人質達が閉じ込められている部屋を探していたが、一向に見つからなかったが、ある談話室にいた執事よりナイアルも人質達と一緒に閉じ込められている事や人質達が閉じ込められている部屋の場所がわかり、向かった。
~エルベ離宮~
「ママ、あの扉の先がそうじゃないかな!?」
「そうね。あそこなら奥に通じていそうね。」
そしてエステルは扉を開けようとしたが、扉には鍵がかかっていた。
「えー、そりゃないわよ!」
扉に鍵がかかっている事にエステルは声を上げた。
「かなり頑丈な鍵だね。どこからか見つけてこないと。」
「そんな悠長な事はしていられないわ!」
ヨシュアの提案にエステルは首を横に振って答えた後、その場で詠唱を始めた。
「エ、エステル。ま、まさか………」
エステルの行動を見て、嫌な予感がしたヨシュアは冷や汗をたらしながら恐る恐る言った。
「光よ、槍と化して、敵を貫け!……光槍!!」
そしてニルと契約した事によって使えるようになったエステルの新しい魔術――光槍は扉に刺さり、そして槍は光を走らせて爆発した!爆発によって扉は吹っ飛んだ!
「いっちょあがりね!」
「わあ……凄い、ママ!」
「ハッハッハ!さすが旦那の娘だな。」
「笑いごとじゃないですよ…………ハァ…………」
扉を吹っ飛ばした事に胸を張っているエステルをミントは尊敬の眼差しでみて、ジンは豪快に笑い、ヨシュアは溜息を吐いた。そしてエステル達は先を進んだ。
「なんだ貴様ら……」
「どこかで見かけたような……。」
先を進むと見張りの特務兵達が扉の前にいて、エステル達に気付いた。
「こいつら!武術大会で優勝した……」
「遊撃士協会の連中か!?」
「ま、そういうことだ。」
自分達の存在に驚いている特務兵達にジンは戦闘態勢に入って言った。
「素直に通してくれれば見逃してあげてもいいんだけど?」
「な、舐めるなァ!」
「我らが鉄壁の守り、破れるものなら破ってみろ!」
そしてエステル達は見張りの特務兵達との戦闘を開始した。見張りの特務兵達は普通の特務兵達より手強かったが、ヨシュアとジンが相手をしている間にエステルとミントが魔術を放ち、
魔術を受けて怯んでいる隙に4人全員でクラフトを叩きこんで倒した。そしてエステル達は人質達が閉じ込められている部屋に入った。
~エルベ離宮・紋章の間~
「お、お前ら……!?」
部屋に入って来たエステル達にナイアルが真っ先に気付き、驚いた。
「やっほー、助けに来たわよ。」
「ナイアルさん。無事だったみたいですね。」
「ナイアルさん、怪我とかしていない?」
ナイアルに気付いたエステルやヨシュア、ミントがそれぞれ声をかけた。
「助けに来たって、マジか!?」
エステル達が助けて来た事にナイアルは驚いた。
「エステルさん、ヨシュアさん、ミントちゃん。こんな所で会えるなんて……」
「……え?」
その時、奥にドレス姿の少女がいた。ドレス姿の少女がクロ―ディア姫と思ったエステルやヨシュア達は少女に近付いた。
「あ、あなたがお姫様なんだ。初めまして、あたしたち遊撃士協会の……」
(あれ?ミント、この人と会うのは本当に初めてなのかな?)
