桂枝
「さて・・・これで詰みだと思うのですが・・・どう思いますか?霞さん?」
霞
「一本!勝者!荀攸!」
おおおおおーーーーっ!!っと観客が騒ぎ出す。まさか自分が勝つとは思っていなかったのだろう。その声には驚嘆が混じっている。
華琳
「まさか勝っちゃうとはね・・・桂花。アナタ確信を得ていたようだけど・・アレを想像していたの?」
桂花
「いいえ、ただ私は春蘭が決めに来ることが読めたっていうだけです。
ーーーーーーーー私に読めるのだからあの子に読めないはずがなく、それに何の対策もしないほど甘い男でもない。だから勝ったと感じたんです。」
桂枝
「あ~しんどい・・・」
私はその場にと座り込んでしまった。一歩間違えればその場で決着のまさに極細の糸の上を歩くかのような戦い。緊張の糸も酷使された体も疲れ果ててしまっていた。
霞
「よぅやったで桂枝っ!ウチの敵を取ってくれたんやなぁっ!」
桂枝
「し、霞さん!?」
そう言いながら彼女が後ろから抱きついてきた。座っていてこちらが低いこともあり丁度頭に胸が乗っている。
霞
「ウチはホンマに嬉しいでぇ。惇ちゃんと戦う姿!かっこよかったでぇ!やっぱお前は最高やわぁ!」
桂枝
「霞さん?あの・・・その・・・頭に当たってるんですが?」
霞
「ん?なんやの桂枝。嬉しくないんか?」
桂枝
「いや。そういうわけではないんですけどね?・・・その・・・」
姉が・・・なこともありこういう状況には慣れていない。今絶対に顔が赤いだろうなぁ。
霞
「ん?ははぁ~ん・・・照れとんのか自分?」
霞さんがすごく楽しそうに聞いてくる。正直うまく返す余裕すらない。
桂枝
「・・・見てわかるでしょうに」
霞
「あ~ホンマおもろいなぁお前は!それはそれとしてや桂枝。」
こころなしか締め付けがキツくなったような・・・
霞
「お前・・・あないなおもろそうなこと今までウチにしたことないよなぁ?まさか・・・手ぇ抜いてたんか?」
やばい、なんか殺気まとってる。この状況は非常に良くない。
桂枝
「いやいや・・・あんな方法戦場で使えないじゃないですか。どうしても勝たなきゃいけないから仕方なしにとった方法でして・・・」
言うが早いか霞さんは抱きついていた腕をそのまま首に絡みつけ・・・
霞
「そのっ!勝つっ!気概をっ!なんでっ!ウチにっ!みせなかったんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
おもいっきり締めてきた。
桂枝
「ちょっ・・霞さん・・・しまってるしまってる!!死ぬ!死んじゃいますって!」
霞
「やかましいわ!ウチ相手に本気を出さんかった罰や!」
桂枝
「それは甘んじて受けますが今は!今はやめてくださいって!」
体力を殆ど使ってしまっているせいで落ちるまでの時間が異様に短くなっている。
そろそろ本格的にもやばくなってきたなぁと思ったその時・・・
桂花
「ちょっと!アンタ何やってんのよ!ウチの弟にそんな脂肪の塊を押し付けないで!
姉が強引に引きはがしてくれた。
桂枝
「あ~・・・死ぬかと思ったわ」
ようやく人心地がつき深呼吸。
桂枝
「おう、約束通り勝ったぞ姉貴」
桂花
「そうね。お疲れ様。ところでアンタさっき霞に胸乗っけられて顔赤くしてたけど・・・?アンタまさかあんなシボウノカタマリガイイトカイワナイワヨネ・・・?」
桂枝
「っ!?」
ヤバイ!姉貴から何かすっごく黒い氣的なものが出てる!このままじゃ俺死ぬ!なんとかうまいこと言いたいけれど頭が回っていない!
