No.456865

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 80

soranoさん

第80話

2012-07-21 18:10:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1051   閲覧ユーザー数:1001

~バレンヌ灯台・最上階~

 

「そ、そんな馬鹿な……」

黒装束の男達がやられた事にギルバートは愕然とした。

「市長秘書ギルバード。及び、そこの黒坊主ども。遊撃士協会規約に基づき、てめえらを逮捕、拘束する。あきらめて投降しやがれ。」

「ううう……」

アガットの宣告にギルバートは呻きながら後ずさった。

「なかなかやるな……。真っ向からの勝負ではやはり遊撃士は手強い。まさか、”闇夜の眷属”をも仲間にしているとは……」

「ああ、隊長の忠告通り油断すべきではなかったか。」

エステル達に負けた黒装束の男達はなんとか立ち上がって、冷静に言った。

「隊長……。ひょっとして空賊と交渉していた赤い仮面をかぶった人ですか?」

「その事も知っているとは……」

「さすがギルドの犬ども。なかなか鼻が利くようだな……」

ヨシュアの言葉に男達は驚き、口元に笑みを浮かべた。

「負けたくせにな~に余裕かましてんのよ!いいから武器を置いてとっとと降伏しなさいよね!」

「フ、それはできんな。」

エステルの叫びに男は冷笑し、ギルバートに近付き、銃を構えた。

「なっ!?」

「な、なんのつもりよ!?」

男の行動にギルバートは信じられない表情をし、エステルは驚いて近付こうとしたが

「動くな。それ以上近寄ればこいつの頭が吹き飛ぶぞ。」

銃をギルバートの頭に突きつけながら脅迫した。

「き、君たち!?や、雇い主に向かってどういうつもりだ!?」

銃を頭に突きつけられたギルバートは焦って喚いた。

 

「勘違いするな、若造。我々の雇い主は市長であって貴様ではない。」

「市長にしたところで同じこと。利害が一致していたから協力していたに過ぎん……」

「お前がここで死のうが我々は痛くも痒くもない。」

「ひ、ひいいいい……。撃つな、撃たないでくれ!」

本気の様子の男達を見て、ギルバートは命乞いをした。

「コラ、いいかげんにしろや。そんな下手な芝居打って逃げられると思って……」

 

バン!

 

男達の行動をその場を逃れる芝居と思ったアガットは気にもせず近付こうとしたその時、男の銃が火を吹いてギルバートの片足を撃ちぬいた。

「ぎゃあああっ……。あ、足が……僕の足がああ!!」

片足を撃ち抜かれ、撃たれた所から血が流れ出たギルバートは撃たれた足を庇って悲鳴を上げた。

「せ、先輩!?」

「チッ……」

「どうやら本気みたいですね。」

男の行動にエステル達は驚いた。

「これでも納得しないなら……。こちらの灯台守の頭を撃ち抜いてもいいのだが?」

そしてもう一人の男が、眠っている灯台守の老人の頭に銃を突きつけた。

「や、やめなさいよ!その人は関係ないでしょ!」

男の行動にエステルは思わず、叫んだ。

「ならば、しばらくの間離れていてもらおうか……。そうだな……階段の近くまで下がれ。」

「フン、仕方ねえな……」

男達の要求にアガットは舌打ちをして、エステル達と共に階段の近くまで下がった。

「ふふ、いいだろう。」

「それでは、さらばだ。」

そして男達は灯台の修理用の出口から撤退した。

「待ちなさいってーの!」

「逃がすか、オラあッ!」

男達が出口から出ると当時にエステル達は男達が逃げた出口に向かって駆けて、出口を出た。しかし出口を出た時、男達の姿はなく、ワイヤ―ロープのフックが灯台の手すりに引っ掛かっていた。

 

「脱出用のワイヤーロープ!?」

「な、なんて用意周到なやつらなの!?」

手すりにフックが引っ掛かっているワイヤーロープを見て、ヨシュアとエステルは驚いた。

「………………………………。……秘書野郎とバカどもの面倒は任せたぞ。」

「えっ……?」

「俺はこのまま連中を追う!お前らは、今回の事件をジャンに報告して指示を仰げ!」

エステル達にそう言い残したアガットはワイヤーロープで降りて行った。

「ボクはルーアンに行ってリフィア達に伝えて先回りしてもらうから、プリネにすぐ戻って来る事を伝えておいてね!」

「あ、ペルル!」

ペルルは夜闇の空へ飛び上がり、エステル達に伝えた後ルーアンに向かって飛んで行った。

 

