No.456139 外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第6話BLACKさん 2012-07-20 07:29:59 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:1113 閲覧ユーザー数:1092 |
第6話 少女とぬいぐるみと……
四人は数時間くらいでハ・ミルへとたどり着き、広場へと向かった。
「出て行けよ、おら!」
「?」
広場を見てみると、ジュード達を助けてくれた少女が村人達にせめられていた。
「疫病神! あんたなんかいるからっ!」
村人たちは一斉に石を拾って、少女に投げつけた。
「きゃっ……。やっ……」
「やめて、ヒドイことしないで。お願いだよー!」
ぬいぐるみが言うが村人は止めない。
「!」
ジュードよりも先に秋山が動き出して、少女の前に立つ。
「やめろ!」
石を投げている中で割り込んできたので、石の一つが秋山の頭にぶつかる。
「………」
「弱い者いじめは楽しいか? クズが……」
「なっ!」
村人の一人が再び石を投げようとした時、ジュードがその村人の手を抑える。
「大丈夫か?」
秋山が少女に声をかける。
ジュードも近づいて少女を見る。
「怪我はないみたいだね」
「お前達のせいでこっちは散々な目じゃ!」
長老は怒りを露わにする。
周りを見てみると村人たちはどこか傷ついていた。
「ラ・シュガル軍にやられたか」
「やつ当たりかよ。大人げないな」
「やってることがいじめっ子と大差がない」
「よそ者に関わるとロクなことにならん! すぐに出て行け!」
「そのつもりだ。だがこれ以上俺を怒らせることをした時はもっとひどいことが怒る可能性があることを頭に入れておくんだな」
村人たちは解散した。
「村長さん。まるで人が変わっちゃったみたい」
少女は果樹園の方に行ってしまった。
「私たちは村の者からラ・シュガル軍の動向を聞くとしよう」
「じゃあ俺とジュードはあの娘(こ)んとこに行くとするか」
ジュードと秋山は少女の後を追うことにした。
二人は少女とぬいぐるみが小屋に入っていくのを目撃し、小屋に入る。
「いない…」
「ねえ、あそこ。地下があるみたいだよ」
「じゃああそこか」
二人は地下へと行く。
そこに少女がいた。
「ちょっとお話しない?」
「安心しな。俺達は別にいじめたりしねえさ。
つうか俺はいじめはすんげえ嫌ってる方だしな」
秋山はいじめられた経験があるのでいじめをすごく嫌っている。
「こんにちは」
「こんちはー!」
少女の代わりとばかりにぬいぐるみが大声で挨拶をする。
ジュードは思わず驚いて後ろにこける。
「あららー、お兄さん結構臆病だねー」
「ティ、ティポ……名前なの」
少女はようやく自分の口を開いた。
「彼女はエリーゼっていうんだ。ぼくはエリーって呼ぶけどね。よろしくねー」
「ああ、よろしくな」
「は、はは……よろしく……二人とも」
普通に接する秋山と少し驚きを隠せないジュード。
「あ、あの……だいじょうぶ……えと、ですか?」
「う、うん。ちょっとびっくりしたけどね。僕はジュードっていうんだ」
「俺は秋山」
「ジュード君! 秋山君! さっきはありがとー」
「……ありがとう……です」
「何があったの? よかったら聞かせてもらえないかな」
「んっとねー、外国の怖いおじさんたちがいっぱいきたんだけど、おっきいおじさんが、やっつけんだよー」
「ああ、あの人……」
(確かジャオって言ってたな)
ニ・アケリアでジャオとプレザに他二人の男の会話も実は聞こえていた秋山。
「……でも、おじさん、どこかにいっちゃった……」
「そうそう、そしたら外国のおじさんたちが村のみんなをいじめたんだー」
「腐った連中だな。だから軍人は好きになれねえ連中が多すぎる」
