持たざるもの
第2話
「さすがにこれだけ広いと進んでいる気がしないな…」
あれから30分程度は歩いた気がするのだが…
周囲の風景は草の生える位置が変わっただけで、特にこれといった収穫は無かった
「やれやれ…じゃあ次は左に方角を変えて…ん?」
遠くでなにやら乾いた土が空に舞っているような気がした
だがまだ距離が離れすぎているので、少し大きなつむじ風が起きたのか?くらいの感覚である
特にすることもないので、ただなんとなくそのつむじ風が消えるまで見ていようとすると、
風向きが変わったのか、次第に大きくなりこちらに向かっているような気がした
「さすがに竜巻にはならないよな…?」
観察するにつれてだんだん大きくなる砂嵐に、さすがにマズいと直感が訴え出し始めた頃、
前方の砂塵になにか影が見えた気がした
「…馬?」
目を凝らして良く見ると、どうやら何かの動物の群れがこちらへ向かっているようだった
「バッファローとかだったら即死だよな…」
ふとテレビの特番でアフリカの動物達が草原を駆け巡るシーンを思い出した
角を持った動物だったら正直洒落にならない
直進コースにさえいなければ巻き込まれることもないだろうと、真っ直ぐ突き進んでくる砂煙の群れから離れようとしたのだが…
「って!すげー多いぞ!」
なんとなく姿が確認できる程になった頃には、その群れの多さが異常な量であることが分かった
「だからってこのまま巻き込まれる訳には…」
とにかく距離を取るために、ひたすら突き進んでくる黒い塊を避けるために群れに対して90度左方向へ向けて全力で走りだした
「クソッ!間に合うのか?!」
全力で走りながらも、時折横目で確認してみるが…
「まだだ…まだ足りな…ゲッ!」
どういう訳か、こちらに微妙に方向転換してきているようだ
「チクショウ!一体なんだってんだ!」
適当な茂みに隠れたとしても、蹴散らされてしまう恐れがあるので意味がないだろう
「岩場か…隠れられそうな穴なんて…」
周囲を見渡してみても、今まで石ころやちょっとした雑草しかなかった荒野には、そんな都合の良い物はなさそうだった
…そんな時だった
「そこの人!こっちなんだな!」
土と同系色の布を被った男が草むらの陰から声をかけてきた
「済まない!」
全力で走っていたので、スライディング気味にその場に滑り込んだのだった
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三国知識も武力もない…
いわゆる普通の一般人である主人公が恋姫世界で生きていく物語です
ちなみに一刀くんは魏ルートです