ドレス姿の少女にエステルは自己紹介をしようとし、ミントは少女を見て首を傾げた。
「初めまして、じゃないですよ。エステルさん、ヨシュアさん、ミントちゃん。やっと約束通り再会できましたね。」
「え……。………………………………」
「ほえ?…………………………」
優しそうな微笑みを浮かべて言う少女の言葉に驚いたエステルとミントはしばらく沈黙した後、驚きの声を上げた。
「クロ―ゼさん!」
「ああっ、クローゼじゃない!」
「もう、2人とも。すぐに気付いてくれないなんてヒドイです。」
ドレス姿の少女――クロ―ゼは驚いている様子のエステルとミントを見て、苦笑した。
「そ、そんなこと言われてもドレス着て、髪伸ばしてるし……。一体全体、どうしちゃったの?」
「クロ―ゼさん、ドレス姿が似合っていて、とっても綺麗だね!まるでお姫様みたい!」
ドレス姿の少女がクロ―ゼとわかったエステルは驚き、ミントははしゃいだ。
「……ごめん、クローゼ。エステルって、あまり人を疑うことを知らないから。ミントもエステルを手本にしているようだから、こんな様子だよ………」
ヨシュアはクロ―ゼに申し訳なさそうな表情で謝った。
「ちょっと!それってどーいう意味よ!」
「そうだよ、ヨシュアさん!ママのどこが悪いの?」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルとミントは抗議の声を上げた。
「ふふ、それがエステルさんのいいところだと思いますから。そんなエステルさんを見本にしているミントちゃんも、将来素晴らしい大人になると思いますよ?それよりも、ヨシュアさん。まだ私を……その名で呼んでくれるんですね。」
「うん、君がそう望んでいるような気がしたから。本名の方が良かったかな?」
「とんでもありません……。ありがとう、すごく嬉しいです。」
「???ところで、どうしてクローゼがここにいるわけ?それに、例のお姫様がどこにもいないんですけど……」
ヨシュアとクロ―ゼの会話が理解できないエステルはクロ―ディア姫がどこにいるのか、尋ねた。
「あのな、目の前にいるだろ。その方が、陛下の孫娘のクローディア姫殿下だっての。」
エステルの様子を見て呆れたナイアルがクロ―ゼがクロ―ディア姫である事を指摘した。
「………………え。ええええええっ!?」
「クロ―ゼさん、お姫様だったの!?」
クロ―ゼがクロ―ディア姫である事にエステルやミントは驚いた。
「ごめんなさい、黙っていて……。本当は、エステルさんたちと王都で再会した時に打ち明けるつもりだったんですけど……。リシャール大佐に捕まってしまって……」
「え、でも、なんで?なんでお姫様が正体隠して普通の学校なんかに……!?そ、それにあたし、クローゼのことをどう呼んだらいいのか……」
「ミントもクロ―ゼさんって呼んだらいけないの?」
「どうかこのままクローゼと呼んでください。クローディア・フォン・アウスレーゼ……。本名の最初と最後を合わせた愛称なんです。」
混乱しているエステルとミントにクロ―ゼは優しく答えた。
「そうだったんだ……。えっと、それじゃあその髪は?」
「あ、これはヘアピースです。さすがに同じ髪型だと、学園生活に支障をきたしそうだったので……」
「まったく迂闊でしたよ……。そのお姿は、写真で拝見していたのに市長邸の事件で会った時にはサッパリ気付きませんでしたからねぇ。」
クロ―ゼの変装が見破れなかった事にナイアルは苦笑しながら言った。
「うふふ、ごめんなさい。デュナン小父様や、ダルモア市長も気付かなかったみたいですし意外と効果はあったみたいですね。」
「そっか、考えてみればあの公爵も親戚なのよね。………あれ?ちょっと待って………学園祭であの公爵が邪魔をした件で、クロ―ディア姫がリウイに謝罪したってユリアさんから聞いたけど、もしかして………」
「はい。劇が終わった後私、すぐに席を外しましたよね?あの時にリウイ皇帝陛下に謝罪したんです。……最も陛下は特に怒っている様子もありませんでしたが……」
「そうだったんだ………ん?もしかしてクロ―ゼ、リフィア達の事を最初から知っていたの??」
クロ―ゼから事情を聞いたエステルはある事に気付き、尋ねた。
「はい。マノリア村でリフィア殿下を紹介してもらった時は本当に驚きました。……実はリウイ皇帝陛下に会いに行った際、リフィア殿下達やツーヤちゃんもその場にいたんです。」
「そうだったの!?」
「えーーー!ツーヤちゃん、クロ―ゼさんがお姫様だって事、知っていたの!?」
「よく考えたらリフィアやプリネはクロ―ゼと面識があっても、おかしくないね。」
クロ―ゼの話をさらに聞いたエステルやミントは驚き、ヨシュアは皇女であるリフィアやプリネがクロ―ゼと面識があっても可笑しくない事に納得した。
