No.464328

外史を行く喧嘩師 十三幕

荒紅さん

今回はシ水関の話ですが、

武将同士の一騎打ちがメインです。

2012-08-03 17:14:30 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2987   閲覧ユーザー数:2590

<狼鬼サイド>

 

「孫に曹に劉、公孫、袁などなど。こりゃ辛い戦いになりそうだ。」

 

「そうですな。孫策に曹操、公孫賛の軍はいずれも精兵と呼ばれて、

 袁家は質は無くとも数は多いですぞ。

 お前はどうするですか?」

 

と、少し心配そうな顔でねねが聞いてくる。

 

「軍師がそんな顔してんじゃねぇよ。いつでも勝てると信じて冷静で、且つ平静でいろ。

 お前がそんな顔してると、兵も不安になるだろ。」

 

「分かったです。」

 

そして、いつも通りの軍師の顔になるねね。

 

「まぁ俺としては、籠る前に一回討って出るつもりだぜ。」

 

「なんですとー!この数の差が見えないですか!?」

 

俺達の居るシ水関には約七万の兵がいる。

元々はシ水に五万、虎牢関に三万、洛陽に二万の計十万だったが、

馬騰軍の加入があり、馬騰軍をそのまま二万全部をシ水に配置した。

 

「ねね。ここでの役目はなんだ?」

 

「・・・各諸侯の領地でお前の斥候が放つ真実が流れる時間、

 及び、虎牢関での作業終了までの時間稼ぎです。」

 

まぁこれ位は当たり前だな。

 

「んじゃもしもお前が連合側なら俺達がどう動くと思う?」

 

「勿論籠城だと考えるです。」

 

「そこで今まで情報にも無かった一騎当千の武を持つ恋に、

 連合に加入すると思われていた馬騰が討って出てきたらどうする?」

 

・・・俺は逃げるね。恋の飛翠が追っかけてきたら一目散に逃げるね。

勝てないもん。

 

「成程。ですから今まで恋殿は小規模な賊の討伐にしか出さなかったのですか・・・」

 

「そうじゃな。連合には小事情で連合に参加出来ないと伝えたしの。

 まさか自分の敵になって現れるとは夢にも思わんじゃろ。」

 

そういう事。だからまだ馬の旗は上げてないんだよな。

 

「分かったです。今回だけは褒めてやるです!」

 

「ははっ、ありがとな。後、多分先陣は劉備だろうからな。

 あそこは一番兵数が少ない。だから捨て駒にされるだろうし。

 んじゃ、開幕直後にドデカイ一発、カマしてやるか!」

 

そうして、戦いの日が来た。

<劉備サイド>

 

「朱里、話が違うぞ。シ水関に上がっている旗は狼、それに呂、陳。

 華雄はどこにも居ないぞ。」

 

「困りました。狼というのは神崎さんの事だとしても、呂、陳、の旗は誰だか・・・

 雛里ちゃん分かる?」

 

「たしか、小規模な賊討伐に出ていたって報告は来ていたけど、

 黄巾党本隊の討伐の時も来てなかったし、情報がなさすぎるよ。」

 

「うむ。相手の正体が分からんのは不気味だな。

 こちらも心して掛からねば。」

 

「そうですね。相手の事が分からないなら、どんな事になっても良い様に準備はしておかないと。」

 

「それよりも、敵が出てこなかったらどうするんだ。私の騎馬隊は攻城に

 向いていないぞ。」

 

「白蓮姉ちゃんの言うとおりなのだ。」

 

「ねぇねぇ。あれって出陣するんじゃないのかな?」

 

「・・・本当ですね。関の前に布陣してるということは・・・」

 

「けどおかしいよ雛里ちゃん。神崎さんがいるのに籠城じゃ無くて討って出るなんて。

 何かあるとしか・・・」

 

「大丈夫だ朱里。悪漢に与する者、所詮はその程度の人間だったということだ。」

 

「・・・ですが、一応注意だけはしておきましょう。何をしてくるか分かりませんから。」

 

「「「「応。」」」」

 

「皆、無茶だけはしないでね。」

 

「勿論です桃香様。」

 

「お前は大将なんだ。心配そうな顔してないで本陣でドッシリとして待っていろ。」

 

「白蓮ちゃん・・・」

 