「おっきいおじさんは、エリーゼのお友達なの?」
「ううん……」
「エリーを閉じ込めた悪い人だよー」
(監視とか言ってたな。まあ原因は知ってるけど…)
「…一緒に来たの……」
「でねでね、外に出たらみんな石ぶつけてくるんだ。
もー、ヒドイよねー」
「…………」
ジュードは何かを考えたようだった。
「ジュード……さん?」
「あ、ごめんね。
エリーゼとティポはここで他のお友達を待ってるの?」
「……お友達……いないから……」
「じゃあ、僕たちが最初の友達だね」
「そうだな」
「……え?」
ジュードと秋山は微笑む。
「………あ」
思わず顔が赤くなるエリーゼ。
「わーい♪ 友達ー♪ ジュード君と秋山君は友達ー♪」
「ああ、友達、朋友(ぽんよう)だ」
「…………」
秋山は嬉しそうな顔をするが、ジュードは少し真剣な顔をしていた。
「エリーゼ。君のこと、僕の友達に話していい?」
「……どうして、ですか?」
「君が、村のみんなにいじめられてるのがイヤなんだ。
友達と、なんとかできないか考えたいんだよ」
「決めるのはお前だ。どうする?」
少し間をおいて答えが出る。
「うん! ジュード君と秋山君は友達だから二人のことは信じちゃうよー。ね、エリー」
ティポの言葉にエリーゼは頷く。
「ありがとう。エリーゼ。じゃあ、ちょっと待ってて」
ジュードはとりあえず話に行こうと出ていくが、エリーゼがジュードの手を掴む。
「連れてってやんなさい。てか、話すにしても、当事者が必要だろ」
そしてジュードと秋山はエリーゼとティポを連れて、ミラ達と合流することにし、広場に行く。
広場にはミラとアルヴィンがいた。
「あ、ミラ、アルヴィン」
「あれ、その子……」
アルヴィンはエリーゼと一緒だったことに気づく。
「ジュード、秋山、特に有益な情報はなかった。ここにもう用はない。すぐにも発つぞ」
ミラは歩き出す。
「待って、この子のことで話があるんだ」
ジュードは呼び止める。
ジュードと秋山は先ほどまでのことを二人に説明した。
「村民がエリーゼを疎んでることは間違いなさそうだ」
「うむ。村長の態度からもそれはうかがえた。ジャオという男が戻らねば状況は変わるまい」
「でも、エリーゼはその大きい人、ジャオも友達じゃないって」
「ジャオがいたら閉じ込められていなければ疎まれ迫害される…………救われないな」
アルヴィンの観るエリーゼは、今はティポをバウンドして遊んでいた。
「一緒に行けないかな……」
「連れ出してどうする? その先のことを考えているのか?」
「全然」
秋山は即答した。
「私の目的は、わかっているだろう?」
「うん……」
「「…………」」
ジュードとミラは黙ってしまう。
「とりあえず連れて行けばいいだろ。
最低でもここにいるよりはずっとましだと思うぜ。
何もしないより何かの行動だ」
「……いいだろう」
「ホント?」
秋山の言葉を聞き入れてくれたのかミラは承諾した。
しかし……。
「……ジュード。キジル海瀑で私が言ったことを覚えているか?」
「え」
「君のなすべきことをそのままの君でやってみるといい。私はそう言ったと記憶している」
「うん。覚えてる」
「今更撤回するつもりはない。
これは、あの時の答えを出すためと捉えていいか?」
「う、うん……」
「エリーゼに話してやれ」
「うん」
ジュードはエリーゼに話をする。
「やさしいんだな」
「途中、足手まといになっても、仮に命を落としたとしても捨て置くだけ。
私の使命に影響はなかろう。元々一人で完遂するつもりだったのだ」
ミラは歩き出し、ジュード達もその後を追う。
「…………」
エリーゼは村を去ろうとし、村を見る。
村人は疎ましい目でエリーゼを見ていた。
エリーゼが手を振ってさよならをするも、変わらなかった。
「…………」
「行くぞ」
「はい」
