No.465069

魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが 無印⑭

神凪響姫さん

「世界を救って……」「無理に決まってるではないか」しかし目覚めると見知らぬ世界、見知らぬ身体。異なる世界から意識を飛ばされ、しかも魔法少女の体に乗り移った主人公!失った記憶と肉体と尊厳、所持するものは知識のみ!諦めろ、魔法少女が許されるのは子供のうちだけだ……!「ダメだよなのは!魔法使って暴力沙汰はいけない……!」やかましい。「では行こう。まずは話し合いだ」ただし肉体言語的な意味も含めて。 ※注意:この作品では主人公を筆頭に原作キャラが一人残らず人格或いは外見の改変を受けており変態の巣窟と化しております。あらかじめご了承ください。

2012-08-04 22:57:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1771   閲覧ユーザー数:1716

 前回までのあらすじ

 

 

 

 ついに時の庭園が動き出した!

 アルハザードへの到達を目指し、愛する娘・アリシアを連れ、プレシアは新たな未来に想いを馳せる。

 しかし! それを止めんと走り出すなのはとユーノ、そしてクロノ。

 一方、自分の存在を否定され、全てを失ったフェイト……アルフも声も遠く、何もかも手放しかけた彼女を揺さぶったのは、一人の少女の声。

 まだ何も始まっていない、と。

 だからこれからは、本当の自分を始めよう。今までの間違った自分を正し、大事な人が過ちを犯す姿を見たくないから!

 自分の相棒・バルディッシュは答えない。だが! 彼は傷だらけの機体を機動させる! 再び立てと、語るように。

 今、二人の少女が立ちあがる!

 これからを、未来を築くために!

 

 リリカルなのは、始まります!

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ダウトーッ!!!」」」」

「な、なんでぇえええええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第14話 救いを見出しましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 庭園に突入したのは、なのはとユーノ、そして気だるげについてきたクロノです。

 一応管理局に所属していることになっているなのはが怪我をすると、上に立つ者……クロノとかリンディとかクロノとかが確実に言及されるので、止むを得ず、というのが理由だそうです。男のツンデレってキモいですね。

 

 なのはとユーノは、とりあえず危なくなったらこの男を盾にして逃げようと固く誓い、廊下を走ります。

 

 と、床から何かが湧いてきました。

 

「ぬ? これは……」

「傀儡兵ってやつだな。多分、プレシアの召喚したモンだろうぜ」

 

 クロノが推察した通り、プレシアが意図的に招き寄せたものです。

 

 しかし、これはなんというか……

 

 

 

 

 

(((なんで全員メイド服着用なんだろう……)))

 

 

 

 

 

 そんな客人の感想とは裏腹に、傀儡兵は機敏な動きで肉薄してきます。どうやら近づく相手を攻撃するよう設定されているようです。

 

 無骨な外見とは裏腹に、どこか可愛らしさを見せる衣装。轟風を立てて迫る槍、はためくスカート。突き出される閃光のような槍捌き! 白く輝くフリル! 金属音を奏で火花が散る! ついでにフリルも舞い踊る! 槍が瞬く間に以下省略! フリルが以下略!

 もう帰ってもよろしいでしょうか。

 

 ダダ下がりなテンションとは裏腹に、なのはは容赦なく魔力弾をバカスカ連射します。この後プレシアと戦うのに無駄な力を消費しても良いのでしょうか?

 

「なに、いざとなったら動物型爆弾で一網打尽にしてくれよう。問題はないね?」

 

 爆弾が意志を持って逃げだしたので容赦なく爆破しました。

 敵もろとも吹き飛んでいきました。ついでにユーノが黒焦げになりました。

 

「……オメェら、いつもそんな感じなのか?」

 

 呆れたようにクロノが言いますが、

 

「良き相棒だろう?」

 

 なのははやはりキッパリ言うのでした。

 この時、初めてクロノはユーノに対し同情的な目を向けました。もっともユーノもクロノに対し時々そういう目で見ているのでどっちもどっちでしょう。

 

 ところで、相棒って変な英語で訳すと『ラブ・スティック』と読めなくもすいませんでした。

 

 廊下を突き進み、やがて扉の到達しました。

 クロノが勢い任せに蹴破ろうとしますが、

 

「ウッディ!」

 

 なのはが蹴っ飛ばしました。ついでにクロノも。

 いらんほど勢いよく開かれる扉と前倒しになるクロノ。動じないなのは。巻き添えを恐れ逃げるユーノ。させじと踏みつけるなのは。この間僅か二秒。

 

