No.460818

恋姫的外史 第5話

らぱんさん

三国知識も武力もない…
いわゆる普通の一般人である主人公が恋姫世界で生きていく物語です

ちなみに一刀くんは魏ルートです

2012-07-28 02:23:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:672   閲覧ユーザー数:660

持たざる者

 

第5話

 

目の前を歩く大男の背中を見ながら歩き続けること10分程経過した…

ただ黙々と歩き続けているのだが、別に気まずい雰囲気が流れている訳ではなかった

 

(もしかしたら気を使われているのかな?)

 

村まで二日という言葉に驚いていた私を気遣って、無駄な体力を使わせなようにしているのかもしれないし、ただ単に話下手っていうオチの可能性もあった

 

「それにしても暑いな…」

 

バイクで走る分には気にならないレザーの上下も、徒歩では蒸れて大変な暑さだった

上着は既に脱いで、袖を腰に巻いている状態である

 

それに荒野をひたすら突き進んでいるので、日差しを遮る物など何一つ存在していないのだから、体力がひたすら奪われていく

 

そういう意味ではただ話すという行為でさえも、自分の体力を奪う要因の一つになることを実感した

 

「まだ今日は風が吹いているから、少しは涼しい方になるだよ」

 

私の雰囲気を察してか、男は声をかけてきた

 

「まぁ確かにそよ風程度の風でも、無いよりは随分マシですよね…」

 

常に吹いている訳では無いのだか、たまにそよそよと頬を撫でる風のお陰で、幾分か気分は紛れている

 

ただ、二人して炎天下の中を汗だくで歩いているので、

腰に紐で結んでいた瓢箪を外そうとしているのを「まだ大丈夫だから」とやんわりと断った

 

この荒野では水はとても貴重な物であることは分かっている

簡単に補給もままならないし、なにより一人分だったはずなのだから村までの距離等も計算してギリギリの量かもしれないと思うと、そう簡単にもらう訳にも行かなかった

 

それに私は手ぶらで、相手は荷物を背負っているのだから、尚のこと貰う訳にはいかないと思っていた

 

そんな感情が伝わったかは分からないが「大丈夫か?」と言いたげだった目線を、すぐに思考を切り替えたらしく、彼は自分で一口飲むとまた黙々と歩きだした

 

ふとお互いの自己紹介も済ませていないことに今更ながら気付いた

 

「そういえば名前はなんていうんですか?」

 

「ん?オラの名前か?みんなはオラのことをデクって呼ぶだよ」

 

デク…愛称…なのかな?

 

「じゃあデクさんでいいのかな?」

 

「お前の好きに呼んで構わないだよ」

 

名前と言う者にこだわりが無いのか、気に入っているのかは分からないが…

誰を指すのかが分かれば構わない…そんな感じだった

 

(…木偶の坊って意味じゃないよな?)

 

体格とは裏腹にちょっと頼りない感じはあるけど、思いやりのある良い奴だし

 

「お前の名前はなんていうんだ?」

 

「私?私は…そうですね、ショウって呼んでください」

 

デクさんに習って、私も呼びやすい愛称的な名前を答えることにした

 

「ショウだな?わかっただよ。

「これからよろしくお願いしますね」

 

そう言いながら右手を差し出すと握り返してくれた

 


 
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