No.459751

IS学園にもう一人男を追加した ~ 16話

rzthooさん

・・・

2012-07-26 15:16:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2896   閲覧ユーザー数:2842

ラウラSIDE

 

 

今、目の前のもう一人の男子が私と対峙している。その様子は特に驚いたものはなく、隙だらけでいつでも仕掛けられた。

だが・・・

 

(なぜだ、隙だらけだというのに、何故体が動かん・・・こんなの教官と出会って以来だぞ)

 

本当にこいつは何者なんだろうか。私がそんな事を思っていると、痺れを切らしたのか向こうから話しかけてきた。

 

獅 「・・・来ないのか?」

ラ 「くっ・・・」

 

いつの間にか震えていた手を握り締め、ワイヤーブレードで攻撃を開始する。

 

獅 「(フッ)」

 

その時、朝霧の口が一瞬、笑ったように見えた。

 

 

獅苑SIDE

 

 

俺は動かず、銀髪の目を見続けている。体を楽にし、ワイヤーブレードをただただ、避け続ける。

 

ラ 「ちょこまかとっ・・・これならどうだ!」

 

ワイヤーブレードが俺を前後左右上下360度から狙ってくる。俺は特に慌てることなく、その包囲網から抜け出す。

 

ラ 「かかったっ」

 

避ける場所を予想していたのだろう、避けた方向にレールカノンを4、5発、撃ち込まれる。

 

(やっぱり、この程度か・・・)

 

Bソードを1本を片手で持ち、こちらに当たりそうな3発の砲弾を斬る。砲弾は綺麗に真っ二つになり、俺に当たらず、通過する。その後、銀髪は諦めずにワイヤーやレールカノンで俺を捕らえようとするが、無駄な動きなく避け続け、下に降りる。

 

ラ 「はぁ、はぁ」

獅 「・・・もう、息切れか?」

ラ 「っ! 舐めるなぁ!」

 

全てのワイヤーが俺に向かってくる。だが、ワイヤーは単純な動きで真正面から突っ込んでくるため、Bソード1本でブレード部分をすべて斬りおとす。

 

ラ 「くっ・・・ならっ」

 

次はレールカノンを正確に撃ってくるが、すべてBソードでぶった斬る。

 

獅 「・・・次はこっちの番」

 

そう言って、腰についてるもう1本のBソードを空に向かって投げる。

 

ラ 「ん?」

 

銀髪は投げたBソードに一瞬、気を取られ、隙ができる。その隙を狙って一瞬で間合いを詰め、Bソードを振ろうとするが、銀髪の口元が緩み、右手をこちらに向ける。その瞬間に体の自由を奪われた。

 

ラ 「そんな子供だましにひっかかると思っていたか」

獅 「・・・AICか」

 

AIC、慣性停止結界とも呼ばれ、正式名称はアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。元々、ISに搭載されているPICを発展させたものであり、対象を任意に停止させる事ができる。

 

ラ 「貴様は一応、知識はあるみたいだな。だが、それでも私とシュヴァルツェア・レーゲンには遠く及ばない」

一 「獅苑ーっ!」

箒 「獅苑っ!」

シ 「朝霧君っ!」

 

そう言ってレールカノンの砲口をこちらに向ける。一夏は俺を助け出そうとデュノアを押しのけ、こちらに向かおうとするが、エネルギーが足りず、地面に落ちる。シャルルも相性の悪い銀髪との戦闘で体力的に限界が近いのか援護は期待できない。箒は言わずもがなだ。そんな状況を説明していると、レールカノンの照準は俺の顔面を捉える。

 

ラ 「これで終わりだ」

獅 「・・・どっちが?」

(コツンッ)

ラ 「ん・・・?」

 

銀髪の頭になにかが落ちて、銀髪の集中力が乱れる。その瞬間、俺の体は自由になり、レールカノンの砲口部分をBソードで斬る。

 

ラ 「くっ」

獅 「・・・」

 

そのまま、手に持っていたほうのBソードを上空に上げ、両腕を銀髪の懐に入れて、バルカンを連射する。

 

