No.458718

Sonic・the・hedgehog 【Running out of control ――― EMERALD】(2)

こたさん

いつものようにソニックとエッグマンは戦っていた。ソニックが七つのカオスエメラルドを使いスーパーソニックへ変身し、誰もが勝負はついたと確信した… しかし、異変は起こった。 突然暴れ出し、ソニック達を攻撃するカオスエメラルド。一体カオスエメラルドになにが起こったのか? そして、禍々しい暗黒色のハリネズミ――「ダーク・ザ・ヘッジホッグ」。彼の目的は?そしてその正体は? ソニック達の新たな冒険が始まる!――― どうも、こたです。別のサイトで書いていたので知っている方は知っていると思われる作品を読みやすくリメイクしたものです。現在執筆中の『超次元ゲイム ネプテューヌmk2 ~Blue wind~』の方もよろしくお願いします!

2012-07-24 20:36:07 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:3762   閲覧ユーザー数:3750

「なにぃっ!?テイルスが!?」

ソニックから一部始終を聞いた赤いハリモグラ―――「ナックルズ・ザ・エキドゥナ」は驚き目を見開いた。

ソニックはあの後ナックルズを訪ねていた。

とある特別なエメラルドを守りながら暮らすナックルズはソニックの昔からの喧嘩友達であり、良きライバルである。

ナックルズの住んでいる場所は森の中にある、少し神秘的な感じを受ける場所だった。

そんなナックルズの問いかけにソニックは目を閉じながらゆっくり頷いた。

「……くっ!!」

ナックルズは悔しそうに歯軋りしつつソニックに背を向けた。

「暴走したカオスエメラルドを止めるためにマスターエメラルドが要るんだ。貸してくれないか?」

ソニックが尋ねる。

 

カオスエメラルドの暴走を止める力を持つマスターエメラルド――――

――――あれを使えばカオスエメラルドを止められるかもしれない。

 

ソニックはそう考えていたのだ。

「……それがな……」

ナックルズはソニックに背を向けたまま話を続けた。

 

 

 

 

シャドウは荒野を滑走していた。

見渡す限り茶色っぽい風景が広がっている。

周りは茶色く大きな岩がゴロゴロ転がっており、植物は見当たらず生物の気配は無かった。

「………」

シャドウは滑走を続けると同時に――――「何か」の気配を感じていた。

 

――キッ!

 

シャドウは急に立ち止まった。

 

バッ!

 

振り返ったが、そこには相変わらず茶色い風景が広がっているだけだった。

「さっきから僕のあとをつけているのは誰だ?」

彼はまるで独りごとの様に呟いた。

「…………」

シャドウは遥か上空を見上げた。

澄んだ青空に様々な大きさの白雲が散らばっている。

 

スッ―――

 

シャドウは片腕をもう片方の肩の方に伸ばした。

 

ババババッ!!

 

シャドウの手に黄色い光が集まる。

 

ビュンッ!!

 

「カオススピア!!」

シャドウが遥か上空に向かって腕を振ると、その手から黄色い光の矢が勢いよく放たれた。

 

ドドドッ!!!

 

光の矢は何も無いはずの上空で何かに当たり爆発した。

空は灰色の煙に満ち溢れた。

「!?」

徐々に煙が引いてきたところでシャドウは驚いた表情を見せた。

「……ほう、俺に気づくとは……流石だなシャドウ。」

煙の中から宙に浮遊する黒いハリネズミが現れた。

「メフィレス……?いや違う。君は誰だ?何故僕を知っている?」

シャドウは黒いハリネズミに人差し指を向けながら尋ねた。

 

スッ――

 

黒いハリネズミはゆっくりと下降し、地に降りた。

「……俺はダーク。ダーク・ザ・ヘッジホッグだ。この世で唯一の究極の存在だ。」

そしてゆっくりと告げた。

「……何だそれは。僕の真似のつもりか?」

シャドウは蔑むように言った。

「……いや、真似などでは無い。これから貴様を殺し、俺が真の究極生命体になるのだからな……」

「……何だと?」

シャドウは気にもとめるようなこともせず、静かに聞き返した。

「……貴様に手加減は要らないな。最初から全力でかからせてもらおう。」

 

スッ――

 

ダークがゆっくり両腕をシャドウに向けた。

「……君が僕に何の用だが知らないが、今消されるわけにはいかない。

こちらもこの究極の力――全力で行かせてもらうぞ。」

シャドウも身構えた。

10mほど離れた場所で対峙している二人の間に鋭い沈黙が走る。

 

ヒュオオオオオォォォォォッ!!

 

そして二人の間に一風の風が吹いた。

 

ドンッ!!!

 

二人は一気に力を開放した。

シャドウは神々しい金色に光り、ダークは禍々しい闇色に光った。

「ハァッ!!」

 

ドンッ!!

 

ダークの両手から黒く巨大な閃光が放たれた。

 

バッ!

 

シャドウは大きく跳躍し閃光をかわした。

 

ドガ――――ン!!!

 

閃光は地に突き刺さり、巨大な穴を開けた。

 

シュバッ!!

 

シャドウは宙で蹴りの体制をとると、ダークめがけて勢いよく急降下した。

 

ドガッ!!

 

鈍い音が響く。

「チッ!」

シャドウは舌打ちをした。

シャドウの重い一撃を、ダークは軽々と片腕のみで受け止めていた。

「無駄だ!」

 

バキッ!

 

ダークは無造作にその腕を振り、シャドウを弾き飛ばした。

 

ズザッ!

 

ドンッ!

 

シャドウは空中で体制を整えてから着地し、一気にダークに肉薄した。

 

ドガッ!!

 

シャドウがダークに回し蹴りをしたが、またしてもダークの腕にガードされてしまう。

「ハァァッ!!」

 

ドガァッ!!バキィッ!!ドゴォッ!!

 

シャドウはそのままダークに凄まじい速さで攻撃ラッシュを続けた。

しかし、全てガードされてしまう。

 

バッ!

 

「なにっ!?」

シャドウがダークの顔めがけて手刀を放ったが、かわされた挙句その腕を掴まれた。

「タァッ!!」

 

シュバッ!!

