持たざる者
第6話
簡単な自己紹介を済ませると、デクさんの方から話しかけてきた
「ところでお前は変わった服を着ているんだな」
「…まぁ確かに徒歩で移動する服装じゃないですよね…」
真夏にレザー一式で散歩する馬鹿は…私くらいだろう
「それじゃあ馬か?馬に乗る格好だとしても、そんな恰好見たこと無いだよ」
「馬?馬じゃなくて、バイクに乗る時の格好ですよ」
馬なんて日本じゃ公道を走っている姿なんて見たことが無い
イギリス辺りではまだいるんだっけ?そんなコトを考えていると
「…ばいく?ばいくってなんなんだな?」
「へっ?」
予想のはるか斜め上の返答に、一瞬思考が止まってしまった
何やら私の一般常識はこの人には通用しないようだった
「え?バイクを知らない?えっと…自動二輪だよ?」
「じどうにりん?」
ますます訳が分からないという表情をしている
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「すいません、つかぬことをお聞きしますが、今って平成24年だよね?」
何か嫌な予感がしてきたので、とりあえず当たり前だと思っていたコトの再確認を始めることにした
「へいせい24年?年号のことか?年号なら…光和3年だったはずだよ」
今度は私が驚く番だった…
「こうわ?3年?」
ここは日本じゃないのか?じゃあなんで日本語が通じるんだ?
疑問は幾つも湧いてくるが、とにかく情報を集めることが先決だと思い更に質問を重ねることにした
「えっと…じゃあ西暦何年なのかな?」
「せいれきって聞いたことないんだな」
「なんってこった!!」
頭を抱えて天を仰いでしまった
さすがに今までのやり取りでその返答は予想できたが、脳内では混乱してちっちゃいおじさん達が白旗を振っているような気分だった
目を見れば嘘をついていないことがはっきりわかった
「ショウ…お前さっきから変なんだな…暑さでおかしくなったのか?」
「いや…まだ大丈夫だと思う…」(自信ないけどね…)
心配そうにこちらを見ているデクさんに、これ以上気を遣わせるのもマズいので、適当に返答しておく
「じゃあここって何処なのかな?」
OK私も腹を括ろう、もぅ日本じゃないってことは確定したんだ、なんて答えられても素直に受け止めるんだと心に誓うと、デクさんの返答を待った
「幽州と冀州の境辺りなんだな」
「中国じゃねぇか!ちくしょう!」
遂に天に向かって吼えてしまった
国外でタイムスリップ的なノリですか?そうなんですか?神様答えてください…
ホロリと涙が出来たが、こんなやり取りをしていても未だに歩くペースが変わっていない二人はさすがとしか言えなかった
「ショウ…本当に大丈夫なんだな?疲れたのなら少し休んだ方がいいんだな」
「いや、大丈夫なんだな。このまま進もう…ちょっと頭の中が疲れてるだけだから、歩くなら平気なんだな…」
語尾がデクに影響されている時点でダメかもしれないと思いつつも、歩くペースだけは変えなかった
「本当に疲れたらちゃんと言うんだな?わかっただな?」
「あ、ハイ…そうします」
目がちょっと強めだったので、少し恐縮しつつも返事するのだった
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三国知識も武力もない…
いわゆる普通の一般人である主人公が恋姫世界で生きていく物語です
ちなみに一刀くんは魏ルートです