「全くもう……リフィア達も知っていたのなら、教えてくれてもよかったのに………まあいいわ。今はそれどころじゃないわね!」
そしてエステル達は今までの経緯を一通り説明して、女王陛下の依頼で救出に来たことを説明した。
「そうだったんですか……。エステルさん、ヨシュアさん、ミントちゃん。それにジンさんと仰いましたね。助けに来てくださって本当にありがとうございました。」
「あはは、気にしないでよ。捕まってたのがクローゼだと知っていたら頼まれなくても助けに来たし。」
「そうだよ!お姫様とか関係ないよ!」
「エステルさん、ミントちゃん……」
エステルとミントの言葉を聞いたクロ―ゼは2人を見つめた。
「確かにその通りだね。それに、僕たちよりも陛下に感謝した方がいいと思う。自分の身をかえりみずに君の救出を依頼したんだから。」
「確かに、姫殿下さえ無事ならば大佐の要求を拒否することができる……。死すら覚悟されているかもしれませんな。」
「はい……。お祖母さまはそういう方です。何とか手を打たないと今度はお祖母さまの身が……」
ヨシュアとジンの言葉にクロ―ゼが頷いた時
「茶番はそのくらいにしてもらおうか……」
なんと特務兵の中隊長が銃をエステル達に向けながら現れ、また部下の特務兵が一人の幼い女の子に銃を突きつけていた。
「お、お姫さまぁ~……」
女の子は泣きそうな表情でクロ―ゼを見た。
「リアンヌちゃん!?」
見覚えのある女の子を見てクロ―ゼは驚いた。
「な、なんで女の子が!?」
「モルガン将軍のお孫さんです……。ハーケン門に監禁された将軍を動かすために連れてこられたらしくて……」
女の子がなぜ特務兵に人質にされているかわからないエステルにクロ―ゼは説明した。
「女王陛下に対する君と同じということか……」
クロ―ゼの説明を聞いたヨシュアは納得した。
「言っておくが、ただの脅しと思うなよ……。我らが情報部員、理想のためなら鬼にも修羅にもなれる!」
中隊長は鬼気迫るような表情でエステル達を睨んで言った。
「そ、そんなことで威張ってるんじゃないわよ!」
「そうだよ!子供を人質に取るなんて、卑怯だよ!」
中隊長の言葉を聞いたエステルとミントは怒った。
「中隊長、取引をしましょう。その子の代わりに私を人質にしてください。」
クロ―ゼは冷静に自分とリアンヌを交換する事を提案した。
「おっと……。その手には乗りませんぞ。さすがに我々といえど王族を手にかける勇気はない。それと較べると、モルガン将軍の孫娘というのはちょうどよろしい。人質の価値もあるし傷つけても問題なさそうだ。」
「……あなた方は……」
「……さいてー。」
「やれやれ、腐った連中だぜ。」
「うう~……………!」
中隊長の考えを聞いたクロ―ゼやエステルは軽蔑の眼差しを向け。ジンは呆れ、ミントは悔しそうな表情で唸った。
「フン、何とでもほざくがいい。そろそろキルシェ通りから巡回部隊が帰還する頃合いだ。親衛隊、遊撃士、もろともここで一網打尽にしてくれるわ!ついでにメンフィルの皇族達も人質にしてくれる!」
「あー、それは無理ってもんね。ここに来るときにあたし達が倒しちゃったから。それにあんた達が束になっても、プリネさん達には敵わないわよ。」
得意げになっている中隊長の言葉を否定する声が、中隊長と特務兵の後方から聞こえて来た。
「雷よ、走れっ!……電撃!!」
「ギャァァァッ!?」
そしてリアンヌを捕まえている特務兵に魔術によってできた雷が命中し、命中した特務兵は感電した瞬間、リアンヌを放した。
「せいっ!」
「ブギャッ!?」
そしてシェラザードが現れ、鞭を特務兵に震った!鞭の攻撃によって特務兵は吹っ飛ばされて気絶した。
「な……!?」
突然の出来事に中隊長は驚いた。
「ひぐっ……うう……。うわわああああああん!」
恐怖から解放されたリアンヌは泣き始めた。
「よしよし、もう大丈夫よ。エステル、ヨシュア。ずいぶん久しぶりじゃない。」
泣いているリアンヌをあやしながらシェラザードはエステルとヨシュアを懐かしそうな表情で言った。
「シェ、シェラ姉!?」
「来てくれたんですか……」
シェラザードの登場にエステルとヨシュアは驚いた。
「な、なにを悠長に挨拶しておるかああっ!」
自分の存在を忘れて呑気に再会を祝っているエステル達を見て、中隊長は怒鳴った。
「やれやれ、無粋の極みだね。」
その時中隊長に、導力の銃弾が命中した!
「うおっ……」
銃弾が命中した中隊長がよろけ始めた所を
「せいっ!」
「ガハッ!?」
シェラザードは中隊長に鞭を震って、壁に激突させた。
「雷よ、落ちよ!………落雷!!」
そして止めに魔術による雷を中隊長に放った!
