No.454901

魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ 映画バイオハザードのトラップを思い出しそうな12話

アニメでは飛ばされていた、いくつかのジュエルシードを回収する場面です。
レーザートラップ怖いですよね……。

2012-07-17 23:19:45 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1181   閲覧ユーザー数:1149

(それにしても、念話って便利だよねー)

 

(うん、こうやって事情を話せるからね。でも、授業中なのに良かったのかな……?)

 

 

 学校の授業が全て終わり、なのはは学校から出て行こうとする時である。

 今日の授業中、なのはは魔法の初歩である『念話』を使って離れた自宅にいるユーノと会話を現在進行形でしていたのであった。

 

 

 思いっきり授業妨害してしまったことをユーノは心配しているのだが、なのはは大丈夫だよと返事を返す。

 

(今日の授業は塾で予習してたとこだから。それにユーノくんのこと、知りたかったからいいの)

 

(で、でも……)

 

(ユーノくんは心配しすぎなんだよ、大丈夫だって。私こうみえて理数系は得意だし、苦手な文系の宿題でも寝てる間に終わってたもん!)

 

(寝てる間に!?)

 

 

 ちなみに、分かっているとは思うが犯人は田中。

 

「読書感想文になんて絶対負けないの!」「なのはちゃん頑張れー」→「読書感想文には勝てなかったの…………がくっ」「早っ! 仕方ないなぁ」

 

 といった感じ。

 一見役に立っているように見えるが、実は違う。

 

 

 まず、田中も真剣に書いているため内容が明らかに小学生のレベルではなくなっている。

 

 そして先生に「こないだの読書感想文素晴らしかったわ! 今度作文コンクールがあるんだけどでてみない?」と言われ断れないなのはは泣く泣く作文を書くという悪循環が成立するのだ。

 無限ループって怖いね。

 

 

 

 まあ、それはさておきユーノの話を聞いたなのははある決心をしていたのであった。

『いままでひとりで戦っていたユーノくんを、手伝いたい』と。

 

 

 確かに、ジュエルシードは危険な物だと知った。

 なのはだって恐いとおもっている。

 けれども、自分が役に立てるのなら、そのための力が自分にあるというなら手伝ってあげたいという気持ちが強かったのだ。

 

 

 なのはは自覚していなかったが、それは数年前に父の士郎が大怪我をして入院し、幼かったなのはは家族に対して何もしてあげられなかたことに対する『悔しさ』からくる感情だった。

 

 

 だからなのはは、いつも以上にやる気で溢れているのである。

 

 

 

(あ、あと! 魔法についてもいろいろ教えてほしいの! できれば除霊効果があるやつとか!)

 

(じょ、除霊? あるのかなそんな魔法……?)

 

(善処します、また無視されるのは懲り懲りですから)

 

((ご、ごめんなさいレイジングハートさん……))

 

 

 念話にレイジングハートが割り込んでくる。

 最初の暴走体との戦闘以降、このデバイスに頭の上がらない二人であった。

 

 ちなみにこの会話中、この場にいないはずの田中の背筋がゾッとしたとか。

 

 

 

 そうやって念話をしながら歩いていると、下駄箱までついた。

なのははさっさと下校しようと、自分の靴が閉まってある所へ行く。

 

 

(よーし、じゃあ今から家に帰るね! ちょっと時間かかると思うけどまってて――――――

 

 

 

 

 がちゃ

 キラーン☆

 

「…………え?」

 

 

 

 

 なんだろう、このやけに見覚えのある青い宝石。

 というか見覚えがあるなんてモノじゃ無かった、つい昨日同じものを見た。

 

 

(……ねえユーノくん、ジュエルシードってもしかしてみんな同じ形だったりする?)

 

(え、どうしたの急に。確かに全部真ん中にあるナンバー以外は『青い宝石』だけど)

 

 

 

 

(ジュエルシード拾っちゃった☆)

 

(えええぇえぇぇぇぇえええええぇ!?)