ラ 「っ! そんなものっ!」

 

だが、威力の低いバルカンでは一瞬しか怯ます事しかできず、銀髪のISの両腕のプラズマ手刀で反撃に出るが、慌てず後方に下がり、銀髪の頭に落ちたBソードを足で拾い上げ、両手持ちで横ぶりで斬りつける。銀髪はプラズマ手刀で受け止めるが、そのまま後ろに吹っ飛ぶ。そして、上空に投げた、もう1本のBソードをキャッチし、2本のBソードを腰に戻す。

 

一 「いったい、どうなっているんだ?」

 

一夏が何がなんだかわからず、ISを装着したまま頭を悩ませている。箒やデュノアも状況についていけないようだが、デュノアは分かる範囲だけ一夏に説明する。

 

シ 「僕もよく分からないけど、朝霧君はAICの弱点を突いてカウンターを決めたみたいだね」

一 「弱点?」

 

AICは確かに相手からしたらとても厄介だが、それ相応の弱点がある。それは、相手の動きを停止させてる時にかなりの集中力を使うため、1対複数の戦いには向かないという点だ。現にBソードが銀髪の頭に落ちたときに集中力が乱れ、AICの効力が切れた。

 

ラ 「・・・こんな、こんな事で・・・」

 

銀髪も俺の行動の意味に気づいたのか、怒りが徐々に湧き上がってるのが遠目からでも分かる。さすがに冷静を保っていた感情が崩れる。

 

ラ 「貴様はーっ!」

 

銀髪は瞬時加速を使って、俺に向かってプラズマ手刀を振り下ろすが

 

[ガキンッ!]

千 「・・・やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」

一 「千冬姉!?」

 

織斑先生がIS用近接ブレードを生身で軽々と持ち、銀髪の攻撃を止めた。その姿はいつもと変わらず、普段着ている黒いスーツ姿だった。

 

千 「模擬戦をやるのはかまわんが、アリーナのバリアーを破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」

ラ 「・・・教官がそう仰るなら」

 

銀髪はさっきまでとは違い、冷静な顔立ちに戻り、ピットに向かう。

 

千 「お前らもそれでいいな?」

一 「あ、ああ」

 

いつの間にか傍にいた一夏が返事をする。

 

千 「教師には"はい"と答えろ」

 

鋭い眼光で一夏を睨みつける。一夏は体をビクッと震わせ、額から汗がダラダラと流れている。

 

一 「は、はい!」

シ 「僕もそれでかまいません」

獅 「同じく」

 

俺たちの返事を聞いて織斑先生はアリーナ内にいる生徒たちに向けていった。

 

千 「では、学年別トーナメントまで私闘を一切、禁止する。解散!」

[パンッ!]

 

織斑先生が手を叩き、アリーナ内にいた生徒たちが去っていく。織斑先生は一仕事を終えた感じでフィールドから出るためピットに戻る。その後を俺は追おうとする。

 

一 「獅苑、どこにいくんだよ? もしかして、千冬姉に用か?」

獅 「・・・そんな所だ」

一 「そっか、じゃあ、俺たちは急いで保健室に鈴とセシリアを運ばなくちゃいけないから」

 

鈴たちのほうを見ると、すでにデュノアが二人を介抱している。

 

獅 「そうか・・・またな」

一 「おう、また後でな」

 

一夏はダッシュで鈴たちの方へ向かう。俺もISを解除して織斑先生を追う。だが、一夏みたいなダッシュはできず、少し足を引きずりながら駆け足で向かう。結局、追いついた場所はピット内で織斑先生自身も俺が後を追ってきたのに気づいて止まってくれた。

 

千 「何か用か?」

 

織斑先生は俺に背を向けた状態で話しかけてくる。俺も気にせず、質問に答える。

 

獅 「大したことではありませんが、なぜ、あのタイミングで織斑先生が間に入ってきたのだろうと」

千 「タイミングとは?」

 