「ふっ、伯桂殿も良い事を言う。」

 

「では皆さん。作戦通りに。」

 

<狼鬼サイド>

 

 

「隊長!我が隊の展開完了しました!」

 

走ってきながら言う小恋。いつも以上にやる気に満ち溢れている。

 

「儂の部隊も完了じゃ。公孫賛の部隊には翠と蒲公英を当てる。

 真琴の部隊は遊撃隊として中曲に配置したぞ。」

 

「危うくなった、部隊の援護する形で戦場を駆け回っているので、ご安心を。」

 

真琴さんは本当にサポートが上手いから、これなら安心だ。

 

「翠、蒲公英。相手は騎馬で有名だけど頑張れよ。」

 

白馬義従だっけか?かなり有名になった気がすんなよな。

 

「任しとけよ狼鬼。騎馬でアタシ達が負けるわけないだろ。」

 

「狼鬼お兄様も頑張ってね。」

 

まぁそうだな。何つっても涼州の騎馬隊だし、

練度は一緒でも、率いる者と馬の力が違うもんな。

 

「恋、準備はいいか?今回は恋の部隊が中央だから一気に蹴散らしてくれ。頑張れよ。」

 

「狼鬼と月の敵、殺す。」

 

敵にいたら恐怖以外の何者でもないが、味方にいると、絶対に勝てる気がしてくるな。

 

「ねね。砦の防衛、撤退の合図頼んだぜ。」

 

「誰に言ってるですか。ねねに任せておくです!」

 

「そういや、飛翠はどこにつく気なんだ。」

 

「勿論旦那様と共に行くぞ。妻の仕事じゃからな。」

 

いや、結婚してねぇし、つか俺は女を戦場には連れてこねぇ。

 

「ま、布陣としては問題無いからいいか。」

 

そんな感じで軍の展開は完了し、突撃の合図を待つばかりとなった。

すると、先陣の劉備軍の将、関羽が前に出てきた。

 

「聞け、皆の者。相手は我々よりも強大だ!だが、今まで我々はそんな戦場を常に

 くぐり抜けて来た!

 相手は所詮欲に狂った暴君。自らを支えているのが、自らの虐げている民というのを

 分かっていない愚か者だ!

 しかし、我々は常に義の為に戦い続けて来た。そして勝ってきた!

 今日ここでも我らの義の為に勝利を飾ろうではないか!!」

 

「「「「「おおおおおーー!!」」」」」」

 

なかなかにいい激だな。

だが、ウチの軍のやる気も上げてくれるとは感謝感謝だな。

 

後ろを振り向くと皆が怒りをむき出しにしていた。

 

「・・・テメェ等、笑え!」

 

「「「「「「はっ?」」」」」」

 

俺の言葉を聞いた途端、怒りが顔から消えた。

 

「事の真相を知らずに、偽りの大義掲げて正義の味方気取りの可哀想なあいつ等を笑ってやれ!」

 

俺がそう言うと、皆が一同に笑い始めた。

 

「「「「「「はっはっはっはっ!!」」」」」」

 

そして、その声は連合の方まで届き

自分達の大義を馬鹿にされて劉備軍の兵は怒りを現わにしている。

 

「いいかっ!あいつ等を見てみろ。笑う前のテメェ等はあんな顔していたんだよ!

 怒りに身を任せて戦おうとしてた。

 だがっ!考えてみろ!俺達の主が、あんな顔をした事があるか!

 俺は見たことが無いね。月は・・・董卓は、俺達に笑顔をくれる優しい奴だ!」

 

俺の言葉を聞き、そうだそうだと声が上がる。

 

「テメェ等は今、あいつ等の様に怒りに身を任せようとしていた。

 月を馬鹿にされて怒る気持ちは分かる。

 だがな、俺達の主はそんな事望んでねぇ。

 テメェ等は誰かを傷つける為に戦ってんのか?

 ちげぇだろ。誰かを、月を、テメェの大切なモン守る為に戦ってんだろうが!

 なら、怒りなんかに負けんじゃねぇよ!」

 

そこまで言うと、全員俺の言いたい事が分かったようで、少し表情が和らいだ。

 

「俺達は俺達の守るモンの為に戦う。そこに怒りなんて無粋なもん使うんじゃねぇ!」

 

「「「「「「応っ!」」」」」

 

何か色々話して伝えたい事があやふやになって来たな。

 

「テメェ等。これだけは言っておく・・・死ぬな!

