調査を開始したエステル達はまず、カルバード大使館にジンの紹介で大使館内に入った。
~カルバード大使館内~
「ほう、これはこれは……」
「へ~、これがカルバード大使館なんだ。さすが立派で豪華な雰囲気ね。」
「それに、どことなく異国情緒のある内装ですね。」
大使館内を見回したオリビエは感心した声を出し、エステルやクロ―ゼはそれぞれの感想を言った。
「ま、東方からの移民を受け入れてきた国だからな。ちなみにエルザ大使の部屋は2階の奥にあるぞ。」
「うん、わかった。」
そしてエステル達はカルバード大使の部屋に向かった。
~エルザ大使の部屋~
「ここが大使の部屋だ。早速、話を聞いてみるか?」
カルバード大使の部屋の扉の前まで来たジンはエステル達に確認した。
「うん、お願い。」
「よし、それじゃあお前さんたちを紹介しよう。」
そしてジンは扉をノックした。
「……?どうぞ、入っていいわ。」
「……失礼しますぜ。」
入室の許可を聞いたジンはエステル達と共に部屋に入った。
「あら、ジンさんじゃない!先日帰国したばかりなのに、またリベールに来たのかしら?」
部屋に入って来た人物達の中からジンを見つけたカルバード大使――エルザ大使は驚いて尋ねた。
「いやぁ、ギルドの仕事でやり残したことがありましてね。またしばらくの間はリベールに滞在しようと思ってます。」
「フフ、さすがはA級遊撃士。何かと忙しいというわけね。ところで、そちらの方々は?」
ジンの話を聞いたエルザは感心した後、エステル達を見て尋ねた。
「えっと、初めまして。遊撃士協会に所属するエステル・ブライトといいます。こちらの2人は協力者のクローゼとオリビエです。」
「フッ、よろしく大使殿。」
「お初にお目にかかります。」
エステルは礼儀正しく自己紹介をし、オリビエとクロ―ゼも続いて会釈をした。
「よろしく。カルバード共和国大使のエルザ・コクランよ。どうやら面倒な話があって訪ねてきたみたいね?」
「ええ、実は……」
そしてエステル達はエルザに脅迫状の件を尋ねてみた。
「あの脅迫状の件か……。それじゃあ、貴方たちは王国軍の依頼で動いているの?」
「一応そういう事になります。ただ、遊撃士協会としても見過ごせる話じゃありません。それを踏まえて協力していただけませんか。」
エルザの質問に頷いたエステルは真剣な表情で尋ねた。
「……ま、いいでしょう。我々にも関係あることだしね。それで、何を聞きたいの?」
「えっと、まずは脅迫者に心当たりがないでしょうか?共和国に、条約締結に関する反対勢力が存在するかとか……」
「それは勿論いるわよ。例えば私なんてそうだしね。」
「ええっ?」
エルザの答えを聞いたエステルは目を丸くして驚いた。
「ちょいと大使さん……。あんまり若いモンをからかわないでくれませんかね?」
その様子を見たジンは呆れた後、注意をした。
「あら、事実は事実だもの。私のエレボニア嫌いは貴方も知っているでしょう?」
「そりゃまあ……」
「ふふ、勘違いしないで。すでに大統領が決定して議会も承認した案件だからね。個人的な感情は抜きにして話は進めさせてもらっているわ。」
「そ、そうですか……。それじゃあ他の反対している人たちは?」
エルザの説明を戸惑いながら頷いたエステルは次の質問をした。
「いるにはいるけど少数派ね。それらの勢力も本気で反対しているわけじゃないし。」
「本気で反対していない?」
エルザの話を聞いたエステルは首を傾げた。
「あのね、そもそも不戦条約って実効性のある条約ではないの。『国家間の対立を戦争によらず話し合いで平和的に解決しましょう』って謳っているだけなのよ。そういう意味では条約というより共同宣言ね。」
「その気になれば、いつでも破れる口約束に過ぎないということだね。」
