酷暑の候、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
ワタクシ陳簡は現在、命の危機に直面しております。
「汚物は消毒だ~~~!!!」
大きな壷を背負いそこから伸びた管が手に持った筒に繋がり、
筒から炎を吐き出すカラクリ―火炎放射器―をこちらに向けて迫ってくる、
ツンツン頭に浅黒い肌の男。
「『水壁』(ウォーター・シールド)。どちら様でしょうか?随分物騒な挨拶もあったものですが」
迫る炎を呪文で防ぎ誰何する。
「姓は黄、名は月英、愛しの朱里を陥れた不逞の輩、陳簡を滅殺しにきてやったぜ!
判ったら大人しく灰になりやがれ!」
ああ、こいつが聞いていた孔明の旦那か。
「貴方が黄婉貞殿ですか。だが、お断りします。大体、孔明殿とは手打ちは済んでいる筈。それをどうして蒸し返しますか」
「勿論、俺が気にくわねえからだよ!あと新型火炎放射器の実験にも最適だしな!ヒャハハハ!!」
これは聞いていた以上に酷いな。
「よく、そのような有様で孔明殿に見限られませんね?」
「ハハ、何言ってやがる。朱里に捨てられたら生きて行けねぇから、
無差別に人を切り刻んだり、罠にかけたりするのは止めたし、
戦場や賊討伐でも相手を嬲らずに仕留めるように改めた俺に死角はねぇ!
ちょっと理由をつけて実験をする程度だ!」
むしろ貴様に明日を生きる資格はない気がする。
成る程これが孔明の婿選びを真似るな、と言う奴か。
「まあ、それは兎も角、貴方に私を仕留められるのですか?」
「ハッ、お前の動きは見切った!俺の相手じゃねぇよ!」
これは事実だ。俺も『水条鞭』(ウォーター・ウィップ)の扱いには秀でているし、『身体強化』(ブースト)を使い、『眠りの雲』(スリープ・クラウド) 等でけん制すれば多少は食い下がれるだろうが、こいつとは地力が違う。ホンに恋姫は武力チートが多いで。
今は火炎放射器で遊ばれているので何とかなっているが、奴が腰に吊るしている異形の双剣を出せば、あっさり詰むだろう。
だが、俺に焦りはない。すでに後詰の手当ては済んでいるのだ。
「はい、私では勝てないですね」
「だったら覚悟― 「楽しそうだな、闇里」 げぇ義兄上!」
いつの間にやら黄月英(闇里)の背後に音もなく立つ2,5mの巨漢―龐統の従姉妹の龐山民の婿、諸葛瑾の弟、亮と均の兄―の姿。
「それでは諸葛殿、後はお願いいたします」
大巨人に向かって告げ一礼をする俺。
「うむ、引き受けた。闇里、帰ったら『家族の団欒』だ、楽しみにしておくがよい。朱里や私だけでなく、姉上もいるぞ」
「え、何で子瑜義姉(諸葛瑾)まで? は、はわわ……ちょ、ちょっと待って……!」
黄月英は抵抗空しく諸葛殿の巨大な手に胴を掴まれたまま連れ去られていった。
「やれやれ一段落ですね」
「そんな訳ありませんよ?」
嵐が去り、安堵のため息をつく俺に突っ込みを入れてくるのは七乃。
「荒れ果てた薬草園の片付けが終わるまで休みは無しです。文句はありませんね?」
「いや、しかしですね、これは月英のアホが……」
何で俺がそんな面倒くさい事をせにゃならんのだ。見習い達に任せるわ。
「誰が原因ですか。元に戻すまでは、美羽と同衾しますから。う~ん、久しぶりですねぇ」
「全力で修復いたします。夕刻までお待ちください奥様」
即座に陥落する俺。
「よろしい。修復が終わったら、食堂に来て下さい。良い子にはご褒美が来てる筈でーす」
猛然と作業にかかる俺に声をかけると七乃は立ち去っていった。
「いや、義兄がご迷惑をおかけしました張勲殿。これは頂いた香蕉で作った撻です。後で陳簡殿と公路殿(袁術)とで食べて下さい」
頭を下げバナナタルトの入った包みを差し出す赤髪の青年。
「あらぁ、諸葛均殿お気遣いなく。でも、お菓子は有難くいただきます。均殿のお料理は美味しいですから」
「それも、陳簡殿のおかげです。色々と食譜(レシピ)を教えていただいて、こちらの方がお礼を言わなくてはなりません」
「付け上がるから、本人には言わなくていいです。でもそう言っていただけると嬉しいですねぇ。あ、お茶をどうぞー」
漢中は今日も割りと平和だった。
(^.^(m´・д・`)m
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ホンに恋姫は武力チートが多いで。
一介のメイジには荷が重い。