No.457303

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 90

soranoさん

第90話

2012-07-22 10:55:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1047   閲覧ユーザー数:1005

ツァイスへと続くトンネル道、カルデア隧道は暗さのせいもあり、オーブメントの魔獣避けの灯で道を照らされていても道にはそこそこの数の魔獣がいて、エステル達を見つけると襲って来た。これまでの旅で強くなったエステルとヨシュア、歴戦の強さのリフィア達、見た目が幼いながらも竜のミントやツーヤにとって苦戦する敵ではなかった。

 

~カルデア隧道~

 

「はっ!」

「せいっ!」

魔獣の攻撃範囲外からエステルが棒で攻撃するとタイミングよくヨシュアが一瞬で魔獣に近付き、追撃をかけて次々と魔獣を倒し

「……ゆけい!」

「キャハッ♪」

リフィアとエヴリーヌは戦っている場所がトンネル道であるため、辺りに衝撃を与えかねない強力な魔術を抑えて、下級魔術――追尾弾や弓技――精密射撃で一撃で魔獣を次々と葬り

「ふっ、はっ、セイ!……ハァッ!」

プリネは魔獣達を皇技――フェヒテンイングやフェヒテンバルで次々と華麗に倒していった。一方心配であったミントとツーヤは予想以上に戦えてた。

「たぁっ!」

「ハァッ!」

ミントが魔獣に剣で斬りつけ、ツーヤが刀で魔獣の手足の一部を斬った所を

「やぁっ!」

ミントが突きで突進するクラフト――ピアスドライブで止めをさした。攻撃した後硬直していたミントに近くにいたを魔獣が襲ったが

「貫け!……アイスニードル!」

ツーヤが放った魔法によってミントを襲おうとした魔獣は足元から突然出て来た氷によって貫かれ、致命傷を負ったところをミントがクラフトを使った。

「あっち行けぇっ~!」

身体を回転させた勢いの片足に魔力を纏わせて目標に傷を負わせると同時に吹っ飛ばすクラフト――バーストショットによって蹴り飛ばされた魔獣は壁に当たった所を

「そこっ!」

ツーヤは突きの構えで力を溜めて放ったクラフト――溜め突きで魔獣に止めを刺した。

「フゥ。油断は禁物だよ、ミントちゃん。」

「えへへ……ありがとう、ツーヤちゃん!」

辺りの魔獣を倒し終えて安堵の溜息をついているツーヤにミントは笑顔でお礼を言った。

 

「ふえ~。2人とも初めての戦いの割には結構戦えるわね……魔術まで使うとは思わなかったわ……」

「そうだね。息もピッタリだったし。」

戦闘が終わりミント達の戦いを横目で見ていたエステルは驚き、ヨシュアは2人のコンビネーションに感心していた。

「えへへ、だってミントとツーヤちゃんは会ってからずっといっしょにいる友達だもん!だからパパとママみたいに仲良く戦えるんだ!」

「え。」

「へ!?ちょっと待って……ママはあたしの事だからいいとして、パパってもしかして……ヨシュア?」

ミントの言葉にヨシュアは驚き、エステルは驚いた後尋ねた。

「違うの?パパの名前、ママと同じだからパパだと思ったんだけど……」

エステルの様子が不思議に思い、ミントは首を傾げながら答えた。

「ち・が・う・わ・よ!ヨシュアはあたしの弟!第一、あたしはまだ結婚なんてしていないわ!」

「そうなの?」

「ハハ……エステルの言う通りだよ、ミント。」

「第一その……弟と結婚なんてできる訳ないでしょ。」

「何を言っておる。兄妹同士でも結婚できるぞ?」

「へ?」

リフィアの言葉にエステルは目を丸くした。

「忘れたのか?余の両親は元々腹違いの兄妹の関係だったのだぞ。」

「加えてエステルさんとヨシュアさんは血が繋がった姉弟ではないんですよね?でしたら普通に結婚できると思いますが……」

「…………………」

「エステル?どうしたんだい、顔を俯かせて。」

「ママ、風邪をひいたの?顔が真っ赤だよ?」

リフィアやプリネに正論を言われ、ヨシュアと結婚した風景をつい思い浮かべてしまったエステルは顔を真っ赤にさせて俯き、ヨシュアはその様子を不思議に思い声をかけ、ミントはエステルに近寄って顔が真っ赤になっているエステルの顔を見て首を傾げた。

