No.455085

IS ~愉快を求める転生者~ 第8幕 始まりは、いつも大胆に

薄暮さん

とりあえずこれで引っ越しは終了ですね。

これからはこちらで話を考えていきます。

http://www.tinami.com/view/452193

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2012-07-18 12:51:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3046   閲覧ユーザー数:2788

――――――遡ること数時間前。

 

 

「じゃあ束行ってくるよー

 話は通してくれてあるよね?」

 

「もちろんなんだよきょーくん。

 でも今日から行くとは思わなかったなあ、今日は行かないって言っちゃったし」

 

「そこら辺はどうにでもなるさ」

 

興野京也はIS学園へ向かう準備をしていた。

 

現在世界にISが使える男は一人ということになっている《・・・・・・・・・・・・・》

第一回モンド・グロッソの覇者である織斑千冬の弟、織斑一夏。

世界に向けて発表されたのも彼の情報だけだ。つまり、

 

「まさかもう一人操縦できるヤツが現れたら、ビックリするかな?」

 

京也についての情報は一切知られていない。ここにいる二人以外は。

IS学園には姓である『興野』で通っている。名前は伝えていない、男ってばれるし。なにより面白味に欠ける。

 

「何言ってるのさ。そのもう一人はいっくんのことじゃん、きょーくんのほうが早く動かしたし」

「そこらへんに拘りはないさ、もう一人いたってところに意味があるんじゃないか」

「むー・・・相変わらずきょーくんの考えは束さんには理解できないんだよ」

「奇遇だね、お互い様だ」

 

あはははは、とその場に笑い声が響く。

 

「はは・・・そういや束、俺どうやって学園まで行くんだ?結構距離あると思うけど」

 

ここは束のラボ、もとい秘密基地。場所は控えさせて貰おう。

しかしここからはかなりの距離がある。一般の交通手段では時間が遙かに足りない。

 

「そこらへんはもう準備済みだよ!さあ、これをご覧あれ!」

 

どん、という効果音とともに胸を張る束。男子にとっては少し刺激が強いが、そこについてはご割愛。

 

「おお!頼もしいなたばn・・・・・・」

 

視界に入ったものを理解したとき、

 

「・・・えーっと?なんかこれ見たことあるんだけど?」

 

それもそのはず。

目の前には巨大な人参が地面に突き刺さっていた。

 

「そう!きょーくんを初めて連れてきたときに使った『にんじんDX☆by天才』の改良版、『きゃろっとえくすとらver.鉄の味☆byウサミミ』なんだよ!」

 

なんだそのネーミングセンス。えくすとらってなんだよ。鉄の味って美味しいのかよ。

 

「ちなみにこの『きゃろっとえくすとらver.鉄の味☆byウサミミ』は量子変換可能だから、片道でもこちらに回収可能なんだよ☆ぶいぶい!」

「無駄にスペック高いなこのにんじん」

 

最新技術をもう少し有効活用しないのか?この人は。

 

「さて、時間もないし行くか。・・・・これで」

「おぅけい!ささ乗った乗った!」

 

ぐいぐいと京也を押し込む束。

ガチャン、と人参の扉が閉まる。

 

「んー・・・じゃあ着くのは3時間後ねー。

ではでは快適な旅をご堪能あれー☆」

 

次の瞬間、急激な揺れが京也を襲った。

 

***********************************************

―――――――そして現在に至る。

 

ドカアアアアアアアン!!

 

「いって・・・あれ、痛くない。地面にぶつかったよな?さすが束お手製と言ったところかな」

 

頭が下になっているため、若干血が上っている。

 

シュウウウウン・・・・

 

乗っていたの人参が量子変換され消える。

つまり乗っていた、しかも上下逆さまになっているため京也は、

 

「あだっ!?」

 

頭から地面に落ちた。

 

「痛てーよ束・・・、そこら辺も考えてくれよ・・・ん?」

 

落ちたせいであろう、土煙が舞っていたようで、少しずつ煙が晴れていく。

 

その先に、ISの装備を携えたスーツ姿の女性が一人立っていた。

 

(ヤバいヤバいヤバい!あれ絶対織斑千冬だろ!?登校初日で死亡フラグ?早すぎるわ!)

 

なんとかこの場を切り抜けようとして放った言葉。

 

「えーっと・・・本日来れないって言ってた一年の興野京也ですけど、受付ってこっちでよかったんですっけ?」

 

刀身ではなく出席簿が飛んできた。

 

*****************************************

 

「・・・というわけで少し遅刻しました興野京也です。プロフィールはすべて秘密ってことでヨロシクオネガイシマス」

 

脳に多大なダメージを受け、教室へ案内された。ちなみにあのクレーターを元に戻すように申しつけられた。

 

「ふざけているのかお前は」

 

ギロリ、という効果音が似合いそうな千冬の視線が俺に突き刺さる。

 

「心底真面目です」

 

パシイイ!

