~???~
「?……!?どこ、ここ!?」
眩い光に目を閉じたエステルが目を開けると、自分1人だけ浮かんでいる謎の空間にいる事に気付き、驚いて周りを見回した。するとエステルの目の前に何かの風景が写った。
「?剣士に女の人……?」
目の前に写っている菫色の髪を持つ青年と夕焼けのような色の髪を持つ女性が笑い合っているのを見たエステルは首を傾げた。
「なんか凄く仲がよさそうだけど……2人は恋人か何かかな??」
その様子を見ていたエステルは2人の関係を推測した。そして風景は変わり、エステルに色々なものを見せた。その中には戦いがあり、剣士をサポートするように戦う女性、そして女性が使い魔としてある人物を召喚した。その人物とは――
「嘘……!?パズモ!?」
女性が召喚した人物――パズモを見たエステルは驚いた。
「じゃあ、あの女の人がパズモにとって一番最初の主――サティアさんなんだ………」
かつてパズモから主の事を聞き、その中でもパズモにとって最初の主の名前を覚えていたエステルは女性を見て驚いた表情をしていた。そして風景は次々と変わり、エステルに色々な場面を見せた。突然青年に別れを告げるかのように去って行く女性……去って行った女性を捕らえようと女性を追う青年の仲間や青年にとって剣の師でもある男性……そして女性を追う為に青年は
仲間達を、自分の師とも言われる男性を殺し、捕えられようとした女性を助け、共に逃げた。だが、青年は追手から女性を守るために女性を先に逃がし、青年は1人残った。1人残った青年は捕らえられそして――
「!?な、な、何よこれ!!」
エステルは青年が狂気の目を宿した神官の女性に命令され、一糸纏わない姿で青年を犯す女性達……そして神官の女性もその中に加わり、青年は苦しんだ後、狂気の目を宿し、女性達を逆に犯し始めた。
「ちょっと!!何やっているのよ!!あんたにはサティアさんがいるじゃない!!」
その様子を見ていたエステルは怒鳴ったが意味はなく、女性達を犯し終えた青年は狂気を宿した神官達から禍々しい気を纏う剣を受け取った。
「な、何なのよ……これは……さっきの事と言い、みんな狂っている……」
エステルは信じられない表情で見ていた。そして禍々しい剣を持つ青年は静寂に包まれた斜宮に入り、進んで階段を登っていった。階段を登りきるとそこには蒼い星空の中に1人の女性がいた。その女性は――
「サティアさん!!」
青年が逃がしたはずの女性がいた事にエステルは驚いた。そして青年は狂気が宿った眼で女性を睨んで叫んだ後、剣を抜こうとした。
「!!逃げて!!」
その様子を見たエステルは叫んだが、女性は逃げずに剣を抜くのに何故か苦しんでいる青年を見た後、もがき苦しむ青年に愛おしく両手を差し出した後、決意の表情になり異空間より神々しい剣を出した!その剣の名は………!
「――星芒より出でよ、”天秤の十字架(リブラクルース)”!!」
「天秤の十字架(リブラクルース)………あれが……」
景色から聞こえて来た言葉をエステルは放心した状態で呟いていた。そして女性は青年と戦い始めた。青年は何かに操られたかのように女性に憎悪を向けて、攻撃しその様子を女性は障壁を貼りながらも悲痛な表情をし、そしてそれがきっかけになり青年の剣が女性を貫いた!
「そ、そんな………………」
そして女性を貫いた青年は女性を貫いたまま、業火に包まれた!そして景色は謎の空間の中に変わり、その空間の中には正気に戻った青年と青年の剣に貫かれたはずの女性が一糸纏わない姿でいた。そして2人はお互い見つめ合い、互いの小指を絡ませたお互いに言った。
「「2人で生きていこう。」」
そして2人は消え、2人が消えた後には一本の神々しい剣が現れた場面で景色はなくなった。
「……………………………」
景色が消えた後、エステルは悲痛そうな表情で黙っていた。そしてそんなエステルの目の前に最後の場面で現れた神々しい剣が現れた。
「………………どうして、あたしの前に現れたの?あたしに何をしてほしいの?」
自分の目の前に現れた剣をエステルは思わず静かに問いかけた。しかし剣からは何も答えが帰って来なかった。
「……あたしにはあの2人に何をすればいいか、わからない。……でも、あの2人はいつかまた会える。だって、2人は”2人で生きていこう”って”約束”したんでしょ?」
エステルは笑顔を剣に向けて言った。
(そう……”俺”はサティアと出会い、”いつかまた会い、共に生きよう”と”約束”した……)
「へっ!?ま、まさかあなたが今の声!?」
突如頭の中に響いて来た男性の声の念話に驚いたエステルは目の前の剣を見た。
(でも、未だその”約束”は果たされない………)
そして剣から無念そうな声が聞こえて来た。
「……そっか。じゃあ、ここは遊撃士であるあたしの出番ね!」
(…………?)