エリーゼは秋山達について行くのだった。
チャット場面
「はじめまして……です」
ジュード「そういえば、まだちゃんとエリーゼを紹介してなかったね」
秋山「エリーゼ、紹介してみ……」
エリーゼ「エリーゼ・ルタス……です」
アルヴィン「ふーん。こりゃ、五年後にはすっごい美人になるな。
俺はアルヴィン。そん時までよろしく、な」
秋山「もうめぼし付けたのかい。気が早い」
エリーゼ「そんな……わたし……」
ティポ「あー、これってナンパだー! アルヴィン君はナンパマンー」
秋山「本当のナンパマンだったら、手当たり次第だぞ。ティポ」
ミラ「……で、このぬいぐるみは、なぜしゃべっている?」
エリーゼ「え……? ティポは昔からしゃべってた……です」
ティポ「だよねー」
ミラ「私がおかしいのか?」
ティポ「ったりまえでしょ~」
ミラ「う~む、ぬいぐるみに反論されるとは不可思議なこともあるものだ……」
アルヴィン「不可思議って」
ジュード「ミラが言うかな?」
秋山「知らん」
チャット場面終了
それからジュード達はイラート海停にたどり着き、船に乗ろうとしたが、イル・ファンは海域封鎖されており、サマンガン海停行しかないので、サマンガン海停の行くことになった。
船に乗る前にアルヴィンは自分の元に飛んできた鳥から何かを取り出す。
それは手紙だった。
「手紙? 珍しいね。鳥でやりとりしてるんだ」
「ん、まあな」
「遠い異国の愛する人にさ。素敵な女性が目の前に現れたってな」
「それはエリーゼのことか?」
「そうなるな」
「へぇ。奥さんいたんだ」
「はは。優等生の発想だな。結婚してるように見える?」
「え、違うの?」
「さて、な」
アルヴィンにからかわれるジュード。
そんな時、船の汽笛が鳴る。
「あ、もう出るみたいだね」
「ああ」
「乗るぞ」
ジュード達は既に乗ってるミラを追うように船に乗った。
「わぁ……!」
エリーゼは船からの光景を見て驚きの声を上げる。
そこにジュードと秋山が来る。
「船……初めてなの……」
「うん」
「そうか」
それを聞いて、ジュードと秋山はミラとアルヴィンの方に行く。
「あの子、あの村で何してたんだ」
「監禁されていたのだろう?」
「逆かも。匿われてたって可能性もあるんじゃないかな」
「きゃー!」
エリーゼの悲鳴(?)が聞こえたので急いで振り向くジュード。
「エリーゼ!?」
しかしエリーゼとティポはとても楽しそうだった。
「あははは。ティポ見て」
「海すごーい。落ちたら死んじゃうとこだったよー」
「危ねえことすんじゃねえぞ」
秋山が何があったのかを訪ねようとする。
「悪い子じゃないよ」
「そうみたいだな」
ジュードは楽しそうなエリーゼとティポ、それに付き合う秋山を見る。
「エリーゼを引き取ってくれるいい人が見つかるかな?」
「それは君が探すしかない。それが責任というものだろう?」
「う、うん」
ミラは行く。
「やっぱり怒ってるのかな……」
「んー、いつもあんな調子じゃないか? ミラは」
ミラの元にエリーゼが近づく。
「むしろ意外だな、俺としては。エリーゼのことはバッサリ拒否すると思った」
「どうして?」
「目的の邪魔になることには、もっと一方的かと思ったよ」
「ミラは、そんなに冷たくないよ」
「そうかな……。
そういや聞いたぜ、イル・ファンの研究所じゃ大変だったらしいな」
「ミラから聞いたの?」
「あいつ、あそこから何か奪ったんだって? 国の研究所じゃ、そりゃ、軍も出動するって」
「なんだろ、僕も知らない」
「本当かあ? 隠してもすぐわかるぞ。ほら、ミラには黙っててやるって」
「ごめん、ホントに知らないんだ」
「なーんだ。あいつはやっぱ、俺達を信用してないのかね」
「そんなことないよ。待ってて、僕が訊いてくるから」
「んー、おたくでも知らないなら、いいや」