 

ダークはシャドウを思い切り上空に投げ飛ばした。

「クッ!」

シャドウは再び宙で体制を整え、地上にいるはずのダークの方を見た。

「!?」

しかしそこにダークはいない。

「――こっちだ馬鹿め。」

頭上で声がした。

「!?」

顔を上げたシャドウは自らの目を疑った。

そこに両腕を頭の後ろで組み、振り上げているダークがいたためである。

 

バキィッ!!

 

「ぐぁっ!!」

ダークは両腕を振り下ろし、シャドウを地上に叩き落とした。

 

スタッ!

 

シャドウは無事に着地し、ダークを睨みつけた。

 

バッ!

 

「カオススピア!!」

 

ドドッ!!

 

シャドウは再び光の矢をつくり、ダークめがけて放った。

再度それは命中し、宙で爆発を起こした。

煙が引いてくると、防御体制でかまえているダークの姿が朧気にだが露になった。

そんなダークを、シャドウは静かに睨みつけていた。

 

「……今度はこっちから行かせてもらおう。」

 

ドンッ!!

 

ダークは空中から一気にシャドウに肉薄した。

「喰らえ!」

ダークはシャドウの顔にパンチした。

 

ガッ!!

 

シャドウはそれをガードした。

「まだまだだ。」

 

ババババババババッ!!!

 

ダークは目にも見えぬ速さでシャドウに連続的にパンチをした。

 

ガガガガガガガガッ!!

 

シャドウは再び全てガードした。

「フッ、面白い。」

 

バッ!

 

ダークは一度シャドウから離れ、距離をとった。

「「ハァッ!!」」

二人は同時に叫び、一斉に肉薄した。

 

シュンッ!

 

そして二人が衝突する瞬間、双方の姿が消えた。

 

ドガンッ!!

 

虚空で大きな鈍い音が響く。

 

ドドドドドドッ!!!

 

鈍い音はその後も数回に渡って響き、宙に衝撃波となっては消えた。

そう、二人が宙で打ち合いしているのだ。肉眼では見えないほどの速さで――。

音速を超えるそのスピードに姿を確認することが出来ない。

 

パッ!

 

再び二人の姿が現れると、互いに距離をとった。

 

スタッ!

 

二人は同じタイミングで着地した。

再び二人の間に沈黙が走る。

「……流石だな。だがこうでなくては面白くない。」

ダークが表情一つも変えず、静かに告げた。

「……」

シャドウは何も言わず、ただダークを睨んでいる。

「……一つ面白い物を見せてやろう。」

 

スッ―――

 

ダークは静かに片腕を空に向けた。

「……?」

シャドウは空を見た。

遥か上空から何かが降りてくる。

その数は七つ。

「バカな……カオスエメラルドだと!?」

シャドウは叫んだ。

「……そう、カオスエメラルドだ。

こいつは俺の好きな様に動く……この様にな。」」

 

ブンッ!

 

ヒュッ!

 

ダークが片腕を振り下ろすとカオスエメラルドの一つがシャドウめがけて突っ込む。

「ッ!」

 

バッ!

 

とてつもないスピードだったがシャドウはなんとかかわす。

「隙だらけだ。」

「なッ!?」

 

バキィッ!

 

だが、かわした刹那ダークはその隙を見計らって肉薄しシャドウの体を吹っ飛ばす。

「くッ……!」

 

ババッ!

 

シャドウは空中で体勢を整えなんとか着地する。

だが、シャドウの目前では七つのカオスエメラルドが突っ込んできていた。

「さあ……どうするシャドウ?」

ダークは静かにそう尋ねた。

 

 

 

「マスターエメラルドが盗まれた!?」

「ああ、何者かにな。」

驚き声を上げるソニックを尻目に、ナックルズは落ち着いた様子でそう言った。

「じゃあまずはマスターエメラルドを探すのが先だな。手掛かりは無いのか?」

ソニックの提案もむなしく―――

「無い。」

ナックルズは表情を変えずそう断言した。

「……hum。しょうがない、ちゃっちゃと探しに行くとするか。」

ソニックは呆れたように肩をすくめながら言った。

「―――俺も行く。今回の落度は俺にあるからな。」

ナックルズもばつが悪そうにソニックにそう言った。

「OK。Get ready……」

 

バッ!

 

「Go!!」

 

ダッ!!

 

ソニックとナックルズは勢いよく走り出した。

 

 

 

ドガァッ!!

 

 

「グハァッ!!」

顔面に激痛が奔る。

 

ズザザザザザァッ!!!

 

そして地面に叩きつけられる。

もう何度奴の攻撃を受けたか―――――――――

シャドウはよろよろ立ち上がりながら思っていた。

彼の体は既に傷だらけだった。

距離を取ろうとしてもダークは必ず先回りをしている。

逃げるつもりはなかったが、絶対に逃げられない状態だった。

 

ヒュッ!

 

そして再びカオスエメラルドが目の前に飛んでくる。

「くッ………」

立っているだけでもやっとな状態で必死に避ける。

屈辱的だった。

ダークに完全になめられていることが。それだけではない。いつも当たり前のように手にしているあのカオスエメラルドにここまで圧倒されることが―――

「ハァッ!」

そして再びダークが自分に向かって攻撃を仕掛けてくる。

 

ドガァッ!!!

 

今度は腹部に激痛が奔る。

「ぐあッ!!」

 

バッ!

 

吹っ飛ばされながら体制を整えたが、着地と同時に膝を付く。

「くっ……」

ぜぇぜぇと荒呼吸をしながら顔を上げる。

「!!」

目の前で奴が―――ダークが片腕をあげている。

 

ドンッ!!!

 

ダークが腕を振り落とすと同時に―――――――目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

「ヒュ~♪絶景だねぇ!」

ソニックは軽やかに走りながら、辺り一面に広がる茶色っぽい風景を見回した。

「こんな所、初めて来たな……」

ナックルズも同じように走りながら、落ち着いた表情で独りごつ。

「天気も良いし、最っ高だねぇ♪」

ソニックは心なしか楽しげに見えた。

「お前なぁ……それにしても、マスターエメラルドは一体どこにあるんだ……?」

ナックルズはそんないつもと変わらないソニックの楽観的な様子に呆れつつ、周りを見渡していた。

 

―――――――キキッ!!