 部屋の中には、傀儡兵が所狭しと佇んでおり、客人の応対に武器を身構えております。当然のことながらメイド服です。主がアレだと部下が苦労する構図です。

 

「ふむ。面倒だね……クロノ君、地面の温度を確かめているところ申し訳ないが、二手に分けれたい。プレシア女史の方を任せてもよろしいかね?」

「俺に対する謝罪はどこよ!?」

「すまない。……よろしいかな? ではここは任せるよ」

「そうじゃねぇーッ! あ、おいこら! 待ってェエエエエこんな物騒なところに置いてかないでエエエエエエエエエエッ!!」

 

 泣き叫ぶクロノを無視して、ユーノを引っ掴んだなのはは機敏な動きで傀儡兵の間を通り抜けました。まるでゴキ●リのような素早い動きでした。

 階段を上っていく二人。

 放置されるクロノ。クロノ呆然。

 

 と、そこにアルフが駆けこんできました

 

「なのは! 手助けしてやんよ!」

「俺はなのはじゃねェ! けど助かったぜ、手を貸してくれ!」

 

 ん? と小首を傾げたアルフは、すちゃっとメガネを装着します。

 無数の傀儡兵に囲まれるクロノがいました。

 

 アルフは五秒ほど考えてから、うん、と頷きました。

 

「ここは任せるよ!」

「おいィイイイイイイイイイ! ふざけんなコラァアアアアアアアアアッ!!」

 

 アルフがすらこらと逃げ出します。

 同時、傀儡兵が襲いかかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって、アースラ艦内。

 

 アルフに置いていかれ、一人部屋の隅でいじけるフェイトがいました。

 部屋の

 

「バルディッシュ……ボクってバカなのかな?」

『A,Ah……I can't speak English.』

 

 逃げました。

 男らしい声で逃げました。

 ますます肩を落とすフェイトですが、いつまでも挫けているわけにもいきません。こうしている間にも、母はどこか遠くへ旅立とうとしているのです。色々な意味で。

 

 追いかけないと。そう思うも、立ち上がれません。母にあんなこと言われりゃそりゃショックでしょうよ。

 

「確かに、ボクは…………その、…………………………バカかもしれないけど」

 

 遂に認めてしまいました。

 断腸の思いでした。

 

「けれど、ここで終われない……まだボクは、挫けるわけにはいかない! 母さんが無茶をやらかそうとしてる、ならボクが、あの人の娘であるボクが! やらなきゃいけないことが、きっとあるはずなんだ! だから――バルディッシュ、ボクたち、まだここで終わるわけにはいかないよね?」

『What!!? ……Oh,yes!! Ok,Let's Stand up!』

 

 困惑気味だったバルディッシュも応えます。適当に元気よく答えればいいと思ってませんかこのデバイス。

 

 しかし、迷いを得ながらも自力で立ち上がるとは……なんと主人公らしい姿でしょう! どっかの誰かさんとは大違いです。

 

 

 

 

 

「へっきしょいちくしょい!! ……ふむ、誰かが私を妬んで噂しているようだ」

「噂してるのは正しいけど妬む人はいなイタタタタ! ああ! やめて! 腹は! 下腹部は! 急所近くてもうアカ―――ンッ!!」

 

 

 

 

 

 どっかでそんなやり取りが行われる間に、フェイトはすっくと立ち上がります。

 自分の目的を見失わないように、自分が為すべきことを忘れないように。

 本当の自分を始めようと、今、走り出しました。

 

 

 

 こうして言うと主人公がフェイトみたいですよね。今更でしたそうでした。

 

 

 

 

 

 一方、本来の主人公・なのははというと、

 

「汚物は消毒なのぉおおおおおおおおおおッ!」

 

 のっけから飛ばしまくってました。

 魔力の温存? はて、なんのことでしょうね。

 

 とりあえず敵が視界に入れば蚊を潰す感覚で片っ端からブッ飛ばしていますが、恐らく傀儡兵一体の強さは通常魔導師3人分くらいです。

 つまりどういうことかというと、

 

 

 

 3魔導師 = 1傀儡兵 = 1/100000000なのは

 

 

 

 といった具合でしょうか。

 最早数字割れするくらいの力量を発揮するなのはでした。理不尽や非常識という言葉が地球脱出するレベルです。

 