ジュードは落ち込む。
「いや、マジで。責めてるわけじゃないって」
「でも……」
「俺が聞き出そうとしてたら、あいつが怒るかもしれないからだよ。
だからさ、俺が聞いたってことも黙っててくれよ」
「うん……わかったよ」
その二人の様子を遠くから見ていたミラ。
「…………」
船は進んでいき、汽笛が鳴る。
「ミラ、エリーゼ」
「ああ。そろそろ到着のようだ」
「さて、ラ・シュガルの警戒がどれほどのものか、な」
「ミラ君は友達、友達ーっ♪」
「………」
「友達……」
秋山は突然片言になって何やら両手を結ぶ。
これは秋山が見たことある、友達を現す印である。
「友達……」
エリーゼもその真似をする。
「うん……友達」
「何それ?」
ジュードに尋ねられた。
「友達の印。まあどこかの風習みたいだけど、俺は詳しく知らん」
「知らないのに使って大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫」
そして船はサマンガン海停に到着し、船を降りた。
「思ったほど厳重じゃないが……」
「兵士は配備されてるね。注意しないと」
「何かあったら俺が北斗神拳で黙らせてやるから、安心しろ」
「しかし、妙だな……」
「何が?」
「一時はア・ジュールにまで兵を出していたというのに」
「君らを追うよりも重要なことができたか、な」
「好都合だ。気付かれぬうちにイル・ファンに向かおう」
ミラとアルヴィンは歩き出す。
「……ごめんね、エリーゼ。大きな街に着くまで、もう少し待ってね。
そしたら、きっと引き取ってくれるいい人がいると思うんだ」
「……え、でも……わたし……」
「ジュード君、それなんのことー?」
「いきなり引き取ってくれる人がどうとかお嬢ちゃんに言ってもね。
聞かされてない本人は、そりゃ、驚くよな」
「気遣い、が足りないな、ふふ」
ミラに笑われてしまう。
「ただガキなんだよ……」
「ん?
「おっと」
ジュードとエリーゼと秋山もミラ達の所に行く。
「お……」
秋山はあるものに気づく。
「どうした?」
「お前達の手配書だ」
秋山が指差すと掲示板にはジュードとミラの手配書が張り出されていた。
ちなみに絵はかなり下手だった。
「この手配書……ジュードとミラ!?」
手配書を見て、驚くエリーゼ。
「わー、ふたりともキョーアクー!」
「これが私とジュードか?」
ミラも驚いた。
「不幸中の幸いだな。これなら捕まる心配はなさそうだ」
「……よくないよ」
「そうだな。顔はともかく、特徴的な部分はきちんと描けてる」
「まー、自意識の強い年頃にはキツイよな」
「違うよ! 僕はどうでもいいけど、ミラはこんなんじゃない」
「うむ、確かによくない。私が現在の形象を成したのは、この外見が人間の半数……つまり男性全般に対して有利だからだ。
だが、私が手配書のように非魅力的ならば、基本戦略を見直さねばならない」
「結構、生々しいこと考えてるのな……」
「ジュード、正直に答えてくれ。男性視点で見て、私は魅力ある存在だろうか?」
「えっと、ミラは……。すごくステキ……だと思う」
「うん」
秋山も頷く。
「うんー、セクシィー! エリーもミラ君みたいになりたいってー」
「ティポ!」
ティポの言葉に恥ずかしさと怒りを合わせた状態になるエリーゼ。
「自信持っていいよ、ミラ」
「具体的にはどこらへんが魅力?」
アルヴィンがからかうようにジュードに尋ねる。
「そりゃ、いい匂いするとことか、ゆれるとことか……」
「ふっ」
思わず鼻で笑ってしまった秋山。
「なるほど。貴重な意見、感謝するぞ」
「いやぁ、ジュード君も男の子だねぇ」
「カッカッカ」
ジュードをからかうアルヴィンと秋山。
「い、今のは一般論だからね!」
必死に反論するジュード。
「…………」
ミラは手配書をはがしてしまう。
