No.455065 亡き少女の理想と共に流狼人さん 2012-07-18 11:34:23 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:7091 閲覧ユーザー数:6550 |
「は~・・・」
劉備改め一刀は重い溜息を吐いていた。
桃香の遺剣を血で汚したくないが金も無いので剣を買うことが出来ず仕方ないので戦場で死んでいる兵士の剣を何本かちょろまかして帯剣していた。が、使って行く内に折れてしまい、今あるのが残り五本となってしまったのだ。その内の一本が遺剣なので実質四本。多少名も売れてきていたが、だからといって収入が有る訳でもない。その為、ゲーム風に言うと経験値とお金を稼げる幽州の商隊の護衛兵として働いている。しかし、彼はそんな事で溜息を吐いているのではない。正確に言うと、
「お兄ちゃんどうしたのだ?元気が無いのだ?」
うろちょろと彼の周りを駆ける商人の跡取娘と、
「・・・・・」
と此方をじっと見つめている黒髪の女性の性である。
彼女は異端であった。商家の出でありながら豪腕に優れ重い岩を楽々と持ち上げることすら出来た。商人である父は悩んだ。勉強の覚えは悪い方ではないが良い方でもない。妹の紹は力はからきしでも勉強は長女である飛よりも優れていた。しかし、次女は妾の子でありさらに家は自分を数えて五代続く商家である。幾らなんでも長女を差し置いて妾の子を跡取には出来ない。そんな折、北平へ引っ越す為で護衛兵を募ったのだ。幽州の長、劉虞は良い政治をしているが城の外を出れば賊や異民族が出るのは当たり前の世の。更に争い事が嫌いなのか、大きい賊や異民族に金を渡し友好を取ろうとしていた。しかし、それは奴らに甘い汁と思わせられ城の周囲は賊たちで溢れかえっていたのだ。故に幽州の北平という城で太守をしている公孫賛を頼ろうと思い、引越しを決意したのだ。公孫賛は賊や異民族に対し積極的に兵を進めているので治安は幽州でも良いほうなのだ。
護衛兵を募っている際、一際目立つ兵士がいたのだ。
白く日の光に反射し眩く服に腰に対なす4つの剣に背には宝剣。更に顔立ちも良く、どこかの王族と見間違えてしまうほどの青年であった。
ふと、護衛に募った傭兵の一人が呟いた。『剣壊』と、
『剣壊の劉備』
幽州でも名の有る傭兵でもある。由来は一人のならず者が劉備の背の宝剣を目当てに決闘を挑んだのだ。
結果は敗北。
腕に自信があった為、唖然としたならず者だが劉備が背を向けた瞬間に邪な思いに至ったのか、背後から斬りかかったのだ。しかし劉備は焦る事無く、「剣は折れたぞ。」と呟いた。その瞬間、ならず者の剣が壊れたのだった。再び唖然としてしまったならず者は劉備に首を斬り飛ばされたのだ。
其れを見ていた人たちは口々にこう言い回した。
「劉備の宝剣欲しくりゃ其れと同等の剣とそれ以上の腕前で挑め。」と。
その後も挑戦者は後に続いたが、殆どの剣は破壊され挑戦者は殺されていったのだった。それ以来劉備は剣壊の二つ名で恐れられたのだ。
確かに商人である自分が見るとその宝剣の価値は下手をすれば一州買い取る事が出来ると思える。武の方は娘の飛の御眼鏡に叶えば、腕は確かといえよう。
事実、娘の飛は彼に興味を持ったのか勝負しろと槍を片手に彼に強請りにいってしまったのだ。
彼はメンドクサイと答えながらも腰に帯刀している四本の剣の内二本手に取り、右手の剣を娘の飛に向け逆手に持った左手の剣を外套を纏った人に向けた。なんのマネかと思ったが、
「おい、殺気を飛ばすのもいい加減にしろ。言いたい事があるなら口か剣で聞け。」
と、外套を纏った人に言い放ったのだ。
それに答えるかのように彼の者、いや彼女は外套を脱ぎ捨て足元に置いていた龍を模った大刀を足で掬い上げ、高々と舞い上げたのだ。そして落ちてくる大刀を片手で掴むと彼女は大刀を彼に向けて一閃し名乗りを上げたのだ。
「我、義侠が大刀。関羽、字を雲長。貴公の噂を聞き此処まで来た。いざ一戦、承らせてもらおう!」
関羽?どこかで聞いた様な・・・と考えにふけると劉備に驚いていた傭兵がまた口を開いた。
「関羽って『黒髪の山賊狩り』じゃねえかよ・・・なんだってこんな湿気た商家の護衛にこんな大物が揃うんだよ!」
湿気たとは失礼ですね、そこの傭兵さん。
『黒髪の山賊狩り』・・・名の通り、黒い髪をした大層美しい女性が山賊達を次々と討っていると噂になっていましたが、彼女がそうでしたか。
しかし、なんと言いますか・・・そんな方々が揃うなんて、なにか運命を感じますな。
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暫く仕事が忙しくなるので恐らく一週間くらい書けないっぽいっす。