 

ドンッ!

 

「おわっ!?」

ソニックが急に立ち止まったため、ナックルズはソニックに正面から激突してしまった。

「……ッて~……!おいソニック!急に止まるな!」

ナックルズは真っ赤になった鼻を押さえながらソニックに怒鳴った。

「……なぁ、あれシャドウじゃないか?」

ソニックが前方を指さしながら言った。

「あん?」

ソニックが指差した方を見ると、遥か遠くに二つの黒い影が見えた。

そのうち倒れている方の姿は、シャドウのように見える――。

 

 

 

「……大したこと無かったな……シャドウ・ザ・ヘッジホッグ!!」

ダークは目の前に伏しているシャドウを見下ろし、蔑むように言った。

 

スッ――――

 

そして徐に片手を上げた。

 

ギュォォォォォォォォ!!!

 

その手に紫色の閃光が集まってくる。

その時だった。

「シャドウ!!?」

 

シュウウウゥゥゥゥ……ン

 

ダークは徐々に力を弱めながら、突然掛けられた声の方へ振り返った。

そこにいるのは、青いハリネズミと赤いハリモグラ。

「……何だ貴様らは?」

ダークは腕を下ろしながら尋ねた。

「俺の名はソニック!ソニック・ザ・ヘッジホッグだ!」

ソニックはダークに鋭い眼差しを向けながらそう叫んだ。

「俺はナックルズ。」

ナックルズも同じようにダークを睨みつける。

「……俺の名はダーク。ダーク・ザ・ヘッジホッグだ。この世で唯一究極の存在だ。」

「What!?」

ソニックは思わず聞き返した。

(――こいつ、シャドウに似ている……。)

その気高く重々しい物腰も他を圧倒する気迫も、シャドウを彷彿とさせるものであった。

 

「そして……エメラルドを操る者だ。」

 

「!!!!!」

 

ソニックとナックルズの表情が一変し、驚いた面持ちに変わる。

「まさか、あの時カオスエメラルドの様子がおかしくなったのはお前の仕業か!?」

ソニックは尋ねた。

その言葉に、ダークは怪訝そうに首を傾げた。

そして少し前に見た景観を思い出し、不敵な笑を浮かべる。

そう、彼は見ていたのだ。

あの時―――基地でのエッグマンとのあの一戦を――

「……そうか貴様、どこかで見たことがあると思ったらあの時のハリネズミか。」

「……やっぱりお前の仕業なんだな!?」

ソニックの表情がより険しくなった。

「ああ、俺がやった。俺の能力の腕試しにな――。」

ダークはゆっくりと告げた。

「まさか、マスターエメラルドを盗んだのもお前か!?」

ナックルズがそう尋ねると、ダークは曇った空を見上げながら呟くように言った。

「………マスターエメラルドか、あれは俺にとって邪魔な存在だ。」

「だったらどうした!!」

ナックルズは業を煮やしてそう叫んだ。

そんなナックルズにダークは言い放つ――。

 

「見つけ次第排除する。」

「なっ、なんだと!?」

 

ナックルズの表情が一変し、冷や汗が頬をつたった。

 

ザッ!

 

ソニックは一歩前に出ると、ダークを指差し言い放った。

「エメラルドを止めるんだ!!!」

ダークは動じる様子もなく、不敵に囁いた。

「……止められるものなら、止めてみるがいい。」

 

スッ―――

 

ダークは戦闘体型に入りながら言った。

「ああ、分かったぜ!!ナックルズ、遅れるなよ!」

ソニックも身構えた。

「ああ。」

同じくナックルズも。

両者の間に数秒の沈黙が訪れる。

「Ready…………」

ソニックはまるで短距離走の選手のような構えをとった。

「GO!!!!!!」

 

ギュンッ!!!!

 

ソニックは一気にダークに肉薄した。

「ハアァッ!!」

 

ドカァッ!

 

そのままダークに鋭い蹴りを放つ。

「甘いな!」

 

ガッ!

 

ダークは怯むことなくその足を掴んだ。

「なっ!?」

「うおおおおぉぉぉ!!」

それに気づかないナックルズは一心にダークに向かって疾走している。

「ハッ!!」

 

ブンッ!!

 

ドガァッ!!

 

ダークはソニックをナックルズに向かって投げつけ、二人は弾き飛ばされた。

「「うわぁっ!!」」

 

ズザアァァァ!!

 

「……ッテテテ!」

「遅い」

「!?」

二人が顔を上げると、その上空にダークがいた。

彼は二人に手を向けている。

「消えろ」

 

ドドドドドドドドドド!!!!

 

ダークがそう告げた瞬間、掌から膨大な数の紫色の矢の様なものが二人に襲いかかる。

「掴まれナックルズ!!」

 

ドギュンッ!!

 

ソニックはナックルズの手首を掴みその場を走り去った。

 

ドガガガガガ――

 

間一髪でその切っ先をかわし切ると、

「ふ~、危機一発だったな。」

背後で矢が地面に突き刺さるのを見ながらナックルズが安堵の息をついた。

「そ~でもないみたいだぜ?」

ソニックがそう言った刹那、ナックルズは前方を見やった。

「んなっ!?」

ナックルズは目を疑った。

そこに片手をこちらに向けているダークがいたためである。

「……消えろ」

 

ドンッ!!

 

ダークの手から黒い閃光が放たれた。

 

バッ!

 

「ハァッ!!」

当たる直前にソニックはナックルズを連れて跳躍し、閃光をかわす。

 

ドガ―――ン!!

 

閃光が地面に突き刺さり爆発を起こし、地に大きな穴を開けた。

「なかなかやるじゃん。」

ソニックは跳躍したままその穴を見、乾いた口笛を吹いた。

 

バッ!!

 

「ソニック、上だ!!!」

ナックルズが叫んだ。

「おわっ!?」

ソニックは顔を上げ目を見開いた。

そこにダークが両腕を組み振り上げていたからである。

「ソニック!頭を下げろ!!!」

「お、おいナックルズ!?」

ソニックが聞き返したが答える間がなかった。

「落ちろ!」

 

ガッ!!