慌てて霞さんの方を振り向いてみるといつの間にやら背を向け逃走を開始していた。
霞
「桂枝ぃー!いずれウチとも本気でやってもらうからな~っ!」
そんな言葉を残して。
桂枝
「あのね?姉貴すこし落ち着いてくれるとうれ「荀攸ぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」」
先ほどまで気の抜けていた夏侯惇さんがようやく我をとりもどしたようだ。座り込んでいる私に詰め寄ってくる。
おお・・・救いの手だ。殺気をまとった女神がここにいる。
夏侯惇
「荀攸!もう一度勝負しろっ!」
荀攸
「え・・・無理ですって。体力的にも精神的にも。っていうか・・・何が不満なんです?」
コレ以上無く完璧に描いた勝ち筋だったというのに
夏侯惇
「な、納得がいかん!いきなり投げ技なんて使いおって!卑怯だぞ!」
桂枝
「はぁ。別に投げてはいけないなんていう規律はなかったと思うんですが?」
夏侯惇
「ぐ・・・ぐぬぅぅぅぅぅっ!」
桂花
「そうよ!アンタはうちの弟に負けたのよ!負け犬は引っ込んでなさい!」
姉貴が援護に入ってきた。っていうかココぞとばかりに攻撃する気だ。ありがとう殺気をまとった女神、有耶無耶にしてくれて。
夏侯惇
「だ・・・黙れ桂花!お前は関係無いだろう!?」
桂花
「アラ、この子は私が武人に育てたのよ。この子に負けるってことは私に負けることと同意義。わかったらさっさと去りなさい!」
夏侯惇
「ギギギギギギ・・・」
華琳
「ハイハイそこまでよ二人共。桂枝、よくやったわね」
夏侯惇・桂花
「「か・・・華琳さま~」」
桂枝
「主人。ご満足いただけたようで何よりです。」
華琳
「アラ。私を満足させたかったの?」
桂枝
「無論。そのためのこの状況ですから。」
華琳
「フフ・・・本当に退屈しないわ。」
夏侯淵
「なぁ荀攸。少し聞きたいことがあるんだが・・・いいか?」
先ほどまで黙ったいた夏侯淵さんだ。どうやら疑念がある様子。
桂枝
「何か?」
そういって夏侯淵さんの方向に向き直す。座ったままなのはまだ立てるまで体力が回復していないためだ。
夏侯淵
「そうだな・・・。荀攸、お前はどこまで読んでいた?」
・・・流石だ。この質問が出るってことはこの人は私の戦いを理解できているということ
桂枝
「そうですねぇ・・・強いて言うなら・・・初撃からですかね。」
夏侯淵
「なんだと・・・?ソレはつまり最初から全てということだぞ。本気で言っているのか?」
桂枝
「いやいや。途中想定外が何回もありましたよ。まぁ想像外までは行かなかったんですがね。」
夏侯惇
「ん?一体どういうことだ秋蘭。」
桂花
「あんた気づかなかったの?戦闘中の行動・・・ほとんど読まれていたわよ。」
夏侯惇
「何ィ!?」
驚く夏侯惇さん。まぁ彼女は本能で戦ってる感じだもんなぁ
夏侯淵
「ああ。私も見ていて驚いたよ。なにせ攻撃が来るときにはすでにそこに剣が構えてあるのだからな。しかし私ならばともかく初対面の姉者の攻撃があそこまで読まれるとは考えづらい。なにかあるなら理由を教えてくれないか?」
桂枝
「そうですねぇ・・・強いて言うなら相性問題でしょうか?」
夏侯淵
「相性?」
桂枝
「はい。夏侯惇さんと自分の相性ですね。まず夏侯惇さん。アナタの武は全て主人のためにあると思っておりソレを誇りに思っているでしょう?」
夏侯惇
「当然だ!我が血の一滴まですべて華琳さまのものだ!ソレを誇りに思って何が悪い!」
桂枝
「いえ、悪くは言ってませんよ?」
夏侯惇
「そ、そうなのか?」
このやりとりだけでもわかる。姉貴がからかってるんだろうなぁ・・・
桂枝
「ええ、だって私も同じですからね。私が身につけたすべてのものは姉に還元される。それが生きがいとして育ってきていますから。
