翌朝、救出作戦に参加した遊撃士や親衛隊、そして新たにシェラザードとオリビエが加わり、グランセル城解放作戦とアリシア女王救出作戦の内容をユリアが全員に説明をし始めた。
~エルベ離宮・紋章の間~
「これよりグランセル城解放と女王陛下の救出作戦を説明する。」
そしてユリアは最初にヨシュア、ジン、オリビエ、そして3人の援護役のテトリを見て説明を始めた。
「まずはヨシュア殿以下、4名のチームが地下水路よりグランセル城地下へ侵入。親衛隊の詰所へと急行し、城門の開閉装置を起動する。」
「了解しました。」
「ま、でかい花火の点火役ってところだな。」
「フフ………いずれにせよ、最終幕の幕開けには違いない。」
ユリアの説明を聞いたヨシュア達は力強く頷いた。
「あう~……まさか私がそんな大役の一人に選ばれるなんて緊張してしまいます………」
一方テトリは緊張していた。
「フッ………このボクがいるのだから、そう緊張せず、可愛い笑顔を見せてくれないかね?」
「ふ、ふえええっ!?」
オリビエの言葉にテトリは驚いた。
「こんな時にナンパとか、やめんかい!」
「せめて時と場所を考えて下さい………」
オリビエの行動を見てエステルは睨み、ヨシュアは呆れた。
「これは失礼。これがボクなりの緊張のほぐし方だったのさ♪」
「ハ、ハァ……ありがとうございます。」
自分が励まされた事にテトリは苦笑しながら、一応オリビエにお礼を言った。そしてユリアは咳払いをした後、クルツ達や親衛隊達、そしてパズモやサエラブを見て続けた。
「コホン。………城門が開くのと同時に親衛隊全員と、遊撃士4名、パズモ殿とサエラブ殿が市街から城内へ突入。
なるべく派手に戦闘を行い、敵の動きを城内へ集中させる。」
「ああ、任せてくれ。」
「よっしゃ、腕が鳴るぜぇっ!」
(フフ……こういった団体での戦いに参加するなんて、ハイシェラと共に戦っていた時代を思い出すわね………)
(フッ………敵陣を駆け抜け、戦場を掻き乱してくれる!)
役割を聞いたクルツは力強く頷き、グラッツは自分自身に気合を入れ、パズモはかつての戦いを思い出し、サエラブは好戦的な笑みを浮かべた。そしてユリアはリフィア達を見て、説明を続けた。
「………次にリフィア殿下以下、7名のチームが人質達を守るためにこのエルベ離宮の防衛に着く事ですが………本当によろしいのでしょうか?恐らくかなりの激戦となると思われるのですが………」
リフィア、プリネ、エヴリーヌ、ツーヤ、そしてプリネの使い魔達を見て、ユリアは尋ねた。
「余達がいるのだ!敵がどれほどいようと、全て余の魔術でひれ伏してくれる!」
「エヴリーヌ達が負ける訳ないでしょ?キャハッ♪」
リフィアは得意げに胸を張り、エヴリーヌは好戦的な笑みを浮かべて答えた。
「ツーヤ、絶対に無理をしては駄目よ?戦えないと思ったら、迷わず人質の方達が待機されている部屋まで撤退しなさい。いいわね?」
「はい。」
一方ツーヤの身を案じたプリネはツーヤに指示をし、プリネの指示にツーヤは頷いた。そしてプリネはペルル達にも声をかけた。
「みなさんも無理はせず、危ないと思ったら私の中で休んで下さい。」
「心配してくれて、ありがとう!でも、大丈夫だよ!みんなの事はボクが守るね!」
「ご主人様の……使い魔として……プリネ様達を守るため………最後まで……戦わせて頂きます………」
「精霊王女たるこの私(わたくし)には無用な心配ですわ。」
プリネの心配を使い魔達はそれぞれ力強い言葉を言い、頷いた。そしてユリアは最後に残りのメンバーであるエステル、シェラザード、ミント、カーリアン、ニル、ジェニス王立学園の制服に着替え、いつもの髪型になったクロ―ゼを見た。
「そして最後に………」
クロ―ゼを見たユリアは辛そうな表情で言った。
「………殿下、やはり考え直して頂けませんか?」
ユリアの嘆願にクロ―ゼは申し訳なさそうな表情で答えた。
「ごめんなさい……お祖母様は私が助けたいんです。それに私は一応、飛行機の操縦ができますから………どうか作戦に役立てて下さい。」
自分にも必要な役割があると思ったクロ―ゼは最後は自信のある表情で自分も作戦に参加する意味はあると答えた。
「くっ………こんな事なら、操縦方法などお教えするのではなかったか………」
「まあまあ、ユリアさん。クロ―ゼのことならあたし達に任せておいて。」
「そうだよ!ミント、ママ達と協力してクロ―ゼさんを守るね!」
