真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の
[第11話]
旅でのキズを癒す為に風呂に入りに行ったのに、更なる深いキズを心に負った次の日の朝の事です。
ボクは朝食を取りに宿の食堂へ行きました。
他の4人は食事を取り終えたのか、茶を飲みながら何やら話し合っています。
ボクの姿に気が付くと、周泰は土下座をしてきました。
「刹那様! 昨晩は、本当に申し訳ありませんでした!」
「ああ、うん。良いよ、もう。ボクの性別を話していなかったのが原因だしね」
昨晩の事は早く忘れたいので、ボクは周泰を許しました。
それでも恐縮する周泰に、ボクは続けて言います。
「これから気を付けてくれれば、それで良いからさ」
「はい。ありがとう御座います」
場が和んだのを感じたのか、皆それぞれに発言してきました。
「わっ私は、メガネを外していたので、その、良く見えていませんでした!」
呂蒙が顔をほんのり桜色に染めながら、ボクにそう言いました。
「そっ、そうなの?」
「はっ、はい!」
呂蒙は、ボクの問いかけに肯定だと答えました。
ボクに気を遣ってくれているのでしょう。
ありがたい事です。
「はわっ……わ、私は、その、湯けむりで、良く見えていませんでした!」
「あわ……あ、そ、そうです。湯けむりで……見えません……でした」
呂蒙の発言の後に諸葛亮と
しかし昨晩、両人が指の隙間から凝視していたのをボクは気付いています。
だからボクは、白い目で疑いながら2人を見詰めていました。
「……」
「ほっ、本当でしゅ!」
「はうぅ。ほ、本当……です」
疑いの目で見ているボクに諸葛亮・龐統の両人は、顔を赤らめながら重ねて見ていないと主張してきました。
「はあ~。わかった、信じるよ」
「はうぅ。よ、良かったぁ」
「へうー」
今更、起こった事はどうしようもありません。
ボクは、そう自分に納得させ受け入れる事にしました。
昨晩の事は、これで手打ちになって良かったと思っていたとき。
「あれ? 皆さんには、見えて無かったんですかぁ? 私は、家族以外の(ピー)を見たのは初めてだったので驚きました(喜)」
と、天然印の周泰さんが皆の気遣いをぶち壊す発言をしてくれました。
もうボクは、サメザメと泣くしかありませんでした。(号泣)
場の空気を読めない周泰の発言の後、ボクたちは街を出発して漢中へ向かう事にします。
でも、とても微妙な雰囲気の旅発ちでした。
周泰は、事態を理解していないのか『?』ってしています。
呂蒙は、そんな周泰を『悪気は無いんです』って
諸葛亮と龐統は、ボクをチラッと見ては顔を桜色に染めて『きゃあ♡』って、小さく叫んでいます。
ボクは気にするのも疲れたので、そのまま静観することにしました。
そんな微妙な雰囲気のボク達が何日間か益州へ向かっていると、ちらほらと少数の集団が道中に見受けられるようになりました。
「何だか益州に近づくほど、人の数が増えているみたいだねぇ」
ボクは誰に言う訳でもなく、そう
「はい。これらの集団は、明らかに荊州を出る事を意図していますね」
諸葛亮は、ボクの言葉に自分の分析を加えて返答してくれました。
ボクは事情を把握すべく、周泰に探って貰うことにします。
「すみません。ちょっと良いですか?」
「あぁん? なんだい、嬢ちゃん?」
周泰は、手頃な集団にいる年配の男性に声を掛けました。
「旅の者ですが、皆さんはどちらへ行かれるのですか?」
「そんな事たぁ決まってねぇよ。こちとら、荊州から出ることしか頭にねえからな」
「荊州を出て行くのですか?」
「おおよ。新しく荊州の南陽太守になった御方が、あり難くも税を上げて下さったんだ。そのお陰で、わしらは生活出来なくなったんで出て行くんだよ」
周泰は、更に詳しく聞き込んでいきます。
「太守様に、何か理由があったんでしょうか?」
「さあな。何でも『蜂蜜をもっと買う為に税を上げるのじゃ!』とか何とか、ふざけた事をその太守様がおっしゃったそうだぜ?」
「そうですか。ありがとう御座いました」
「良いって事よ。じゃあな!」
周泰は男性との話しを切り上げた後、他の集団にも声をかけて事情を聞き込みました。
何件か聞き込んだ後、彼女は一連の聞き込み情報をボク達に伝えてくれます。
「蜂蜜を買う為に税を上げている?」
「はい」
ボクは周泰からの報告に眉を
冗談だと思いましたが、聞き込んだ集団すべてが同じ事を言ったそうです。
「太守の名前は?」
「定かでは無いですけど、袁家の一門とか」
汝南袁氏は三公を度々輩出する名家。
その一門の者が我欲塗れの統治をしいている。
その事に、事態が急速に悪化しているとボクは思い知ります。
この分では益州との州境は大変な事になっているだろうからと、ボク達は急いで益州へ向かう事にしました。
何日も経つ事なく、ボク達は益州に到着します。
案の定そこには、移民・流民の団体さんが待っていました。
「刹那様!」
益州に入り団体さんを見回していたボクを、誰かが呼ぶ声がしました。
視線を合わせてみると魏延でした。
なぜ、ここに居るのでしょうかね?
魏延に詳細を確認すると、司馬徽一行の漢中移住の任務は滞り無く終了したとの事。
そのあと厳顔が荊州からの移民対策に乗り出した為、魏延は隊と一緒にボクを迎えに来たという事でした。
「そうか。ありがとう、焔耶」
「いいえ! 当然のことです」
ボクが魏延にお礼を言うと、彼女は見知らぬ人物である周泰に気が付きます。
「刹那様、この人物は?」
「うん? ……ああ。彼女は周幼平と言って、新しくボクの配下になってくれたんだ」
魏延は暫く周泰を見詰めた後に、傍によって自己紹介を始めます。
「ワタシは魏文長と言う。これから宜しく頼む」
「あ、はい! 私は周幼平です。宜しくお願いします!」
魏延と周泰は意気投合したのか、真名を交わしたりして色々話しているようでした。
「ところで明命。これまでの旅路では、何事も無かったのか?」
「え? え~とですねぇ」
「何だ、何かあるのか?」
「実は街の宿でお風呂に入ったんですけど、刹那様を女性と勘違いして一緒にお風呂入っちゃったんですよぉ」
「なぁっ?!」
周泰が先の宿での一件を言及し始めた事にボクは慌てます。
しかし時すでに遅く、魏延に知られてしまいました。
「その時に家族以外の(ピー)を初めて見てしまって驚きましたぁ(喜)」
「「「「「……」」」」」
ああっ、何でしょうか?
世界の均衡を正す為に日夜を問わず
ボクは、天は理由も無く物事を起こすことは無いと分かってはいます。
例え今のボクに理由が分からなくても、そうであると。
でも、ボクは天に問いかけました。
『もうちょっと穏便にする事は出来なかったのでしょうか?』と。
そして、
『お願いだから空気を読んでね?』と、天然印の周泰さんに思わずにはいられませんでした。(泣)
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無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
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