第三十六技 本音
キリトSide
「アスナか…。いや、ちょっと疲れたから風に当たりたくてな」
「そう…」
アスナは短く返事をして俺の隣に立った。
俺達の間に沈黙が流れる。そんな時、アスナが俺に喋りかけてきた。
「ごめんね、わたしのせいで色んな事に巻き込んじゃって…」
「いいさ。結局は俺が決めたことだし…」
「でも…」
謝ってくるアスナに俺は笑いかけながら言った。
「それならさ……ヒースクリフに勝った時のことを言ってくれないか?」
俺の言葉にアスナは思い至ったのか笑顔を浮かべて言ってくれた。
「ありがとう、キリト君」
「どういたしまして」
その言葉のあと、再び俺達の間に沈黙が流れる。
「そういえば、キリト君…」
「どうした?」
アスナが何かを聞きたそうな表情をして喋りかけてきた。
「キリト君はどうしてギルドから距離を取ろうとするの?
足手まといとか、そういうのじゃない気がして…。
実際、風林火山の人達とか黒猫団のみんなとはちゃんと話してるし。
黒衣衆のみんなとギルドを作れると思ったんだけど……」
そうか、彼女はそれが気になっていたんだ。
いつも一人の俺が他のギルドの奴らと普通にしているし、かといって仲の良い黒衣衆とはギルドを組まない。
それが不思議だったのだろう。
彼女になら言ってもいいかもしれない。
「俺がギルドにあまり関わらないのは、死なせてしまうのが怖いからだよ」
アスナは俺の言ったことが分からないという顔をしている。
「俺を頼ってくれるのは構わない…。
だけど、頼り過ぎて自分達も強いんだと過信して、それで犠牲になるんじゃないかって……。
そのうえ、一番強いお前が守ってくれなかったって言われるのが怖いんだ……」
そう、俺は怖いんだ。
周囲は強いというがそんなことはない。俺は、俺の心は……弱い。
「キリト君……でも、黒衣衆のみんななら…」
「たしかにみんなは強いさ。
でもな…、それだと近しいところにいたあいつらを目の前で失ってしまうかもしれない……。
そして、それを考えているのは俺だけじゃない…」
「あ……」
アスナが思い至ったようだ。
前に俺達は一度そのことで話し合ったことがある、みんなの気持ちは同じだった。
だからこそ俺達はバラバラで動いており、定例集会の時や
シャインとティアさんは死ぬなら一緒にとのことらしいが…。
「だけど、それでも…。やっぱり一人は嫌だからな…」
「キリトくん……」
アスナは悲痛な面持ちで俺の腕を抱きしめてくれた。
その優しさと温もりに、俺はしばらく甘える事にした。
「すまない、少し気分が沈んでた」
「ううん…。いつも強いとおもってたキリト君が弱音を吐いてくれて、その、少し嬉しかったよ///」
たしかに、この世界ではティアさんに相談に乗ってもらうことはあっても、弱音を吐いたことはないからな。
彼女だからこそ、弱音を吐くことができたのだろう。
「今度は俺が言う番だな。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして///」
俺達は顔を見合わせるとお互いに笑いあった。
そこに穏やかな空気が流れる。
「そういえば…。
キリト君ってどうやってクラインさんとかシリカちゃん、エギルさんに黒猫団のみんなと知り合ったの?」
「興味あるのか?」
アスナは軽く頷いてみせた。
「そうだな~。シリカは前にヴァルが助けた事があってな、俺はヴァルを通して知り合ったんだ…。
エギルとは第1層のボス攻略の時からの付き合いだ。それ以降も色々と世話になった。
クラインや黒猫団の事は少し話ができるけど…」
「聞かせて貰ってもいい?」
そうだな、折角だし話してみるのもいいかもしれない。
「それじゃあ、クラインの話しからするか……」
そういって俺はあいつとの出会いを語り出す。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
微シリアスとか暗めとか言いましたが、あまりそうでもない気もしました(苦笑)。
というわけで今回は強い故のキリトの苦しみという心情を書いてみました。
それでも戦うのはやはり強者として、という事なんですね。
それでは次回で・・・。
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第三十六話です。
今回は微シリアス?な話しです。
というより暗め?だと思いますが・・・自分でもよくわかりません。
とりあえず、どうぞ・・・。