No.466882 IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第12話Lさん 2012-08-08 00:01:52 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:11167 閲覧ユーザー数:10785 |
アリーナ中央、そこには白式を纏う一夏と甲龍を纏う鈴が向かい合って雪片弐型と双天牙月を構え合っていた。
お互いに真剣な表情で、睨み合い、試合開始の時を待っている。
「来たわね、悪いけど手加減はしなからね!」
「分かっている……こっちも全力でいく!」
『それでは両者……試合』
お互いに武器を深く握りこみ、開始の瞬間の一撃を狙う。
『開始!!』
始まった瞬間、両者の武器はぶつかり合い、激しく火花を散らし、激しい鍔迫り合いが起こった。
だが一夏はパワー型である甲龍と力比べするのは得策ではないと鈴と距離を取った。
「ふうん……初撃を防ぐなんてやるじゃない」
「……どうも」
「あ、そうだ……あんたの機体の簡単なスペックデータは見させてもらったわ。確かに……雪片のバリアー無効化攻撃は強大だわ……でもね雪片じゃなくても攻撃力の高いISなら絶対防御を突破して本体に直接ダメージを与えられるのよ。勿論この、甲龍もね……」
一夏と鈴の条件は互角、どちらが先にバリアーを突破してシールドエネルギーを消費させるのかが勝敗を左右する。
鈴が一夏に接近して双天牙月を振るおうとしたが、一夏は今までの訓練を思い出し、瞬く間に白式のトップスピードで離脱、甲龍の周囲を旋回し始めた。
「距離を取って様子見って作戦かしら? でも甘い!!」
甲龍の
不可視の弾丸二発が一夏に襲った。
「ぐっ! 何だ今のは!?」
「今のはジャブだからね」
再び衝撃砲が発射体勢に入る、一夏はキラに教えてもらった回避方法を思い出していた。
『なあ、キラ、どうやってみんなは射撃とか躱してんだ?』
『人それぞれだと思うけが基本は銃身と砲口の角度、そして引き金を引く瞬間を見ることで判断しているよ、後は視線や気配かな』
『視線?』
『人間、無意識のうちに目標とする部分を見る性質があるんだ……相手の視線を見れば何処を狙っているかがわかるよ』
一夏はハイパーセンサーを使い鈴の目線に集中、そして発射される直前に回避する。
「や、やるじゃない、一夏、この龍砲は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに、よく回避したわね」
まさか外れるとは思っていなかった鈴は思わず動揺してしまった。
すぐに龍砲を連射するが、その尽くを一夏に避けられ、若干だが焦りが見え始めてきた。
そんな中、一夏は勝負を決めるため
突然、アリーナの遮断シールドの一部が揺らいだかと思えば、一夏と鈴の間に何かが激突して砂埃を巻き上げる。
「な、何だ!?」
「何!?」
その瞬間、アリーナに非常警報が鳴り響き、観客席に物理遮断障壁が下りて避難命令が出た。
砂埃から一機の黒いISが現れた。
「何だ……? あのIS……」
管制室では真耶を始めとして、管制をしている他の先生や生徒が大慌てになっていた。
そこに真耶から通信が送られてきた。
『織斑君! 鳳さん!』
「山田先生!?」
『織斑君! 今すぐ鳳さんを連れてアリーナから脱出してください!! 直ぐに先生たちが制圧に行きます!!』
「いや……先生達が来るまで俺達が食い止めます」
『織斑君!?』
アリーナの遮断シールドが展開、しかも最高レベルである5に次ぐ強度を誇るレベル4に設定されていた。
今の状況では一夏も鈴も逃げる事が出来ない、しかも鎮圧部隊もアリーナに入る事が出来ない。
未だに説得を続けようとした真耶だが、所属不明ISが一夏と鈴に攻撃を開始してしまったため、二人との通信が途絶えてしまった。
「織斑君! 鳳さん! 聞こえてます!? もしもし! もしもし!!」
「落ち着け!」
「ひゃうっ!?」
繋がらない通信にいつまでも叫び続ける真耶のおでこに千冬がでこピンをする事で何とか静めた。
そして、現状を説明をした。
