No.462328

真・恋姫無双 ~新外史伝第69話~

第1話の総閲覧数1万を超えたことに、驚きと共に読者の方に大変感謝しています。

そして某サイトの閉鎖の影響か、ここ最近の回の閲覧数も上昇しており、第68話では今週の小説部門の総閲覧数で1位になっているのも驚きました。

引き続き応援のほどよろしくお願いします。

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2012-07-30 13:10:18 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6087   閲覧ユーザー数:5080

~荊州・南郡某古城~

 

愛紗は帰城すると義妹の愛香こと関平と張任こと涼月の3名で細やかながら礼を兼ねた祝勝会を行わ

 

れていた。そして3人はお互い自己紹介をして真名を交してしたのであった

 

そして色々と話をしていると涼月がこんなことを言い出した。

 

「愛紗殿、御存じか。この劉表殿が亡くなられ、荊州が新たに皇帝に就かれた劉備殿に譲渡されると

 

いうお話を」

 

「その話、真か!?」

 

愛紗はびっくりして涼月の顔を見たが、涼月は黙って頷いたのを見て、そのまま黙り込んでしまっ

 

た。

 

「そう言えば、愛紗殿。貴女、以前劉備殿と血盟の間柄で色々あって軍を離れたと聞いたことがある

 

が…」

 

「そうです。以前私たちは劉備様にお仕えしていましたが、劉備様が曹操の奸計に簡単に落とし入れ

 

られて、結局に離れる羽目になってしまったのですよ」

 

「こら!愛香余計な事を言うな!」

 

「だって…」

 

愛紗に代わって、愛香が桃香の事に不満を口にしながら説明したが、これは愛紗が叱った。

 

「それで愛紗殿、貴女は民の為にここの太守を討ったのは良いが、しかし荊州は劉備殿の物。いくら

 

貴女と劉備殿の関係が血盟の間柄と言ってもすでに袂を分かつ状態。そしてこの状況が続けば、劉備

 

殿の立場から貴女を討たざるえない立場になるけど、貴女これからどうするつもりなの?」

 

涼月が愛紗に問い質すと

 

「…正直言って、私は心の中では未だに桃香様…劉備様の家臣の気持ちを持っています。しかし劉備

 

様は、今、自分の理想を他人からの中傷や指摘、そしてその焦りから本来進むべき道を誤ってしまい

 

自分を見失っている状態なのです。だから私は外から桃香様の目を覚まして上げたいのです」

 

愛紗は桃香と別れる際、桃香から自分の理想を叶えること託されたが、しかしどうしても愛紗の忠誠

 

心は未だ桃香に向けられており、そして愛紗の生真面目な性格上、このような気持ちで他の諸侯に仕

 

えるは失礼と思い悩んでいる内に騒乱に巻き込まれ、今に至っているのであった。

 

「……貴女のその心意気は認めるけど…、それにこの弱小な勢力で漢と戦うつもり?それだったら、

 

呉や蜀を頼って漢と戦うのはどうなの?」

 

涼月から『蜀』と言った瞬間、愛紗の顔は一瞬動揺した表情を見せた。

現在、愛紗の元には手勢が5千にも満たない状態で、涼月もこれだけの兵でよく韓玄の軍勢を打ち破

 

ったものだと内心感心していた。そして涼月は愛紗を見て、以前「義」や亡き夫に拘っていた自分を

 

見ているような気がしていた。

 

「呉は以前同盟を結んだ仲で、寧ろ私より桃香様との同盟を選ぶかもしれないし…それに私自身、呉

 

と対してあまりいい感情を持っていないな」

 

「では、蜀はどうなの?」

 

「蜀…」

 

「そうですよ、義姉上。私が前から言っていますし、そして涼月さんの言う通り、ここは蜀を頼るべ

 

きです!」

 

「うむ…愛香の言うことが分からないでもないが…」

 

愛香が蜀を頼ることについて積極的な発言に対して、愛紗は呉の時と比べ、蜀を頼ることに何か消極

 

的な態度を見せていた。

 

「何か蜀に頼ることに躊躇いでもあるの?」

 

愛紗は少し考えた後

 

「躊躇いが無いと言えば嘘になるな…。以前私は北郷殿と色々あり、お世話になったこともあった」

 

愛紗はそう切り出し、今まで一刀との出会い等を話始めた。そして最後に

 

「今まで北郷殿に散々迷惑をお掛けしているのに、またこれ以上迷惑を掛けることはできない」

 

愛紗は悲痛な表情で涼月にそう語った。

 

「でも…貴女はそれでいいの?このままだとここを攻められて、劉備殿に貴女の劉備殿に対する想い

 

は届かないかもしれないわよ」

 

「…覚悟の上です…」

 

涼月は愛香を見たが、愛香はこうなったら梃子でも動かない愛紗の性格を知ってか、無言で首を横に

 

振るのであった。

 

涼月は愛紗を嘗ての自分を見ているようで、このまま死なせるには惜しい人物だと思っていた。しか

 

