目が覚めた。背中をグーっと伸ばしながら眠気を飛ばす。 最早癖となっている動作を日々繰り返し、学校に行く―――そんな毎日が続くと思っていた。次は時計を見て・・・時計がない?
「あ、あった」
見つけた先はいつもかけてある方向の真反対だった。俺の記憶が正しければ模様替えした事なんて―――、
「・・・あ?」
・・・可笑しい。俺の家は情緒あふれる木造建てだ。周りを見ても石造ものばかり・・・何故だ?
「・・・夢?」
試しに頬をつねるが効果はない。どうやらガセネタのようだ・・・ってそんな事検証している場合じゃないぞ。もっと自分に何が起こっているか調べないと―――ん?
「かが・・・み?」
鏡がふと目に入ったのでそのまま見入る。鏡には自分とは違う人物が写っていた。しかし、この部屋には自分しかいない。という事は・・・この姿の持ち主―――ジェラール・フェルナンデス―――に、
「憑依しちまったって事かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
近所迷惑間違いなしの大声はお構いなしに張り上げてしまった南時雨17歳・・・いや、ジェラール・フェルナンデス19歳。一体どうなってるんだ・・・!?
――――――――――――――――――――――――――――
大声を張り上げた後に物音一つしない事から、この声を聞いていたものはいないと思われる。
「・・・取り敢えず落ち着こう」
落ち着いた事で分かった事がいくつかある。
1.自分はジェラール・フェルナンデスに憑依した事で、FAIRY TAILに入っちまったらしい。
2.周りの造りからここが楽園の塔である。
3.
4.3から一話目が終わった辺りだと推測出来る。
この事から俺のしたい行動は・・・、
「投獄されないように動く・・・だな」
ぶっちゃけこのままだと評議員に大悪党と認定されてしまう。楽園の塔は建設自体犯罪・・・それに建設目的がゼレフ復活なんだから尚更だ。何も知らない
「とはいえ、ここまで手伝わせたシモン達にどう説明すべきか・・・?」
エルザを悪者にしてまで建設を願っていた
「・・・」
そうなると候補はウォーリーとシモンだが・・・ウォーリーはともかく、シモンは警戒しているだろう。簡単に信じてくれるとは思えないな。
「うむむ・・・」
打つ手なし。どうすればいいんだろう(コンコン)・・・ん?
「誰だ?」
「シモンだ、入れてくれ」
噂をすればなんとやらーーー!?向こうから来ちゃったよ。どうする?そもそも長い付き合いであるこいつらを誤魔化せるのか?
「・・・何の用だ?」
「建築状況についてだ。もうそろそろこの楽園の塔が完成するぞ」
「そうか・・・」
・・・話したほうがいいな。その方が行動しやすくなる。
「・・・どうした?」
「これから話す事は全て真実だ。心して聞いて欲しい・・・」
俺は全てを話した。ジェラールとは違う人物がジェラールの体に憑依している事、この世界が漫画の世界である事、ジェラールが可笑しくなった原因、ゼレフが生きている事・・・その他諸々だ。
「・・・という訳だ」
「・・・何故俺に話した?」
「四人の中で一番冷静さがある奴を選んだだけだ」
「そうか。これからどうする気だ?」
「・・・ゼレフが生きていると分かった以上、楽園の塔は無意味だ。評議院にバレれば軍の派遣はどころか、エーテリオンを撃たれるかもしれん」
「エーテリオンだと!?」
作中には書かれてなかった兵達の安否。エーテリオンに巻き込まれて死亡したんだろうな・・・カグラもその縁で恨んでるだろう。
「評議院はまだ楽園の塔に気づいてない。ならばここを放棄して逃げ出してしまおう」
「警備兵はどうする?」
「兵どもは楽園の塔の所だけ記憶を弄れば罪には問われまい。お前達も証言しなければ無関係を貫けるだろう」
「ジェラールはどうする気だ?」
「暫くは評議員に潜り込む。俺を騙して得意げになってる奴の鼻をへし折ってやる」
「ショウやミリアーナ、ウォーリーにはどう説明する気だ?」
「お前からいいように誘導してくれ」
「俺みたいに全てを話せ」
「無理だ」
「何故だ!?」
「あいつらを騙していたのは
「それは・・・」
「俺は憎まれる対象でいい。あいつらにも、エルザにもな。シモン・・・頼むぞ?」
「・・・分かった」
「地下にある財宝達を好きに使って構わない。旅に出るも良し、エルザに会うのもいいかもな・・・」
「・・・」
シモンは無言で出て行った。奴なら安心して任せられるだろう。
「さて・・・これで楽園の塔編は完全に瓦解した。カジノでショウ達と会わない以上、エルザが楽園の塔に来る事はない」
残る障害はウルティアか・・・こいつをなんとかすれば投獄は免れるし、逃亡生活も送らないで済む。それに俺の記憶とジェラールの記憶が合体しているのか、俺の知らない知識を知っている。これなら魔法もニルヴァーナの居場所も大丈夫だろう。
「・・・焦らずにゆっくりと考えよう」
下手な三文芝居は見破られる。楽園の塔はまだ残しておこう・・・何か使い道があるかもしれない。
――――――――――――――――――――――――――――
あれから数日が経った。楽園の塔には誰もいない。兵達もショウ達も皆居なくなった。シモンの奴がうまくやってくれたんだろう。
「それにしてもエルザの奴め・・・」
今俺は隠れ家から
「これより魔導裁判を開廷する。被告人エルザ・スカーレットよ・・・証言台へ」
「被告人エルザ・スカーレットよ。先日の
ドゴォン!!!
「何事!?」
「オレが鎧の魔導士だーーー!!捕まえられるものなら捕まえてみやがれぇぇぇっ!!!」
「!!」
ブハッ!?腹がねじ切れそうだ!!wwww
「オレがエルザだァ!コラァァ!!何の罪だか言ってみやがれーーーーー!!!」
「く・・・くく・・・」
周りを見れば皆呆れ顔。ウルティアでさえ驚いてやがる。笑っているのは俺だけか?キャラ崩壊しないように気を付けないとな。
「・・・ε=(・д・`*)」
「ふ・・・二人を牢へ」
「も、申し訳ありません・・・」
「エルザ!こんな奴に謝る事なんかねえ!!あ・・・いや・・・俺がエルザだ!!」
二人はカエルに連れられて牢に向かって行った。エルザも子守が大変そうだぜ。
「ジークレイン!いつまで笑っておるのじゃ!」
「いやいや・・・評議院相手にアレだけの無茶を平気でやるギルドがあるなんて、と思ってたら笑ってしまったよ」
「はあ・・・確かにジークレインの言う事も分かる。下手すれば解散要求を出さなきゃいけない事項だからの」
「ははは・・・しっかし、この壁誰が直すと思ってるのかね・・・」
ナツの壊した扉はそのままだった。ま、気にする事でもないか。
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FAIRY TAILのジェラール・フェルナンデスに憑依してしまった主人公。投獄フラグをへし折って自由気ままに過ごす為に、色々と画策する程度の物語です。ただ・・・へし折った後が大変なのを忘れてませんよね?