織斑先生はこちら向き、俺の目を見つめる。織斑先生は心の中を見透かそうとしているようだ。もし心臓の弱い人なら寿命が縮まるのではないだろうか。

 

獅 「織斑先生なら何が起きても対処できるように観察室で待機しているはずです。だが、俺が来たときにはバリアーは既に破壊されてました。それなのに、その時には織斑先生は来ていなかった」

千 「・・・」

 

織斑先生は黙って俺の目を見つめ続ける。いくらやっても俺の心は覗けないのに・・・

 

獅 「・・・理由、聞かせてください」

千 「ふっ・・・やはり、気づいていたか」

 

実は、織斑先生は観察室で俺たちの事を、もとい俺と銀髪の戦闘を見ていた姿を俺は見た。たぶん、鈴と金髪が銀髪にやられた時もその場にいたはずだ。

 

獅 「戦闘中に織斑先生の姿が見えてましたから。で、理由は?」

千 「単純な事だ。お前の戦闘を見たことがなくて、それでな・・・」

獅(千 「・・・? それなら、入試試験と金ぱ・・オルコットの代表戦で見たんじゃ「入試試験の時は私が相手で客観的に見てないだけで、オルコットの時は一瞬で終わったからな」・・・」

 

確かにそうだったな。楯無さんとの試合は正確には誰も見ておらず、クラス対抗戦の時の襲撃はジャミングがかかっていて、俺が戦っていたこと自体、俺が何故あの場にいたのかを説明しなければ知られていなかっただろう。

 

獅 「でも、教師としていいんですか? 仕事に私情を持ち出して」

千 「そっちこそ、生徒会副会長だろう」

獅 「・・・ふ」

千 「・・・ふふ」

獅(千 「ははははっ!」

 

二人で笑い合う。笑う理由はこれと言ってなく、しいて言うなら なんとなくだ。

 

千 「ふぅ、久しぶりだな、こんなに笑ったのは」

獅 「俺もですよ」

 

本音と別れてから新しい学校に行っても、友達はできず、中学でも一人でいた状態があったため、笑うことはおろか、爺ちゃん婆ちゃんとしか会話をしなかっため、二人が死んだ後は言葉すら発さなかった。

 

千 「それにしても、体の方はもう大丈夫なのか?」

獅 「はい。数日もすれば、授業に出られると思います」

千 「そうか。体は大事にな」

 

そう言い残して織斑先生は去っていく。俺も鈴とセシリアの様子を見るため、保健室に向かった。

 

 

ラウラSIDE

 

 

(朝霧獅苑・・・一体、何者なんだ)

 

今、私は寮部屋でアリーナで対峙した奴の事を考えている。謎に思ってる事は二つ。一つは情報では特別な家柄な生まれでもなく、これといって武術をたしなんだ情報もない。そんな奴に実戦経験が高い私と互角、いや、それ以上の戦闘力を持っていた。それが、彼個人の力なのか、それともISの性能なのかは、今の段階では判断できない。そして、もう一つは

 

(なぜ一瞬、奴と教官が重なって見えたのだ・・・)

 

体格は確かに似ている。それに若干、教官の面影を感じさせるが、それだけで何故そう見えたのか分からず、それを考えるたびに頭が痛くなる。私はシュヴァルツェア・レーゲンの個人間秘匿通信を開く。

 

『・・・こちら、クラリッサ・ハルフォール大尉です』

 

通信に出てきたのはIS配備特殊部隊、『シュヴァルツェ・ハーゼ』 通称『黒ウサギ部隊』の副隊長であるクラリッサだ。

 

ラ 「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。頼みたいことがある」

ク 『なんでしょうか?』

ラ 「もう一度、朝霧獅苑の情報を洗い出してくれ。新しい情報が入り次第、連絡しろ」

ク 『了解しました』

ラ 「頼むぞ」

 

クラリッサの返事を聞いて、通信を切った。その後、夕食を済ませ、風呂に入り、破壊されたレールカノンを予備のパーツと交換して、私の今日が終わった。


 
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