澪瑠の部屋で2人の女性が彼の帰りを待っていた。
「遅いな~ミオ。どうしたんだろ」
「うむ、教授の所に行った後はすぐ戻ると言っていたのにな」
金髪の少女は机に突っ伏して、銀髪の少女はつまらなそうに聖剣を見ている。
「そう言えば、パトラが帰ってきてるんだよね?」
「ああ、さっき見かけたんだ」
2人の頭の中に『出迎えに来るとは結構なものぢゃな』と言いながら高笑いするおかっ ぱが浮かんだ。
「ねえ、ジャンヌ」
「何だ、理子」
「パトラってさぁ、ミオの事好きだよね」
「ああ、本人は否定してるがな。理子、私も聞いて良いか?」
「何?」
「これは俗に言う女の勘と言うやつなのかは知らないが、嫌な予感するんだが」
「奇遇だね、ジャンヌ。理子も同じだよ」
そう言った瞬間、2人は扉を蹴破って部屋を飛びだしていった。
(・・・・・・・・・・悪鬼羅刹、っと言った所か)
俺は扉をぶっ壊しながら現れた2人を見て思った。理子は双剣双銃(カドラ)状態で、ジャンヌは 聖剣(デュランダル)を抜いて周りにダイヤモンドダストがチラホラ舞っている。
(・・・・・・・・一体何が2人をこんな風にしたんだ?)
原因を何とかすれば良いんだが、その原因がまったく分からない。けど、早く済みそう だ。
(・・・・・・・・・・理子は俺の部屋にあったC4を使っただろうから)
「わ、妾の部屋を許しも得ずに入るとは無礼ぢゃろうが!!」
突然の事に固まっていたパトラが復活して、2人に怒りを飛ばす。
「ふん、覇王だろうと何だろうと澪瑠には指一本触れさせん」
「くふふふ、恋する乙女の怒りは恐いよ~?ミオ~、今そのラリった女をぶっ殺して上 げるからね~。その後、お部屋でゆっくりしよ?」
邪神の笑みをパトラに向けていた理子は天使の微笑みを俺に向けた。
「妾の部屋に入った罪は重いぞ。ミイラと化せ!」
パトラが2人に手の平を向けた。すると2人の身体から水蒸気が上り始めた。そろそろ 、
「くふっ!その前にお前を殺してやるよ!」
「砂と氷では私の方が有利だ。聖剣の錆にしてやる!」
「・・・・・・・・・・タイムオーバー」
「はれ?」「ふわ」「ほぇ?」
バタ、バタ、バタと三人が突然床に倒れる。眠っているのだ。
「・・・・・・・・・・実験結果も得られたし、ラッキーかな」
俺は3人を担いで自室に向かう。その途中、例の部屋の前を通りかかった。
「・・・・・・・・・・ついでに見ていくか」
3人を廊下に投げ捨て、部屋に入る。そこには、男が一人たたずんでいた。俺と同じ色 の髪と目をしている。少し黒っぽいが。
「戻ったぜ」
男はそう言って小瓶を俺に差し出した。中には黒い紐状の物が入っている。
「・・・・・・・・・・少ないな」
「その分強力にしたらしいぜ。っと、取り敢えず戻って良いか?流石に疲れたし」
「・・・・・・・・・・ああ。明日は神魂としての仕事があるから、明後日には飛闇の 所に向かってくれ」
「おう、分かった」
男が出してきた手に自分の手を合わせる。男の身体が微かに光り、俺の中に吸い込まれ た。俺は数秒だけ目を閉じて、男が得た情報を見る。
「・・・・・・・・・・そうか、受けてくれたか」
そう言って、後ろを振り返る。そこには、黒神の世界に通じる穴が光りを点滅させてい る。
「・・・・・・・・・・そろそろ、終わりが近い」
(・・・・・・・・・・奴が、どんな世界を造るか、見物だな)
「・・・・・・・・・・と言うわけでコレは、爆発後に睡眠ガスを放つ」
「だから理子達は眠ったんだ~。それよりこれ解いてよ~ミオ~」
「・・・・・・・・・・そうゆうことだ」
「あれ?後半無視?」
俺は部屋に戻り、起きた三人を太いワイヤーで拘束して理子が使った爆弾について教え ている。
「カミシ!妾を拘束するとは無礼ぢゃろうが!」
「このワイヤー、超能力 ステルス 封じが掛かっている」
怒って俺を睨むパトラと冷静に判断するジャンヌ。
「・・・・・・・・・・解いたら暴れるだろ」
「暴れないよ~。ただ、そこのオカッパを殺してやるだけだよ~」
「そうだぞ澪瑠、私達はお前のため」
「妾は何もせん。ゴーレムが殺るだけぢゃ」
反省が全く無いようだな。
「・・・・・・・・・・人体実験やってみようかな」
「「「ごめんなさい!反省してます!」」」
ボソッと呟いたら3人とも頭を垂れた。パトラさえ。やっぱ死にたくないんだな。
「・・・・・・・・・・解いてやるから暴れるな」
「「はい」」「さっさと解くのぢゃ」
結び目を特殊ナイフで切り、3人を解く。そして、
ガチャン!
