「本当にこの場所にあるの?」
「シルフィア姉妹の言葉だと、微弱ならあるというらしい」
第97管理外世界の海上の上空、正確に言えば第97管理外世界、通称地球の鳴海市内近くの海上の上空に、高町なのは、フィルノ・オルデルタ、シルフィア姉妹の計四人が魔法で上空に浮いていた。
もちろん第97管理外世界の人間に見られてしまってはまずいので、結界を張ってなのはたちが浮いているという事を、魔導師以外には誰にも気づかれないようにした。
「そういえば、シルフィア姉妹って何者なの? 私は全く聞かされていないのだけど? なんかさっきからフィルノ君はシルフィア姉妹を重要人物としているような気がするけど」
「あぁ、それについてはな……」
「それは私たちの口から言えないのです。一族の機密事項みたいなもので、一族以外には誰にも教えてはならないと言われているのです。フィルノさんはどうしてか分かりませんが、その一族に伝えられている内容を知っていたようですが」
なのははシルフィア姉妹が何者なのかと不思議に思っていた。ここ数日フィルノはシルフィア姉妹を艦船内で待機させている事が多く、主に研究所を破壊していたのはなのはとアリシアの二人だけだったのである。さすがにその事に不思議に思ってなのははシルフィア姉妹が何者なのかと思ったのだ。
フィルノはなのはが聞いてきた質問を返そうとすると、リィナがフィルノの言葉を遮って答えるのであった。とりあえずシルフィアの一族には昔から何か隠している事があるのだろうとなのはは思い、これ以上は聞かない事にしようと思ったが、一つだけ気になった。
「じゃあどうしてフィルノ君はその事を知っているの? シルフィアの一族しか知らない事なのではないの?」
なのはの言うとおりだった。どうしてフィルノがシルフィアの一族が隠している内容を知っているのかという疑問になるのである。機密なので外部に漏れる筈はないと思ってシルフィア姉妹も思っていたので、その事はシルフィア姉妹も気になっていたん事であったのだが、フィルノの目的を聞いたときにどうして知ったのかを聞いたので、フィルノが知っていた理由は聞いてあった。だからなのはの質問の答えは知っていたのである。
その質問にフィルノは少し戸惑ったが、仕方ないと思ってなのはに言うのであった。
「それは、俺の両親が昔調べていた事でもあったんだ。ロストロギア、テュディアの存在は見つける前から知っており、本来の使い方を両親は理解した。だから両親が捕まる前にその事を聞いていた俺はシルフィア姉妹の事を知っているんだ」
後半から悲しそうな顔でフィルノは言った。多分、その両親が殺された事を思い出していたのだろうとなのはは思った。フィルノが悲しそうな顔をしたのは別の理由も含まれていたのであるが、この時なのはとシルフィア姉妹には気づかなかった。
しかしすぐにフィルノの表情は戻り、いつも通りな顔になるのであった。
「さて、今はそんな事をしている場合ではなかったな。管理局がここに来るまでにもう片方のテュディアを探し出すぞ」
管理局が来るのはまずいと思ったなのはとシルフィア姉妹もフィルノ言葉に同意し、今なのはが持っている割れているテュディアのもう片方の破片を探し出すのであった。
しかし、思いのほか苦戦し、海の中にあるのは把握できたがどこにあるかまでは把握できなかった。便りはシルフィア姉妹の二人だけで、微弱なテュディアの反応から位置を特定するしかなかったのである。その間にもフィルノは海の中に入ったりし、付近を探しているのだが全く見つからなかった。
ちなみにこの時点でなのはは何もしていないが、なのはが此処に居る理由は管理局のが来た時の対策である。邪魔されるわけにはいかないのでなのはは近くに魔量反応が無いか確認していたのである。アリシアが呼ばれていない理由は、なるべく彼女の正体を管理局に知られたくないからであり、またエメリアの魔力はシルフィア姉妹以下である為、なのは一人で見張る事になったのである。
誰も来ずに終わって欲しいなとなのはは思っていた。何人も人を殺めてきたが、望んで人を殺しているわけではない。自分たちの目的を邪魔する者を手加減なしで攻撃しているだけなので、敵に情けを掛ける事をしていたら目的なんて遠のくだけなのでなのはは全て殺傷設定で全力で魔法を使っていたのである。
しかし、誰も来ないで終わって欲しいというなのはの願望はすぐに打ち砕かれるのであった。
「っ!? 数キロ先に魔力反応!?」
なのはの言葉にフィルノ、シルフィア姉妹は緊張が走った。多分管理局だと全員理解した。
しかし、余りにも管理局の素早さに全員が驚いた。この場所に来て約二十分しか経過しておらず、たとえ見つけられたとしても早くて三十分くらいは掛かると思っていたのである。第97管理外世界の近くにいなければの話だが。
すぐになのははそちらの方向へレイジングハートを構え、いつ敵が襲ってこようが何時でも戦えるように準備を備える。
カートリッジを三つ使用し、魔力をレイジングハートの先にに集束させる。そしてその集束させた魔法を一時的に蓄えさせておくバスター・セーブを使用し、すぐに放てる準備をするのであった。
それから数分後、なのはが構えている前方から二人の魔導師が近づいてきている事に気づいた。バスター・セーブで蓄えていた魔法を放とうとするが、近づいてきた魔導師の二人の姿を見て、どうしてここに居るのかと驚いて放つことを忘れてしまった。何故ならなのはの親友であるフェイトとヴィータであったからである。
「フェイトちゃん、それにヴィータちゃん……」
一度構えるのを止めて、目の前のフェイトとヴィータを見ていた。すぐになのはが攻撃してくる様子はないと思ったフェイトは、なのはに話しかける。
「なのは、どうしてこんな事をしているの?」
「……別に、大したことじゃないよ。自分の意思でこんな事をしているの。唯それだけの事だよ」
フェイトの質問によってなのはは我に戻り、自分のすべきことを思い出してフェイトとヴィータの二人に向けてレイジングハートを構える。
その様子を見て少し緊張がフェイトとヴィータに走ったが、ヴィータはそんな事を気にせずになのはに話しかける。
「自分の意思って、なのはが何をしているのか分かっているのか!!」
「……そんな事、とっくに自覚しているよ。何人も人を殺し、それが永遠と続く私の罪なんだから」
「だったら、もうこんな事は止めようよ。今からでも間に合うから」
フェイトがなのはにやめさせようとするが、なのはは首を横に振るだけだった。もう今まで通りに戻るのは無理だと思っていたのである。
「そんな事、無理だよ。それに私はこんな所で止めるわけにはいかない。それが私の意思なのだから」
「それはなのは自身の意思? それとも、フィルノ・オルデルタに手伝いたいだけ?」
「私自身の意思だよ、フェイトちゃん。自分で決めて自分でここに居るの。たとえフェイトちゃんとこのように戦う事となってもね」
さて、と、なのはは続けて言い、それからなのは表情が一変する。そのなのはの表情にフェイトとヴィータはなのはに対して経過をしてデバイスを構える。
「悪いけど二人にはここで死んでもらうよ。私たちの邪魔をするものはたとえ親友だろうと殺すから。背後に仲間がいるとは思うけど、私は逃げるわけにはいかないのだから!!」
刹那、なのははフェイトとヴィータに向かって攻撃を仕掛けていくのだった。
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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