 近くに壁があろうが柱があろうが敵がいようがいまいがおかまいなしに魔力弾をドカドカ撃ちまくるので、どちらかというと敵の攻撃より味方の攻撃に気をつけているアルフとユーノです。もうこやつ一人に全部任せてもいいんじゃなかろうか、という疑念が湧いてきますが気にしたらダメなことだって世の中にはあるはずです。

 

 傀儡兵は近づかなければ攻撃が通らないと踏んだのでしょう、大きく踏み込んで、なのはへと接近を試みます。

 

「なんの、こちらには必殺『ユーノ・DE・フィールド』が……何!?」

 

 が、危険を察知していたユーノは、とっととなのはから離れた位置に移動して傀儡兵をバインドで押さえつけていました。敵の動きを止めている雄姿は見上げたものですが、ぶっちゃけなのはの近くにいたくないからああして時間稼ぎしているだけでしょうねきっと。

 

 舌打ちしたなのはは、止むを得ずバリアを形成しようとします。が、僅かに間に合いません。アルフがなのはを助けようと駆け寄ります。

 その前に、

 

 雷が降り注ぎました。

 ついでにユーノにも直撃しました。

 

「なんでェエエエエエエっ!?」

 

 近くで起こる惨状をサラッと無視して、なのはは上を見上げました。

 

 静かに降り立った―――フェイトは、ちょっと恥ずかしそうに顔を背けながらも、なのはに言いました。

 

「……来ちゃった」

 

 なんでか頬を染めて言うフェイトでした。

 凄まじい勘違いを生み出しそうな発言ですが、なのはは普通にスルーしました。

 

「答えは出たのかね?」

 

 その問いに、フェイトは小さく、しかし確かに頷きました。

 

 ようし、となのはは頷きます。

 

「とはいえ、君の仕事はここにはないよ。君は母親の元へ急ぐがいい」

「だっ、だけどオマエは……!」

「私は問題ない。それに、……失ってからでは手遅れだよ(尊厳的な意味で)」

 

 シリアスな発言ですが最後余計な言葉が聞こえました。

 

「……分かった。だけど、アイツくらいは、倒してからいくよ」

 

 二人の前に立ち塞がる、巨大な傀儡兵。他とは一味違う風格を持つその威容、さしずめ侍女長といったところでしょうか。台無しですね。

 

 二人はデバイスを構えます。

 合図は不要でした。何も言わずとも、お互いの意図を汲み取っています。

 

(射撃で牽制し、後に大きな一撃を与える……!)

(速度で翻弄し、後で光弾の連打を行なう……!)

 

 汲み取ってませんでした。

 

 どっちもある意味ミサイルより性質が悪い存在なので、即席でコンビネーションを組んだところで互いの足を引っ張るだけに終わりそうなものですが。

 

 ですが、お互いが別々の分野に特化しているため、それなりの連携をとれました。

 

 フェイトは飛び出し、バルディッシュを掲げて飛翔します。なのはは彼女が被弾しないよう、光弾を連射して傀儡兵を牽制しつつ、隙を作ります。

 無防備な背中側からバルディッシュで斬りつけるフェイトは、すぐさま移動し、相手の攻撃を受けぬよう縦横無尽に飛び回りながら、好機を窺います。周囲を飛びまわるフェイトを煩わしく思ったか、傀儡兵は上に注意を向けます。が、なのはがお留守の足元にバカスカ連射を叩き込むと、姿勢を崩しました。

 

 転げそうになるも、なんとか踏ん張って耐えます。

 しかし、その間に、二人は射撃体勢に入っておりました。

 

「「くたばれぇえええええええッ!!」」

 

 金色と桃色の閃光が、壁ごと敵を粉砕・玉砕・大喝采しました。

 

 その瞬間、何故かイ○ローのテーマ(もしくはド○フ)が流れた、ような気がします。

 当然ですが、星ごと砕かれたりいきなり惑星が爆発したりはしません。

 

 凄まじい爆発が生じ、傀儡兵のほとんどが駆逐されました。

 

 フェイトは暫くの間、その場で佇んでいましたが、最早敵の気配はないと悟ると、どこかへと去って行きました。アルフも慌ててついていきます。

 

「行くといい。君の為すべきことを為すがいいさ」

 

 なのははそれを、黙って見送りました。

 

 

 

 不敵な笑みを浮かべながら。

 

 

 