「な、なんぢゃこれは!」
パトラの右腕に金の腕輪を填める。
「・・・・・・・・・・超能力封じの腕輪」
解いた瞬間手の平をジャンヌに向けたので填めさせてもらった。
「くふっ!今なら殺れる事無いよ!だから縛らないで!」
双剣双銃モードに入った理子を再びワイヤーで縛る。
「・・・・・・・・・・ジャンヌ、お前もか?」
聖剣に手をやろうとしているジャンヌにワイヤーを構える。
「い、いや、私は何もしない」
慌てて剣から手を離すジャンヌ。念の為、腕輪を填め、剣を取り上げる。
「・・・・・・・・・・明日から心配だ」
「明日?明日から何かあったっけ?」
縛られて転がっている理子が?マークを付けている。
「・・・・・・・・・・教授の依頼で出掛ける。3日は帰ってこない」
「「「な、何ーーーーーー!!」」」
あまりの大声に耳を塞ぐ。
「・・・・・・・・・・何でそこまで驚く」
「だって、せっかくミオとお出かけしようとお店を選んでたのに」
「剣術教えて欲しかったのに」
「久々の再会なのぢゃぞ!?」
三者三様の答えが返ってくる。
「・・・・・・・・・・仕事の後、届け物があるからもっとかかるな」
「駄目!2日で帰ってきて!」
「約束しただろ!」
「妾はそんなに待てん!」
これは、もう何も聞こえなさそうだな。
「・・・・・・・・・・これ」
俺は三人にテニスボールを前に出す。3人が良く見ようと顔を出すと(理子の場合は顔 を上げる)、
ボン!
という音が鳴り、ピンクの煙が上がる。
「・・・・・・・・・・即効性の睡眠ガス」
俺の言葉と共に、3人はまた眠りに着いた。3人をまた抱えて、それぞれの部屋に運び 込む。
「・・・・・・・・・・やれやれ、今日から行けば良かった」
ボヤいたが、時は既に遅い。
翌日の朝、潜水艇
「早く帰ってきてね!2日だよ!」
「・・・・・・・・・・分かったから、放せ」
理子の抱きつきに時間を取られていた。後ろではジャンヌとパトラが理子に殺気を放っ ているが、剣を奪われた挙げ句超能力も封じられているので何も出来ない。
(・・・・・・・・・・大丈夫か、これ)
約4日は留守にするだけで、ボストーク号が潰れたりしないか心配になってきた。 いくら超能力を使えないとは言え、船の中には武器が大量に入っている。マシンガンや 、バズーカ砲だったりな。一応手を打っておいたが、やっぱり不安だ。
「・・・・・・・・・・じゃあな」
そこら辺は教授が始末してくれると信じて、俺は潜航艇に乗った。
(・・・・・・・・・・そろそろ新しい潜航艇造るか)
適当な案を考えつつ、出発した。
澪瑠が出発して、三人が澪瑠の部屋の扉を開けようとしていた。
「駄目だ、開かない。澪瑠の事だ、そう簡単には行かない」
「おのれカミシめ。妾の腕にこのような物を付けおって」
悔しそうに腕輪を見る2人。その腕輪を外す鍵を取ろうとしているのだ。
「う~、これ理子でも無理だよ。鍵穴が何かで埋まってて合い鍵も入んない」
「私の剣なら斬ってやるのだが、それもこの中」
「武器庫に至っては全部解体されていたのぢゃ」
澪瑠の手とは、この事だった。ここの武器は殆ど澪瑠が造り上げた物。つまり全ての武 器は澪瑠の手の内と言うことになる。
「爆弾造ろうにも火薬は全部消えてたし、他の人に頼んで貰おうにも買収されてて引き 受けてくれないし」
「まさかここまでやってくるとは」
三人とも諦め始めている。
「あ!!そうだ!」
「「何だ(ぢゃ?)」」
「前にミオの実験室を覗いたとき、ミオが防弾製の壁を溶かしたんだ。何かの薬品を使 って。多分まだあるはず!」
「よし、行くぞ!」
三人は走って実験室に向かった。
「よ~し、やるよ~」
気合いを入れている理子の手には黄色い液体が入ったフラスコがあった。
「量が少ないの」
「一回しか出来ないな」
「大丈夫大丈夫。これぐらいで足りるから。えいっ!」
バシャッ!
と液体が扉にかかる。そして、
シューー
という音と赤い煙が上がり、扉が溶けていく。そして、人一人通れる穴が空く。
「おお、さすがカミシぢゃ。この様な物があるとは」
「よし、入るぞ」
三人は部屋に入った。
ガシャン!
「「へ?」」「な、なんぢゃ!?」
突然扉の所に黒い板が閉まり、閉じこめた。部屋が真っ暗になる。
「えっと、もしかして罠?」
「おそらく、溶かして入ったから作動したんだろ」
「と、取り敢えず明かりを付けるのぢゃ!腕輪が外せれば外にでられる!」
理子が立ち上がって明かりを付ける。そして目に入ったのが、
「何もない」
そう、何もない。家具も、食料も何も。
「え?間違った、はずないよね」
「あ、ああ。合ってるはずだ」
「もしかすると、移転させたのではないか?」
「「あ」」
事の重大さに気付いた三人は顔を真っ青にした。
「しょ、食料も無い」
「水は出るな」
「カミシが戻るまで、それで過ごすのか?」
「しかないね」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
沈黙が走る。何もない。食べ物もない。遊ぶ道具も。
「け、携帯でミオに連絡を・・・・・・・妨害電波が走ってる」
「この扉、防弾ってレベルじゃないぞ。防爆といった方が良い」
理子のワルサーP99を借りて、試したジャンヌの言葉で絶望的となった。
「カミシ、はよう戻ってこい」
「願うしかないね」
「そうだな」
三人は、澪瑠が戻ってくるのを一心に願い続けた。それは、自業自得でしかなかった
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第5話