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真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の娘だもん~[第28話]

愛感謝さん

無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。

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2012-08-05 18:24:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3635   閲覧ユーザー数:3291

真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の()だもん~

 

[第28話]

 

 

賊徒征伐戦に勝利した2日後の晩、ボクたちは勝利を祝う(うたげ)を開きました。

宴を開く事が遅れた理由は、負傷した将兵や賊の治療をしたり、捕虜を引き連れて村近くに陣営を築いたりして日数が掛かったからです。

宴の場には華陽軍の将兵のみならず、曹軍の将兵や村人にも華陽の酒を振る舞いました。

 

何故に大量の酒を皆に振る舞う事が出来たかと云うと、華陽の酒は消毒・殺菌にも使用できる為、補給のさいに沢山(たくさん)持って来て貰っていたからでした。

戦闘時におった傷口の化膿の進行を防ぐ為に、綺麗な水で洗った後に度数の高い酒をかける必要があったのです。

当初、補給担当の黄忠は難色を示していました。

今の時代には消毒や殺菌と云った概念が未だ無く、そのうえ持ち運びが不便で嵩張(かさば)るからです。

でも、なんとか黄忠を説き伏せて許可を取る事が出来ました。

厳顔たちは意味を理解せず、ただ単に酒が多く呑める事を喜んでいただけでしたけど。

 

本当の事を言うと、これ等の酒は李典の歓迎会用に持って来ていた酒でした。

李典の気掛かりを解消した後に村人たちとの送別も兼ねて、心置き無く歓迎してあげたかったからです。

でも、色々あって未だ彼女から答を聞いていませんでした。

ですが、せめて気持ちだけでもと思い、宴を(もよお)す事に決めたのです。

 

 

「……」

 

ボクは自分の天幕内で椅子に座りながら、杯に入っている酒を見詰めていました。

天幕の外では将兵たちの勝利を喜ぶ声や、歌い声などの楽しそうな声が聞こえて来ています。

その楽しげな輪の中に入らず、ボクは一人で酒を呑んでいました。

 

「若」

「ん? …ああ、桔梗か。どうしたの?」

 

いつ天幕に入って来ていたのか気付きませんでしたが、厳顔の呼ぶ声が聞こえて来たので顔を上げ、ボクは彼女に答えました。

 

「『どうしたの?』では、ありませぬぞ。まったく」 

 

厳顔は何やら怒っていました。

その様子はボクの守訳を勤めていた頃の彼女のようで、ちょっと心配しているようにも見受けられます。

でも、ボク自身には身に覚えが無く、何を怒っているのか分かりませんでした。

 

「なにが?」

「若は昔から何かあると、直ぐ独りで部屋に閉じ(こも)ってしまわれた。その(くせ)は、まだ治っておらぬようですな?」

 

厳顔は出来の悪い子を(さと)すように言いました。

ボクは、ちょっと気分を害します。

 

「そんな事ないだろう? それは子供の頃の話しだよ」

「では何故(なにゆえ)、ここに独りで居られるのか?」

「それは…」

「真桜の事を気にして居ったのでありましょう? 違いますかな?」

 

ボクは心外だと言いましたが、厳顔はそのまま(たたみ)掛けるように言い放ってきました。

李典の事を気に掛けていたのは事実だったので、彼女の言葉は的を射ています

だから、ボクは口を(つぐ)むしかありませんでした。

 

「若が人の気持ちを大事にする事は、美徳と言えるかも知れませぬ。しかし度が過ぎれば、それは誤解を与える事に成るやも知れませぬぞ?」

「誤解って?」

「自分は必要とされていないのでは無いか? と思われると云う事です」

「はあ?」

 

厳顔が訳の分からない事を言って来たので、ボクは思わず奇声を上げてしまいました。

彼女は、そのまま続けて話し掛けてきます。

 

「今の若のように独りで何かを思い悩んでいる時、それを見ているしか無い配下の気持ちを考えた事がおありか? 支えて差し上げたくとも、それが出来ぬ自分を不甲斐なく思う配下の気持ちを」

 

思いも寄らない厳顔の言葉を聞いて、ボクは二の句が継げませんでした。

そんな事を今迄考えた事がなかったからです。

 

「何故、先の戦闘で真桜だけを分けて別行動を取らせました?」

「え? それは少しでも友達たちと、一緒に居させて上げたかったからだよ?」

 