 

ダークの言葉と共に腕が降り下ろされるが、ナックルズがその重い攻撃を自分の拳で受け止めていた。

「……ほう」

ダークは驚いたように言った。

「く、くく……!!」

しかし、ナックルズの表情からは限界が伝わってくる。

「おらああああぁぁ!!!」

 

ドゴォッ!!!

 

ナックルズはそのままダークを弾き飛ばした。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…――――――

 

ドガ―――――ン!!!!

 

ダークはガードしたがそのまま吹っ飛ばされ、背後にあった大きな岩に突っ込んだ。

 

スタッ!

 

ソニックとナックルズは地に着地した。

 

ドゴオォッ!!!

 

それと同時にダークの突っ込んだ巨大な岩に亀裂が奔り、粉々に砕けちった。

「!!」

二人は驚愕した。

その中から傷一つついていないダークがゆっくりと姿を現したからである。

「……なかなかやるな」

 

スッ―――

 

不気味に笑いながらゆっくりと地に舞い降りた。

ソニック達は咄嗟に身構えた。

「……まずはお前だ」

ダークがソニックを睨みながら左右に大きく両手を開いた。

 

シュォォォォォッ!

 

その両手から黒い光が溢れ出、彼の頭上に集まる。

そしてそのまま小さな球体になった。

 

フオォッ!

 

球体がダークの片手の上に浮かぶ。

「くらえ」

 

バッ!

 

ヒュ―――ン!!

 

ビタッ!

 

「!?」

ダークがその腕を振ると、球体がソニックに向かって目にとまらぬ速さで飛空した。

そしてそのままソニックの腹にくっついてしまう――。

「な、なんだこれ!?」

 

ギギギギィッ!!

 

球体を剥がそうともがくも、まるでとてつもない粘着力を持つスライムのようで取ることが出来ない。

「くそっ取れない!」

どんなに力を込めても球体は全く剥がれる気配がない。

流石のソニックも焦燥に駆られた。

「チッ!ソニック、早めにケリをつけるぞ!」

ナックルズはそう言い、腕を振り上げながらダークへ突っ込んだ。

「うおおおぉぉぉっ!!!」

 

ドゴ―――ン!!

 

そのままナックルズはダークの顔を渾身の力を込めて殴りつけた。

手には確かな感触を感じた。しかし――

「……なっ!?」

その一撃を受けても一向に動じず、それどころか悠然と彼に手を向けてくるダークに彼は驚嘆した。

(―ば……バケモノか……)

驚きと恐怖が混じり合った混沌とした心持ちで、しかし彼は漠然とそう思った。

「邪魔だ」

その言葉と共に、ナックルズに向けている掌に紫色の光が集まる。

 

ギュンッ!!

 

「ナックルズ!!」

 

バッ!

 

「おわっ!?」

ソニックが猛スピードで走ってきてナックルズの腕を掴み跳躍した。

 

カッ!!

 

下ではダークがさっきまでナックルズが居た場所に紫色の太い閃光を放っていた。

(あと少し遅れていたら――)

そう思ったナックルズの額に汗が流れる。

ダークは空中の二人に冷たい眼差しを向け、呟いた。

「……ちょろちょろとすばしっこい奴め……」

「へへっ!それが俺だからな!」

ソニックは白い歯を見せ鼻を擦りながら得意げに言った。

 

スッ――――――

 

ダークは両手をソニックに向けた。

「なら、これはどうだ――?」

 

シュォォォォ!!

 

ダークの周りに黒煙が集まってくる。

 

ジャキッ!!

 

そしてそれは硬化し何本もの黒い剣へと姿を変えた。

 

バッ!!

 

ダークの腕が降り下ろされると同時に剣が一斉にソニック達に襲いかかる。

「Here we go!!」

 

ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!

 

ソニックは空中を移動し、剣を次々と避けて行った。

「へへっ、どんなもんだい!」

 

ギュンッ!!

 

そのままソニックはダークに向かって猛スピードで突っ込んだ。

 

ドゴォンッ!!!

 

鈍い音が響き、ダークの体が吹っ飛ばされる。

「チッ!」

ダークが舌打ちをし、空中で体制を整えようとした時―――――

「でえりゃぁぁっ!!!」

「なにっ!?」

 

ドゴーーーーン!!!

 

「ぐっ!」

いつの間にか先回りをしていたナックルズに殴り飛ばされ、再びソニックのもとに飛ばされる。

「行くぜ!」

 

キュィィィィィィン!!!

 

ソニックが勢いよく回転をし、

「ハァッ!!」

 

ドガァッ!!

 

そのまま回転の力を利用し、鋭い一蹴でダークを地面に叩き落とす。

 

ドガーーーーン!!

 

 

ダークは勢いよく墜落した。

 

ババッ!

 

すぐさまダークは立ちあがり体制を整えた。

 

―――ギロッ!

 

ソニックを睨むかと思わせたその刹那――

「……くっくっく、ハーッハッハッハ!!!!」

突如高笑いをした。

「な、何を笑ってやがる!?」

ナックルズはダークを睨みながら叫んだ。

「……気づかないのか?あのハリネズミの異変に。」

ダークはナックルズに一瞥を投げかけながら、可笑しくて仕方ないように言った。

「なんだと!?」

その言葉を聞くや否や、ナックルズはソニックを見た。

 

ドサッ!!

 

ナックルズは絶句した。

ナックルズの視線を受けたソニックが力なく地面に落下したためである。

「お、おいソニック!!」

 

バッ!

 

ナックルズは慌ててソニックに駆け寄った。

「おい!どうしたんだよ!?ソニック!!!」

ナックルズはソニックの体を揺さぶるも、彼に何ら反応はなかった。

ただ虚ろな眼差しを虚しく宙に投げかけていることを除いては――。

 

そう、その姿はまるで電池の抜けたからくり人形のようだった。

 

 

 

 

 

「………っ」

暗闇の中、彼は静かに何かを感じた。

(――……こ…こ……は……?)