「ギャァァァァァァッ!?……………」
シェラザードの魔術を受けた中隊長は悲鳴を上げた後、気絶した。
「今のはオマケよ。」
「エ、エゲツな~。って今撃ったのって……」
シェラザードの容赦ない攻撃に冷や汗をかいたエステルはもう一人の味方の存在の正体を言いかけた所を
「……オリビエさんですか?」
ヨシュアが続けた。
「ピンポーン♪いやいや。真打ち登場といった所かな。」
そしてオリビエがエステル達の前に姿を現した。
「はは、つくづく突拍子もない兄ちゃんだな。それに、シェラザード。ずいぶん久しぶりじゃないか。」
「どうも、ご無沙汰してます。まさかジンさんがリベールに来てるなんてね。あなたがエステルに付いているって聞いたからあんまり心配してなかったわ。」
「はは、そりゃさすがに買いかぶりすぎってもんだぜ。しかしお前さん……ずいぶん色っぽくなったなぁ。正直、見違えたぞ。」
「あ、あら、そうかしら?」
ジンの賛辞にシェラザードは照れた。
「むむむ。そこはかとなくジェラシー。ボクのことを散々もてあそんでおいてゴミのように捨てるのねっ!」
「ああ、オリビエ。アイナが会いたがってたわよ。また一緒に呑もうだってさ。」
「ごめんなさい。ボクが悪うございました。」
シェラザードとジンの会話にいつもの調子で入ろうとしたオリビエだったが、シェラザードの言葉を聞き、表情を青褪めさせて謝った。
「それであなたがミントちゃん………でいいのかしら?」
そしてシェラザードはミントに気付いて、尋ねた。
「うん!お姉さんは誰?」
「あたしはシェラザードって言ってね。エステル達の姉代わりよ。シェラお姉さんって呼んでくれると嬉しいわ♪」
「はーい!よろしくね、シェラお姉さん!」
「あら。話には聞いていたけど素直で可愛い娘ね。エステルの娘とは思えないくらい、可愛い娘じゃない。」
「ちょっと、シェラ姉!それ、どういう意味!?」
シェラザードの言葉に反応したエステルはシェラザードを睨んだ。
「フフ………あんたに娘ができたって聞いたから、どんな娘かと思ったけどまさかこんな素直で可愛い娘があんたの娘になるとは思わなくてね。」
「まったくもう……。」
笑っているシェラザードを見て、エステルは溜息を吐いた。
「でもシェラさん。よく王都に来れましたね。王国軍に関所が封鎖されてませんでしたか?」
「ええ、だからヴァレリア湖をボートを使って移動したわ。で、王都の波止場に上陸したわけ。」
「なるほど、考えましたね……」
「でも、どうしてまたスチャラカ演奏家と一緒なの?」
「王都のギルドでばったり出くわしちゃってね。スッポンみたいに離れないから仕方なく連れてきたのよ……」
オリビエが同行して来た理由をシェラザードは呆れの表情で溜息を吐きながら説明した。
「ハッハッハッ。こんな面白そうなことをボクが放っておくわけないだろう。ところで、そちらのお嬢さんが……」
シェラザードの呆れと溜息を見ても、オリビエは気にせずいつもの調子で笑った後、クロ―ゼを見た。
「あ、紹介するわね。女王様のお孫さんにあたるクローディア姫殿下よ。あたしとヨシュアの友達なの。」
「初めまして、お2人とも。助けに来てくださって本当にありがとうございます。」
「お気になさらずに。これも遊撃士としての務めです。」
「フッ、美しき姫君を救うのは紳士としての誉れと言うからねぇ。お会いできて光栄だ、プリンセス。」
クロ―ゼにお礼を言われたシェラザードとオリビエが会釈をしたその時
「クローゼ、ご無事でしたか!」
「ピューイ!」
ユリアとジークが部屋に入って来た。
「ユリアさん、ジーク!」
ユリアとジークの無事な姿を見たクロ―ゼは微笑んだ。
「ピュイピュイ!ピュウーイ!」
「ふふ、よかった。また会うことができて。」
「殿下、よくご無事で……。本当に……本当に良かった……」
「ユリアさんも……元気そうでよかったです。」
その後要撃班であるリフィア達や遊撃士、親衛達達も合流し、救出が成功した今後の方針を決めるために状況確認を行う事にした…………
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第150話