No.455853

魔法使いの大家族 第3話:入学式

nさん

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2012-07-19 21:09:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:537   閲覧ユーザー数:537

夏希と話込んでいた所為で、

秋が入った時間帯には講堂のほとんどの席が人で埋まっていた

座席の指定されている小さく折りたたまれた紙を秋は

再びポケットから取り出し少しだけ皺の出来たその紙を開いた

紙には小さく「K2ー203ー6」と記されている

現代でも学校ではクラス順など古風な所がある

例えば入学式前にクラスの人間が発表されそして座席表が配られ

それぞれのパイプ椅子に座る

この学校も未だに古風のやり方が抜けてはおらず

番号中のクラス順に並べられている

なぜICカードを使わずに番号順に並ばせるそれに紙を配る

最も紙の無駄遣いと秋は思っていた

だがこの校の古風なやり方とは同じなのだがクラスによってというよりは

一等生と二等生で分かれている

紙の始めの番号に2と記されている者が二等生、

1と記されている紙を持つ者が一等生

講堂を見渡すと講堂の前半分が一等生、

左胸には我が校の六芒星の魔法陣の校章が携えられていて

制服は白色

そして後ろ半分が二等生、左胸には校章は存在せず

制服も黒色落ち溢れまたはこの校では使えない人材と言っても過言では無いのかもしれない

そして今日から入学の一年生でさえもはっきり明暗と制服の色が分かれている

校からの押しであってもここまでの差別は生徒達の心にも刺さるだろう

秋は自分の紙を頼りに「K2-203」の席がある所まで歩を進める

ふと講堂中央にある時計に目を向ける

あと15分

通信制限、魔法発動に為に使うMADの使用はここでは認められておらず

此処では秋の趣味である魔法端末による読書が出来ない

そもそもこの様な神聖な場所と言われるべき場所で魔法の発動MADの使用は

無礼きわまりないだろう

今日は講堂で恐らくこの学校の顔と言っても過言ではない

今頃、夏希が裏でスピーチの練習でもしているんだろう

でも夏希はスピーチとか堅苦しいことは嫌いなはずと秋は思った

秋はそんな事を考えている内に自分の席の付近に気付く

「あー!秋っ!こっちこっち!」

甲高い声が講堂の中で響き渡る

秋にはその甲高い声が痛々しく聞こえた

秋に向かって手を振りこちらを指さしている

「あのな

木野村、お前は場所を選ばずにこうも甲高い声を出すのか?

それとも僕に恥をかかせたくてあんな大きな声で僕を呼んだのか?」

「えぇーいいじゃん別に講堂だからって普段は体育館だよ?

それに奈々、バスケ部だからここはホームグラウンドみたいなもんだし

またクラス一緒だね!」

木野村奈々

この学校の二等生の秋とは昔からの友人

女子バスケットボール部に所属しており

その類い希なる身長と体格をいかし女子バスケでは珍しいダンクシュートをきめる

まだ二年生にもかかわらず彼女はバスケットボール部の三年生にキャプテンを任される

と言われる程の実力者であるここ近年では彼女の活躍もあり

国立魔法院大学附属中高一貫高等学校高等部女子バスケットボール部は

インターハイも出場し今年はシード権でインターハイまで2回試合をするだけとなっている

魔法能力は著しく無に等しく彼女は魔法目的というよりも学業目的でこの学校に入学したに等しい

「あのな此処がお前のホームグラウンドだったとしても

今は神聖な場所なんだだからその甲高い声で話すのをやめろ

僕は若干不機嫌なんだだから木野村早く座れその隣の席は僕の席だ」

そういって秋は奈々を押しのけ自分の紙に記された同じ番号のプレートのつけられた椅子に腰を降ろした

そして腰を降ろした途端、奈々が殴りかからんばかりの勢いで秋に近付いた

「ね!ね!今日は夏希先輩がスピーチするんだよね!

とっても楽しみなんだけど!」

「まだ僕もその事については知らない

それに相変わらずお前は兄貴が好きだな」

「そりゃそうでしょ!

女バスでも大人気なんだから!男バスのエースだよ!?