 

 

 

 まさかの状況に二人は脳内で大パニック。

 

(どっ、どどどどどうしよう!?)

 

(おっ、おおおち、落ち、落ち着くんだ! とりあえず願い事をしたらダメだから)

 

(願い事!? ああダメ考えないようにしたら余計に意識が向いちゃってーっ!?)

 

 

 なのはは学校内で慌てふためいてるから周囲の注目をあつめてしまっている。

 そしてユーノ、お前も落ち着け。

 

 

 

(まるで成長していない……)

 

 たぶん自身に口があれば『はあ……』と息をついているであろうレイジングハート。

 がんばれレイジングハート!

 この少年少女の未来はあなたが握っているぞ!

 

 

 それから数日たち、なのはは魔法少女としてジュエルシードを回収していた。

 その成果はジュエルシード5個、残る数は16個となったわけだが……。

 

(この町は、何かおかしい)

 

 夜、ジュエルシードの5個目を封印した後、高町家なのはの自室にてユーノは考えていた。

 

 この町でなのはと出会い、ジュエルシードを回収し始めてからというもの、『ありえない』ことが立て続けに起こっているせいである。

(3個目のジュエルシードもそうだけど、その次の暴走体の時なんて……)

 

 ユーノは思い出す、自分たち以外に暴走体と戦っていた『何か』を。

 

 

 

「いた、暴走体だよ! 気を付けて!」

 

「で、でっかいカマキリ!?」

 

 

 夜の森林、ジュエルシードが発動する際の嫌な『予感』を感じ取りなのははバリアジャケットをあらかじめ準備し駆けつける。

 

「ギギギギ……!」

 

 木々の間越しになのは達を睨みつける異形、周りの木と同じぐらいの高さになった『カマキリ』が自らを封印しようとする脅威を排除しようとする。

 

 

「ギギィ!」

 

 ブウウウン! と羽音を唸らせ木の合間を縫うように低空飛行し、両腕のカマを広げ突っ込んでくる。

 

 

「くるよ!」

 

「うん! レイジングハート!」

 

〈プロテクション〉

 

 

 これに対してなのははプロテクションで対抗。

 ガガキッ! と鋭い音を響かせ、暴走体は後ろに吹き飛び木に叩きつけられる。

 

「ギギィッ!?」

 

「よし! ジュエルシード封印!」

 

〈シーリング〉

 

 

 怯んだ暴走体を見て、好機と見たなのははすかさず封印魔法を使う。

 何本も放たれたピンクに輝く帯が、暴走体に絡みつく。

 

 

「グギギッ!」

 

 しかし、暴走体は即座に四本の足で立ち上がり封印魔法を切り裂いてしまう。

 

 

「うそっ!? 効いてない!」

 

「まだ弱ってないんだ! 攻撃をしないと」

 

 

 完全に決まったと思っていたために困惑するなのは、こんどは暴走体がその隙を逃さない。

 獲物の命を刈り取るそのカマを袈裟懸けに振り下ろす。

 

 

 

〈危険です、伏せて!〉

 

 

「きゃあああっ!」

 

 

 とっさにレイジングハートが指示、なのははギリギリで気付いてしゃがみこむ。

 

 ズパン! となのはの後ろにあった木が切り倒される。

 

 

 あれに当たれば、バラバラに引き裂かれるだろう。

 その光景を想像して、なのはは背筋に寒気が走る。

 

 

「ひっ……」

 

 

 思わず顔が引きつるなのはだったが、カマを振り抜いた暴走体は無防備になる。

 

 

「チャンスだなのは! 攻撃を!」

 

〈シュート〉

 

「う、うん!」

 

 

 レイジングハートを暴走体に向け、魔法弾を放つ。

 ピンク色をした頭ぐらいの大きさがある光弾が暴走体の胸にめり込む。

 

 

「ギリョッ!?」

 

 下から飛んできたため、今度は上に打ち上げられた。

 しかし、それがまずかった。

 