 

答えた瞬間出席簿が再び飛来した。けどわざわざ痛い思いをしたくないので白刃取りの要領で掴んでみた。

 

 

「・・・織斑先生?これ壊れるのでもう少し丁重に扱うべきでは?」

「・・・そのくらいでは壊れん」

 

耐久度まで理解なさっている様子。恐ろしや。

 

「え?あの男子誰?」

「織斑君以外にIS動かせる男なんていた?」

「それにあの運動神経・・・何者?」

 

コソコソと女子の話し声が耳に入る。

それはそうだろう。一夏以外の男がここにいる理由がわからないだろうから。

 

「んー、そもそもIS動かせない男がIS学園に来る理由がないよね?むしろ動かせないと入れない気がするのは俺だけかな?」

 

仮に技術屋を目指しているとか言っても普通に工学科へどうぞって話だし、IS学園はあくまでISを操縦できるようにするのが目的だから来ても意味ないんだよな。

 

「興野、無駄口を叩くな。自己紹介はそのくらいでいいとしよう」

「了解です、織斑先生」

 

一つポツリと空いた席に座る。

 

「ではこれでSHRを終了する。諸君らにはこれからISの基礎知識、基本動作を半月で身につけてもらう。その後実習だが、それまでには完全に身体に染みこませろ。いいか、いいなら返事をしろよ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

千冬の絶対王政のようなセリフを聞きながら、京也はこれからのことを考えていた。

 

 

「それと、興野は一限は公欠にしてある。このあとすぐに教員室に来るように」

 

訂正、考える暇なんてなさそうだ。

 

*****************************************

 

「失礼しまーす」

 

誰が呼んだか教員室。

入口付近にいた先生にギョッとした顔で驚かれたのが少し傷ついた。

それもそうかと、京也は一人寂しく納得した。

 

「来たか。少し場所を移すぞ」

 

来るや否や、千冬に連行された。

 

 

 

 

 

 

連れてこられたのは生徒指導室。

 

「・・・俺何か悪いことしました?」

 

恐る恐る尋ねてみる。

 

「悪い事だろうな、だから端的に聞こう。

 

お前は誰だ?」

 

「おっしゃっている意味が解りかねますが」

「そうだな、一つ一つ言っていくか。

 

 

 

まず、私が1-1のクラス表を受け取った時、お前の欄には名字である『興野』だけしか載っていなかった。上にこのことについて話を聞いてみたが、どうもそのままやれという意向だった。

次にその『興野』という生徒は情報が一切なかった。住所、電話番号、家族構成、もちろん性別も。入学の際に必要な書類がすべて空白で提出されていた。しかし、上部の人間からは入学許可が下りた。

そして先ほどの貴様の侵入ともとれるIS学園への立ち入り。グラウンドに大穴を作り、無傷で現れたのはその『興野』という男子生徒(・・・・)。そもそも男でISを可動させたのは織斑一夏ただ一人のはずだ。

 

 

それも踏まえてもう一度聞こう。お前は誰だ?」

 

警戒心を表に出しながら座る千冬。

それとは逆に京也は愉快そうに口角を吊り上げた。

 

 

「別に普通の一般人ですよ。

 

 

 

ただ篠ノ之束と一緒にIS造ってたってことぐらいですかね?何かあるとすれば」

 

京也は隠し通す気などなかった。情報を隠蔽したのは『その方が面白そうだから』。

深い理由など何一つない。

 

「・・・・・・何かと思えばアイツ関連か。これは大事になりそうだ」

「別に織斑先生が気にする必要はないとおもいますよ。上の方々には束からの直々のお達しがあったと思いますし」

 

確か話はついている、と付け加える。

 

「・・・アイツはどこだ?」

「個人情報は大切ですよ、織斑先生」

「その言葉をアイツにそのまま言ってやれ」

「ははは、違いないです」

 

しかし、京也の情報を隠蔽したのは束ではない。

 

「では、ここでの話はオフレコということで?」

「ああ、それでいいだろう。アイツが絡むと真面目にやっているこちらが馬鹿馬鹿しくなる」

 

もういけ、とばかりに手を払う千冬。

 

「では俺はこれで。

 

・・・まあ情報の隠蔽は俺が全部やったんですけどね。では失礼します」

 

何か言われる前に、京也は生徒指導室を後にした。

 

****************************************

 

指導室を後にして、京也はふと自分の状況に気が付いた。

 

「ヤバ・・・・迷った」

 

千冬から追いかけられることを想定して京也は我武者羅に校内を走っていた。誰かに見つかると不味いので足音を消しての移動だった。

しかし、千冬の追跡が無かったようで自分の無駄な行動に落胆する。

 

「えーっとなになに?・・・ここ第三アリーナじゃん。今度一夏がセシリアと戦うんだっけ?」

 

目の前に広がるのはまさに闘技場。周りは観客席で囲まれ、その中央にかけて土が平たく敷かれていた。

京也が立っていたのは、そのグラウンドの中央だった。セキュリティなどは、京也の前では無きに等しい。

 

「確か一限は公欠だっけ。だったらちょっと遊んでっていいかな?」

 

無意識に指にはめた白銀のリングに手を添える。

誰もいないのを確認して、京也は小さく、そして密かにその名を呼んだ。

 

「来なよ、創元《そうげん》」


 
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