いきなり話しが飛んでいるようにも思えましたが、ボクは厳顔の問いに素直に答えました。

義勇兵の行動を統率して貰う必要もありましたが、村人たちや友達たちと少しでも一緒に居られるようにと思って、李典に別行動を取らせたからです。

 

「それが誤解を招くと言っておるのです」

「なんでよ?」

「真桜はもう、我らの仲間であった筈ですぞ?」

「それは…そうだけど……」

「それにも関わらず真桜のみを分ければ、あの者が若に必要とされていないと思うとは考えなかったのですかな?」

 

ボクは厳顔に答えを返す事が出来ませんでした。

そんな風に取られるとは、考えた事がなかったからです。

 

「例え楽文謙と云う(やから)の事があったにしても、まだ軍を辞めた訳ではありませぬぞ。更には陣を築いて早々天幕に籠って居っては、不必要と思って拒絶していると取られても仕方ありますまい?」

 

厳顔の耳の痛い諫言(かんげん)を、ボクは黙って聴き入れるしかありませんでした。

自分の取って来た一連の行動が、共に在って欲しいと云う自身の望みとかけ離れている事に気付かされたからです。

 

「真桜に居て欲しいと、若は本気で思っておいでか?」

「思っているよ。せっかく出会えた仲間だもの」

「本当ですかな?」

「本当だよ。これからも共に在って欲しいさ」

 

厳顔の重ねて問いかける言葉に、ボクは今の自分の心情を素直に話しました。

李典に共に在って欲しいと云う気持ちは、今も変わらずにボクの心に存在するから。

 

「……と、言う事らしいぞ? 真桜」

「はい?」

 

この場に居ない李典に話しかけるような厳顔の言葉に、ボクは不審に思って彼女を(いぶか)しげ見ました。

 

「ははは……ホンマ、すんませんでした。桔梗の(あね)さん」

「え?!」

 

いきなり李典の声が天幕の入り口で聞こえて来て、彼女はバツが悪そうに後ろ頭を()きながら入室して来ました。

更にその後ろからは、他の将軍たちが続いて天幕内に入って来ます。

 

「……どういう事?」

 

厳顔に(かつ)がれたのかと思って、ボクは椅子から立ち上がってキツイ目で彼女を(にら)みました。

そんなボクの心情を理解してか、厳顔は苦笑い顔で説明してきます。

 

「相談されましてな」

「相談……?」

「うむ。若が自分をのけ者にしたのは、自分を不要に思っている(ゆえ)かどうかと」

「な?!」

 

厳顔の言葉を聞いて、ボクは驚いて李典を見ます。

彼女は更にバツ悪く思ってか、照れながらボクを上目遣いで見ていました。

 

「なんで、そんな風に思うの? ボク言ったよね? 共に在って欲しいって」

 

ボクは李典の心情が理解できずに、彼女に疑問を問いかけました。

李典は口を(とが)らせ、いじけたように返答してきます。

 

「せやかて、ウチだけハブやもん。不安に思うても、しゃあないやんか」

「え? ハブ? なにそれ?」

「……村八分(むらはちぶ)の仲間ハズレちゅう事や。

 せやから、桔梗の姐さんに相談したんよ。大将がウチをどない思うてるか知りとうて」

 

ボクは黙って、李典が話すのを聞いていました。

そのまま彼女は開き直ってか、饒舌(じょうぜつ)に自身の思っている事を話してきます。

 

「そら凪の事があってアナイな事に成りよったけど、ウチは軍を抜けた覚えはないで? せやのに大将はシカトしよるし、凪たちには一緒に曹軍に入ろう言われるしで、どないして良いか分からんように成ってもうたんや」

 

「……」

 

「せやから、どうするか決める前にな。せめて大将の気持ちが知りたかったんよ。ウチの事を要らん言うなら、しゃあないしと思うて」

 

李典の様子は少し心細気な捨てられた子犬のようだと、ボクには見受けられました。

李典に良かれと思って取った処置が、余計に彼女の重荷になるとは思いも寄りませんでした。

 

「ボクも()()だという事だね、配下に心配かけてしまうなんてさ。

 ごめんね? 真桜、みんな。そんなつもりは無かったんだ」

 

李典や皆が安心してくれる事を望み、ボクは謝罪します。

皆はボクの謝罪を聞いて、安堵してくれたように見受けられました。

 

「真桜、改めて問うよ。これからも共に在ってくれないか? ボクは、君に一緒にいて欲しいんだ」

 