「”闇の聖女”の一番弟子として……そして”風の銀閃”の名に賭けて必ずやお守りすることを誓うわ。」
「人を守るのは私の性に合わないけど、その娘に襲いかかる敵は全て斬り伏せてあげるわよ♪」
「”能天使”の誇りにかけて、必ず守りぬきますわ。」
自分が教えたことが結果的に守るべき人を危険な作戦に参加させてしまった結果に後悔していたユリアにエステル達はユリアが安心できるよう答えた。それを聞いたユリアはなんとか自分を納得させエステル達にクロ―ゼを守るよう頼んだ後最後のチームがやるべきことを説明した。
「わかった………どうかお願いする。城内に敵戦力が集中した直後、エステル殿以下6名のチームが特務飛行艇で空中庭園に強行着陸。しかる後、女王宮に突入してアリシア女王陛下をお助けする。」
「了解ッ!!」
6人を代表してエステルは元気よく返事をした。
「作戦決行は正午の鐘と同時ーーそれまで待機位置についてくれ。それでは各員、行動開始せよ!」
「「「「「「「「「「「「イエス、マム!!!」」」」」」」」」」
ユリアの叱咤激励に全員が答えた。
その後エステル達は最初の作戦を行うヨシュア達を見送ろうとしていた。
「……ヨシュア、気を付けてよね。くれぐれも無理しちゃダメなんだから。………テトリ、ヨシュア達の事、頼んだわよ。」
ヨシュアの心配をエステルはした後、テトリにヨシュア達の事を頼んだ。
「はい。エステルさんも気を付けて下さい。……ニルさん、一緒に戦えない私やパズモさん達に代わって、エステルさんの事をお願いします。」
「ええ、任せて。」
テトリの言葉にニルは頷いた。
「うん、気をつけるよ。だから、君の方もくれぐれも先走らないように。自分の力を過信しないでシェラさんやカーリアンさん達と協力すること。」
「うん……分かってる。なんと言っても、例の約束だってあるもんね!お互い、元気な姿でグランセル城で会いましょ!」
「うん……必ず!」
(ほう………あの2人、以前より距離が近くなったとは思わないか?)
(ええ………今までの旅や戦いを通じて、ただでさえ近い距離がさらに近くなりましたね……)
(?ご主人様達、何の話をしているんだろう……?)
エステルとヨシュアのやり取りをリフィアとプリネは微笑ましそうに見た後、小声で会話をし、2人の会話が聞こえたツーヤは首を傾げた。
「ヨシュアさん。隠された水路にはどんな魔獣がいるか判りません。どうか、気を付けてくださいね。」
「わかった。くれぐれも気を付けるよ。」
クロ―ゼの心配をヨシュアは礼を言って受け取った。
「エステルのことは心配しなさんな。あんたと今まで旅して色々と成長したみたいだからね。遊撃士としてだけじゃなくて女としても、みたいだけど♪」
「シェ、シェラ姉……」
シェラザードの言葉を聞いたエステルは照れた。
「(はは~ん……そういう事ね♪)フフ………」
「?ママ、顔が真っ赤だよ?もしかして風邪をひいちゃったの??」
エステルとヨシュアの雰囲気、シェラザードの言葉の意味に気付いたカーリアンは口元に笑みを浮かべ、ミントはエステルの様子に首を傾げた。
「???どういう事ですか?」
シェラザードの言葉の意味がわからなかったヨシュアは尋ねた。
「ま、まだ判らなくていいの!後、別にあたしは元気よ!だから、心配は無用よ!」
「?うん。」
照れながらヨシュアに注意したエステルはミントにも言った。言われたミントはエステルの様子がいつもと違う事に首を傾げながら頷いた。
「やれやれ、この非常事態に何とも頼もしいガキどもだぜ。」
「はは、まったくだな。さて……そろそろ俺たちは行くぞ。」
ナイアルの言葉に頷いたジンはヨシュア達に促した。
「はいっ!」
「また会おう、仔猫ちゃんたち♪」
「女神達の加護を!」
そしてヨシュア達は王都に向けて、出発した。
「……ヨシュア…………」
(ねえねえ、お姫さま……。やっぱりあの子達、旅先で何かあったのかしら?)
エステルの様子を見て、シェラザードはクロ―ゼに耳打ちをした。
(……そうかもしれませんね。2人とも、とても良い顔をしてらっしゃいましたから……。……ちょっぴり羨(うらや)ましいかな……)
シェラザードに答えたクロ―ゼはエステルを羨ましそうな表情で見ていた。
そしてそれぞれの役割を果たすため、エステル達は行動を始めた………!
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第152話