「ミラ!?」
「とりあえずずらかるか」
一同は急いでサマンガン海停を出ていく。
「しかしこんなもので手配書が機能するのか?」
道を歩きながら、手配書を見て、つぶやくミラ。
「これで私たちが捕まるとは思えないが……人間の絵画感覚は私は違うのか? うーむ……」
「単純に絵が下手なだけだろ」
「とにかくミラがはがしたから、この海停ではもう捕まる心配ないかもね」
「無駄無駄。いくらはがしたところですぐに新しいのを貼られるだけ」
「そうだな、なおさら早く離れよう」
「うん」
「………」
ミラは少し離れて独り言を言う。
「そうだ。あの『カギ』とて時間をかければ新たに生み出されるかもしれない……先を急がねば……」
ちなみにその独り言は秋山には聞こえていたりする。
道を歩いていると、二手の道があり、大きな街カラハ・シャールに続く道には検問が敷かれていた。
「検問か」
「ま、当然だな。そんなにうまい話はないって」
「どうしよう……」
「仕方ねえな……」
秋山が一人で出て行こうとする。
「何する気?」
「めんどくさいから、北斗神拳で記憶を飛ばしてやる」
「そんな無茶な!」
ジュードは秋山を止めようとする。
「あっちには何があるのー?」
ティポがもう一つの道の方に何があるかと聞く。
「あっちは樹海なんだ……」
「上手く抜けるとカラハ・シャールの街に出られるか」
「迷う必要はないな」
ミラは迷わず樹界の方へ歩き始めた。
「滅多に人が立ち入らないんだよ? エリーゼには……」
「こうなることは予期できたろう」
「…………」
ミラの言葉に反論できないジュード。
「……わたし……あのだいじょうぶ……です。だから……」
「ケンカしないでー。友達でしょー」
エリーゼとティポは喧嘩を止めようとする。
「エリーゼ……」
「エリーゼも了解した。これで文句はあるまい」
一同はサマンガン樹海にと入っていく。
「深そうな森だな」
「はぐれないように気をつけなきゃ」
樹海に入ると魔物が何体かジュード達をただ見ていた。
そしてすぐに魔物は去っていった。
「何だ? ありゃ……」
「警告かな……これ以上立ち入るなって」
ミラと秋山は気にせず歩く。
「その警告も、ミラと秋山には効果がないみたいだな」
「ここからいけるみたいー! 二人とも早くー」
「臆病なのはあいつを抜いた男性陣だけのようで」
樹海を進んでいく一同。
するとその途中で木の形をした魔物と遭遇する。
その魔物は長い腕をしており、攻撃範囲が広かった。
「うっ!」
ジュード達は何とかその攻撃を凌ぐ。
「こいつ、攻撃範囲が広い……全員がダメージを食らっちまうぞ」
「やっかいだな」
「速攻でケリをつけてやればいい」
そこに後ろからエリーゼがやって来る。
「エリーゼ、来ちゃダメだ!」
「お前を庇いながらでは戦えない、邪魔だ!」
「ジュード!」
ジュードが気を取られてる隙に魔物の攻撃を受けてしまう。
「う……」
「言わんことではない!」
「仕方ねえ!」
秋山が何かをしようとした時、エリーゼがジュードに駆け寄る。
「……うっう……」
するとジュードを中心に回復の魔法陣が展開された。
「これは、みんな一斉に……!?」
「元気出して! ぼくたちがいるよー!」
「回復援護とかか。ま、友達(だち)を傷つけた罪、手前の命で払ってもらうぞ。
スペシウム光線!」
秋山がスペシウム光線を放ち、魔物は爆発消滅した。
「ふん」
秋山が手を払う。
「…………」
一同がエリーゼを見る。
「まさかこの歳で、こんな術が使えるとはね」
「エリーゼに救われたな」
「うっう……」
泣いているエリーゼにジュードが近づく。
「エリーゼ。もう恐くないよ」
「ちがうの……」
「は?」
「仲よくしてよー。友達は仲よしがいいんだよー!」
「わたし……邪魔にならないようにするから……だから……」