一等生でスポーツ特異だなんて素敵だよね!」

奈々の甲高い声が周囲に響く

正直の所を言うと秋には友人が少ない

奈々は秋をかばうかの様に優しく見守っている

秋が奈々に落胆して俯いたその時

何かおぞましくとも何か妖しい気配が秋の背筋を伝った

その雰囲気を感じ取ろう目で見ようと秋の顔が自然に上がる

そして後ろを振り向くとそこには

神々しいではもの足りない、それだけの安い言葉では失礼と思うほどの

美少女が秋の隣を通ろうとしている

二等生の生徒には決して手の届かぬ白い制服そしてその白い制服を映えさせる

髪の艶そして整った顔立ち、歩き方、背筋

この学校のもう1人の顔、神ヶ原葵

その容姿、成績、周囲に対する態度、そしてその美貌から

この国立魔法院大学附属中高一貫高等学校ではアイドル的存在である

そしてそのアイドルは秋の方向を見るとまったくと言って良いほど表情を変えず

秋を見つめたほんの数秒だが秋は神ヶ原葵と目があった気がした

しばらく神ヶ原葵を目で追い神ヶ原が席につくとちょうど良いタイミングでチャイムが鳴り響いた

「あれ確か神ヶ原さんだよね!?

今、秋の事見てなかった!?ね!ね!」

相変わらず奈々は甲高い声で叫んでいる

葵が自分の席に着くまで秋の中には彼女のあの表情が脳裏に焼き付いていた

それは二等生である自分を貶むような目でも不要物を取り扱う時見せる表情ではなかった

まるで興味を持った子供の様な視線だった

ただその視線だけが秋の脳裏に焼き付いた

彼女の制服の色でも髪型でも香水の匂いでも無い

その表情だけが脳裏に焼き付いていた

「あっ・・・あぁそうだな」

秋はそう言って椅子に深く腰掛けた

チャイムが鳴ったのと同時に我が校の校長の挨拶が始まった

得に聞き耳にいれる事もなかったので秋は目を閉じ眠りにつこうとした

その時、秋の背中を何かが小突いた

秋は小突かれて少しハッとし後ろに振り向く

そこには眼鏡をかけた少女が座っていた

「あの・・・・・・雁間秋さんですか・・・?」

少女は萎縮した態度で秋を見つめていた

「あっはい雁間秋です」

珍しいなと秋は思った

現代医学や魔法技術の向上により視力を矯正出来るようになっている

近代では眼鏡といった概念はあまりにもなく廃止とまではいかないが

世界から眼鏡が消えていっているのは確か

治療費は莫大な資金が必要となるが近視という現象は過去の存在となってきている

それに最近ならば年単位で取り替え不要なコンタクトレンズが格安で販売されている

眼鏡をかけているとするならば趣味かはたまたファッションかそれとも他の別の

何らかの理由かレンズの質から見ておそらく度は入っていない

秋は彼女はファッションか何らかの理由で眼鏡を掛けているのだろうと自然に思った

「私は、田端満(たばたみちる)と言います

雁間家六兄妹の三男坊の雁間君ですよね

よろしくお願いします」

彼女の様な人間は恐らく魔力に敏感なタイプだと秋は悟った

魔力に敏感なタイプの人間は眼鏡をつけなければいけない

魔力に敏感というのは己の魔力や力量に関係なく生まれつきの能力とも言える

他人の魔力を感知する事に優れている人間、それを魔力に敏感という

その為近付く者の中に流れる魔力でその人間が誰か分かるといった事

そしてその相手の魔力に応じて相手の実力が分かるという利点がある

しかし欠点があり

あまりにも裸眼では魔力が見えすぎてしまい目を痛めてしまう

その為、魔力に敏感なタイプの人はコンタクトレンズや眼鏡の着用をしている

そして本人の魔力にも影響する強すぎる魔力を持つ人間との直接的な戦闘を避ける為

自分の能力を抑える為なのかそれともファッションなのかだが相手の魔力を見る

透視出来る様な能力は秋には困った能力らしい

秋には秘密があるそれはこの学校のごく一部の人間しか知らない秘密

魔力を見られるという事はその人間の魔力を知る事になる

魔力は人の能力を表したりする他にその人間の実力、性格、そしてその者が使う魔法も

知りたくても魔力に敏感すぎる体が反応してしまうそれが嫌でも

最近ではその能力を悪用する者も増えている

戦争やスパイとしての軍の物として使われる事も多い

その為魔力に対し敏感すぎる生徒には保護などが設けられている

秋は田端さんには注意しないとなと心がけることを誓った

自分の魔法、使う術はこの校でも使う時、場所などは限られる

「へぇ~!この人が雁間の人なんだ!」

満の隣から奈々に似た雰囲気の感じの活発そうな少女が顔を出した