ーーーーーーだからこそ噛みあう。理解ができる。」
夏侯淵
「・・・済まないが、もう少し説明を頼む。どういうことだ?」
桂枝
「ええ、彼女も私と同じく「誰かのためにある武」の持ち主。だから彼女がどういう考えを持っているかに共感ができる。コレが一つ。
そして私は洛陽での霞さんとの一騎打ちを見ています。流石に霞さん相手に全力でない・・・なんてことはないでしょう。だから夏侯惇さんの戦い方と「最高速度」を見ていた。コレも大きい。
ーーーーこれだけあれば計算は可能です。あとはソレに合わせて頭の中で何百回と剣をかわしてみる。それで自分にできること、出来ないことをきちんとわきまえる。」
それこそ一晩中かけてね。と笑う。
桂枝
「あとは実際の戦闘で情報を取るしかないでしょう。途中でこちらの剣が夏侯惇さんに見切られていたように
ーーーーーーーー私も彼女の剣を観察していた。あとは実際の情報とこちらの戦略を前から準備していた落とし所へもっていく。以上です。」
夏侯淵
「あ・・・ああ。荀攸の考え方はよく分かった。しかしその方法は姉者にしか使えないんじゃないか?」
桂枝
「ご名答。もし主人の気まぐれで霞さんになっていたらおそらく勝率は4分くらいでしょうか・・・。」
夏侯惇
「何ィ!?貴様!私が霞より弱いというのか!?」
桂枝
「いえいえ、単純に相性問題です。霞さんは「楽しむため」に戦える人ですからね。そういう考えは私には理解できない。流石に理解できないものは読めませんよ。」
「守るため」に武器を握っている私にとって「楽しむため」に戦える人の考えはいまいち理解できない。故に天才肌の戦闘狂は非常に苦手だ。
もしそれに追加して誰かの姉でどこかの王なんて人がいたのなら俺は千回やっても勝てない自信があるね。そもそも人を使う側の王に戦闘狂なんて存在するはずはないが。
華琳
「なるほどね。私を思う気持ちで戦う春蘭だからこそのさっきの戦いだったということ。それにしても・・・最後のやつ何?初めて見るのだけれど」
夏侯惇
「そ、そうだ!最後のアレはなんだ!?あんなものみたことないぞ!?」
桂花
「そういえば私もないわね。桂枝。アレは何?」
桂枝
「ああ、なんでもアレは天の国の技で「巴投げ」というらしいですよ。昨日北郷に話を聞いて丁度この展開に最適だと思ったから今日の朝練習しました。」
天の国には様々な格闘技があるらしい。
曰くそういう決まりを作ってあるらしく、で拳以外を使うことを許されていない打撃特化の格闘技「ぼくしんぐ」
曰く氣の流れをそのまま勢いにして相手を攻撃する「八極拳」
そして相手を掴み投げることだけを許される「柔術」という格闘技。
私からすればどれもこれも新鮮なものだ。すべて相手が武器を扱わないことを前提としているという時点ですでに画期的と言える。
とくに今回のように相手が剣を縦横無尽に振るい重心移動が多い場合は柔術が有効だと判断し、上段からの振り下ろしに対応できる「巴投げ」だけを早朝に練習しておいたのだ。
華琳
「天の国の・・・?それって一刀の「荀攸!」
噂をすれば影というやつだろうか。片付けの指示をしていた北郷がこちらによってきた。
桂枝
「おう、言った通り面白かったろう?」
駆け寄ってきた北郷に声をかけたのだが・・・
一刀
「荀攸。大丈夫か!?・・・見たところ怪我は無さそうだけど・・・」
勝ちに驚く言葉の前に体に傷がないことを心配された。
桂枝
「いや・・・なんでそんな心配を?」
一刀
「凪に聞いたんだよ。お前の氣の使い方だと集中してない部分にあたったらヤバイんだろう?」
桂枝
「ああ・・・まぁな。ただあの戦術取ってからあたったこと今まで殆ど無いし大丈夫だよ」