李典との約束を果たすべく、ボクは彼女の勧誘を再度試みました。

いま感じている自分の気持ちを、ただ素直に言葉に表して。

 

「……もう、シカトせえへん? ハブにも、せんといてくれる?」

「うん。しないよ」

「ホンマ?」

「ああ。約束するよ」

 

李典は心細げにボクに問いかけてきました。

しかし、ほどなくボクの心情が伝わったのか、彼女は安堵したように見受けられました。

 

「そっか! なら、しゃあないな。大将は頼りないさかい、ウチが面倒みたるわ!」

「はははっ。頼りないは酷いなぁ」

 

精一杯の虚勢を張りながら、李典はボクに仕えてくれる事を了承してくれました。

そんな彼女の健気(けなげ)さに、ボクも(おど)けて答えて見せます。

ボクたちのやり取りを皮切りに、皆は改めて祝いの意を表していきました。

 

 

「さあ、皆さん。お酒を用意しましたから、ここでお祝いをしましょう」

 

諸葛亮がそう言って、呂蒙と一緒に酒を持って来てくれました。

ボクたちは杯を取って、改めて乾杯していきます。

先程とは違って、本当に美味しい酒でありました。

暫くの間ボクの天幕内で、地面に敷きモノをひいて楽しい宴会の一時を過ごしていきます。

 

 

「ところで、(あるじ)?」

 

(かたわ)らでメンマを肴に酒を呑んでいた趙雲が、おもむろにボクに話しかけてきました。

 

「なんだい?」

「先程の真桜への誘いでござるが……」

「うん」

「あれは求婚のようでしたが、真桜を妃に迎える心積もりなので御座いますかな?」

「……」

 

趙雲さん。君は何を言っていらっしゃるのですか?

 

「せやな?! そしたらウチ、玉の輿(こし)やん! イヤやわぁ♡ めっちゃ恥ずいで」

 

李典さん。君も何を言ってくれやがるのですか?

 

「はははっ! 焔耶よ、真桜に先を越されたようたぞ?!」

「せっ、刹那様?! そうなのですか?! 嘘ですよね?! 嘘だと言って下さいぃ!」

 

はい、厳顔さん。君も余計な事を言わんでよろしい!

先程の忠臣ぶりは、どこ行ったの?! 

魏延も酔っ払い共の戯言(たわごと)を真に受けなくて良いから。

 

気兼ねが無くなったからか、みんな酔いが回って手が付けられなく成ってきました。

酔っ払い共の戯言を真に受けた魏延に詰め寄られ、両肩を持たれながら前後に身体を揺すられて、ボクは気持ち悪くなって悪酔いします。

そこから次の日の朝に目が覚めるまで、ボクの記憶は途切れていて覚えていませでした。

 

朝に目が覚めた時、ボクは上半身の着物がハダケている半裸の状態でした。

どうやらボクは、寒くなって目が覚めたようです。

ボクの両隣りで寝て居る魏延や趙雲は、やっぱり肩口まで着物をハダケさせていました。

何がとは言えませんが、見えそうで見えないと云う微妙な(なまめ)かしい状態です。

 

「……」

 

敷物の上で気持ち良さげに寝て居る皆を見つつ、ボクは自分の身体を(まさぐ)り確めながら思います。

 

『何にも、なかったよね?』と。

 

 

皆さん。

お酒は呑んでも、呑まれないようにしましょうね?

でないと見ず知らずの人が、朝となりに寝て居るかも知れませんから。

何かあってからでは遅いですよ?

 

 

 

 

宴会での酔いも醒めた頃、ボクたち華陽軍は帰還の準備を整え始めました。

賊の脅威が去って一応の解決を見たので、橋頭堡に帰る事にしたのです。

後事は、この場に数日滞在する曹操に任せる事にしました。

曹操は暫く様子を見てから冀州へ向かうそうなのです。

それから、楽進と于禁の両名は曹操に仕える事に決めたようでした。

でも、李典を一緒に曹軍へ連れて行けなくて、楽進にボクは睨まれる羽目になりました。

ボクの所為にするのは勘弁して欲しいですよね?

 

 

 

(さて、やっと橋頭堡に帰還出来ますね。真桜の気掛かりも解消出来たし、言う事なしです。後は冀州での反乱に決着をつけて戻りましょうか。ボクたちの帰りを待っていてくれる我らが故郷、華陽国へね)

 

ボクは全軍を進軍させて橋頭堡に向かわせました。

自分の為したい事を、思い定めながら。

 


 
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