「ふふ、そういうこと。まあ、確かにここ十数年、カルバードとエレボニアの関係は冷えきっていたから……。それにメンフィルとの関係はリベールほどじゃないし………。今回のような機会を通じて話し合いの場が設けられるのは意義のあることだとは思うけどね。」
オリビエの意見に頷いたエルザは話を続けた。
「う、うーん……。確かに脅迫状を出してまで阻止するほどの話じゃないか。」
「あの、エルザ大使。カルバードの関係者が脅迫犯ではないとするなら……誰が怪しいと思われますか?」
エルザの話を聞き考えているエステルと違い、クロ―ゼは真剣な表情で尋ねた。
「ふふ、そうね。個人的な先入観でいえばエレボニアの主戦派あたりが限りなく怪しいと思うけど……。新型エンジンの件もあるしその可能性も低そうなのよねぇ。」
「新型エンジンって……もしかして『アルセイユ』用の?」
「そう、それのサンプルがカルバードとエレボニア、メンフィルの三方に贈呈されることになっているの。不戦条約の調印式の場でね。」
エステルの疑問にエルザは頷いた。
「あ……!」
「フッ、さすがはアリシア女王。まんまとエレボニアとカルバード、さらにはメンフィルを手玉に取ったということだね。」
「ええ……。悔しいけど大したお方だわ。新型エンジンは、次世代の飛行船の要とも言える存在よ。それがサンプルとはいえ手に入るチャンスなんですもの。いくらエレボニアの主戦派にしたって水は差したくないでしょうね。メンフィルにしてもさらなる導力技術が手に入るチャンスでもあるから、エレボニアと同じく水を差したくないでしょうね。」
オリビエの意見に頷いたエルザは説明した。
「な、なるほど……」
「ふむ、ということは……。3国共に不戦条約を妨害する可能性はかなり低いということですかね。」
エルザの説明にエステルは頷き、納得したジンは確認した。
「そうなるわね。お役に立てなくて申しわけなかったかしら。」
「ううん、そんなことないです。容疑者が減っただけでも状況が分かりやすくなったし。あ、それとは別にお尋ねしたいことがあるんですけど……」
そしてエステルはエルザにレンの両親に関して尋ねた。
「クロスベルの貿易商、ハロルド・ヘイワーズ……。ふむ、心当たりはないわね。少なくとも大使館を訪れてはないと思うわ。」
「そうですか……」
エルザの話を聞いたエステルは肩を落とした。
「それにしても”レン”………か。どこかで聞いた名前ね………」
「え!?ど、どこで!?」
考え込んでいるエルザの呟きを聞いたエステルは驚いて尋ねた。
「…………ごめんなさい。聞き覚えはあるんだけど、今は思い出せないわ。思い出したら、ギルドに報告させてもらうわ。」
「はい!お願いします!」
申し訳なさそうな表情で謝るエルザにエステルは明るい表情で頭を下げた。
「それとクロスベルといえばエレボニアとカルバードの中間にある場所よ。エレボニア大使館にも問い合わせてみた方がいいかもしれないわね。」
「はい、わかりました。えっと、色々と教えてもらってどうもありがとうございました。」
エルザの提案にエステルはお礼を言った。
「あら、どういたしまして。ところであなた……エステル・ブライトと言ったわね。もしかしてカシウス准将の娘さん?」
「あ、知ってるんですか?」
「ふふ、あたり前よ。かつてエレボニア軍を破った英雄にして王国軍の新たな指導者ですもの。娘さんがいるとは聞いていたけど、こんな形でお目にかかれるとはね。」
「えっと、あたしはただの新米遊撃士なんですけど……」
エルザに見られたエステルは苦笑しながら答えた。
「ええ、分かってるわ。ウチの大使館もギルドには色々とお世話になっているの。今後、ウチの依頼があったら請け負ってくれると嬉しいわ。」
「あはは……。機会があったら是非。それじゃあ、失礼しました。」
そしてエステル達はカルバード大使館を出た後、エレボニア大使館に向かった………
Tweet |
|
|
2
|
1
|
追加するフォルダを選択
第211話