ある日、僕はいつしか鉄道駅のホームに立っていた。
線路は一端が行き止まりで、何本もホームがある。
古いレールを使ったホーム上屋が歴史を感じさせる此処は、私鉄のターミナル駅だった。
駅には数多くの電車が集まっているところを見ると電気鉄道であろう事は容易に想像できた。
ふと、あたりを見回してみると、切り欠き形のホームに赤い色の電車が止まっていた。
片側に扉は2つ、前面形状は戦後の一時期流行したいわゆる湘南顔。
…この電車は鉄道趣味関連の本で何度か目にしていたので知っていた。
見間違いでなければ、静岡は浜松を起点に走っている遠州鉄道の30形だろう。
仮に空似だったとしても、所詮は夢の中の出来事、30形がいてもおかしくはないのである。
よくよく正面を見てみると、系統版らしきものが取り付けられていた。
文字を読んでみると、そこには「急行」という2文字。
僕は迷わずこの電車に乗ることにした。
遠鉄30形といえば釣り掛け駆動、それも電気制動つきなので加速時と減速時にその釣り掛け音を楽しむことが出来る。
しかも急行である。さぞやかましいことだろうなと胸を躍らせつつ、その急行電車に乗り込んだのだ。
やがて発車のベルがなり扉がしまる。
どうやら通勤利用の乗客もそこそこいるようで、2両編成の電車は結構込み合っていた。
僕が座ったのは最前部の座席。いわゆるかぶりつきポイントだ。
電車は街中のターミナルを出るとそのまま複線の線路を行く。
しかし本数はあるらしく、レールの頭はギラギラと輝いていた。
やがて電車は川を渡るのだが、ここで奇妙な光景を目の当たりにしてしまう。
そこになくてはならないはずの橋梁が、前方にあるのは橋脚だけで、橋げたは見当たらない。
それでも電車はまったく減速する気配を見せない。
まさかここを渡るつもりか?川に落ちてしまうのでは…と心配していた次の瞬間だった。
なんと電車はその『見えない鉄橋』を渡り始めたのだ。
何事もないかのように渡っているのである!
空を飛んでいる、いや、空中に浮き上がりながら走っていると言ったほうがいいのかもしれない。
何がどうなっているのかわからないうちに電車は対岸に辿り着く。
やがて車窓には屹立するビルの街並みが見え始め、電車はコンクリート製の高架橋の上を行く。
しかし、高架橋の部分をよく見ると、線路の回りが水で満たされているのだ。
テーマパークのような光景にしばし目を丸くしていると、突然電車の左右から水しぶきが上がった。噴水だ!
電車はその噴水で出来たアーチの中を進み、次の停車駅へと滑り込んでいくのであった…。
Tweet |
|
|
4
|
0
|
追加するフォルダを選択
2年前だったかに見た夢の中の鉄道風景。
カオスかつ愉快な夢でした。誰かこの夢をモチーフに描いてくれたりしないかな。