一度あるとすればこのまえの鉄球か。あれも寸前で間に合ったが完全には防げてなかったからかなり痛かった・・・
一刀
「そうか・・・俺にはそういうの見えないからさ。怪我がないんならいいんだよ。」
目を見る感じ嘘はついていないようだった。・・・本当に変わってるよなぁこいつ。同僚程度の私をいきなり友達だというし。勝ち負けよりさきにこちらの体を心配をするし。
桂枝
「とりあえず北郷。昨日はありがとう。おかげで助かったよ。」
ペコリと頭を下げ礼をした。
もし「巴投げ」を知らなかったら私は双剣で対応するつもりだった。
あらかじめ背中に隠しておき上段からの袈裟斬りに対し左手に持った剣で上手く流し右手の剣で喉元をつくと・・・そういう算段だったのだ。
しかし予想外のことに武器庫に双剣の模造刀がなかった。
于禁が双剣を使っていたのは確認済みだったのだが・・・さすがに常時模造刀を持ち歩いているとは思わなかった。
なので急遽わざわざ対戦の直前に借りるということで「双剣を使う」ということを匂わせ使わず巴投げを使うことにしたのだ。
今回の勝利の要因には北郷の知識があったのは間違いない。
一刀
「え?あ、ああ。さっきの巴投げか?まさか一日で修得するとは思わなかったよ・・・」
桂枝
「あれしか練習してないからな。もう一度やれと言われても無理だ。」
一刀
「ははっ。だよなぁ・・・まぁ役に立ててよかったよ。」
そういって北郷はくったくのない笑みを見せた。
・・・本当に変わったやつだなぁ
華琳
「ねぇ一刀。話の途中で悪いんだけど」」
一刀
「ん?どうした華琳。」
ちょうど切り時とみたのか主人が話しに割って入る。
華琳
「桂枝が最後に使った投げ技だけど・・・アナタが教えたの?」
一刀
「巴投げか。そうだよ。昨日荀攸が天の国の格闘技を教えて欲しいっていうからさ・・・」
そこまで言った時点で彼の後方から大きな殺気。北郷がびくっとした後振り向けばそこには殺気をまとった女神の姿。
夏侯惇
「そうか・・・私は・・・貴様のせいで負けたのか・・・!」
殺気の女神は背後を燃やし尽くさんばかりの威圧感を出していた。
一刀
「ちょ・・・ちょっと待てよ!投げたのは結局荀攸なんだから俺のせいじゃ・・・」
夏侯惇
「問答無用!!死ねェェェェェェェェい!!!」
一刀
「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そういって北郷に斬りかかる夏侯惇さん。北郷は全力で逃げていきそのまま二人共いなくなってしまった。
桂枝
「・・・元気な人だなぁ。」
夏侯淵
「ああ。姉者は元気なのも取り柄だからな。では私も行くとするか。あのままだと本気で北郷を切りかねん。」
そういってゆっくりと歩いて追いかけて行った。
桂枝
「・・・あいつも大変だなぁ」
そうして調練場に残るのは私と姉貴と主人の三人のみとなった。
華琳
「あら、なかなか隅に置けないのね。さて桂枝、それはそれとしてあなたには何かご褒美をあげないとね」
桂枝
「はい?」
いきなりの提案。こっちとしては命令を果たしただけなんだが・・・
華琳
「当然でしょう。期待に答えた部下に対してそれ相応の物を与えるのは王たるものの勤め。これを怠って我が覇道はありえないわ。」
桂枝
「・・・そういうことでしたら。」
そこまで言われて断ったら逆に失礼に値するというものだ。
華琳
「そうね・・・アレだけの武を見せたのだもの。一軍を任せるのも一興だと思うのだけど・・・どう?」
桂枝
「・・・主人。かんちがいさせてしまってはこれから先困りますので言っておきますが「相性のいい相手」に「一晩中かけた作戦」を使い「戦場ではありえないほどほどの武器」を用意してやっと「不意打ち」をして「模擬戦」で一本取れる程度の実力しかないんですよ私は。しかも相手はあんなにピンピンしているのにこっちは満身創痍だ。これで将なんてとてもとても・・・」
