No.456266

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第三十八話 シャンプーが目に染みるぜ。(二回目)

2012-07-20 17:19:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9128   閲覧ユーザー数:8297

 第三十八話 シャンプーが目に染みるぜ。(二回目)

 

 

 「おじゃましまーす♪」

 

 「いらっしゃい♪エイミィお姉ちゃん♪フェイト♪」

 

 「お、おじゃまします」

 

 「は~い。フェイトに飛びつこうとしない」

 

 …う。お兄ちゃんにネコさんみたいに首根っこを掴まれて動きを封じられました。

 何気にフェイトも怯えているし…。

 この間みたいに体中をまさぐったりなんかしないよ。…ちょっとだけしかしないよ。

 

 「…反省しなさいアリシア」

 

 「にゃあああああっ」

 

 お兄ちゃんと私は以心伝心。

 悪戯心も見透かれる。

 耳の上をぐりぐりしないで~。

 

 「「「…」」」

 

 今日はリンディさんから許可を貰ってフェイトをお泊まりさせることになりました。

 お姉ちゃんは嬉しいです。

 お兄ちゃんとお母さん。管理局の人達がスフィアのことを話してから三日が経過してからも闇の書の騎士さん達の動きがちらほらみられるが、こちらが動くころにはあちらの方も逃げているので追いつくことが出来ない。

 そんなことが続いている中でもフェイトとお母さん。そしてお兄ちゃんの間ではぎくしゃくした空気があるので一度、本腰を入れて話し合ってみたらという事になった。

 それだというのにアルフとお母さんは気難しい雰囲気。仕方がないので私達子ども組は奥の部屋で遊ぶことにした。

 

 「さっさっさっ。フェイトの席はこっちだよ」

 

 「う、うん。て、あれ?椅子が無い?」

 

 私は鼻息をふんふんとさせながら自分の膝元をポンポンと叩く。

 

 「ここは座敷と言ってこの網目状の床。畳に直接座るんだ」

 

 「床の上で寝泊まりしてんのかい?」

 

 「押し入れの中に布団がある。夜はそこから寝具を取り出して寝るんだ」

 

 などとやりとりをしていると、

 

 「はいはい皆さんお待ちかね。翠屋のケーキですよー」

 

 エイミィさんが台所で切り分けたケーキを持ってきながら入ってきた。

 その後ろから熱いお茶の入った湯呑と急須を持ってくるお母さんとアルフ。

 

 「あ、あの。アリシア。私は何処に座ればいいのかな?」

 

 フェイトが未だに座敷に上がったままきょろきょろとしていたけど私は構わず自分の膝の上をポンポンと叩く。

 

 「ここだよ。ここ」

 

 私は私が座っていう座布団の上にある自分の膝を叩く。

 

 「えーと、この薄いクッションの上じゃないの?」

 

 「違うよ。フェイトが座るのは私の膝の上♪」

 

 それを聞いた瞬間にフェイトはお母さんとお兄ちゃんの方を向いた。だけど、二人は『諦めろ』と言ったかのように首を横に振った。

 フェイトはかなり困った顔をしたけど結局は折れて私の膝の上に座った。

 にゅっふっふっ♪

 さあ、フェイト。お姉ちゃんがなでなでしてあげますね~♪

 …頭だけだからねお兄ちゃん。ぐりぐりのジェスチャーしないで。まだ頭に響いているから…。

 していなかったら全身撫でていただろう?…当然だよ!フェイトは可愛いんだもん!

 あれ?お兄ちゃん?何で私の後ろに回るの?ちょ、ちょっと…。その人差し指で何するの?あ、なんか足が痺れて、そこにお兄ちゃんの指が

 アッ――――――――――――――――――

 

 

 アリシアちゃんが涙目になりながらもフェイトちゃんの頭をくりくりと撫でながらお茶会を楽しむ私達。

 今回のお茶会の裏には高志君の管理局引き抜きも入っていた。

 

 「ほ、ほらフェイト。お、お姉ちゃんがケーキをおおおおお」

 

 「あ、アリシア無茶しないでケーキのある位置が分かりずらいのに足腰がふにゃふにゃだよ!?」

 

 ぷす。

 

 「アリシア。それは私のいちごだよ」

 

 「あ、そうなの?そ、それじゃあ、アルフ、あーん」

 

 あ、アルフのショートケーキのいちごにアリシアちゃんのフォークが刺さった。

 それを聞いたアリシアちゃんはアルフの声がする方に向かってフォークを伸ばす。ただし、そのフォークは小刻みに震えていた。

 

 「あ、ああ」

 

 アルフに向かってプルプルとフォークを向けながらもフェイトちゃんの頭を撫でるアリシアちゃんの姉心に乾杯!

