3世紀、漢の益州建寧郡。
宙に浮かぶ鏡の様なモノ。
それに一人の男が飲み込まれまいと抵抗している。
彼の名は孟獲(もうかく)。
西南夷の酋長である。
そして、それを呆然と見守る二人の男。
「なあ奚泥(ケイデイ)。これはアレか?」
「多分そうだろうね。土安(ドアン)」
「「使い魔召喚の門(サモンサーヴァントゲート)だな」」
二人は前世知識持ちの転生者である。
「どうする?助けるか?」
「いや無理だろ。それより僕たちも同行しようよ」
「……そうだな。万一にも孔明にやられたくねえし」
「三国志っても『STOP劉備くん!』だから大丈夫とは思うけどね」
この時、彼らの脳裏にあったのは保身である。
三国志演義で二人は孟獲の援軍として蜀軍と戦い、火攻めで焼き殺される役回りだ。
「向こうのほうが美少女が多いしな」
保身だけではないようだ。
「そうそう。こっちは少しベーコンレタスだし」
「兀突骨(ごつとつこつ)が何か妖しい目で見てくるんだよな」
いや、やはり保身のようだ。
「俺はテンプレでルイズがいいなぁ。くぎゅボイス聞きてぇ」
「いや土安。ジョゼフに呼ばれてイザベラのデコを愛でるのもいいよ?」
「奚泥。お前さん美中年とキスしたいのか? だとしたら付き合いを考えんとイカンのだが」
「契約するのは僕らじゃなくて孟獲様だし」
「それもそうだな。だったらヴィットーリオでもいいか。嫌がらせで」
孟獲の容貌は魁夷である。
嘗て孔明ら蜀軍は何度も孟獲を捕らえるが、引見する度に衝撃を受け、
その隙に6度逃走に成功する(=慣れるのに七回かかる)程である。
「おっと。急がないと『門』が閉まるよ」
「おう。それでは行くか」
言うなり二人は孟獲を『門』の方に押し込むように張り付く。
孟獲が何か怒鳴るが黙殺する。
そして『門』は3人を飲み込むと姿を消した。
このジョーカーを引き当てた担い手は誰なのか。
其れを知るものは中原には存在しない。
「おやおや。想定外ですね。しかし向こうさんはお気の毒様です」
いや何故か雑兵Aは知っているようだった。
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火計はいやだなぁ。
そうだハルケギニアに逃げよう。
孟獲殿よろしく。