 テメェ等が誰かの為に戦う様に、テメェ等の大事な奴は、不安と今も戦ってんだ!

 そいつ等に生きて帰って笑ってやれ!安心させてやれ!

 ただいまって言ってやれ!

 いいかっ!!」

 

「「「「「「応っ!」」」」」

 

「行くぞっ!俺達の守る力、連合のクソ野郎共に見せてやれ!」

 

「「「「「「おおおおおおおーーーーー!!!」」」」」」」」

 

これで大丈夫だろう。怒りは人を狂わせる。

こんな馬鹿みてぇな戦で、死兵になんてなられても困るしな・・・

 

「よっしゃっ!大喧嘩、楽しむぜ!全軍、突撃!」

 

「「「「「「おおおおおおおーーーーー!!!」」」」」」」

 

「行く。」

 

「「「応!」」」

 

まずは中央の恋の部隊が敵軍と接敵する。

その瞬間、何人もの兵が吹っ飛んでった。

うん、安心安心。

 

「おっしゃ!馬超隊、敵の左翼に食らいつくぞ!付いてこい!」

 

「蒲公英達も続くよ!」

 

「「「おおーーー!!」」」

 

そのまま公孫賛の居る左翼に突撃する翠。

 

「んじゃ、俺らも行くか!指揮は任せるぜ、小恋!」

 

「了解です!」

 

俺達も一気に部隊を進軍させ、敵にぶつかる。

そのまま劉備軍を食い破る。

 

「おら!俺の相手はいねぇのかよ!」

 

数刻後・・・

 

正直酷いイジメを見た気がする・・・

 

敵軍にぶつかる直前に馬の旗上げたら予想以上に敵さんも混乱してくれて、

劉備軍の将三人は恋が抑えてて、俺と飛翠は敵兵ボコっボコに出来たし。

翠と公孫賛も一騎打ちしたみてぇだけど、十合位打ち合って翠が勝った。

その間の指揮は全部蒲公英がやっていて問題ないし。

 

そのまま劉備軍突っ切って袁紹の軍まで行ったんだが、

俺達が来ると思ってなかったのか、隊列すら組んでなくこれまたフルボッコとなった。

そして、他の諸侯も救援に入って来ようとした時、砦から銅羅の音が聞こえた。

 

 

ジャアーン ジャアーン ジャアーン

 

「ナイスタイミングだねね。全軍引くぞ!俺と飛翠で時間を稼ぐ。

 その間に撤退だ!」

 

そう言って俺は声を上げる。

 

「誰でもいいから俺と勝負しやがれ!こっちは兵の相手ばっかで退屈なんだよ!」

 

「この儂も相手になってやろう。冥土に行きたい者からかかってこんかい!」

 

馬騰っつう名はこの世界でも有名みたいだな。

皆顔青くして出てこなくなった。こっちとしては撤退が楽になっていいんだが。

 

「あたいが相手だ!」

 

「私も行きます!」

 

そう言って出てきたのは短髪の少女二人だった。

片方は大剣でもう片方はハンマー?みたいなのを持った武将だ。

 

「ほぉ。儂の前に立つとはいい度胸じゃが。」

 

「もうちっと相手の力量測れるようになってから来いよ。テメェ等じゃ役不足だ。」

 

「何だと!くらえー!斬山刀斬山斬!!」

 

そう言って大剣の方が大剣を袈裟に切る。

速度も中々で、威力も申し分無いが・・・

 

「こんな物、旦那様に戦わせるまでもないわ!」

 

飛翠が槍で一気に大剣を弾き飛ばす。

 

「うわっ!」

 

「文ちゃん!はあぁぁぁ!!」

 

オカッパ頭の子もハンマーを振りかぶって突撃してくるが。

 

「微温いわ!」

 

これも飛翠の一閃にて弾かれる。

イジメじゃないぜ、教育的制裁だから。

 

「っつー。こんなに強い奴が居るなんて聞いて無いぜ、斗詩~」

 

「私もだよ文ちゃん。まさか西涼の馬騰さんが董卓さんについてるなんて。」

「飛翠、そろそろ退くぞ!」

 

「承知したぞ。旦那さm「待てぃ!!」なんじゃ、新手か?」

 

そう言って現れたのは、何時ぞやのアホ毛とクールなお姉さん事、

夏侯惇、夏侯淵。そして、

 

「凪・・・」

 

「神崎に馬騰だな。華琳様がお前達に会いたがっている。一緒に来てもらうぞ。」

 

夏侯淵がそう言うが。

 

「会いたいならそっちがこっちに来いよ。俺達には会う理由が無いんだからよ。」

 

「なら力ずくで連れてくまで!」

 

夏侯惇、お前戦いたいだけじゃねぇのか?

