~ジェニス王立学園・学園長室・夕方~
「なるほど……。それはいいアイデアですよ!さすが学園長、冴えてますねぇ。」
「ははは……。おだてても何も出んよ。それでは、リストの方は君に任せても構わないかね?」
会話をしていてある提案をしたコリンズにジルは喜び、それを見たコリンズは尋ねた。
「はい、任せてください!……あの~……できれば例の異世界の大使も呼べればな~って思っているんですが。」
「もちろん招待状は送ったが期待はしないでくれよ?リベールが異世界との交流を始めてから、何度か招待状は送ってはいるが学園祭に一度も顔を出した事もなく、後日に多忙という理由で来れなかった事の謝罪の返事の手紙が来るぐらいだからな。………将来的に”闇夜の眷属”の子供達を学園に迎え入れて子供達同士仲好くなって、種族や異世界人との隔たりをなくす礎になってほしいものなのじゃが……その提案を話す機会を作るためにも送っているのじゃ……」
ジルの言葉にコリンズは溜息をつきながら答えた。
「そうですか……まあ、余り期待せず待っています。もしかしたら今回に限って来てくれるかもしれませんし。」
「そうだといいのだがな………とにかくリストの件は任せるよ。」
「はい!」
ジルとコリンズが会話をちょうど終えた時エステル達が入って来た。
「失礼しま~す。」
「あ、すみません……。まだお話中でしたか?」
「いやいや。ちょうど終わったところだよ。実はなぁ……」
「ああ、学園長!喋っちゃダメですってば!明日の楽しみが減っちゃうじゃないですか!」
エステル達に先ほどの会話の内容を話そうとしたコリンズだったがジルが慌てて口止めをした。
「な、なんなの?あからさまに怪しいわね。」
「ジルったら……。また何か企んでいるの?」
ジルの様子を訝しげに思ったエステルとクロ―ゼは首を傾げた。
「ふっふっふ……。それは明日のお楽しみよん。そうだ、プリネ!」
「なんでしょう?」
「プリネは明日の学園祭の事……お父さん達に話している?」
「いえ。今は家を出てお姉様達といっしょに旅をしていますから知らないと思います。」
「ふ~ん……じゃあ、プリネのお姉さん達がプリネのお父さん達に話している可能性はあるんだ?」
「どうでしょう?……もしかしたらお父様達に今回の学園祭の事を話しているかもしれませんが、それがどうかしましたか?」
「ううん!そんな大したことではないから気にしなくていいわ!(もしかしたら、プリネのお父さんが来るかもしれないわね……プリネは貴族らしいから、もしプリネのお父さん達が来たら寄付金が期待できるわね。)」
「??」
ジルの意味ありげな言葉にプリネは首を傾げた。
「それより、どうしたの?ひょっとして私に用?」
「ええ、実は……」
聞き返したジルにクロ―ゼは明日の景気づけを兼ねて食堂で小さなパーティーをする事を言った。
「あら、いいじゃない。それじゃ、明日の学園祭の成功を祈って騒ぐとしますか。パーッとやりましょ、パーッと!」
「ふふ、あまり羽目を外して明日に差し障りがないようにな。」
はしゃいでいるジルにコリンズは苦笑しながら言った。
「はい。」
「それじゃ、ジル。食堂に行こっか。」
「ヨシュアさんやハンスさんも待っていますよ。」
「うん、行きましょ。」
そしてエステル達は食堂に向かい、にぎやかな一時を過ごし……最後に、劇の成功を祈ってソフトドリンクで乾杯した。その後寮に戻ってから、明日のために早めに眠りについた。
~メンフィル大使館・執務室・夜~
「今日の分はこんなものか………」
ゼムリア大陸にあるメンフィル領の政務書類をある程度終わらせたリウイは一息ついた。そこにドアをノックする音が聞こえた。
コンコン
「誰だ?」
「私です、リウイ様。入ってもよろしいでしょうか?」
「ペテレーネか。入って来て構わん。」
「失礼します……」
静かに入って来たペテレーネは淹れ立ての紅茶が入ったカップをリウイの机に置いた。
「お疲れ様です。リウイ様。よろしければ、どうぞ。」
「すまないな。………ふう。」
「今日も一日、お疲れ様です。リウイ様。」
「お前もな。まあ、皇帝をやっていた頃に比べれば仕事の量は少ないがな……」
「フフ……シルヴァン陛下は今の倍以上の書類を捌いているそうですね。さすがリウイ様とシルフィア様のご子息様です。」
「シルヴァンには俺の後を継げるよう、俺自ら教育したからな……あれぐらい一人でこなしてもらわなければレスぺレントの覇権を握る皇帝にはほど遠い。」
リウイの言葉にペテレーネは微笑みながら答えた。そしてある事を思い出し、懐から手紙を出しそれをリウイに渡した。
「そういえば……このような招待状が来ていましたが。」
「見せてみろ。…………………ああ、いつもの招待状か。もうそんな時期になったのだな……」
「確か毎年来ていますよね……?ジェニス王立学園祭の招待状。」
「ああ。こちらを拠点にしてから色々あって、忙しかったからな。今までは断っていたが、今回はどうするか……」
リウイが考えていた時、執務室に備え付けてある通信機が鳴った。
ジリン、ジリン!ジリン、ジリン!
