No.461124 IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~ドラーグさん 2012-07-28 16:14:51 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1488 閲覧ユーザー数:1449 |
「戻ったわ」
クリスマスの夜。亡国機業のスコールはアメリカのどこかにある高層ビルの一室の扉を開けた。
「スコール!」
すると、フロアの奥から同じく亡国機業のオータムが駆け寄ってきた。
「おかえり!」
「あら。オータム。出迎えありがとう」
スコールはオータムの抱擁を受け入れる。
オータムはあることに気づいた。
「・・・・・アイツは? Mはどうしたんだ?」
いつも無言で仏頂面のもう一人のメンバーがいない。正直いなくてもいいのだが、戻ってくるときは同じはずだ。
「・・・・・・・・・」
すると、スコールの表情に陰りが出た。
「スコール?」
「オータム・・・・・Mは・・・死んだわ」
「!?」
その言葉を聞いて、オータムは体を硬直させた。
「死んだ・・・・・?」
「ええ・・・・・」
鎮痛な表情のスコールを見て、オータムは嫉妬にも似た感情を胸にする。
そしてハッとする。スコールの金色の髪の毛が不自然に切られているのだ。
「スコール・・・・・これは?」
「ああ・・・ちょっと、ね」
「誰にやられた?」
「桐野瑛斗よ。ちょっと不意打ち気味にビーム攻撃を食らっちゃって」
「桐野・・・瑛斗・・・・・!」
オータムは呻くように瑛斗の名を口にする。
そんなオータムの頬に触れ、スコールはささやいた。
「いいのよ。あなたが気負いする必要はないわ。Mが死んだって、私は死なないわ」
そして、オータムを抱き寄せ、頬にキスをする。
「私は、あなたの恋人だもの」
「スコール・・・・・」
オータムはうっとりしたように笑う。
「さ、食事にでも行きましょうか。ずっと一人にして、ごめんなさいね。お詫びと言ったら何だけど、いい店があるの」
「ううん。いいんだ。私は、スコールがいてくれれば・・・・・」
「ありがとうオータム・・・・・。支度してくるわね」
「うん。私もしてくる」
スコールはオータムと別れ、自室へ入る。
「・・・・・・・・・・・・・・」
その瞬間、優しい笑みは消え、真剣な表情になる。
「・・・・・・・どうやら、記憶の隅には、残っているようね。桐野瑛斗・・・・・・」
その手には、黒いリングが。
「次に会うときは・・・必ず、堕してあげるわ。ふふ・・・・・必ずね」
そして、その顔は邪悪に歪むのだった。
「・・・・・・それで、どういうつもりなんだ?」
時同じくして織斑家。千冬は二階のベランダで電話をしていた。
『うふふ・・・・・。良かったでしょ? 迦楼羅の使い心地は』
その相手は、千冬の友。束。しかし、今は素直に『友』と呼べるかどうか千冬自身もわからない。
「ああ。文句なしの性能だった。だが、私の質問の答えになってないぞ」
『んー、迦楼羅を使って何がしたかったのかって聞かれてもなぁ・・・・・。しいて言うなら、暇つぶし?」
「それだけか?」
『うん。それだけ」
「・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
二人の間に、沈黙が訪れる。
「・・・・・わかった。お前がそう言うんだ。そうなんだろうな」
『うんうん。わかってくれて束さん嬉しい♪』
「お姉ちゃーん! ごはんできたよー!」
一階から、マドカの声が聞こえる。
「ああ。今いく」
千冬は返事をした。
『ちーちゃん・・・・・』
「なんだ?」
『なんだか面白いことになってるみたいだね』
「お前には関係ない」
『大切にしてね。お互い、失うにはあまりにも大きいから』
束の声が、いつものうざったい位のテンションとはかけ離れた、細い声になった。
「・・・・・お前に言われるまでもないさ。じゃあな」
『うん』
そして千冬は電話を切った。
「・・・・・・・・・・」
しかし、千冬は感づいている。
「アイツ・・・・・なにか企んでいるな・・・・・・・」
何を企んでいるのかは分からない。だけど、嫌な予感だけはする。
「あの時のような無茶でなければいいが・・・・・・・・まさかな」
呟き、千冬は自分の考えを一蹴した。
「もう二度と、あんなことは起きない・・・・・と願いたいな」
自嘲気味に呟き、千冬はマドカのもとへ向かった。
「・・・・・・・・・・」
電話の受話器を耳から離した束は、そばにいた目を閉じた十二歳ほどの少女の頭を撫でた。
「束さま?」
「くーちゃん」
「はい?」
「・・・・・・・私は、だぁれ?」
「え・・・・・」
『くー』と呼ばれた少女は困ったように体を強張らせた。
「誰と言われましても・・・・・束さま、としか」
その返答を受け、束はクスリと微笑んだ。
「ぶっぶー。私は、くーちゃんの『お母さん』だよ?」
「いえ、束さまは束さまです」
きっぱりと言われ、束は、まいったなぁと笑う。そして、自分の斜め上を見上げた。月明かりが差し込んでいる。
「・・・・・今度は、もっと楽しいことが起こるよ。ちーちゃん」
呟くように言って、束は足元に広がる光景を見た。
容器に入り、月明かりを受け怪しく光を放つ―――――――――――
大量のISのコアを――――――――――。
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クリスマスの闇と、影