彼は微かに目を開ける。

目の前に広がるのは茶色い荒野。

「―――!!!――――っ!!!」

周りが何やら騒がしい。

彼は騒がしい方にゆっくりと視線を向けた。

 

 

 

「ソニック!!!!ソニック!!!!!!」

ナックルズはソニックの体を揺さぶりながら叫び続ける。

しかしソニックは何らかの反応をすることはなかった。

「クックックック……」

ダークは静かに、そして不気味に笑う。

 

キッ――

 

ナックルズはダークを睨みつけた。

「てめぇ!何を笑ってやがる!?ソニックに何をした!!?」

ナックルズの噛み付くばかりの怒声にも怯むことなく、ダークは平然と言ってのけた。

「……何をしたかって?そいつの腹を見てみな。」

「なにっ!?」

ナックルズはソニックの腹部へと視線を落とした。

「……まさか、これが原因か!?」

ナックルズはダークが先ほどソニックの腹部に付着させた黒い球体を見ながら聞き返す。

「そう、そいつだ……」

 

スッ――

 

ダークが徐に手を上げると――

先程までどんなに力をいれても取れなかったあの球体が嘘のように簡単に取れ、ダークに向かってゆっくりと浮遊していく。

 

フッ――

 

そしてダークの手の上で動きを止めた。

そのまま球体はカオスエメラルドにそっくりな形状の黒いエメラルドに姿を変えた。

「……こいつを使ってそのハリネズミの魂を封じ込ませてもらった。」

ダークはエメラルドを掴みながら悠然と告げる。

「ッな!?」

ナックルズは耳を疑った。

「……それにしても、魂を封じ込ませるのにこんなに時間がかかるとは随分と『大きい』魂を持っているな。」

ダークは地に倒れているソニックに冷たく一瞥を投げる。

「……っつーことはそのエメラルドを壊せば、ソニックの魂は開放されるんだな?」

ナックルズはエメラルドを睨みつけながら尋ねる。

「ハッ!俺に傷一つすら付けられない貴様が俺からエメラルドを奪えるとでも思っているのか?」

ダークはエメラルドを掴んでいる腕を組み、嘲るように聞き返す。

「くッ!馬鹿にするなぁ!!」

 

ダッ!!

 

ナックルズはダークに向かって走りだす。

「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

目前に迫ったダーク目がけて拳を振り下ろした。

 

ドゴォォォォン!!!

 

地面に大きく亀裂が奔る。

しかしそこにダークの姿は無かった。

「んなッ!?」

ナックルズは地面から腕を引き抜くと辺りを見渡す。

しかし、ダークは見あたらない。

「後ろだ」

「!?」

背後から声がし、ナックルズは振り返る。

 

バキィッ!!!

 

姿を確認するより先にダークの一蹴を喰らい吹っ飛ばされる。

「ぐぁッ!」

 

ズザザザザザァッ!!!

 

「くっ……!」

痛みに顔を歪ませながらナックルズは立ち上がり、ダークを睨みつける。

「貴様如きが俺にかなうと思っているのか?」

ダークは不敵に告げる。

「ち……くしょう……!!」

ナックルズは悔しさに満ちた顔でギリギリと歯軋りをする。

「……まぁいい。お前を消してからこのハリネズミも消してやる。」

 

スッ―――

 

ダークは静かに片手をナックルズに向ける。

 

ババババババババババッ!!!

 

その手に黒い閃光が集まる。

「消えろ!」

(ま……マズい……!!)

ダークが叫ぶと同時にナックルズは身構えた。

その時だった―――

 

「カオススピア!!」

 

ドガーン!!

 

「グッ!?」

突如ダークに光の矢が当たり炸裂する。

「なッ!?」

ナックルズは呆然としてゆっくりと周りを見渡す。

「……」

 

――――――ギロッ!

 

ダークは静かに矢の飛んできた方向を睨みつける。

「ハァ――ハァ―――」

そこに若干息の荒いシャドウが立っていた。

「シャドウ!?」

ナックルズもシャドウの姿を見つけると思わず叫んだ。

「……シャドウ。」

ダークは静かにその名を呼ぶ。

「ダーク、貴様との決着はまだついていない。」

シャドウはダークに向かって言い放つ。

「クックックッ、貴様そんなに早く消されたいのか?」

ダークは不気味に笑いながら言う。

 

―――ドンッ!!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

その刹那、シャドウが真紅のオーラをまとった。

その足元からはまるで世界が揺れているような大きな振動が伝わってくる。

「……僕を舐めるのもいい加減にするんだな。」

シャドウは少しずつ怒りを表情に出しつつ告げる。

「わっ、わわわ!!」

ナックルズは揺れで立っていられなかった。

「それで俺を脅しているつもりか?忘れたなら思い出させてやるが、貴様はこの俺に一度負けている。それでも俺に勝つと言うつもりか?」

クックックと笑いながらダークはシャドウに言い放つ。

シャドウはフンと鼻を鳴らした。

「……がっかりさせるようで悪いが、僕はまだ全力を出し切っていない。

あれで勝った気になるのは早いというわけだ。」

その言葉にダークは表情を一変させる。

「……ほぅ、なら見せてもらおうか。貴様の全力の力とやらを……」

ダークは静かに構える。

「シャドウ!ダークの持っているあの黒いエメラルドを破壊してくれ!!」

ナックルズはシャドウに向かって叫んだ。

「僕に指図するなッ!!!」

しかしシャドウはそんなナックルズの頼みを一言で切り捨てた。

 

スッ―――

 

シャドウは静かに手首にもう片方の手を伸ばす。

 

カチャッ!

 

カチャッ!

 

シャドウの両手首からリングが落ちた。

 

――――ドンッ!!!!!!!!!

 

その瞬間、シャドウからとてつもなく強い力が溢れ出す。

「……何の真似だ?」

ダークは静かに尋ねる。

「僕の両手首に付けている力のリミッターを解除させてもらった。」

 

シャッ!!

 

そう告げた瞬間シャドウの姿が消える。

「なにッ!?」

ダークは周りを見回す。

「カオススピア!!」

シャドウの声だけが聞こえるが姿が見えなかった。

「なッ!?」

しかしそんなことに気を取られる間はなかった。

数え切れないほど膨大な光の矢がダークを取り囲んでいたからである。

「くッ!」

ダークは防御体制をとった。

 

ドドドドドドドドドド!!!