念話を聞き答えたエステルの言葉に剣は黙っていた。
「2人は未だ再会できなくて困っているのよね?困った人を助けるのが遊撃士の本分なんだから、遊撃士としていつかあたしが2人を出会わせ、二度とあんな悲劇は起こさせないと”約束”……いえ、”誓う”わ!だから、あなたを使わせて!」
(君は何を言っているのか、わかっているのか……?」
エステルの答えを聞いた剣はどこか信じられない様子でエステルに問いかけた。
「モチのロンよ!2人には”絆”があるんだから、絶対にいつか会えるわ!あたしだって離れてしまったヨシュアを捜しているけど、絶対に見つけて連れ戻して見せるわ!だからあなたも諦めないで!」
剣にエステルは太陽のような笑顔で微笑んで言った。
(フフ……何でだろうな?……何の根拠もないのに君なら”俺”とサティアを再び出会わせてくれそうな気がする………ありがとう………いつか”俺”が君と出会う時が来る事を楽しみにしている………存分に”俺”の力を使ってくれ………)
「うん!」
そしてエステルが剣の柄を掴んで剣を上へと掲げたその時、剣は眩い光を放ち、眩い光にエステルは目を閉じた。
~メンフィル帝国・王都ミルス・マルーダ城内・謁見の間~
「……ステル!」
「……マ!どう……の!?」
「う………ん……?あれ??」
自分を呼ぶ声にエステルは気が付いた。
「ようやく気付いたか……急に反応がしなくて心配したぞ……」
気が付いたエステルを見たリフィアは安堵の溜息を吐いた。
「リフィア……あたし、一体どうしちゃったの?」
「どうしたもこうしたも……それはこちらが聞きたいぞ。その剣に触れて急に放心したようだが……何があったのだ?」
「へ……?な、何でもないわよ!なんかこの剣から凄く神々しい雰囲気が感じられたから、あたしなんかが本当に使ってもいいのかな~って思っただけよ!」
首を傾げているリフィアにエステルは笑って誤魔化した。
「フム、そうか。それより、その剣の名はどうする?ミントが持つ剣のように神気を纏っているから、恐らく名のある神剣なんだろうが………生憎、元の持ち主はわからんと言ってたしな。」
「ママの剣もミントみたいにウィルさんにまた付けてもらう?」
(うっ……もう勘弁してくれよ………)
リフィアはエステルに尋ね、ミントが尋ねた言葉を聞いたウィルは溜息を吐いた。
「……名前なら決まっているわ。」
「ほう?」
(……どんな名前にしたの、エステル。)
エステルの言葉を聞いたリフィアは驚いた表情をし、パズモは尋ねた。
「――”誓いの神剣”……またの名を”リブラクルース”。これが今日から使うあたしの剣の名前よ!」
「”誓いの神剣(リブラクルース)”……素敵な名前だね、ママ!」
「うむ。よい名だ。」
エステルの説明を聞いたミントは笑顔をエステルに向け、リフィアは頷いた。
(…………どうしてその名にしたの、エステル…………?)
そしてシルヴァン達の前から下がったエステルにエステルの中に戻ったパズモが念話を送った。
(パズモ。サティアさんって凄く素敵な人ね。操られていても、その人の事を信じ続けたんだから。悲しい最後だったけど……いつか2人はまた出会えて、”生きていく”という”約束”を果たす日が早く来て欲しいわね。)
(!?な、なんでエステルがサティアと……セリカの……”約束”を…………!)
エステルに微笑まれたパズモは信じられない表情をして驚いた。
(あのね、実は………)
驚いているパズモにエステルは念話で剣に触れた時、サティアとセリカの悲しい運命を見た事、そして剣が未だ2人の”約束”が果たされていない事を嘆いていた事を伝えた。
(そう……やっぱり、その剣にはセリカの魔力が……”思い”が詰まっているのね………それで、エステル。貴女はその剣に何を”誓った”の?……名前からして、その剣に何かを”誓った”のよね……)
(……うん。いつか生まれ変わった2人をあたしが見つけて、2人を再会させて”約束”を果たさせる事を”誓った”の!)
(…………エステル。貴女の”誓い”がどれほど困難かわかっていて、”誓った”の………?)
エステルの話を聞いたパズモは信じられない思いで尋ねた。
(モチのロンよ!ヨシュアを連れ戻し、”結社”をブッ飛ばしたらヨシュアと一緒に何年、何十年かかっても捜すし、あたしが死んだらあたしの子供達に託すわ!)
(そう…………ありがとう、エステル。貴女と契約してよかったと改めて思ったわ…………………サティア。貴女の”約束”を果たさせるエステルの”誓い”の為にも貴女の剣と同じ名前にしてもいいわよね………?)
エステルの答えを聞いたパズモはエステルの腰に鞘ごと装着してある神剣――”誓いの神剣(リブラクルース)”を見つめ続け、遥か昔に別離した、かつての主の事を思っていた。
今ここに、遥か昔に失われた正義の大女神が持つ神剣と同じ名を冠する神剣が誕生した…………!
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第249話