しこのままでは他の勢力争いに巻き込まれ、翻弄されてしまう、そして涼月はあることを決断した。

 

ただこれは全くの勝算のない賭けであり、ましてはこの話を聞いて相手が引き受けてくれるか分から

 

ないことでもあった。ただ今は、愛紗を救うにはこれしか方法がないであろうと涼月はそう思ってい

 

た。

 

翌朝、涼月は再び旅に出ると言って、愛紗たちに挨拶をしたが、その際に愛紗に対してただ一言

 

「命を粗末にしないで」

 

そう言ったが、愛紗はこの言葉にただ無言で頭を下げただけであった。

~洛陽~

 

一方、洛陽に呉の使者である陸遜こと穏がやって来ていた。

 

「ところで陸遜様、こちらにはどの様な要件で参られたのでしょうか?」

 

「実は、荊州南郡の件で訪れました~♪」

 

「南郡の件とは…、南郡は我が領地、呉と何の関わりあるのですか?」

 

「まずはこれをご覧になって下さい~」

 

穏は雛里の言葉を無視して、ある書状を手渡した。そしてこれを見て雛里は

 

「こ、これは…!?」

 

「言っておきますが、これは正真正銘の本物ですよ。韓玄さんは私たちの配下ですので、南郡は

 

我々、呉に領有権がありますよ~」

 

穏が手渡したのは、韓玄が先に冥琳に呉に降った証として書かれていた書状で、そして穏が主張する

 

には韓玄が呉の家臣になった限りは、南郡は呉の領有というものであった。

 

流石にこれを聞いて雛里はこの場が荒れると思い、一旦意見を取り纏めたいと言うことで穏を別室に

 

下がらせた。

 

鈴々たち武官は、呉の行為に非難を上げたが、しかし雛里は、今の状況で呉と戦うことは背後から北

 

郷軍に攻め入る隙を与えてしまう可能性が高く、かと言って南郡の領有権を主張した場合、愛紗の存

 

在が問題になるのであった。

 

そして雛里はあることを決断したが、まず一旦それを話す前に桃香と雛里は、別室に行き2人で話し

 

合うことにした。

 

「雛里ちゃん、どうするの?」

 

「この状況で、呉と戦うことは得策ではありません。ここは一度南郡の領有を放棄した方がいいで

 

す」

 

「えっ!?」

 

「まだ話は終わっていません。南郡と引き換えの条件として呉との再同盟を提示します。我々が蜀と

 

戦うためには呉の力は必要となります。呉も単独で蜀と戦うには少々厳しい状況だと思いますので、

 

こちらが譲歩すれば手を結ぶことは可能です。ここで呉と手を結んでおかないと逆に蜀と呉が同盟を

 

結ばれた場合、我々は窮地に追い込まれてしまいます」

 

「……でも呉に南郡に渡してしまったら、愛紗ちゃんが…」

 

桃香は雛里の言いたいことは分からないでもなかったが、流石に離れていても愛紗を簡単に見放すこ

 

とはできなかった。

 

「恐らく愛紗さんは、今の状況では私たちの元に戻ってくる可能性は低いと思います。かと言ってそ

 

のまま孫呉に仕えることもしないと思います」

 

「下手に愛紗さんを救おうすれば、呉との同盟の弊害になる恐れがあります。桃香様、今はいない愛

 

紗さんのことより今、残っている方々のことだけを考えて下さい」

 

雛里は愛紗を見放すようことを言いながら、桃香に頭を下げていた。

 

「でも…何とか愛紗ちゃんを助けたいの…どうにかならないの…?」

 

雛里は溜め息を吐きながら

 

「では桃香様、今回の経緯について愛紗さんに使者を送る形を取り、穏便に愛紗さんを南郡から退去

 

するように説得をします。取り敢えず、呉の方にはそれで説明します。ただ愛紗さんがどう回答する

 

かは分かりませんが」

 

「いつもごめんね…雛里ちゃん」

 

「いいえ、しかし桃香様、さっきも言いましたが愛紗さんのことを心配するよりも、まず桃香様に付

 

いて来ている方のことを第一に考えて下さい。そうじゃないとまた徐州の二の舞になる恐れがありま

 

す。そして愛紗さんのことはもうこれが最後だと思って下さい、もう出奔された方なのですから…」

 

そう言われると桃香は返す言葉が無く、最後に雛里には聞こえないくらい小さな声で

 

「愛紗ちゃん、ごめんね…」

 

桃香は心の中で愛紗に詫びていたのであった。

 

そして雛里はこの案に他の者に提示をすると、案に反対する者はいたが、他に代替案が無かったた

 

め、これを強引に取り纏めた。

 

そして雛里は穏に同盟の条件提示を示したところ、穏は愛紗の事を懸念したが、最終的に南郡は呉の

 

領土とし、愛紗については退去を勧め、交渉が失敗した時には呉に一任する、そして蜀に対する共同

 

攻撃を実施、対魏の共同防衛すること等を取り纏め、漢呉同盟がこうして結ばれたのであった…。

 


 
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