 

その刹那、光の矢が一斉にダークに襲いかかる。

 

ドガーーーーン!!!

 

そしてそのまま大爆発を起こした。

「チッ!」

ダークは爆発から抜け出し大きく跳躍した。

そしてそのまま宙に浮かびシャドウの姿を探す。

「どこに行きやがった……」

 

ガッ!!!

 

「ガァッ!?」

そう呟いた瞬間、背中に衝撃が奔る。

「ここだ。」

その正体は金色のオーラをまとうシャドウの鋭い蹴りだった。

 

ギュウウウウ――――――ン!!!!

 

足を離さないままシャドウはダークを下敷きにして地に急降下する。

「ぐ、ぐぐぐぐぐ……!!」

ダークは脱出を試みるが強大な力で地面に引っ張られるようで脱出できない。

「ハァッ!!」

 

ドガーーーーーン!!!!

 

シャドウはダークを地に叩きつけた。

「くッ!」

 

バッ!!

 

ダークはすぐさま立ち上がり受身の体勢をとった。

「……………」

ダークは苦々しく舌打ちをした。

(―――さっきまでのシャドウとはまるで別人だ…一体どうなっている――?)

俄かには理解できないほどシャドウの力は格段に上がっていた。

「さっきまでの君達の話は聞かせてもらった。」

シャドウはそのままダークに告げた。

「……何の話だ?」

ダークは白々しく聞き返す。

 

――スッ

 

シャドウは自分の手の上に何か黒い物体を取り出した。

「―――――貴様、いつそれを!?」

ダークは驚いた表情を見せながらも静かに尋ねる。

「先程空中でいただいた。こんなものでソニックの魂を封印していたとはな……」

シャドウが持っていたのはソニックの魂が封印されている黒いエメラルドだった。

 

ドンッ!!

 

「それを返してもらおうかぁッ!!!」

シャドウに肉薄しながらダークは叫ぶ。

 

バッ!

 

シャドウは大きく跳躍した。

 

ギュォォッ!

 

ダークはそのままシャドウを追う。

 

ギュンッ!

 

かなり高くまで跳躍したところでシャドウは金色のオーラをまといながら急降下した。

「なっ!?」

突然のことでダークは避けることが出来ない。

 

ドガッ!!

 

そしてそのままシャドウはダークを蹴り飛ばした。

「ぐぁっ!」

 

ヒュウゥゥゥ――――

 

ドーーーーーン!!

 

ダークは遠くの巨大な岩に突っ込んだ。

一方シャドウはそんなダークに見向きもせず急降下しながら地を見た。

「フッ」

 

バッ!

 

シャドウは持っていたエメラルドを地に投げつけた。

勢いよく地面に落ちたがエメラルドにはヒビ一つ入らない。

「―――ハァァッ!!」

シャドウはエメラルドめがけて自らの落下スピードをさらに上げた。

 

パキィィィィンッ!!!!

 

シャドウがその上に着地すると共にエメラルドは割れた。

 

ボウッ!

 

粉々に砕け散ったエメラルドの破片の隙間から青い球体の様なものが抜ける。

そしてそのまま地に力なく倒れているソニックの中に入っていった。

「う……あ……?」

ソニックの目に生気が戻る。

「ソニック!!?」

ナックルズはソニックに駆け寄った。

「ナ……ナックルズ……?……一体どうなってんだ……?」

ソニックは立ち上がりながら尋ねる。

「シャドウが助けてくれたのさ。」

ナックルズが指さした方を見ると手首にリミッターをはめ直しているシャドウが立っていた。

「……そうか。Thanksシャドウ!!」

ソニックはシャドウに親指を立てる。

シャドウは何も言わずフンと鼻を鳴らした。

 

しかし、誰もが少なからず安堵したその刹那――

 

ドガーーーン!!!

 

「!?」

突如遠くの岩盤が割れ全員がそちらを振り返る。

 

シュウウウゥゥゥゥ……

 

中からダークが現れた。

あれだけシャドウのラッシュを受けたのに傷一つ付けることなく――。

咄嗟に全員が身構える。

「……チッ、奴が復活したか。」

ダークはそのまま上昇した。

「……まあまだチャンスはある。今回は見逃してやろう。次会った時が貴様らの最後だ。」

ダークはそう言い残すと、音も無く姿を消した。

 

 

 

「……ダーク……奴は一体……?」

シャドウは呟いた。

「なぁシャドウ、あいつ一体誰なんだ?」

ソニックはシャドウに尋ねた。

「悪いが彼に見覚えはない。」

シャドウは腕を組みながら答えた。

「で、お前はこの後どうするんだ?」

ソニックが再び尋ねかける。

「……彼からカオスエメラルドを取り戻すためにマスターエメラルドを探す。」

「Hun!?マスターエメラルドが盗まれたことを知ってるのか!?」

ソニックは驚いた様子で聞き返した。

「そういえばお前にはまだ話してなかったなソニック。」

ナックルズは頭を掻きながら話を続けた。

「What?」

ソニックはナックルズの方に向き直りながら尋ねる。

「実はお前が来る前にシャドウがマスターエメラルドのことを聞きに来たんだ。」

「What!?」

ソニックは目を見張る。

「ッてことはシャドウ、お前あの時俺達の戦いを見てたのか!?」

「……貴様からカオスエメラルドを奪うチャンスをうかがっていた。」

シャドウは二人に背を向けながら答えた。

「……ま、どっちにしろ今の俺達の目的は同じってわけだな。」

ソニックは少し表情を和らげた。

「喜んでいる場合じゃないぜソニック。一刻も早くマスターエメラルドを見つけないとダークに消されちまう!」

ナックルズは少し慌てた様子で言う。

「ここに居ても仕方が無い。一度マスターエメラルドのあった所へ戻ろう。何か手掛かりが見つかるかもしれないしな。Let’s move on!!」

 

ダッ!!

