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持たざる者
第8話
「どうしたんだな?また難しい顔をして?」
うんうん唸っている私を見て、デクさんが心配そうにこちらを見ていた
「あぁ…大したことじゃないから気にしなくていいよ」
「ならいいんだな。あ、そういえばショウは腹は減ってない?」
「ん?まだそこまでは減っていないけど…」
だが、歩き続けるにはエネルギーが必要不可欠である
10秒で飲みこんで2時間キープ出来るような素敵なゼリーなんて存在していないこの世界である
旅先ではどんな保存食を食べているのだろうか?
そして、その食文化に自分が対応出来るのか、一抹の不安がよぎった
「干し肉食べるか?何も食べないよりはマシだと思うんだな」
そう言うと、立ち止まってその場に座り込んだデクさんは、背中に背負っていた荷物の肩紐の右肩側だけを抜いて、手前にグルンと回すと中をあさり始めた
あったあったと、布?に包まれた物体をほどくと、拳2つ分程度の茶色い塊が出てきた
「なるほど、ジャーキー的な感じなのかな?」
デクさんは小刀で削って、一口分をそぎ落としてくれた
「おぉこれが…じゃあいただきます」
口に放り込んで、奥歯で噛みしめてみる
塩気が僅かに感じられる程度だが、噛んでいくうちに唾液の水分を利用してだんだん柔らかくなっていった
「ちなみにこれは何の肉なんですか?」
「これはイノシシの肉なんだな」
デクさんは自分の分もそぎ落とすと、口に放り込んでいた
「なかなか美味しいですね」
「旅をしていても美味しい物は食べたいって思うんだな。こう言うのは得意だから、色々あるんだな」
そういうと、干した果物も出してきた
「お?これは杏子かな?ドライフルーツとはなかなかやりますなぁ」
感心しながら袋を見ていると、干しブドウまであった
「どらい…?干し肉も干した果物も、国が違うと呼び方が全然違うんだな」
「あ、ジャーキーやドライフルーツは私の国じゃなくて、他の国の言葉なんだよ」
「オイラは漢って国しか知らないから、お前がうらやましいんだな」
「世界は漢だけじゃない、ずっとずっと遠くには色々な人々が生活していて、一年中暖かい国や、逆に寒い国もあるから、そこに合った生活をしている人達がいるんだよ」
「すごいなー。ショウは物知りなんだな」
「まぁ私も何処がどうだって詳しくは知らないんだけどね」
「村に帰ったら、皆にもその話を聞かせてほしいんだな。きっとみんな喜んでくれるんだな」
「ん?そうかい?大した話じゃないけど…」
「知らないことを聞くのはとても楽しんだな」
なるほど…たしかにそうかもしれない自分が知らない新しい知識は確かに面白いと思う
旅の土産話にはちょうど良いかもしれないなと思えた
「やっぱりショウは難しい顔をしているよりも、笑顔でいる方がいいんだな」
どうやらまた気を遣わせてしまっていたらしい…
デクさんは本当に気が利く良い人だと思う
「デクさんと話していると気が楽になったよ。ありがとうね」
「オイラは大したことしていないんだな。でも難しいことを考えても御飯は美味しくないんだな」
「なるほど。確かにその通りだね」
「そうなんだな」
笑いあうと、また二人は歩を進めることにした
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三国知識も武力もない…
いわゆる普通の一般人である主人公が恋姫世界で生きていく物語です
ちなみに一刀くんは魏ルートです