今日、俺は彼女―――フェイト・T・ハラオウンさんの引っ越しの手伝いをすることになっている。
行きたくないと言うのが本心だが、流石に管理局のエースに頼まれては断ることはできない
フェイトさんの家の前に着くと声を掛けられる
「おはよう」
声がした方を向くと、そこには彼女―――高町なのはさんが居た
「おはようございます、なのはさん」
なのはさんに挨拶をすると、彼女は俺に近づいてくる
「君はフェイトちゃんの引っ越しの手伝いに来たのかな?」
首を傾げながらなのはさんは俺に聞く
「はい、そうですよ」
「なのはさんも手伝いに来たんですか?」
なのはさんは俺の目を見ながら言う
「手伝いもするけど、一番の目的は君かな」
―――光が無い虚ろな瞳で俺を見ながら
―――なのはさんは言う
「あれ、なのは?」
彼女―――フェイトさんは家を出て、不思議そうな顔をしながら近づいてくる
「おはよう、フェイトちゃん」
フェイトさんがなのはさんの横に立つと、挨拶をするなのはさん
「おはよう、なのは
「今日はどうしたの?」
フェイトさんはなのはさんを軽く睨みながら言う
「引っ越しの手伝いに来たんだよ
「2人じゃ大変かなって思ったから」
なのはさんはニコニコとした笑顔でフェイトさんに言う
「なのはにはまだ家の場所教えてないはずだけど、どうしてわかったの?」
フェイトさんはなのはさんと似た瞳で彼女に言う
「彼が今日フェイトちゃんの家に手伝いに行くって聞いてね
「それを聞いて、クロノ君に教えて貰ったの
「フェイトちゃん、私に教えてくれないなんて酷いよ 「彼に無理矢理引っ越しの手伝いやらせようなんてして―――
「流石に怒るよ―――」
なのはさんは静かに睨みながらフェイトさんに言う
「何でなのはが怒るの?
「これは、私と彼のこと何だから―――
「なのはには関係ないよ
「私と彼だけ関係ある何だから―――」
フェイトさんはそう言うと、俺の手を取る
―――だが
「離してくれないかな、なのは」
フェイトさんが手を取ると同時にもう片方の手をなのはさんが取る
「離すのはフェイトちゃんの方だよ
「私は彼の手を離さない―――
「離したくない―――」
なのはさんがフェイトさんに言う
俺はフェイトさんにお願いする
「あ、あのフェイトさん
「なのはさんにも手伝って貰ったほうが早く終わると思いますし、手伝って貰ったらどうですか?」
「どうして?」
フェイトさんは俺の目を見ながら言う
「どうしてなのはを庇うの?
「私と2人なのは嫌だから? 「私と一緒にいるのは嫌だから?
「私よりもなのはがいいの?
「私じゃ駄目なの?
「なのはは好きで、私は嫌いなの?
「何で―――
「ねぇ、何で―――」
俺が口を開く前になのはさんは言う
「彼が困ってるから、止めようよ、フェイトちゃん
「フェイトちゃんは何で彼を困らせたいの?
「そんなに彼のことが嫌いなの?
「私と違って―――」
なのはさんは俺の手を強く握る
フェイトさんはそれを見てさらに強くなのはさんを睨む
「私が彼のことを嫌うはずが無いよ
「そして、彼も―――
「私のこと―――
フェイトさんは目線を俺に移す
―――その目は愛おしそうに
―――ただ、俺を見る
「……そっか
「でも、フェイトちゃんはそんな彼のお願いを聞いてあげないんだ
「彼は私に手伝ってもらえばって言ってるのに
「フェイトちゃんは彼の言うこと聞かないんだ」
「そんなことない!!
「私は彼の我が儘なら何でも聞く!!
「ーーー何だって」
なのはさんはそれを聞き不思議そうな顔をする
「なら、何でフェイトちゃんは私が引っ越しの手伝いをするの嫌がるのかな?
「彼が私のためにフェイトちゃんに我が儘言ってるのに
「フェイトちゃんはそれを聞いて怒るなんてーーー
「フェイトちゃんは口だけなのかな?」
それを聞くとフェイトさんはなのはさんを更に強く睨む
「……わかったよ」
悔しそうに呟くフェイトさん
「じゃあ、行こっか」
なのはさんなそう言うと、俺と俺の手を握っているフェイトさんを引っ張って、フェイトさんの家に向かう
ーーー互いに互いを睨みながら
ーーー俺達は家に向かう
ーーーーー
家に入り、先ず向かったのはリビングだった
リビングには大量の段ボールが置いててあった
「これを運んでほしいんだけど」
「……流石に多くないかな、フェイトちゃん」
先程まで睨んでいたなのはさんもこの段ボールの数を見たら苦笑いを浮かべる
「運びやすいように中身を少なくしといたの」
試しに1つ持ってみる
……軽い
「じゃあ、部屋の案内するね」
そう言うと、フェイトさんは俺を引っ張って、家の案内を始める
1階の説明を終えると2階に行き説明を始める
「こっちが私の私室でこっちが寝室だよ」
フェイトさんはそれぞれの部屋を指差して言う
「ねぇ、フェイトちゃん」
そのまま3階に向かおうとするフェイトさんをなのはさんが止める
「あの部屋は何かな?」
なのはさんはフェイトさんが無視していた部屋を指差す
「あの部屋はまだ秘密だよ 「あの部屋には持っていく荷物が無いから、知らなくて大丈夫だよ」
秘密?