 と、姉妹のやりとりについてはさておき、

 

 「タカシ君。管理局に入らない?」

 

 前置きは無しだ。下手に勘繰りを入れると逆にやられるのでストレートで攻めてみました。

 

 「…もう手伝っているじゃん」

 

 「そうじゃなくてこれを機に正式に管理局勤めしてみない?て、聞いているんだけど」

 

 「…いいよ。ただ、やめたいと思った時はすぐに辞めるから」

 

 「「えっ?!」」

 

 まさかのオーケー!?

 これには私もびっくりだよ!

 

 「タカ。でもそれは…」

 

 プレシアが何か言いたげではあった。

 管理局に務めるのは戦いの経験値を溜める為。

 それは分かっている。だけど、管理局の暗部に関わったことのあるプレシアは自分と同じようにそれを関わるのを避けたくもあった。

 

 「ただ、マグナモードには頼らないで。というか、マグナモードが無いガンレオンが最大の働きだと思って欲しい。もちろん、今回の闇の書事件が片付くまでも含めてだけど、あれは使いたくない。あれを使うと俺だけじゃない。アリシアにだって被害が来る。それだけは避けたい」

 

 タカシ君がふいっと横の方を見るとそこには凄い涙目にもなりながらフェイトを膝の上から動かさないぞと思いっきりフェイトちゃんをホールドしているアリシアちゃんがいた。

 

 「…俺が協力する理由はアリシアが笑って過ごせる環境づくりの為。だから何があってもアリシアが管理局に関係しない手筈でお願いしたい」

 

 そういうタカシ君の目はなのはちゃん達とは違いまるで、本当の大人の人の目をした姿をしていた。

 

 

 さて、お茶会も終えて新しい部屋で英語の勉強をしていた俺。

 いや、考えて見て欲しい。

 プレシアを除くすべての女性(少女)は俺より年下とはいえ、あんなきゃっきゃっうふふな空間にいられるわけもなく、適当にあちら側の話に付き合いながらもそれとなく席を離れて自分の部屋で宿題をしていたのだが…。

 さすがは私立の進学校。

 ほとんどわからなかった。

 いや、英語だけだよ?

 だけど、その英語が難しすぎて赤点ギリギリだったりする。

 残りの教科は前世の記憶と経験で補えるからいいとしてもあまり使わなかった英語。これだけはどうにもならず、かといって放っておくわけにもいかない。

 という訳で暇を見つけてはちまちまと勉強する。主に英語。特に英語。

 

 「お兄ちゃーん。お風呂あいたよー♪」

 

 部屋の扉の向こうからアリシアの声が聞こえた。

 新しく住み移ったところのお風呂は結構広い。先程、プレシアとフェイト、アルフにアリシアの大人数で風呂に入って来たらしい。

 裸の付き合いでお互いの溝が埋まるといいのだが…。

 お風呂に過度の期待を寄せるのも変か…。

 

 「ういー、じゃあ、俺もすぐ入るー」

 

 「私も一緒に入っていい?」

 

 「プレシアが許したらいいぞ」

 

 まあ、ありえないだあろうけどな。

 

 「いいよってー」

 

 「嘘つけー」

 

 あの親馬鹿がそんな暴挙を許すか。

 と、アリシアとのふざけ合いもそこそこに。

 俺は自分の部屋にあった着替えを持って浴槽へと向かう。

 

 「…湯が抜かれている」

 

 せっかく湯船につかろうと思ったのに…。

 あれか。「お父さんに私達が使ったお湯を使われたくないー」ていう、年頃の娘の感覚か。

 …ふっ。娘を持つお父さんな気分だ。嫁はいないけどね。

 

 「くっ、シャンプーが目に染みるぜ」(二回目)

 

 「はい。それじゃあ、シャワー」

 

 「うん。ありがとうアリシア」

 

 俺は思わず目から出てきた涙をぬぐうとその隣から聞こえたアリシアの声に従ってシャワーを受け取る。

 

 「お、お湯を出すね」

 

 「すまないな。フェイ…ト?」

 

 しゃあああああ。

 

 

 

 っ。おちつけ。落ち着くんだ俺の本能!

