もう五月が終わりに差し掛かった。これからどんどん暑くなっていく。・・・っていうかもう暑い。今日は初夏並に暑くなると天気予報で言っていた。
とりあえず俺は図書館に避難した。ちなみに学校はサボった。
「・・・ふぅ、涼しいな。ま、せっかく来たんだから本でも読むか・・・」
俺は適当に一冊取って座ろうとした・・・が、俺の視界に車椅子に乗って本を取ろうと一生懸命手を伸ばしている少女が見えた。
・・・はぁ、見てしまったものはしょうがない。取ってやるか・・・。
俺は少女が取ろうとしていた本を取って渡した。
「・・・これか?」
「え?あ、ありがとう。」
※作者は関西弁がどういったものが分かりませんが一応関西弁のつもりです。
「・・・他に取って欲しいやつはあるか?」
「え?その・・・ええの?」
「構わないよ。」
そういうと少女は明るくなった。
「それじゃあ、アレもお願いするわ!」
「はいはい。」
5冊ほど取ったとこで席について話をした。
「ねぇ、名前はなんて言うん?」
「ん?零冶だよ。黒沢 零冶。」
「そっか零冶君ていうんやね。」
「零冶でいいよ。」
「分かったで。あ、ウチの名前は八神 はやてっていうんよ。ウチのことは、はやてでええよ。・・・て、あれ?零冶、ウチと同じぐらいやろ?学校はどないしたん?」
おっと、痛いとこを突いてくるねぇ。まぁ、別に聞かれても困らないんだけど。
「・・・サボった。」
「ちょっ!?・・・零冶って不良やなぁ。学校サボったらあかんよ。」
「・・・考えとくよ。それよりもう夕方になるぞ?親は?」
そう聞くとちょっと悲しそうな表情をしたがすぐにもとの表情に戻った。
「あー・・・ウチな、親がおらんのよ。事故で死んでもうたんや。」
「・・・悪かった。」
俺がバツの悪そうな顔をするとはやてが苦笑した。
「別にええよ。それより零冶の両親は何の仕事してるんや?」
「あぁ、俺も親がいないよ。物心つくときには死んでたよ。」
俺がそう言うと今度ははやてがバツの悪そうな顔をする。
「あ、その・・・ごめんな?」
「気にするな。親の顔も知らないんだ。別に悲しくも何ともない。」
俺は物心がついたときには組織に居たからな・・・。
「・・・それじゃあ、零冶は今一人暮らしなん?」
「ああ、そうだよ。猫が二匹いるけどね。」
「そっか・・・なんか似ているな、ウチら。」
少しだけはやては笑った。
「ん?そうか?」
「だって二人とも親はおらんし、零冶も一人暮らしなんやろ?ウチも一人暮らしなんよ。」
親戚とかはいないのかな?・・・聞くのは止めとこう。それなりの事情がありそうだ。
「確かに似ているな。」
「ふふ、やろ?」
「ははは。」
「ふふふ。」
俺たちは互いに笑い合った。だが、そろそろ本当に日が暮れるのではやてを家まで送ることにした。はやては慌てて断ろうとしたけど、こんな時間に車椅子に乗った可愛らしい女の子が出歩いちゃ危ないからと言ったら何故か顔を赤くして俯いて了承した。
・・・風邪かな?
そしてはやての家に着いた。
「態々送ってくれてありがとな。」
「別にいいよ。」
そしてはやては突然もじもじしながら言ってきた。
「えーと・・・その、な。もし良かったら・・・晩ご飯を食べて行かへん?」
「え?う~ん・・・。」
「・・・アカンやろか?」
別に構わないんだが・・・どうしようか?
まぁせっかくの好意を無碍にできないし、折角だから食べていくか。ムサシとコジローに念話で伝えないと。取りあえず二匹には今日は外食してくると伝えた。・・・なんかすっっっっごく残念そうな感じだった。・・・とても心が痛かった。
「分かった。今日ははやての家でご飯を食べていくよ。」
そう言うとはやては顔を上げ、凄く明るい表情になった。
「ホンマ!?なら早速上がってぇな!!」
「お、おい!」
俺ははやてに引っ張られて家の中に入った。それから晩ご飯を食べたんだが・・・・どれも美味すぎた。ってか、小学生が作るレベルじゃないぞこれ?主婦顔負けだな。
「ごちそうさま。美味しかったよ。」
「ふふ、お粗末様や。」
「ああ、それじゃあ俺はそろそろ帰るよ。」
俺が帰ることを告げると急に寂しそうな顔になった。
「・・・もう帰るん?折角やから、もっと話していかへん?」
うっ、そんな上目遣いで見るのは卑怯だぞ?それと今は丁度8時といったところか・・・・まぁ10時までならいいか。
「・・・分かった。なら少し話をしてから帰るよ。」
「うん!!そうしてや!!」
俺ははやてと他愛ない会話をして別れた。はやてはいつも図書館にいるから、また来て欲しいと言ったので必ず行くと約束した。
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A’s編 第一話 新たな出会い