秘密って……
「……そっか
「フェイトちゃんがそう言うなら、別にいっか」
なのはさんはクスクスと笑いながら言う
ーーーまるで、楽しそうに ーーー面白そうに
フェイトさんはそんななのはさんを無視して進んでいく
3階には扉が1つしかかった
「この部屋は書斎兼仕事部屋だよ
「ここが一番荷物が多いけど、一緒に頑張ろうね」
「うん、頑張ろう」
「そうですね、頑張りましょう」
なのはさんと俺が返事をする
ーーー大変な1日になりそうだ
そんな思いを胸に抱きながら
ーーーーー
あれから数分が経った
リビングの荷物は全て俺が運び、本の整理はフェイトさんとなのはさんがやることになった
ーーー3階に俺が行くたびに2人の空気が悪くなっていたけど
今は3階の荷物を全て運び終わり、整理も終了したため、3人で休憩することにした
「紅茶淹れてくるね」
フェイトさんがそう言うと、席を立つ
「ありがとう、フェイトちゃん」
「ありがとうございます」
俺となのはさんが礼を言う
「そういえば、何で君はフェイトちゃんの引っ越しを手伝おうとしたの?」
わざとらしく、思い出したかのようになのはさんは言う
「無理矢理手伝うように言われたのかな?
「それとも脅されたのかな?
「君は私に何も言わずに行くから、慌てちゃったよ
「私に一声掛けてくれれば引っ越しの手伝いなんてやらなくてすんだのに
「ーーー何で私に何も言ってくれなかったのかな?」
俺の目を見つめながら言う
ーーー光が無い
ーーー濁った瞳で
ーーー少し怒った表情で
「……言う必要ありましたか?」
俺はなのはさんから目を反らしながら言う
「うん、あるよ
「だって私は君の傍にいたいもん
「君だって私の傍にいたいでしょ
「私は君のこと何でも知ってるからわかるよ
「何でもねーーー」
なのはさんは俺の両頬を包むように手を置くと、俺の目線は強制的になのはさんに向けさせられる
「君にも私のことを何でも知ってほしい
「私のことを何時も考えていてほしい
「私の傍に何時も居てほし 「ーーー私のことだけ見ててほしい」
なのはさんはそう言うと顔を近付ける
ーーーが、それは直ぐに止まる
「……何やってるのかな、なのは」
フェイトさんがトレイを持って戻ってくるとなのはさんを睨む
「何って、キスしようとしただけだよ
「私は彼のことが好きだもん
「彼だってきっと私のことが好き
「だから、キスしようとしたの」
フェイトさんとは違い、ニコニコと笑いながらなのはさんは言う
フェイトさんはこちらに向かって歩く
「よくわからないよ、なのは
「彼が好きなのは私なんだよ
「彼は私のものだもん
「そして、私は彼のもの
「ーーーこれまでも
「ーーーこれからも」
フェイトさんはテーブルの上にトレイを置く
それと同時になのはさんが立ち上がる
ーーーお互いに光が無い
ーーーお互いに濁っている
ーーーそんな瞳で、睨み合う
「そろそろいい加減にしてくれないかな、フェイトちゃん
「何でフェイトちゃんは彼をもの扱いするの?
「ーーー私の大事な彼を」
「なのはこそどうしてそんなこと言うの
「彼が困っちゃうよ
「好きでもない人に大事な人だなんて言われてもーーー
「彼が可哀相だよ」
互いの相手を更に強く睨みながら、言う
「ーーー彼は私の大事な人」
「ーーー彼は私の大事な人」
2人が言うと同時に何も言えないまま俯いてる俺の方を見る
「君は私のことが好きだよね
「私は君のこと好きだよ
「ううん、愛してる
「誰よりも君のことを
「ーーー愛してる」
「あなたは私のことが好きだよね
「私は大好きだよ
「君の我が儘は何でも聞く 「だって、私は君のことを愛してるもん」
ーーー2人は言う
お互いに変わらない瞳で俺を見ながら
ーーー俺は
「六課」
フェイトさんが呟く
「君は六課に来るんだよね」
フェイトさんが俺に言う
「は…はい、行く予定です」
始めは行きたくなかったが、なのはさんとフェイトさんの2人に誘われたため行くことにしたのだ
「六課は1年で解散するのが決まってるから、その時に応えて」
何も言わなかった俺のためなのか、フェイトさんは優しく言う
「なのはもそれでいい?」
フェイトさんはなのはさんに聞く
「……うん、わかったよ
「彼にはよく考えてほしいもん
「ーーーまぁ、選ぶのは私だろうけど」
「彼が選ぶのは私だよ
「ーーー彼は私しか選ばない」
互いに互いを睨みながら
お互いに宣言する
ーーー何も言わなかった俺のために
ーーー俺は
ーーーーー
あれから先のこと、簡単に言えば六課に入隊した後の話をしよう
2人との関係は余り変わっていない
ーーー六課の解散
それまでに、俺はどちらを選ぶか決めなければならない
今日も2人は俺の手を取りながら
互いを睨みながら言う
「彼は今日私の仕事を手伝ってもらう予定なんだ
「だから、フェイトちゃんは大人しく1人で仕事してくれないかな」
「そんなの誰が決めたの? 「彼はなのはじゃなくて、私と一緒に居たいんだよ
「だから、大人しくその手を離して、彼を渡してくれないかな」
「駄目だよフェイトちゃん 「彼は私の大切な人なんだからこれ以上物扱いしたら 「―――少し、お話しないといけなくなるよ
「話をするのは私の方だよ 「―――彼は私のもの
「―――私は彼のもの
「―――何時までも
「私達は―――
ーーー俺はまだ何も選んでない
ーーー選ばなくてはならない
ーーーそれが、時間をくれた2人にたいする礼儀だから
ーーーそう思うから
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病みつきシリーズ第七弾!!
なのはとフェイトのヤンデレです
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