 

言うが早いが三人は駆け出した。

 

 

 

――――ザッザッザッザッザッザッ

 

広い草原を「彼」は1人歩き続ける。

「……くッ………!」

だが、既に体は傷だらけだった。

「どうなってやがる……」

「彼」は呟いた。

 

――――俺は誰だ?

 

―――何であんな所に倒れていたんだ?

 

―――何でこんなにボロボロになっているんだ?

 

――――ここはどこなんだ?

 

 

これらの思いが彼の頭を駆け巡る。

 

ズキンッ!!!!

 

「うッ!!!!!」

 

ガクンッ!

 

頭に激痛が奔り、「彼」は思わず膝をつく。

「――――ハァ―――ハァ―――」

動く度に体に激痛が奔る状態でも無理矢理体を立てる。

「……こんな……ところで……死んで……たまるか……」

 

―――――ザッザッザッザッザッザッ

 

目の前が霞んでよく見えないが、それでも「彼」は歩き続ける。

一体何が「彼」をこんなにも突き動かしているのだろうか―――?

 

 

「ここがマスターエメラルドのあった場所か?」

ソニックは目の前にある台座のような物を見つめながら尋ねた。

「ああ。俺はここで守っていたんだ。」

ナックルズは目を細め、呟くようにその問いに応じた。

(――クソッ一体どこに行っちまったんだ……)

その強ばった表情からは怒りとも悔恨ともとれる感情が伝わってくる。

ここはソニックがカオスエメラルドの襲撃を受けた後にナックルズを訪ねてやって来た森の中だった。

ソニックは周りを見回す。

「……どうやらこの辺りには手掛かりは無さそうだな。シャドウ、何か分かるか?」

そして背後で木に寄りかかって腕を組んでいるシャドウに尋ねた。

「…………」

しかしシャドウは目を閉じたまま何も言わなかった。

ソニックはため息をついた。

「くそっ、何処行っちまったんだ……!!」

 

――ギリッ

 

ナックルズは少し苛立った面持ちで歯軋りをした。

 

その時――

 

ガサッ!

 

背後で草を分ける音がし、全員が振り返った。

「誰だ!?」

ナックルズは思わず身構える。

中から現れたのは――――――

 

「「テイルス!!?」」

 

少しボロボロのテイルスだった。

「ソニック!ナックルズ!シャドウも!」

テイルスは少しだけ笑顔を見せながら嬉しそうに言った。

「テイルス!お前……どうやってあそこから!?」

ソニックは少し驚いたように、だが嬉しそうにそう尋ねた。

「あの時はボクももう駄目かと思ったよ。けど墜落する直前で我に帰って非常用ボタンを押して脱出したんだ。ところで何かあったの?何だか皆慌ててるみたいだけど……」

テイルスはソニック達に尋ねる。

 

ソニックはこれまでの経緯を全てテイルスに話した。

 

――――「ダーク」の存在のこと

 

―――――カオスエメラルドがそのダークに操られていること

 

―――――マスターエメラルドが盗まれてしまったこと

 

その一部始終を聞くとテイルスは腕を組み考え込んだ。

「う~ん……確かに急いでマスターエメラルドを探さないとね。」

テイルスは真剣な表情でソニックに告げる。

「何か良いアイデアは無いか?」

ソニックがそう尋ねると、テイルスは少し思案顔で提案した。

「マスターエメラルドはエネルギー反応が強いからレーダーで探すのはどうかな?」

「Good idea!!」

ソニックは親指を立てる。

しかしテイルスは再び真剣な表情になる。

「……ただ、今からボク1人で作ったんじゃ間に合わないかも……材料も足りるか分からないし……」

その言葉にソニックも真剣な顔になる。

「その隙にダークに見つかったらアウトってわけだな。」

ソニックは腕を組む。

「……けど、方法が全く無いってわけでもないんだ。」

それまで沈黙を守っていたナックルズもその言葉に少なからず反応し、ソニックの隣でテイルスの次の言葉を待った。

 

「……エッグマンの手を借りる。」

 

少し顔をしかめてテイルスは告げた。

「「!!」」

その言葉にソニックとナックルズもつられて顔を顰めた。

「……多分そうするのが一番早いと思うんだ。」

嫌だけどね……――そう言いたげにテイルスは続けた。

「あのドクターがそう簡単に手を貸すとは思えないがな。」

ずっと黙っていたシャドウが初めて口を開いた。

「うん……でも今の所これしか方法が無いんだ。」

テイルスはちょっと困った面持ちに変わり、ポリポリと頭を掻いた。

「……悔しいが俺もそう思う。今回ばかりは奴に頼るしかない。」

ナックルズも嫌そうな面持ちで言った。

「ま、奴にとっちゃ世界征服に邪魔な奴が現れたんだから協力してくれんじゃないの~?」

ソニックはのん気な表情を見せながら言った。

「それはあるかもね。」

テイルスも笑いながら答える。

「とにかくそうと決まれば早速エッグマンの所へ行こうぜ!テイルス、ボロボロだけど動けるか?」

「うん!このくらいヘッチャラさ!」

「OK!Let’s move on!」

 

ダッ!

 

四人は駆け出した。

 

 

 

「ここか…」

ナックルズは目の前の大きな扉を見上げて呟く。

「……ったく、もう新しい基地を作ってたのか。あのヒゲのオッサン一体何個基地作ってんだか……」

ソニックは呆れたように言う。

「とにかく、ドクターの居るところに急ぐぞ。」

シャドウの声を合図にソニックたちは歩き出す。

 

ギギギギギギィ……

 

大きく重い扉をゆっくりと開く。

「……うん、誰もいないよ。」

中を少しだけ覗き込んだテイルスが言った。

その言葉通り、扉の向こうには薄暗く人気のない通路が横たわっているだけだった。

「よし、行こう。」

ナックルズがそう告げた瞬間――

 

ビ――――――ッビ――――――ッビ――――――ッ!!!!!

 

突然けたたましく警報音が鳴り響く。

「うわぁっ!?」

テイルスは驚き飛び上がった。

ソニックとナックルズも咄嗟に警戒する体勢をとった。

「侵入者じゃ!!侵入者を排除するのじゃ―――!!」

エッグマンの声が響き渡った。

『シンニュウシャ!!シンニュウシャ!!』

 

ドドドドドドドッ!!!