華琳
「自分を卑下するものではないわよ桂枝。・・・でもじゃあ他に何がいいっていうの?」
・・・確かに褒美と言われても何も思いつかないなぁ。
桂花
「よろしいでしょうか華琳さま?」
内容について悩んでいたら姉貴が割って入ってきた。
華琳
「あら、何桂花?いまはアナタの弟に対して褒美を与えようとしているのだけれど?」
桂花
「そのご褒美なのですが・・・私にお任せいただけないでしょうか?」
桂枝
「姉貴?」
唐突な姉貴の提案。私には全く理解ができていない。
華琳
「・・・そうね。アナタのほうが桂枝のことは理解しているでしょうし。任せるわ桂花。後で何を与えたのかを報告して頂戴。」
桂花
「御意」
そういって主人も帰って行ってしまった。勝手に進んでいく話。残る荀姉弟。
桂花
「さて桂枝。アナタヘの褒美だけど・・・ここではなんだから着替えたら私の部屋に来なさい。」
そういって姉もさっさと戻っていってしまった。
桂枝
「展開が早いなぁ・・・」
まぁ姉の命令ならば是非もなし。そう思い直し私は汗で濡れた体を拭きに自室へと戻っていったのであった・・・
体をふき服を着替え姉の部屋の前までやってきた。まぁやってきたといっても主人の計らいで隣にあるわけだが。
桂枝
「姉貴ー、入るよー」
桂花
「桂枝ね、いいわよ。」
そういわれたので姉の部屋に入る。姉貴は寝台の上に座っていた。
ぱっと見渡すと机には書簡の山が、調べ物でもしていたのかものが散乱している。
桂枝
「あ~散らかってんなぁ。コレ片付ければいいの?」
桂花
「ソレは・・・明日でいいわ。それよりも、ホラ」
ポンポンと自分の膝をたたく姉。
桂枝
「ホラ・・・って言われてもなぁ・・・どういう意味。」
桂枝
「はぁ・・・一つ聞くわよ桂枝。
ーーーーーーアンタいつからまともに寝てないの?」
あの目は確信を得ている眼だ。ごまかせそうにはない。
桂枝
「あー・・・気づいてた?」
桂花
「当然よ。どうせアンタのことだから「周りに他人がいられると落ち着いて眠れない」とか言い出すんでしょう?」
桂枝
「・・・さっすが。わかってる。」
そう、洛陽の頃は良かった。まだ自分が一副将扱いだったこともあり部屋も隅の余り上等じゃない部屋だったので人の出はいりも極端に限られていたからだ。
しかし今は違う。曹魏筆頭軍師の姉の部屋にはひっきりなしに人が案件を持ってくる。そのたびに「他人」の気配を感じてしまい少し起きてしまう状況が続いていたのだ。
日の入りの鍛錬もかかさずやらねばならない。おかげで寝ているのは日に1刻といったところだろう。
桂花
「だからよ。今日は3刻ほど誰も来ないように手配しておいたわ。それに・・・流石に ココなら落ち着いて眠れるでしょう?」
わかったらさっさと来なさい。と膝をポンポンと叩く。
桂花
「あ、コレはご褒美だからね。拒否は許さないわよ。」
遠慮するという道も既に断たれた。
桂枝
「じゃあ・・・お言葉に甘えさせてもらおうかな。」
そういって寝台に横になり姉の膝の上に頭を乗せる。
・・・何年ぶりだろう。横になって寝るのも。姉の膝枕してもらうのも。
桂枝
「あ~・・・すっごい・・・久しぶり・・・」
先の戦いでの疲労、ここにくるまで全ての疲労が一気に襲いかかってくるような感覚。気を抜いたら一瞬で寝てしまいそうになる安心感。
桂枝
(ああ・・・帰ってきたんだなぁ)
心の底からそう思う。私のいる場所は姉の側だ。世界中どこに言っても |ココ以上《・・・・》の場所なんて存在しない。するわけがないと改めて確認させられた。