 同時刻、プレシアは元いた場所で悠然と立っていました。

 

 最早誰も止める術などない、そう思っているからでしょうか。彼女の表情からは余裕が窺えます。言い方を変えるとテンション高いです。もうすぐモテ期、否、目的が叶うからでしょうそうでしょう。

 

 と、ここで

 

『プレシア・テスタロッサ。次元震は私が食いとめています、最早庭園はアルハザードに到達することはできないまま崩壊するでしょう……抵抗は止めて諦めたらどうですか』

 

 リンディが魔法を使って食いとめているようでした。

 世界が崩壊するような事態をたった一人でどうやって食いとめとんねん――誰かが突っ込んだ気配がしますが誰も気に留めませんでした。

 

「フン、何を言ってるの。あなたのようなおちびさんには到底分からない崇高な目的なのよ……諦められるものですか!」

 

 ブチッ、と何かがひきちぎられる音が聞こえました。

 

『あんですってェエエエエエエエ!! 誰が好き好んでこんな体型しとると思ってんじゃおんどりゃああああああああああああああッ!!』

『艦長、落ち着いて下さい。いいじゃないですか永遠の若さって素敵だと思いますよ?』

『やかましい! ダンナと街中歩いてて何度職務質問されたと思ってんのよ! しかも管理局員に見られた日にはロリコン爺乙だとか通報しますただとか援助交際だとかふざけた噂が流れる始末……ねぇどんな気持ちだと思う!? 人目を気にしてたら街中を楽しく歩けないこの思いどうすればいいの!? ねぇ!!』

『あ、すいません。私常識人なので非常識な会話にはちょっと……』

『『『お前のどこが常識人だぁーっ!』』』

 

 プレシアは無視しました。

 

 しかし無茶をやらかしたせいで、庭園の崩壊は加速的に進行していきます。最早崩壊するのも時間の問題でしょう。

 

 その時。壁を突き抜けて青い光が飛び出しました。 

 

「よォコスプレババア。引導渡しに来てやったぜ」

「くっ……!」

 

 壁を粉砕し、現れたのはクロノでした。

 どうやら自力で危機を乗り越えた模様です。伊達に執務官を務めているわけではありませんね。

 

「へっ、無傷でここまで来るのに苦労したぜ」

 

 自信満々に言うクロノでしたが、頭に大きな剣が深々と突き刺さって血を流しています。

 これ突っ込むべきなのかしら……プレシアは驚異的なモノを見る眼を向けました。

 

「……あの、頭に何かが」

「違います」

「いや、でも何かが」

「違います」

「だって何かが刺さっ」

「だァアアもォオオオオオッ! 何も刺さってなんかいねーんだよ! 刺さってる本人が刺さってないって言ってんだから刺さってないの! 今せっかくカッコ良く登場したのに台無しじゃん! どうしてくれんだテメェーッ!!」

 

 逆ギレしてきました。

 親子でまったく同じリアクションをしてるのですから親の宿命からは逃れられないというのがよく分かります。プレシアもですが。

 

「邪魔しないで! 私は変えるのよ……やり直すのよ! こんなはずなじゃなかった世界を!」

「確かによォ、世の中こんなことじゃないことばっかで、色々辛ぇこともあるだろうよ。昔からそうなってんだ、俺らはそんな世界で生きてんだ、不幸になったってある程度はしょうがねぇんだよ。別に抗うのは悪いことじゃねぇ。逃げたって戦ったって誰も咎めねぇ……けどな、誰かに迷惑かけていい理由なんてのは、どこにもねぇんだよ」

 

 クロノが登場してから一番まともな台詞を吐きました。

 

 あまりの常識振りに、プレシアが「何言ってんのこいつ?」みたいな顔をしました。クロノはしょげました。

 

 そうこうしていると、上から二つ、影が降りてきました。フェイトとアルフが、ようやく到着したのでした。

 

「母さん……」

「フェイト……今更何の用?」

 

 娘に対しああ言った手前、どう対応するべきか戸惑うプレシア。

 

 娘を大事に思っているのは、彼女の口調からしても明らかです。フェイトもそれが分かっているからこそ、こうして戻って来たのです。

 

 彼女は躊躇いながらも、意志を強く持ち、大きく声を上げました。

 