 

そして奥から数え切れない数のエッグマンに似せた赤いロボットが走ってくる。

「ハァ……こうなると思ったぜ。」

手袋をはめ直しながらソニックは叫ぶ。

「皆気を付けて!来るよ!」

テイルスは構えた。

「こうなったら強行突破だ!まとめてぶっ壊してやるぜ!!」

ポキポキと拳を鳴らしながらナックルズも叫ぶ。

「チッ、ガラクタ共が……僕の邪魔をするなっ!!」

唯一全く動じていなかったシャドウもそこで沈黙を破った。

「It’s show time!!!」

 

バッ!

 

ソニックの声と共にソニックとシャドウが猛スピードでロボットの群れに突っ込む。

「「ハァァァァッ!!」」

 

ババババババババッ!

 

二人の突っ込んだところから大量のロボットが吹き飛ばされている。

「オラオラオラァッ!!」

ナックルズはその後から続き吹っ飛ばされたロボットを更に追撃する。

「えーーいッ!!」

 

ドォンッ!!ドォンッ!!!

 

テイルスはどこからか取り出した銃を腕に装着し、ロボットを砲撃していく。

「皆!この調子でガンガン行くぜ!」

ソニックはそう言いながらロボットを吹き飛ばしていく。

 

 

 

その頃――――――

 

「ええい、警備ロボ達は一体何をやっておるのじゃ!?」

エッグマンは司令室で大きなモニターの下でキーボードを叩いていた。

 

ブゥンッ!

 

画面に監視カメラの映像が映る。

「なっ、ナヌ!?」

エッグマンは驚愕した。

画面に映されたのはロボット達の残骸。

「クソー!一体誰の仕業じゃぁ!?」

エッグマンはキーボードを力任せに叩く。

 

その時―――――――

 

ドガァンッ!!!

 

司令室の入り口で爆発が起こる。

「むぅッ!?」

その轟音に思わず振り向くと、

「よおエッグマン。」

爆発の中から姿を現したのは――――

 

 

 

 

 

「ソ、ソニック!?」

その正体は言うまでもなくソニックだった。

 

ザッ――――

 

エッグマンがその名を呼んだのと同時にソニックの周りにその仲間達が―――テイルス、ナックルズ、シャドウが姿を現す。

エッグマンは立ち上がった。

「な…ななな…なんじゃ貴様ら!?ワシはまだ何もしとらんぞ!?」

エッグマンは後ずさりをしながらそう叫んだ。

「エッグマン、頼みがある。」

「むぅッ!?」

ナックルズの言葉にエッグマンは足を止める。

「僕達に協力して欲しいんだ。」

続けてテイルスが言う。

「協力じゃと?」

エッグマンは思わぬ申し出に眉を吊り上げる。

 

ソニックは先程テイルスに話したようにエッグマンに事情を説明した。

 

――――「ダーク」の存在のこと

 

―――――カオスエメラルドがそのダークに操られていること

 

―――――マスターエメラルドが盗まれてしまったこと

 

一部始終を聞くと、エッグマンはソニック達に背を向ける。

「……フン、ワシの計画を今まで散々邪魔し、挙句には基地まで目茶苦茶にした貴様らの頼みなど……」

「ドクター、今回の敵はかなりの強敵だ。目的も定かではないが、ドクターの世界征服の邪魔をすることは恐らくほぼ間違いない。奴を討つにはドクターの手を借りる他無い。」

シャドウの言葉にエッグマンは動きを止める。

「……で、貴様等の要求は何じゃ?」

エッグマンは背を向けたまま尋ねる。

「マスターエメラルドを探さなきゃいけないからレーダーを作りたいんだ。」

テイルスが代わりに答える。

「……テイルスよ、来るのじゃ。」

 

プシュ―――ッ!

 

そう言うとエッグマンは先程ソニックが破壊したのと反対方向にある自動ドアから司令室を出た。

「皆、ちょっと行って来るね。」

テイルスはそう言い残すとエッグマンの後に続き司令室を出た。

 

 

 

 

ちょうどその頃―――ソニック達の居場所から遥か彼方に―――――

 

「ククク……」

何か可笑しいのか「彼」は急に笑い出す。

「……奴ら、今頃何をしているか……これを探し出すために必死になっているか……」

「彼」は独り呟く。

「……せいぜい必死になるがいい……見つけた所でどうにもならないのだからな……」

クックックと笑いながらそう呟く「彼」の背後は、何やら輝いていた。

 

 

 

 

(……遅い……)

苛ついた心情でナックルズはトントン指を動かす。

もう何時間待たされたことか…――とナックルズは思う。

「……………」

シャドウは静かに壁に寄りかかり、目を閉じている。

「………」

ソニックも壁際に座って足を組み、目を閉じている。

 

長い沈黙が続く――――――

 

その時だった――――

 

 

プシュ―――!

 

ドアが開き、全員が振り返る。

「お待たせ!」

テイルスが何か丸い物を持ち部屋に戻ってきた。

「随分遅かったな。」

ソニックは立ち上がりながら言う。

「ごめんね。結構作るのが大変で……」

テイルスは少し申し訳無さそうに言う。

「でも、完成したんだよ!」

そして、手に持っていた丸い物を見せる。

「これがそのレーダーか?」

ナックルズが尋ねる。

「そうじゃ。」

少し遅れて入ってきたエッグマンが代わりに答える。

「それを使えばマスターエメラルドがどこにあるか分かるじゃろう。使い方はテイルスに教えてある。」

「Thanksエッグマン!」

ソニックはエッグマンに親指を立てる。

「一刻も早くダークとやらを倒すのじゃぞ。そいつが居る限りワシの世界征服は出来そうになさそうじゃからな。」

エッグマンは顔をしかめて苦々しく言う。

「分かってるって。さて、早速行くか!Here we go!」

 

ダッ!

 

ソニックのかけ声と共に四人は走り出す。

「……………」

一人残されたエッグマンは考え込んだ。

「……ダーク・ザ・ヘッジホッグ……どこかで聞いたことのある名じゃな……じゃがどこで聞いたかが思い出せん……」

 

 


 
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