 

「飛翠。そっちの二人の相手は頼んだぜ。俺はこっちだ。」

 

「承知した。どれ、けつの青い小娘共。儂が相手になってやろう。」

 

「夏侯元譲、参るっ!」

 

夏侯惇が大剣を抜き、切り裂く。

それを容易く受ける飛翠。

 

「なんじゃ、お主の力はそんな物か。ならばこちらからも行くぞ。」

 

足を蹴り上げて砂を舞い散らせる。

夏侯惇はそれをモロに被る。

そこに出来た隙は、夏侯惇を討ち取るには十分過ぎた。

夏侯惇の胸に目掛けて槍の先が動く。

 

が・・・

 

「ふんっ!」

 

飛んできた三本の矢を弾く飛翠。

夏侯淵の放った矢は、頭、心臓、腹と、人の急所を的確に狙っていた。

 

「姉者、大丈夫か!?」

 

「くっ!目に砂が!おのれ卑怯なっ!」

 

そう言って怒りを現わにする夏侯惇だが、飛翠は動じることなく。

 

「ふんっ!じゃからけつの青い小娘なのじゃ。卑怯汚いは敗者の戯言。

 戦に卑怯も糞も無い。ほんの少しの魂と、勝つ為の知恵をもってして戦に挑む。

 己の守るべき者を守らずして己の誇を守っては本末転倒じゃろう。

 儂のちっぽけな武人の誇を、兵や民の命に掛けるまでもないわ!

 そんなに儂が卑劣じゃと言うなら、儂に勝って言うんじゃな。」

 

なんか飛翠が小悪党っぽくなってるんだが、

まぁその考えは大いに賛同するが・・・

 

「見損なったぞ馬騰!貴様はその程度の人間だったのか!」

 

「儂に言わせれば、事の真実を知りながら己の利の為に偽りの大義を掲げる 

 曹操を見損なったわ。のぅ夏侯淵?」

 

「・・・」

 

曹操程の人間がこの戦の根本の部分に気づいて無いって事はないだろうな。

 

「黙れ!華琳様を侮辱したな、貴様、許さん!」

 

「じゃから、許せんのなら掛かってこい!」

 

そうして、三人はまた刃を交える。

さてと、

 

「こっちも始めるか、凪。」

 

「師匠・・・何故貴方が・・・」

 

「そっから先は言うな凪。ここは戦場、真実がどうであれ俺達は敵だ。」

 

本当は俺も戦いたくはないが、そうも言ってられねぇしな。

 

「・・・分かりました。では・・・行きます!」

 

「来い凪!」

 

凪の拳の連打が俺を襲う。

右のストレートを躱すと、腕を引く反動を使って左足からのしなる様な蹴り。

右腕でそれを受けると、ズシリと来た。

一瞬顔が歪んだのを凪は見逃さず、そのまま足を戻し回転して左の足の裏で側頭部を狙ってくる。

それを紙一重で躱すと、俺の頭の上で足を止め、そのまま踵落としを繰り出す。

 

バックステップで避けると、一気に間合いを詰めて鳩尾に左フックを打ってくる。

右手でそれを掴むと今度は右手でストレート。それも左手で掴む。

すると凪は自分の拳ごと、俺の両腕を弾き、俺は両腕を広げた様な無防備な状態になった。

 

「はあぁぁぁぁ!!猛虎襲撃!!」

 

零距離で高速の蹴りを放ち、そこにさらに気弾を放つ。

俺は躱す事も出来ず、もろに気弾を喰らう。

 

バコンッッッ!!!