「な、なんでもないわよ!それよりこの話はお終い!ヨシュアはあたしのそのこ、恋人とかじゃなくて弟だからね!だからミント、パパとかいっちゃダメよ!みんなに勘違いされるんだから!」

「?うん。」

無理やり話を終わらせたエステルにミントは首を傾げながら頷いた。

 

「……………」

(ヨシュアさん、何だか辛そうにしていませんか、ご主人様。)

(そうね……………まさか。)

エステルの言葉を聞いて、どこか哀愁が漂っているようにみえるヨシュアを見てツーヤはプリネに囁き、囁かれたプリネはヨシュアの様子を見て感づいた。

(どうしてヨシュアさんが辛そうにしているかわかったんですか、ご主人様。)

(ええ。……フフ、でも今のあなたにはまだちょっと早いかもしれないわね。)

(?よくわからないのですが……)

(その内あなたにもわかる時が来るわ……だから今はそっとしておきましょ。)

(?はい。)

微笑みながら答えたプリネの言葉にツーヤは首を傾げながら頷いた。

(フム……あの2人の結婚式に参加した際の祝いの言葉を今から考える必要があるな……)

(うわー……リフィアの頭の中ではエステルとヨシュアが一緒になる事が決定してる……エヴリーヌ、知~らないっと。)

一方早とちりしたリフィアは2人が未来には夫婦になると思い、小声で独り言を呟き、それが聞こえたエヴリーヌは面倒事を避けるために知らないフリをした。

「(ハァ……全部、聞こえてるよ……)それよりそろそろ行こうか。昼ごろにはツァイスに着きたいし。」

プリネ達の小声の会話や独り言が聞こえていたヨシュアは心の中で溜息をつき、気を取り直してエステル達に言った。

「そうね。じゃあ、行きましょうか。」

そしてエステル達はツァイスに向かって足を進めた。しばらく歩くとツァイス方面から走って来る足音と声がした。

 

「はぁはぁ……。い、急がなくっちゃ……」

「あれ……?」

「……誰か来るみたいだね」

聞き覚えのない声が道の先から聞こえたエステル達は足を止めた。すると赤を基調とした作業着を着たミントやツーヤぐらいの体が小さい少女が走って現れた。

「あ……」

少女はエステル達を見ると、立ち止まった。

「やあ、こんにちは」

「どうしたの、そんなに急いで?」

「あ、はい、こんにちは。あの、お姉さんたち、この道を通ってきたんですか?」

ヨシュアやエステルに話しかけられた少女は礼儀正しく答えた後、尋ねた。

「うん、そうだけど?」

「あのあの、だったら途中に消えた照明を見ませんでした?トンネルの壁についている照明のことなんですけど……」

「む~……ごめん。ちょっと気付かなかったか。」

少女に尋ねられたエステルはすまなさそうな表情で答えた。

「消えた照明はなかったけど、川を2つ越えたところで調子が悪そうなのは見かけたよ。」

「それですっ!や、やっぱり思ったとおりだよ~……。すみませんっ。わたし急がなくっちゃ!」

ヨシュアの答えを聞いた少女は慌ただしくルーアン方面に向かって走って行った。

「ツァイスの女の子かな。変わった格好をしてたね。ずいぶん慌てていたけど……」

「うーん。なんか気になるわね~。ね、ヨシュア。ちょっと追いかけてみない?」

「そう言うと思ったよ。たしかに女の子を1人で行かせるのは危険そうだからね。付いていった方が良さそうだ。」

「そうね……ミントやツーヤは事情が特殊だし、実際戦えるからいいとして……あの子、どう見ても普通の女の子に見えたし心配だわ。」

「決まりですね。では、急ぎましょう。子供の足とは言え、油断はできません。」

「うむ!」

「ん。」

「はーい!」

「わかりました。」

そしてエステル達は来た道を引き返して急いで女の子の後を追った…………

 


 
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