「ボクは……貴女になんと言われようと、あなたの娘だ! だから……あなたの過ちは、ボクの手で正す!」

「母に刃向うというの……!? フェイト、言う様になったじゃないの!」

「あなたの娘だからさ……! このボクが、全力で、修正してやるぅううううううっ!!」

「よくぞ言ったわフェイトォオオオオオオオオオッ!!」

「行くぞォオオオ母さんんんんんんんんんんんっ!!」

 

 まさに魔王へ果敢に挑む勇者の図です。

 全力を出し、母親と向かい合うフェイト。娘の成長に内心喜びながらも、面に出さず、己の願いのためにも、そして、自分と向き合おうとする娘の全力に応えんとするプレシア。

 両者は出せる力の全てをとして、ぶつかろうとしました。

 

 が、突然地面に風穴が空きました。

 床が脆くなって崩れたようです。

 

「「あれぇぇえええぇええええええええええええええッ!!??」」

 

 二人仲良く虚数空間へ真っ逆さまです。

 

 いけない、このままでは空気がアレなまま全てが終わってしまう……そう危惧したかどうかは分かりませんが、落ちたらタダでは済まないのは理解しているクロノとアルフは急いで駆け寄りましたが、落下していく二人をただ眺めるしかできません。

 

「フェ、フェイトォオォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 悲しみに満ちたアルフの叫び声が木霊しました。

 

 しかし、

 横から飛び出した光が、二人をかっさらいました。

 

「な、なんだいアレは……!?」

 

 やがて昇って来た光がアルフの前に降り立つと、次第に輝きを失っていきました。

 現れたのは、

 

「アリシア……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一足先に脱出を終えたなのはとユーノは、アースラ艦内でクロノ達の帰りを待っていました。本来乗組員らが医療班を待機させたり出迎えたりと仕事する手筈なのですが、帰還した際にリンディがエイミィら乗組員一同に取り押さえられてもがいていたので、取り込み中と思ったなのは達が出迎えようと待っているわけです。決して巻き込まれるのを拒否したわけではありません。

 

 やがて転送されてきたクロノとアルフ、そしてフェイトとプレシアの姿に、ユーノは安堵の息をつきました。

 

「? あれ、もう一人はどこに?」

「医療室に直接送っておいたんだよ。いやぁ、いきなり二人助けた後ぶっ倒れるもんだから焦ったぜ」

 

 やれやれと頭を掻くクロノ。その頭にまだ剣がぶっ刺さってますが誰も気に留めません。逆にクロノが何か言って欲しげな目でチラ見してますが誰も目線を合わしませんでした。

 

 どうやらアリシアが助けに入ったようですが、一体どうやったのでしょうか。

 少しばかり気になったなのはですが、ともあれ、結局全員が無事であることに少しばかり安心したように表情を柔らげますが、プレシアとフェイトが居心地悪そうにしているのに気づきました。どうやらお馬鹿さん発言で顔を合しづらくなったようです。

 肩を竦め、プレシアの元へずかずか歩み寄りました。

 

「どうした? 娘に謝罪の言葉一つ出ないのかね?」

「でも……今更どうすれば」

「あるではないか。例えば良くできましたと猿のように撫でるとか、力いっぱいコアラのように抱き締めるとか、鼻フックデストロイヤーをかますとか、ひたすら阿呆のように褒めちぎるとか、あるね?」

「なんかおかしいの混ざってなかったか今?」

 

 クロノの突っ込みは健在でした。

 なのはは当たり前のように無視しました。

 

 プレシアは暫く逡巡していましたが、フェイトの何かを待つ目に促され、やがて口を開きました。

 

「ごめんなさい、フェイト……」

「――お母さんっ!」

 

 飛び込んでくるフェイトを、プレシアはしっかりと抱きとめました。

 

 

 

(良かった……。あ、なんかなのはが静かだ……また変なことでも考えてんじゃ?)

 

 なのはが余計なことを言わないか心配するユーノですが、彼は驚いたように固まりました。傍らでプレシアとフェイトの抱擁を見つめるなのはの目が、どこか遠い世界を見ているようなものだったからです。

 

 彼女は。

 誰にも聞こえないくらい、小さな声で、ぽつりとつぶやきました。

 

「母、か……」

 

 私にも、そんな人がいるのだろうか。

 自分を産んでくれた、本当の家族が。

 

 なのはは静かに、胸の苦しみを抑えました。

 

 

 

 

 

 

 こうして、後にプレシア事件と呼ばれるジュエルシードを巡る争乱は、幕を閉じたのでした。

 

 

 

 

 

 


 
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