そしてエステル達は奪われた寄付金を取り戻した後、ギルバートやレイヴン達を拘束してマノリアの風車小屋に連れて行った。

 

~メ―ヴェ海道・夜~

 

黒装束達が逃亡して少しした頃、そこにはペテレーネを先にホテルに帰らせて、コリンズと色々な話をして帰りが遅くなったリウイがルーアンのホテルへの帰路についていた。

「予想以上に話が長引いてしまったな……しかし、”闇夜の眷属”の子供達の留学……か。種族間の壁を取り払う策の一つとしては使えるかもしれん。……プリネが世話になった礼もあるし、考えておくか。……ん?」

考え事をしながら独り言を呟いていたリウイだったが、空から自分に近づいて来る気配がしたので、空を見上げると、そこにはペルルがリウイに近付いて来た。

「あ――!見覚えのある後ろ姿だと思ったけど、プリネのお父さんだ!ルーアンのホテルに帰ったんじゃないの?」

「……プリネの使い魔か。学園長と少し話をしていてな。今帰るところだ。それで何の用だ。」

「うん、あのね……!」

そしてペルルは孤児院の放火事件や黒装束の男達について説明し、リフィア達に先回りしてもらうために逃亡している黒装束の男達を抜いて、ルーアンに知らせるために飛んでいたが、その途中で見覚えのある人影を見たので話しかけた事を言った。

「……なるほど。それでその黒装束とやらの特徴はどんなのものだ?」

「えっと……確か……」

ペルルはリウイに黒装束達の特徴を思い出しながら説明した。

「……………………」

「えっと、どうしたんですか?」

黒装束の特徴を聞き、考え込んでいるリウイを不思議に思ってペルルは尋ねた。

「少し気になる事ができた。報告御苦労。お前はプリネの元に戻れ。」

「え……でもリフィア達にまだ言ってないし……」

「あいつらの場合、やりすぎて殺してしまう可能性がある。そいつらには少々用があるしな……俺自らが追おう。だから安心しろ。」

「う、うん。じゃあ、お願いします!」

リウイの答えに戸惑いながら頷いたペルルは再び空へ飛び上がり、主であるプリネの元へ飛んで行った。ペルルが飛び上がるのを見送った後、リウイ懐からメンフィル帝国が開発した導力技術と魔術、魔導技術によってできた小型の通信機に魔力を流し込んだ後、ある人物と通信をした。

 

「俺だ。聞こえるか、ファーミシルス。」

「いかがなさいましたか、リウイ様。確か本日はペテレーネやティア様と共にルーアンに一泊するとの事でしたが……」

「ああ。リフィア達の報告にあった例の情報部とやらが動いた。」

「ああ……最近大使館の周りやロレント市民に我々の事をコソコソと嗅ぎまわっているネズミ共ですか。相手は一応同盟国のため様子見をしていましたが、一体どんな動きをしたのですか?」

通信機からは黒装束達を嘲笑するようなファーミシルスの声がした。

「実はな………」

そしてリウイはファーミシルスにペルルから聞いた事を説明した。

「……なるほど。今回の件を利用すればリベールのネズミ共の目的がわかりますね。」

「ああ。何の罪もない一般市民達が住む住居を放火したり、直接襲った者達だ。これなら向こうから何か言われても大義名分が立つ上、遠慮なく拷問して奴らの狙いがわかるかもしれん。俺は今から奴らを追う。今から来れるか?」

「はっ。こちらでリウイ様が持たれている通信機の現在地がわかりますので今から参ります。」

「ああ。」

そしてリウイは通信機を懐に仕舞った後、気配を感じたので近くの木の影に身を潜めた。少しすると逃げて行く黒装束の男達とそれを追うアガットが通り過ぎた。

「今の男の胸についていた紋章は遊撃士協会の………まあいい。気付かれない程度に追うか。」

姿を現したリウイはアガットの服についていた紋章を思い出し少しの間考えていたが、優先すべき事のために考えるのをやめ、気配を消してアガットの後を追った……

 

 


 
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