桂花
「いいからさっさと寝なさい。
ーーーーーーずっといてあげるから。」
桂枝
「そっ・・・か・・・じゃあ・・・おやす・・み・・・ねぇ・・・ちゃん・・・」
桂花
「ええ。おやすみ桂枝」
それ以上の言葉は続かず。私はゆっくりと意識を手放していった・・・
桂花
「全く・・・こんなにボロボロになって・・・」
そういって桂花は彼の腕を撫でる。引き締まったそのカラダには楽進のように無数の傷跡が残っている。
今日ついた傷もいくつかあるのだろうが間違いなくこれらの傷跡は旅の途中で、戦争で傷ついてきた歴戦の証だ。
ソレら全てが私のためにある・・・そう断言してくれる存在がここにいる。
ほんとうに良い弟をもった・・・と思うと桂花は自然と優しい顔つきになった。
桂花
「本当に・・・あの日うちにきたときにはまだこんなに小さい赤ん坊だったのにね・・・」
華琳
「邪魔するわよ桂花。桂枝へのご褒美は・・・アラアラ。」
華琳は彼への褒美の話を確認しにきたのだが・・・流石にその状況を見てわかったのだろう。なにせココに来てから今まで見たこともないような幸せそうな顔をして寝ている桂枝がそこにいるのだから。
桂花
「華琳さま・・・」
華琳
「そのままでいいわよ桂花。それが彼へのご褒美なのでしょう?」
桂花
「・・・はい! ですので華琳さま・・・」
華琳
「わかっているわ。今日は彼のことでここに来たのだから。」
桂花
「ありがとうございますっ!。」
華琳
「それにしても・・・本当に幸せそうねぇ。そんなに居心地がいいのかしら?」
桂花
「お望みとあらばまたのちほどさせて頂きます華琳さま!」
華琳
「そう、じゃあ今度の閨の時にでも頼もうかしら?」
桂花
「!?」
華琳
「フフ・・・そういえばいい人材を連れてきたアナタへのご褒美はまだだったわよねぇ・・・?」
桂花
「か・・・華琳さまぁ・・・」
そんな会話が繰り広げられている中でも
桂枝
「zzz・・・zzz・・・」
全く気にせず姉の膝の上で久しぶりの睡眠を楽しむ桂枝であった。
あとがき
というわけで第十七話。これで終了です。コメントへの返信をしなかったのは単純に答えたネタバレにつながるのを防ぐためでした。申し訳ございません。
さらに桂枝の戦闘について簡単にまとめておきましたので見たい方だけどうぞ。
<戦闘能力まとめ>
・本気の時は氣を操り自身の身体能力を上昇させる。これと鍛えた体との相乗効果により、武将と呼ばれる人間相手に一歩も引かなくなる。
とはいっても相手の行動を読む演算のほうに大量の氣を回しているため通常武将より戦闘に使える氣がかなり少ない。なので全身の氣一点に集中させることによってそれをカバーしている。
この方法は氣のない部分で攻撃を受けてしまうと致命打になることがあるため非常に危なっかしい。彼の計算が一度でも大外しをした場合一発で決着が着いてしまう。
・彼本来のスタイルは読みで相手を押し込む、または防ぎきる事によって相手が一発を狙ってくるのを待ちそれをカウンターできって落とす「一撃カウンター型」。平たく言うと某ゲームにおける○ラガラッ○的な。
かなり神経(頭)を使うこと、氣の総量が女性武将より圧倒的に少ないため消耗戦に持ち込まれると非常に不利になる。
更に武器単体の扱いでは他の武将に劣るため、今回のように多種類の武器の準備が必要。戦場では本気を出せないという非常に偏った強さ。
だが前回説明した通り、基本は副将として霞の補佐をしているため相手の大将とは霞が相手をするのが大部分であり、別に困ることがない。
いずれ改善される日が・・・来るのかな?
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戦い後の一幕。