「なんだ、んなこと気にしてたのか」
「……だってさ。エリーゼに免じて許してやれば?」
「免じるも何も別に私は怒ってなどいないが……」
「ウソーん。ミラ君とジュード君、もっと仲よしだもんねー!」
「わたし……がんばるから……!」
全員がミラを見る。
「いつの間にか私が悪者か……。ふふ、わかったよ」
「ほれ。エリーゼに言うことあるだろ?」
アルヴィンがジュードとミラの肩に腕を乗せる。
「心配かけちゃってたんだね。エリーゼ、ありがとう」
「やっぱり友達はニコニコ楽しくだねー!」
「友達…」
秋山がまた友達の印をやる。
「友達」
エリーゼもお返しにと友達の印をする。
「ミラもエリーゼの術があれば頼もしいでしょ」
「ありがとうエリーゼ。これからはアテにするぞ」
エリーゼの顔は嬉しくなって赤くなる。
「それじゃ、レッツゴー!」
ティポを先頭に進む。
「あんな術者と一緒ね……運いいわ、俺」
何かよからぬことをつぶやくアルヴィン。
それを聞いていながらも気にしない、秋山。
樹海の出口付近までつくと、入り口で警戒を飛ばしていた魔物が一同の前に立つ。
「こいつら……」
「今度はやる気になったようだな」
「どこからでもかかってこーい!」
「………そこの奴、出てこい」
秋山が横を向くとそこから現れたのはジャオだった。
「あんたは……」
「おっきいおじさん!」
「おうおう。よう知らせてくれたわ」
「イバルの他に、魔物と対話できるものがいるとはな」
「あなたは、ジャオさんですよね」
「ん? お前たちには名乗っておらんはずだがのう」
(俺はあの時の……こいつとプレザと言う女と後他の男二人の会話で聞いてたがな)
「ハ・ミルの人たちにな。んで? どんなご用で?」
「知れたこと。さあ、娘っ子。村に戻ろう。少し目を離しているあいだにまさか村を出ておるとはのう。心配したぞ」
ジャオは手を差し伸べるが、エリーゼはジュードの後ろに隠れる。
「いやー! ジュード君、秋山君かばってー」
「ぬう……」
ジャオは頭を手に置いて、やれやれという動作をする。
「あなたがエリーゼを放っておいて、どうなったと思っているんですか」
「……すまんとは思っておる」
「本当にすまんと思ってるんなら、もっと誠意を現すんだな」
「お前は、エリーゼとどういう関係なんだ?」
「その子が以前いた場所を知っておる。彼女が育った場所だ」
エリーゼは少し寂しそうな顔をする。
「なら、彼女を故郷に連れて行ってくれるんですか?」
「…………」
その質問に答えないジャオ。
「……また……ハ・ミルに閉じ込めるつもり?」
「お前たちには関係ないわい! さぁ! その子を渡してもらおう!」
「関係ねえ?」
秋山がジャオの前に立つ。
「人の意思を無視するってのは……強要だぜ。
そんなこと分かってるだろ? おっさん」
秋山は明らかに敵意をむき出しにしていた。
「……仕方あるまい!」
ジャオも武器のハンマーを取り出す。
「……来るぞ!」
周りには魔物が数体いた。
「お前達、このおっさんは俺が一人で相手するから、お前達は魔物の相手をしてくれ」
「だがお前は……」
「どうせ共鳴(リンク)は二人じゃないと出来ないだろ。
俺達は五人。余るなら一番強い俺がいいだろ」
「けど……」
「安心しろ」
秋山は自信を持って言う。
「……頼むぞ」
ミラ達はジャオの相手を秋山に任せ、自分達は魔物と戦う。
「本当に一人で戦う気か?」
「ああ。お前には敬意を表して……この指一本で相手してやる」
秋山が右手の中指だけを突きだす。
「な、何!? 貴様、ふざけておるのか!?」
「ふざける時もあるけど、俺は戦いじゃふざけたことはない。
もう一度言うぜ。俺はこの指一本でやってやる」
「その思い上がりを叩き潰してくれるわ!」
「いくぞ!」
秋山は走り出し、ジャオは秋山に向かって、上からハンマーを振るう!