 

辺に土煙が舞う。

 

<凪サイド>

 

「はぁはぁはぁ。」

 

「凪!よくやった!」

 

春蘭様が賞賛の声を上げている。

しかし、師匠があんなやられるだけな筈が・・・

 

土煙が晴れるとそこには、服だけがボロボロになった師匠が。

 

「・・・凪。テメェ何手抜いてやがんだ・・・」

 

「なっ!私は本気でっ!」

 

確かに、師匠と戦う事に抵抗が無かったと言えば嘘になる。

師匠は始めて好意を持った男性。一緒に過ごした時は少なかったが、

師匠のあの笑顔に、私は励まされた。出来れば戦場では会いたくは無かった。

けど、私は一軍の将。敵は倒す。それが華琳様の命令ならば。

 

「本気じゃねぇよ。拳に何も乗ってなかった。ただ振り回した手だよ。

 俺は言ったはずだぞ、ここは戦場。俺は敵だと・・・」

 

そんな事は分かってます。師匠は敵。だから私は本気で師匠を・・・

師匠を、殺そうと・・・していたのか、私は・・・

 

「分かりました、何て言ってたが全然分かってねぇよ。

 お前の中で俺がどんな存在かは分からねぇが、お前は迷ってんだよ。本当にお前が本気なら、

 俺は今ここに立っていない。あの気弾食らった時点で死んでるよ。」

 

華琳様の理想の為に粉骨砕身の意で今までどんな事でもしてきた。

賊討伐、街の警邏、民に乱暴を働いた武官の処断。

今まで迷った事なんて、一度も・・・

 

「凪!何をしている!華琳様の命令でこいつ等を華琳様の前に連れて行くのだろう!」

 

・・・迷ってる暇なんて無い。私は曹操軍の将。

華琳様の命とあらば、叶えるのが私の使命。

 

「師匠、行きます!」

 

「来いよ。心に迷いのある奴じゃ俺には勝てねぇよ。」

 

「はああぁぁぁ!」

 

力の限りを尽くした、渾身の拳。

 

パシンッッッ!!

 

だが、師匠は簡単に私の拳を掴む。

 

「こんなもんかよ・・・」

 

そう言った途端。

師匠の腕がぶれた。

 

「くはっっ!・・・・・」

 

私は意識を手放した。

<狼鬼サイド>

 

凪の鳩尾に本気の一発を見舞ってやった。

ったく。こんなんじゃまだまだ一人前っては言えねぇな。

 

「けど、迷うくらい俺の事を慕ってくれるなんて、ありがとな、凪。」

 

と、誰にも聞こえない声で言った後。

 

「飛翠、そろそろ退くぞ!流石に長居し過ぎた。」

 

俺がそう言うと翡翠は夏侯惇の大剣を受けながら。

 

「しかし旦那様。この包囲どうやって抜けるのじゃ?」

 

「問題無い。もう直ぐ迎えが来る。」

 

剣戟の怒号の中に聞こえてくる二頭の馬が駆ける音。

 

「母様!狼鬼!大丈夫か!?」

 

「蒲公英達の後ろに乗って!」

 

「翠に蒲公英!なんじゃ、旦那様は気づいておったのか。

 一人慌ててた儂が馬鹿みたいじゃのぅ。」

 

そう言って、槍の一閃にて夏侯惇を吹っ飛ばす。

 

「姉者っ!」

 

夏侯淵も姉の心配をし、矢を射って来ない。

 

俺は凪を肩に担ぎ、翠の馬に乗る。

 

「翠!今すぐ儂と代われ!」

 

「ちょっとおば様!時間が無いから早く乗ってよ!」

 

何か騒いでるけどまぁいいか。

 

「頼むぜ、翠。」

 

「任しとけ!行くぞ蒲公英!」

 

そうして、俺達は関に戻る事が出来た。

 

「なぁ、そいつは誰なんだ?」

 

「・・・俺の弟子だよ。曹操軍の奴だがな。簡単に言えば捕虜だ。」

 

「弟子なのに捕まえるのか?」

 

「戦に弟子も何もねぇだろ。」

 

「それはそうだけど。」

 

そんな会話を翠としながら、シ水関に戻って行った。

 

<恋サイド>

 

「・・・お前達弱い。」

 

「っく!まさか、董卓軍にこんな将がいようとは。」

 

「鈴々より滅茶苦茶強いのだ。」

 