「こんにちは」

「私は塔野莉子(とうのりこ)よろしくっ!」

「雁間秋ですよろしく」

秋の視線は莉子に向けられた

それは秋のちょうどいいタイミングで満との会話がカットされた

秋は隣の莉子を見る形で後ろを向いている

満は二人の間にいる事が申し訳なさそうにかがんだ

「へぇ~唯一の劣等生って言うのが秋だよね

でもそういうのカッコイイから羨ましいなぁ

1人だけはぐれ者みたいな感じで」

どうもこの少女は人見知りも人の心に土足で入らない様な事を配慮するような人間では無いらしい

奈々とは違って見えるが同じに見える少しショートにしては長いくてキレイな髪

そしてはっきりとした目と鼻が彼女の活発さをさらに増幅している

「別に格好良くなんて無い

ただ僕だけは本当に劣等生だからね

それは変えようの無い事実だし抗う事も出来ない

はぐれ者と言えばはぐれ者なのかもしれないけれど

そんな僕の事はどうでもいいとして君達は友達なんだ」

「いや?

座席分からなくてそこで座席確認してて私が困ってる時に

満が教えてくれたのがきっかけかな」

「はい。

失礼ながら声をかけさせてもらいました」

満が小さな声で二人の会話に入る

「え?でも魔法端末や一世代の端末は」

「まだ入学式だから端末は持ってきてないんだ」

「私達は新入生ですし

それに入学式そうそう先生方に目はつけられたくありませんから」

三人が話しているとその話に割り込む様な形で校長が代表生徒挨拶と発言した

一気に講堂の最前列の教卓に講堂中の生徒が視線を向ける

女子生徒の中にはちょっとした悲鳴を上げる者もいる

そういえば今日は夏希の代表演説だなという事を秋は思いだしながら

夏希が出てくるのを待つがしかし

教卓に立ったのは夏希ではなく妹の桜だった

会場がどよめきだしヒソヒソ声で話す者

桜の名前を呼ぶ者

それをなだめる教職員

そしてそんな中、桜は教卓を思いっきり叩いた

それも講堂中に響き渡るような叩き方で

「講堂にお集まりの生徒の皆さん!

そしてその保護者の皆様!

本日はこの国立魔法院大学附属中高一貫高等学校に入学、進学おめでとうございます

皆さんは本当に魔法を使える様になりたいですか?

魔法使いになりたい!魔道士になりたい!いいでしょう!私は文句を言いません!

この学校の教育方針も私、雁間桜は大好きです!

でも気にくわない事が一つだけあります!

それは我が兄!雁間秋が一等生では無い事です!」

桜のその発言に呆気にとられる講堂中にいる人達

そしてそれを見守っていた夏希はやれやれと頭を抱え

秋はビックリ仰天したかの様に口を開けている

冬貴も何が起こったたか分からない様な表情をしている

そして菊利はそんななか鼻提灯を作りながら睡眠をしていた

「それ以外には何ら文句はありません

でも私は思うのです二等生の中にも私達の様な一等生の上を行く生徒がいると

兄ちゃんは確かに駄目男だしあたしも家族も兄ちゃんも分かってる

でも兄ちゃんはすごい魔法が使えるんだ!

ドカーン!とかピカピカー!ってレベルじゃなくて

もっとズォォォォォォォォン!とかバキャバキャバキャ!ってなるんだ!

みんなや先生が知らないだけだ!兄ちゃんはすごいんだよ!な!兄ちゃん!」

 

桜が壇上から秋に向かって指を指す

視線も自ずと秋の方向を見るそこにはそんな事しらないと言わんばかりに秋がしゃがみこんでいた

秋の周囲だけでなく講堂中がざわつく秋は両耳を左右の手で塞ぎ何も聞こえないが如くしゃがみ

座り込んでいた桜はそんな秋を見て肩を落とした

桜は係員の先生らしき人たちに囲まれ壇上から降ろされていた

それでも講堂ではブーイングが起こっている

それは桜の人気者としての退場への苦情にも見えた

会場のブーイングが収まりがつかない始業式は目茶苦茶そんな中、

夏希が壇上に立ち講堂中の視線を集めた

女子生徒達の中に悲鳴を上げる者が現れ

男子生徒達の中には夏希コールが響いている

そんな中夏希は右手を掲げた

講堂中が一気に静かになるすると静かになったのを見計らい夏希は口を開いた

 

「ご会場に来賓のお客様、

私の妹が大事な御氏族の記念すべき、

誇れるべき入学式そして始業式を邪魔して申し訳ありません

それでは雁間桜に代わり私、雁間夏希が代表生徒挨拶を述べさせていただきます」

 

そう言って夏希の挨拶が始まった

 

 


 
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