 シャウトするんじゃない!

 

 俺はシャワーから出てくるお湯をかぶりながら現状を理解するように努めた。

 まず、アリシアが俺にシャワーを渡した。これはわかる。アリシアは自然(ナチュラル)に俺の寝ている布団の中に潜り込んでくるから風呂場に潜り込むことは楽勝だ。

 プレシアのギガデイン。じゃなくて拳骨を受けるのは甘んじよう。しかし、風呂場(ここ)に何でフェイトまでいるんだよ!

 後にフェイトはなのはの家でも泊まったことがあるらしくお泊りしたらその中の良い人とお風呂に入る『裸の付き合い』をするのが日本の文化だという間違った思考を植え付けられたことが判明した。

 俺は目をつむりながらシャワーを浴びていたからフェイトの声は聴いたけど姿は見ていない。同様にアリシアの方も見ていない。

 というか…。

 フェイト方を見たらその瞬間にライデインを受けてしまう。

 

 「…お兄ちゃん。震えている。もしかしてこれ水?ひあっ!」

 

 アリシアが俺の被っているシャワーを取って確かめようとしたが、シャンプーの泡で滑った。

 

 (ふっ、甘いぞ。この転倒に巻き込まれてフェイトも押し倒しながら三人がもみくちゃになるというラブコメ的な展開はさせぬよ!)

 

 俺は目を閉じながらも両足を踏ん張り、腰を低くすることにより重心を固定。

 アリシアが転び、俺にぶつかる衝撃に備えていると。

 

 ずん。

 

 

 

 アリシアの膝が…。

 

 

 

 俺の。いや、男の急所に…。

 

 

 

 「…おぅはっ」

 

 俺は思わずこぼれた空気と痛みの衝撃。そして、俺に倒れかけてきたアリシアの衝撃を余すところなく受け止めながら後ろに倒れた。

 そこには待ち構えたかのようにフェイトがいて…。

 

 「え?」

 

 がっぽーおおおおんっ。

 

 と、風呂場にあった桶やらシャンプーやリンスといった風呂場のセットがあちこちに散乱した。

 そして、その音を聞きつけて風呂場に駆け込んできたエイミィとアルフ。そして…。

 

 「なに!?どうしたの!?」

 

 「フェイト?!」

 

 「タカ…」

 

 「お。落ち着いてくれ。プレシア。これにはわけが…」

 

 大魔王プレシアが現れた。

 アルフは(目の前の事態に)混乱している。

 エイミィは(目の前の事態に)混乱している。

 

 

 アリシアは高志を押し倒している。

 高志はフェイトを抑え込んでいる(ようにみえる)。

 フェイトは倒れた衝撃で気絶している。

 俺達一行は皆、全裸である。

 大魔王相手に丸腰である。

 風呂場だけに!

 

 「…もー、お兄ちゃんったらフェイトも一緒にだなんて~♪」

 

 アリシアは死刑宣告(ザラキ)を唱えた。

 高志は目の前が涙でいっぱいになった。

 

 それから先の事は思えていない。というか、その一日の事すら思い出せない。

 ただ、その日以降。

 何故かプレシアに魔法世界(ミッド)でとある地域にいずれ転居することを相談されるようになった。

 そこは子ども不足が深刻で、そこでは重婚(・・)が認められているそうだ。

 

 「…あなたを引き取って、フェイトと結ばれれば合法的にフェイトは私の娘よね。それにアリシアももらってもらえば…」

 

 プレシアが何やらぶつぶつと呟いていたけど俺は詳しくは聞かないことにした。聞こえたらまずいような気がした。

 そして、フェイトだがその日からしばらくの間。俺の顔を見ると顔を赤くして顔をそむけるようになった。

 

 …何があった?

 


 
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