さんに見せてあげるんだ、君の努力の結晶を」

「っ……はい!」

 

こうして、簪はキラの協力を得て"打鉄・弐式"の開発を進めるのだった。

 

「頑張ろうね、打鉄・弐式……私、もうお姉ちゃんから逃げないから」

 

"打鉄・弐式"を見上げて呟いた簪に"打鉄・弐式"の装甲が一瞬だけキラリと光って応えるのだった。


 
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