「シールドの解除を三年の精鋭たちに任せているが、あと何分掛かるか判らない。政府に援助の連絡を入れたが……それもすぐには来ないだろうしばらく二人には……持ちこたえて貰わねばならない」
「そんな……」
今出来る事は先生方に生徒を屋外に避難させる事だけだ。
「織斑先生」
その時、管制を行っていたキラが立ち上がった。
千冬はキラの目を見て何を言いたいのか直ぐに分かった。
「任せても良いな?」
「はい」
「俺も行きます!」
「いや、シンはもしもの時に備えて待機していて」
IS学園に襲撃した程の敵だ、敵の増援が送られる可能性も考えキラはシンに待機を命じた。
シンも隊長であるキラの命令に従うのであった。
「ではヤマト先生、アリーナの外から出撃してくれ」
「了解」
キラが管制室から出ようとした時、箒、セシリアが管制室に入ってきた。
「織斑先生!」
「一夏さん達は!」
「見て通りだ、織斑と鳳の二人が敵ISと戦っている」
「織斑先生、わたくしに出撃許可を!!」
「駄目だ、今からヤマト先生に鎮圧に向かう、お前が行けば邪魔になる」
「そんな事ありません、このわたくしが邪魔などと!!」
さすがのセシリアも食いつくが千冬は淡々と答える。
「では連携訓練はしたか? その時のお前の役割は? ビットをどういう風に使う? 味方の構成は? 敵はどのレベルを想定している? 連続稼働時間」
「わ、わかりました! もう結構です!」
「ふん、分かればいい」
「はぁ……言い返せない自分が悔しいですわ……」
言い返せないセシリアは降参のポーズを取るのであった。
そして、箒は不安げな顔をしながらキラの元に近づく。
「ヤマト先生……一夏をお願いします」
「大丈夫、必ず一夏と鳳さんを助ける、だから、此処で大人しくしているんだ」
「はい……」
今度こそ管制室を出たキラはアリーナの外に向かった。
アリーナから出たキラはISを展開する。
「ストライクフリーダム、起動!!」
ISを起動したキラはその場から飛び上がりアリーナ上空で停止した。
そして、キラの手に持っている二丁のビームライフルを連結させ、所属不明機が破った遮断シールドに狙い定める。
連結されたビームライフルから放たれたビームは遮断シールドの一点に命中、遮断シールドを完全に破壊するのだった。
破壊したのと同時に全スラスターを全開で吹かし、ビームライフルを腰にマウントすると、所属不明ISに近づいた瞬間、左肩をビームサーベルで切断した。
「き、キラ」
「な、何なのよ……このISは」
一夏と鈴は初めて見るストライクフリーダムの姿に圧倒されていた。
「一夏、鳳さん、後は任せて……あれは、僕が倒す」
所属不明ISがゆっくりと立ち上がり、残った右腕のビームを発射したが、キラはビームサーベルを持っていない左腕からビームシールドを展開してそれを防ぐ。
同時にビームサーベルを腰に戻してビームライフルを両手に持つと、ドラグーンをパージしながら、相手である所属不明ISを睨んだ。
「僕達の生徒に手を出したんだ、手加減はしない!」
両手のビームライフルを構えて翼を広げ、ハイマットモードを起動させ、所属不明機に接近する。
その瞬間、一夏と鈴の視界から姿を消したストライクフリーダム、一夏と鈴が気付いた時には既に所属不明機の頭部と両足、残った片腕が吹き飛んでいた。
「う……そ……あたしと一夏でも苦労した相手を、一瞬で……それに、何なのよ……あの異常なまでのスピードは」
いつの間にかドラグーンを戻して所属不明機の上に浮いていたストライクフリーダムから感じられた絶対的な威圧感を、鈴は悟った。
キラとストライクフリーダムには、自分では何をしても勝つ事は出来ない。彼にとって鈴など路肩の石に等しい力でしかないのだと。
「両手両足、頭も失ったのに、まだ動くのか」
所属不明機は頭を潰されても動いている事から無人機と思われる。
動く事も、攻撃する事も、敵を捉える事も失ったというのに、まだ動こうともがいていた。
『キラ……そのISの回収を頼む』
「了解」
そう呟いたキラは両手のライフルを連結させて銃口を所属不明機に向けた。
「これで、終わりだよ」
ビームが発射され、所属不明機の胴体を貫いた。
コアは避けて撃ったが、ISとしての中枢機能を完全に破壊したのでこれ以上動く事が出来なくなった所属不明機は、その動作を完全に停止させるのだった。
