~一刀視点~
思えばいつの頃からだろうか?自分の存在がもしかしたら消えてしまうかもしれない。
そう、考え始めたのは・・
そして、それでもなお、彼女たちと明るき天をこの目で見たいと思ってしまったのは。
分かっている。そんなのは矛盾した思いなんだって・・
だけど、そんなの知っているけど、彼女と別れた今、
やっぱりだめなんだ。涙が、涙が溢れて止まらない。
彼女たちとすごしたあの日々は、長いようで短いそんな日だった。
だからこそいえる、俺は本当に彼女たちが大好きだったんだと・・・
俺は俺なりに自分の道を歩いてきたつもりだ。でも、それでもやっぱり、
俺が消える瞬間、いやもう彼女のことが見えなくなったときに、
彼女が、あのいじっぱりやの彼女が、
自分の名前を呼びながら泣いていたんだ。
「あぁ・・俺しんだのかな?」
目の前に広がる暗闇を感じながら、そうつぶやく・・・
「・・・ん?つぶやく?」
いや、待て、言葉が出せるということはやはり俺はまだいきているのではないか?
そういえば、前にもこんなことがあったな。
そう、確かそれは、最初に華琳たちの世界にいった日のことだ。
そうか、そうか、またあのときのように目を開ければいいんだな
そう思い目を開けた俺は、目の前にあるものに驚愕し、
しばらく声が出せなかった・・・。
「・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・っ!!かっ怪物!?」
「ぬっふうぅぅぅぅぅううん。だぁ~れが、“世界中の人々が一瞬みただけで
目が腐敗してしまうような超きもちわるいクソ虫野郎”ですっっぅてぇ?」
「・・・・そこまでいってないから・・・あんた誰?」
「あんらぁぁぁ ご主人様ったらこのわ・た・しのこと
わすれてしまったのかしら?」
「っっってか会ってもないだろあんたとは!
会っていたら必ず覚えてるぞ!その姿は!」
「もぅご主人様ったらうれしいことをいってくれるのねん
確かにそうだったわねぇん。
私は美の美を極めた漢女、貂蝉よん」
・・・・っっ!!あっありえないっていうかやめてくれ
そだといってくれ・・・こいつがあの傾国の美女といわれるあの貂蝉か?
・・・まぁ気持ち悪さを見れば傾国ってとこだけはあってるきがするが・・・・
どうみても、変態おかま筋肉だろうがっ・・・!
「あんらぁ~だ~れが変態おかま筋肉ですぅってぇ?」
こいつ言葉はききちがえるのに人の心を正確によみやがった・・・
「まぁいいわん。ご主人様。 私は、さっきまでご主人様が
いた外史の管理者をやっていたのよん」
・・・?なんだこいつ?外史?華琳たちがいた世界のことか・・・
その管理者?訳がわかんないな。
でも、唯一わかることは・・
「ってことはお前、華琳たちの世界へ戻る方法をしってるのか?」
「さぁっすが私のご主人様ねん 理解がはやいわん」
本当・・・なのか? でも、なんだこの胸にあるもやもやとしたものは。
会いたいはずなのに、戻りたいはずなのに・・
「そっそうか、、たのむあっちの世界に戻る方法
を教えてくれ!」
「そぅねん・・・・・・」
突然黙りこんでしまう貂蝉。
「・・・・・。あることにはあるわよん」
「ならっっ!!」
「でも・・・ご主人様にはつらいことかもしれないわねん。
今度またご主人様があっちの世界にいってしまえばもぅ
現実世界にはもどれなくなるのよん。
今、現実世界を選べば、あっちの世界のことがすべて夢だったかのように
現代に戻っても、外史に来る前と今では
時間の流れもさほどかわらないわよん」
「なっ・・・に!?」
もとより現実世界には戻れないと考えていた一刀にとって
動揺するのには十分な理由だった。
俺には家族がいる。友達もいる。・・・じいちゃん俺・・・どうすればいい?
俺はすてることができるのか・・・俺の本当の心はどこにある・・
華琳のまえから消えてしまう時俺はもう死んだとおもってた。
それが、貂蝉は現実世界に帰れるといった。
そして華琳たちのいる世界に戻れるということも・・・
しかし、どっちかをえらべばどっちかをすてなければいけない
それはつまり・・・
「外史に行けば外史の人間として、現実世界に行けばその世界の人間として
いきるということか?」
「そうよん」
悩み、そしてどちらかを捨てなければいけないと苦しむ一刀。
そんな中、
“お前が行きたいみちをゆけぃ一刀よ。”
と、そんなじいちゃんの声が聞こえたような気がした。
そして
“一刀っ!!”