「流石に、ここまで強いと自信をなくすな。」

 

関羽、張飛、趙雲。三人とも弱い。

恋に勝てない。

 

「・・・行く。」

 

方天画戟を振りかぶる。関羽が受け止めるけど、無駄。

 

「ぐあっ!」

 

「愛紗っ!」

 

・・・弾かれた。

 

「趙子龍、参る!はいはいはいはいーー!!」

 

・・・速い、けど。

 

「霞程じゃ無い。」

 

全部受けきる。

 

「お前達、邪魔。・・・殺す。」

 

「っく。なんていう殺気。今までは本気ではなかったというのか!」

 

「行く・・・」

 

ジャアーン ジャアーン ジャアーン

 

「・・・ねねが帰って来いって。・・・退く。」

 

「「「応っ!」」」

 

「お前達、運が良い。」

 

狼鬼に撫で撫でしてもらう//

早く帰る。

 

「助かったの、か・・・」

 

「そうみたいなのだ・・・」

 

「だが・・・受けた損害は安くはない・・・」

 

<曹操サイド>

 

「すみません華琳様。連れてくる事が叶わない所か、凪まで、連れて行かれてしまって・・・」

 

「春蘭、顔を上げなさい。勝敗じゃ兵家の常。常勝などありえないわ。

 それに、相手は音に聞こえる馬寿成。生きて帰ってくれただけで十分だわ。

 それで、凪の方は今すぐ救いに行きたい所だけど、今動くのは得策ではないわ。

 今日の結果を見れば分かるように。」

 

「はい。討って出るなんて、どんな馬鹿が考えたかと思いましたが。

 呂布は、たった一人で関羽、張飛、趙雲を抑えたと聞きますし、馬騰軍は連合参加を諸事情

 で断っていました。それがいきなり敵軍に現れ混乱いている内に、

 あの突破力で敵陣を駆け抜ける。分かって見ればかなり巧い策です。」

 

「桂花がそこまで言うとわね。ふふっ、欲しいわね、あの呂布。」

 

「しかし華琳様。呂布を抑えるとなれば、私や姉者、季依や流流を失う可能性も

 あります。」

 

「・・・そうね。劉備は駄目でも部下は優秀だったわ。あの三人を抑えた呂布は欲しかったけど、

 今は諦めるしかなさそうね。」

 

「・・・今は、ですか。」

 

「そうよ。今は、よ」

<狼鬼サイド>

 

「なんとか帰ってこれたか。」

 

俺は今シ水関に居る。

凪は警備付きの部屋に置いてきた。暗の部隊の奴に見張らせてるから、何かあっても大丈夫。

 

「ねね。途中で孫策のとこが関攻撃してたけど大丈夫だったか?」

 

「真琴殿が遊撃隊として、孫策軍を振り回してたので、こっちはあまり仕事がなかったです。」

 

ならよかったが。

 

「・・・ただいま。」

 

「おかえり恋って、何故行き成り抱きつく?」

 

ただいまと言うやいなや、行き成り俺に抱きついてきた。

けどまぁ、この状況でする事は一つしかないんだけど。

 

「お疲れさん。」

 

そう言って頭を撫でてやる。

 

「ん~♪」

 

「さて、被害報告を。」

 

「七万いたうちの死者は約2000名。負傷者が約3000名です。」

 

まぁ、かなり被害は抑えられたか。

 

「テメェ等。今日はかなり暴れたが、明日からは籠城戦になる。頼りにしてるぜ。」

 

「「「「「応っ!」」」」」

 

こうして、シ水関での初戦は勝利となった。

 

あとがき

 

 

こんにちは荒紅です。

 

今回はシ水関での戦いをお送りしました。

 

恋サイド書きにく!とか思いながら頑張って書いてました。

 

ここで気まぐれアンケートを。

今回捕虜となった凪ちゃんですが、

この後の立ち位置を簡単にアンケートを取りたいと思います。

 

1、董卓軍の将にする。

 

2、このまま曹操軍の将として頑張る。

 

3、将じゃなくてメイドとか侍女にしちゃって董卓軍。

 

 

一番投票の多い√にしたいと思ってますので、コメントしていただけると幸いです。

 

それではご感想などコメしてもらえるとありがたいです。

んじゃ


 
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