無人機撃破した後、一夏と鈴は事情聴取が行われた。
今回の事件については学園の許可なく他人に話すことを禁じられた。
そして、一夏と鈴は廊下を歩いていた。
「……そういや試合、無効だってな」
「そりゃあんな事が起きればね……」
試合が無効となってしまった、これでは鈴と約束した事が果たせなくなってしまった。
「勝負の決着どうする? 再試合は決まってないようだけど」
「別にどうでもいいわよ」
「え、何で?」
「いいったらいいのよ!」
首を傾げる一夏。
だが、一夏は鈴のほうに向いた。
「鈴、何だ……その、いろいろと悪かった、ごめん」
「あたしもムキになちゃって、ごめん」
一夏は許してくれた事にホッと胸を撫で下ろすのである。
「そ、その、一夏。約束のことなんだけど……」
「あ、思い出した! 確か……『毎日あたしの酢豚食べてくれる?』だっけ、それで、上達したか?」
一夏は鈴との約束を思い出したが鈴は顔を赤くしていた。
「え、あ、その……」
「もしかして別の意味だったか?」
「ち、違わないわよ!? ほら、料理って誰かに食べてもらったら上達するって言うじゃない!? だから、うん、そう!」
「そ、そうか、もしかしたら『毎日味噌汁を』とかそんな話かもしれないと思ったけど深読みし過ぎたな」
「………」
「鈴?」
「は、いや、そうじゃない!? あははははっ!」
何とか誤魔化す鈴であった。
「何やっているのよ鈴……」
二人のやり取りをルナマリアは後ろの物陰から聞いていた。
折角、一夏が思い出してくれたのにそれを否定してしまっては、一夏に想いを伝えるチャンスを捨てているようなものである。
そんな鈴に呆れてしまうルナマリアであった。
IS学園地下、最高機密室にキラ、千冬、真耶は居た。
メカニックルームには、大破した所属不明機が解析をされていた。
「どうだ?」
「やはり無人です……コアも調べてみましたが、どこの国家にも登録されていないものです」
無人機に使われているコアは、束が作った467個のコアとは別の468個目のコアという事になる。
「やはり……ですか」
「ヤマト君、何か心当たりでも?」
「……いえ、特には」
しかし、心当たりなんて聞かなくても真耶だって気付いていた。
コアを作れる人間なんてこの世に一人しか存在していないのだから。
「ヤマト、話がある、付いて来い」
「はい」
この場を真耶に任せて、千冬はキラを連れて隣の部屋に移動した。
その部屋にある椅子に二人は座ると、備え付けのインスタントコーヒーを淹れて少し落ち着く。
「私もだが、キラ、アレが何なのか……見当は付いているのだろう?」
「あくまで推測ですが」
「そうか……お前も篠ノ之 束を疑っているんだな?」
「はい、コアを作れるのは篠ノ之 束だけですからね……」
「そうか……」
千冬はコーヒーを口に運ぶ。
「ともかく、この話は最高機密事項として扱う。ヤマトは、ここでの話は絶対他言無用だ」
「了解」
国家最高機密クラスの内容になってしまうので、これは当然の事だろう。
今後も束関連の事で何かが起きる可能性もある。
「それともう一つ、キラ……お前に頼みたい事がある」
「頼みですか?」
「この事件を調べて欲しい」
千冬は机に置いていたある資料をキラの前に出した。
「先日、イギリスが開発したブルー・ティアーズ2号機、"サイレント・ゼフィルス"が強奪された」
「強奪!?」
「しかも、監視カメラに犯人の顔が写っていたのだ」
千冬の取り出した写真には千冬と瓜二つの顔をした少女が写っていた。
「これは!? 千冬さん、でも年齢が……」
「今の一夏と同じぐらいだ」
「クローンですか……」
「おそらくはな……」
実に忌々しいという口調で吐き捨てた千冬だが、その気持ちはキラにも理解できた。
キラから見ても許せるものではない。
「分かりました、僕の方でも調査しておきます」
「頼む、キラ」
キラは資料を持って部屋を後にするのだった。
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第12話です。
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