と泣きながら叫んでくれる寂しがりやな女の子の声も。
・・・・ふっ
そう・・そうだよなもう答えは決まってたんだ。
ただその決意を背負う覚悟がなかっただけ・・・
俺は今、決めるよ自分の歩む道を
ありがとうじいちゃん、華琳・・
一度掛けたこの人生、もう一回かけたっていいよな。
「貂蝉!俺を三国志の、いや、華琳たちの世界へおくってくれ!」
(あんらぁ・・いい目をしてるわねご主人様)
「そぅねん・・ご主人様が決めたことだから何もいわないわん」
「それじゃぁっっ!!」
「でもねん、ご主人様が戻るには外史の許容力を大きくしなければ
いけないのよん。それには三十年かかるのよねん。
それに私もあっちの世界のことをすべて
知っているわけではないのよん。
もしかいしたら、また消えてしまうこともあるかも
しれないわよん」
三十年・・・・。もしかしたらみんな、俺のことなんか忘れて
いるかもしれないなぁ・・・しかも消えるかもって・・・
だけど、違う。俺の心はもうあそこにある。
たとえ、みんなが俺を忘れたとしても、俺が、俺の心が
皆と過ごしたあの日々を覚えている。
「貂蝉、それでも俺は華琳たちの世界に行くよ。」
(ここでなやんだら、無理やりでも現実世界に送ろうとおもってたん
だけど・・・さぁすがご主人様ねん)
貂蝉は一刀のまっすぐな瞳を嬉しく思った。
「そうねん。そんなご主人様にはいいこと教えてあげるわん
この狭間の世界では三十年だけどねん
曹操ちゃんの世界では半年なのよん。
そしてご主人様の外見も今とさほど変わらないわん」
本当か・・、それは・・
「ありがとう。貂蝉」
いつからだろう。俺がこんなに涙を流すことになったのは。
やはり、俺の心は君の隣にありたい。
その日から一刀は貂蝉とさまざまなことに取り組んだ。
武芸、政治・経済に関する勉強、
貂蝉が華琳たちの世界で知り合った華佗という医者の五斗米道の医療技術。
武のほうは全く駄目だった一刀は最初の5年でとにかく基礎体力をつけた。
その後の5年は、無手で貂蝉ととっくみあった。
そしてそのあとの10年は剣と氣を使った特訓
それをもとに後の10年は応用。
15年目で貂蝉と一刀は互角に戦えるようになり、
20年目には一刀が圧勝していた。
しかし一刀は、貂蝉が自分の知ってる武人と戦ったことがないから
貂蝉が強いということは分かっていたが、凪レベルだろう
と思っていた。だから強くなったとしても春蘭たちにははるかにおよばないだろうと。
そんな一刀の考えとは裏腹に貂蝉は内心焦っていた。
(自分もご主人様と同じ時間鍛錬したのになぜ・・・)と。
ちなみに貂蝉は鍛錬前のときでも呂布と互角にやりあえると自負していた。
(そんれが・・まぁ20年で完敗するとわねん。
ご主人様は全く気が付いていないようだけど・・・
私ったらとんでもない武人をうみだしてしまったかもしれないわねん
そしてそのあとの10年・・・・はぁ・・
さぁっすが私のご主人様といいたいところだけどねん・・・
さすがに悔しいわねん・・・)
「なにかいったかい?貂蝉?」
「っ!?やっやだわねん ご主人様ったら何も言っていないわよん」
「?・・そうか」
(それにしてもご主人様、ずいぶんとたくましくなられたわねん。
私のような美筋肉までにはいたらなかたけれど
しなやかで美しい筋肉・・・・
ああんもぅ私ったら顔があつくなってきちゃったわん)
「いよいよ明日ねん ご主人様、いままでよくがんばってきたわねん」
「貂蝉がいてくれたからだよ。華琳たちに笑われたくないしな。
ありがとう貂蝉」
一刀の満面の笑顔に顔が真っ赤になる貂蝉。
(あぁぁんもぅ いっそのこと曹操ちゃんに渡さず私だけのものに・・・
ムフフ・・・ムフフフフ・・・)
「何か言ったかい?貂蝉」
「っ!?いっいやだわん、何もいってないわよん」
そういったやりとりを繰り返しながら夜は更け朝をむかえた。
「ご主人様。これは餞別よん」
そう言って渡されたのは貂蝉がこの30年間夜中こっそりと
つくっていた日本刀のような刀だった。
「本当に何からなにまで、ありがとう貂蝉」
やっとだ、やっと。俺はやっとこの手を伸ばせる、あの光に。
君のそばに。
「それじゃあ、貂蝉、俺はいくな」
笑顔で感謝の意を表した一刀は、あっちの世界へと
つながる光へと走り出していた。
(もう、いってしまたのですか・・・)
そこには、狭間の世界にひとり残った貂蝉の姿があった。
(もう、こんな姿をしてごまかす必要もないですね)
そして、彼女のあの姿は一変し、長い黒髪をした見目麗しい美女の姿に
かわっていた。
(一刀さんと最初から慣れ親しむためにあんな格好をしていたのだけど、
なぜだろうか?最初は途中で本当の姿を見せるつもりだったのに、
結局、最後まであんな姿だった。
きっと私は、一刀さんのあの私に対する、友達にたいする温かい
友情といえる態度が消えてしまうのを恐れたんだろう)
(でも、そんな気持ち初めてで、もう、なんででしょうか。
心が痛みます。もう彼はいない、ずっといてくれた彼がいない、
一刀さん、一刀、あいたいよ・・・)
一刀が消えていったその方角を見て、涙を流す貂蝉のすがたがそこにはあった。
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満月のもと、一刀は大切な人の涙が忘れられずにいた。
その強い思いのもとに、彼は新たな道を歩み始める。