「………ふっ」
ジャオのハンマーが当たる前に秋山はジャオの懐に入る。
「っぬ!」
「ふん!」
秋山の右手中指はジャオの腹部に入る。
それは先端ではなく中指の根元まで腹に突き刺さっていた。
「!」
秋山が中指を抜く。
ジャオはその場にうずくまってしまう。
「何をしたんだ?」
魔物を倒したミラ達が秋山の所に駆け寄る。
「精霊術でもこんなこと……」
「精霊術じゃないさ。何が起こったのかは説明してやる。
……っても、俺も人から聞いた話だけどな」
秋山は説明しだす。
「人ってのはな、筋肉の構造には必ず継ぎ目隙間がある。特に発達した筋肉だと余計に分かりやすい。腹筋がくっきり分かれてるんだ」
「ですが、おおきいおじさんは服を着てます」
「ああ、それなら人間をよく見てる奴なら相手が服とがで隠しててもどこが継ぎ目隙間か分かるのさ。
俺くらいになるとエリーゼみたいなのが相手でも、どこが継ぎ目隙間か分かるぞ」
「…………!」
「セクハラー! 秋山君、セクハラー!」
「そういうな。話の続きだ。そんで手の指くらいなら付け根まで入れることが出来る。
た・だ・し!」
秋山はその場で逆立ちを行った。
その逆立ちは普通ではなく、なんと両手の中指一本ずつ、合計二本の指のみでの逆立ちだった。
「……すごい」
「これだけ鍛えてないとダメみたいだけどな……よっと」
秋山は逆立ちをやめる。
「ぬうう……」
ジャオは立ち上がる。
「ま、秘孔突いてないから、頑張れば立てるわな」
「……何故だ、娘っ子。その者たちといても、安息はないぞ?」
「そんなの手前が決めることじゃねえ」
「……ともだちって言ってくれたもん!」
「もう寂しいのはイヤだよ!」
「……エリーゼ」
ジュードは打開策を考える。
「ミラ、アルヴィン、秋山」
ジュードは小声で呼ぶ。
「正直に言おう。わしも、連れていくのは本意ではない。……許してくれ」
アルヴィンは銃を構える。
「もうやめておけ」
アルヴィンはジャオの木の周りを撃ちまくる。
「手伝ってやる」
秋山も炎弾をかなり小さくし、木を燃やさない程度にして、放つ。
すると木は崩れ、下にあったケムリダケに木が落ちる。
「口を押えて!」
ジュードに言われて秋山とジャオ以外はすぐに口を抑えた。
ケムリダケの強力な胞子が目くらましとなり、ジュード達は急いで樹海を出て行った。
ちなみに秋山が口を押えなかった理由は、胞子がどれだけ毒であろうと秋山には効かないからである。
「寂しいのはイヤ、か……。
お前にとっては、奴らといる方が幸せなのかもしれんのう……」
それをただ黙ってみるジャオだった。
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