「ん?こんな時間に誰だ?」
鳴り続ける通信機に首を傾げたリウイは受話器をとった。
「……こちらメンフィル大使館、執務室。」
「久しぶりだな、リウイ!」
「………リフィアか。どこからここにかけた?」
「ん?今はルーアンのギルドの通信機でそちらにかけているが何かあるか?」
「いや、今はどこにいるか気になっただけだ。……それにしてももう、ルーアンか。件の少女の修行の旅は順調のようだな。それで俺に何の用だ?」
「うむ!実はな……」
リフィアは興奮した様子でプリネがエステル達といっしょに学園祭の劇に参加することを説明した。
「ほう、プリネが学園生活に参加した上、劇の役に……」
「うむ!一度だけ学園にプリネに会いに行ったが、学園生活を楽しそうに話してくれたぞ。」
「フッ、そうか。後で学園長に礼の手紙を書かねばな………」
リフィアの報告を聞いたリウイは口元に笑みを浮かべた。
「そんな事をするより、直接こちらに来て礼を言ったらどうだ?ちょうど明日はエステル達が受けた依頼内容を実行する学園祭だ。学園祭は観光の一つで学園関係者以外の民達も客として来るそうだからな。ペテレーネを連れてこちらに来たらどうだ?ティア殿も帰省のためにルーアンに来ているし、ティア殿を迎えに行くためにもどうだ?」
「ほう……ティアもルーアンにいるのか……考えておこう。」
「うむ!」
そしてリウイは受話器を置いた。
「あの、リウイ様。相手の方はリフィア様のようでしたが……」
「ああ。プリネがこの招待状に書かれてある学園祭で出す劇に役者として参加するそうだ。」
「え!?どうしてそんな事に……?」
リウイの説明に驚いたペテレーネは聞き返した。そしてリウイはプリネが学園祭に参加する経緯や学園で短期間学園で生活していた事をペテレーネに伝えた。
「そうだったのですか……あの子もいい経験ができてるようで、何よりです。」
「そうだな。…………ペテレーネ、急ぎの政務はあるか?」
「いえ。今のところは特にないです。」
「そうか………ふむ。毎年招待状を貰っていることだし、今年は行ってみるか?例の学園祭に。」
「え!?私も共にしてよろしいのですか!?」
リウイの提案にペテレーネは驚いて声を出した。
「あたりまえだ。お前の娘でもあるプリネが参加しているのだしな。それにプリネが学園祭に参加することを言ってから、招待状に何度も目が行ってるぞ。」
「あう……すみません………」
リウイに指摘されたペテレーネは顔を赤くして縮こまった。
「気にするな。俺もプリネが劇に参加する事に少し興味が惹かれていたしな。息抜き代わりに行ってみるか。」
「はい!早速定期船のチケットの手配をしてきます!」
「おい、こっちの通信機を使えば………言っても無駄か。フッ…………」
リウイの言葉を聞いたペテレーネは自分の部屋に備え付けてある通信機を使って定期船のチケットを予約するために、急いで部屋を出た。その様子をリウイはいつものペテレーネらしくない行動に苦笑した。
そして学園祭当日…………!
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第74話