File [1] 終わりという序曲
ガキィン!
「ハアァァァッ!」
「フンッ!」
剣と剣がぶつかり合い、火花が散る
一人は紅いコートで銀髪の男、手には身の丈ほどある骸骨の装飾がなされた大剣を持ち、腰には黒と白の銃
一人は蒼いコートで髪を後ろに撫でつけた銀髪の男、手には紅い男ほどではないが大剣を持ち、腰には日本刀
カンッ!ガンッ!!ガキィン!!!
その光景は戦っているとゆうより舞っているように観える
だが彼らは本気で戦っている、己が魂を見せ合い、比べぶつけ合うように
「俺たちがスパーダの息子なら、受け継ぐべきなのは力なんかじゃない!」
紅い男が叫ぶ、自分の魂を、思いを伝えるために
「もっと大切な――――誇り高き魂だ!!」
そして彼は言い放つ
目の前に居る蒼い男に
「その魂が叫んでる・・・あんたを止めろってな!」
だが、蒼い男には届かず、心底面白かったのか、冷たく鋭い細い目を見開き、笑っている
紅い男の魂を馬鹿にするように
「Ha ha ha ha ha・・・悪いが俺の魂はこう言ってる」
蒼い男は言う、己が求めるものはたった一つ
何者にも打ち勝つ
「――――もっと、力を!!」
絶対的な力のみと
「・・・双子だってのにな」
悲しげな表情をする紅い男
それとは対照的に笑っている蒼い男
「ああ―――そうだな」
そして二人は構える、決着をつけるために
一人、立っていた
立っていたのは・・・
紅い男だった
蒼い男を見下ろしている
哀しい目をして
「俺がッ――――負けるのか?・・・ッ」
「どうした? それで終わりか?」
納得してない声で、でも、その言葉にはもう止めてくれと、もういいんだという思いを込められているのが伝わる
「立てよ、あんたの力はそんなもんじゃない」
そういうと蒼い男はここで立たないと癪に障ったのか、拳を握りしめ、腹から出した唸り声を上げながら立った
その顔には微かな微笑、でも余裕といったものは感じ取れない、無理やり立ったみたいだ。足もフラフラで覚束ない
だが決して男は諦めない、認めたくなかった
弟に負けることを
「終わりにしよう、バージル」
紅い男は言う。はっきりと己の覚悟を
「俺はあんたを止めなきゃならない・・・あんたを殺す事になるとしても」
蒼い男、バージルは思った。そんな目で俺を見るなと
勝ち誇った顔をしているならまだ良かった。だがそんな、そんな哀れなものを見るような目で俺を見るなと
気に入らなかった、そして無性に腹が立った
だからこの一撃で決めてやる、剣を強く軋むほど握りしめて立った
「「ッ!!」」
同時に走り出す二人、一気に間を詰める
そして剣を振る、渾身の力を、魂を込めて
ブシュッ!!
赤く綺麗な鮮血が飛ぶ
剣は落ち、蒼は崩れる
赤く輝く宝石、母の形見のアミュレットが落ちる
「ッ!?」
意識が飛びそうになる
だが足元に落ちているアミュレットが見えた為、無理やり意識を覚醒させる
それを拾い、落とさないよう強く握る
「これは誰にも渡さない・・・ッ、これは俺の物だ」
これだけは何が何でも放さない、放すわけにはいかない
これは自分が自分であるための証、命より大事な物
「スパーダの真の後継者が持つべき物―――」
フラフラと後ろに下がる。後ろは崖、当然下手をすると落ちてしまう
弟は兄が何を考えているのかすぐに解った
―――落ちるつもりだ
弟は駆け寄る・・・が
首には刀が添えられていた
「お前は行け」
弟を引き離す
助けなど、情けなど要らんと
「魔界に飲み込まれたくはあるまい」
これが弟にしてやれる最後の精一杯の優しさ
「俺はここでいい」
冷徹で非情、慈悲なんて心、情なんてモノは閻魔刀を持ち家を出た時から捨てた。人間を辞め悪魔になった。そして唯一の家族で弟のダンテに容赦なく殺しにかかった。力を得るためなら何でも遣ってきた。利用し、脅し、殺し、人と悪魔関係なく手に掛けた――
――でも、何故か心が痛んだ。情なんてモノ、人間が持つモノのは当の昔に捨てたはずなのに何故心が痛み、苦しいのか。それは、体は悪魔でも心までは悪魔になりきれなかった。心のどこかで人を捨てきれなかった。半人半魔、不完全、中途半端なモノだからではなく、単に彼が心を持っていたから。人間を止めなかった、辞めたくないと無意識に思っていた
ふと、幼い頃の懐かしく温かい思い出がフラッシュバックする
バージルは本当は家族思いの優しい兄。ぶっきら棒でちょっとした冗談でも直ぐに怒るが、ダンテが怪我をした時、迷子になった時は必ずバージルが助けてくれた。特に迷子になってた時は大雨で大変だった。怖くて動けなくて泣いてたダンテを見つけたのがバージルで全身泥だらけにして息が上がっていた。必死に探してくれていたのだ。ダンテはバージルの顔を見た瞬間、安心して大泣きした
そしてバージルを含め、家族の日常。親父とバージルとダンテで剣技の練習をし、全く歯が立たず完膚なきまでに親父に負かされたバージルとダンテ、それを優しく見守る俺たちの母さん・・・家族が好きだった、大好きだった。大切な家族、絶対に切れない深く強く幸せの絆――――
「親父の故郷の・・・この場所が―――」
後ろに一歩引く
重力に則って体は落ちる
それを止めるように弟は兄に手を伸ばす
―――シュパッ
だが掴まれる事はなかった
代わりに手の平を斬られた。軽く浅めに、意味を込めて――――
落ちていく時に弟は泣いていた
あの時の、迷子なった時のように泣き顔になりながらもう届かない兄に斬られた手を必死に伸ば叫ぶ
兄の名を―――吠えるように
だんだん視界が暗くなり歪んでいく
弟にしてやりたかった事、一緒にしたい事がたくさんあった、家族と過ごしたかった。だがもう遅い、未練が出来てしまった。そして忘れ捨てたはずの感情が溢れ出し、目が熱くなる感覚がした。我慢しようとした、でも堪えれば堪える程溢れる出る〝涙〟
そう、兄も泣いていたのだ
(まだ・・・・俺は泣けたんだな)
もう我慢なんてしない
この時だけは全てを忘れ、この思いに従う
最後に兄は叫んだ。今いる空間が震える程の声量で、芯に伝わるように
この世で大切な唯一家族、誇れる弟の名を―――――
「許せぇぇぇぇ!!ダンテぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
そして彼は深い深い闇の底、魔界へ落ちた――――――はずだった
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ダンテとの死闘の末、敗けたバージル。
力とは偉大なモノだ。誰も逆らえぬ力、力こそが全て、そう思っていた。だが、求め過ぎたあまり・・・敗けた。弟の「誇り高き魂」に俺の魂は敗けたのだ。敗けて漸く納得した。大切なモノ、それはスパーダの「力」ではなく、親父の「誇り高き魂」だった。
道理に従い自ら魔界へ身を投じたバージル・・・しかし、目覚めたらそこは森の中、魔界とは連想できない穏やかな場所だった。
現状を未だに把握しきれていないバージルの前に空を飛んでいる金髪の美女「フェイト」が現れ、同時に「ガジェット」と呼ばれる変わった機械達が彼らを襲う。
「話は後だ、先にこの鉄屑共を片づける・・・いいな?」
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