 

「ギチチチィ!」

 

 

「と、飛んだぁ!?」

 

「しまった、逃げられる!」

 

 

 暴走体は腹の上にある羽で空を飛んでいた。

 ただのカマキリは、飛ぶことは苦手なのだがジュエルシードによって強化されたいま、もはや威嚇だけにしか使えない羽ではなかったのだ。

 

 

 

 暴走体は、そのまま街の方へ飛んで行く。

 このままでは、街の被害はまぬがれない。

 

 

 ユーノはなのはに飛行魔法を教えてなかったことを後悔する。

 

「走って追うしかない! 急ごう、被害がでるまえに!」

 

「うん、分かった!」

 

 

 少女たちは走る、夜の森を。

 

 

 

 

 

 

 

「ギギギギ!」

 

 カマキリの暴走体は夜の空を飛ぶ。

 

 

 獲物が見つからず、空腹で命が果てる直前にあの石を見つけた。

 

 もう、獲物を捕らえる力すら残っていない彼はひたすらに願った。

『食べたい』と。

 

 

 そんな偶然が、ただのカマキリに力をあたえた。

 

 

 だからカマキリは思う。『この体なら何でも食べられる』と。

 

 

 いつも自分を見下す、大きな生物どもを食らいつくす時がきたのだと。

 

 

 そうして、今まさに眼前にひろがる人間達の住みかへ降り立とうとして。

 

 

 

 

「きたな化け物め、これでも喰らえ!」

 

 黄緑色の炎に、阻まれる。

 

 

 

 

 ドカン! と黄緑色の爆発が夜空に広がる。

 街へと走っていたなのはは、その音に驚いて上を見上げる。

 

 

「な、なんなのあれ!?」

 

「暴走体が……?」

 

 見れば空から暴走体が撃ち落とされて落ちる姿があった。

 飛ぶ力を失ったというか、下へ吹っ飛ばされたような落ちかたで林をでた道路に墜落していった。

 

 あの爆発は何なのか気にはなったものの、暴走体が街へ向かうことを阻止した二人は安堵する。

 

 

「よかった!」

 

「とりあえず、行こう!」

 

 そして、後になのはは語ることとなる。

『行かなきゃよかったの……』と。

 

 

「よし、撃墜確認と」

 

 空を飛んできた暴走体を俺は見事打ち落とした。

 アニメを見ていても、全てのジュエルシードの場所が分かるわけではないので正直不安だったが、向こうから来てくれたので杞憂に終わった。

 

 

 俺の役割は、直接暴走体と戦うことではない。

 前回の暴走体より危険そうだからなのはちゃんに押し付けようという魂胆でもないぞ。

 

 

 今回戦って頂くのは、俺でもなのはちゃんでもない。

 俺は、花子さんのようにラップ音を使って真下にいる『あるお方』に連絡をとる。

 

 

 

『そっちに行きましたよー。いけそうですかー?』

 

『うーん、見えてる見えてる。ってうわっ! カマキリ!? キモッ!』

 

 すると、明るい声が慌てたようすで返ってきた。

 や、やっぱり女の子だから虫は苦手だったかな……。

 

 

『大丈夫ですか? なんなら俺が頑張りますけど』

 

『いーからいーから! 大丈夫だって! わたしに任せてよ、花子ちゃんに頼まれたからにはちゃんとするよー!』

 

 やけに陽気な口調で大丈夫とアピールされる。

 そう、おわかりいただけただろう。

 今回戦って頂くのは花子さんが呼んでくれた『知り合い』さんである。

 

 

 

 さて、覚悟してもらおうか暴走体よ。

 この街は、そう簡単には餌食にならないぞ。

 

 

 

 

 林を駆け抜け、何とか道路に出たなのはは、目の前の光景に目を見開いた。

 

 

「ひ、人がいる!?」

 

「本当だ! 逃げて下さい!」

 

 

 そう、目の前には自分たちとそう変わらない年のランドセルを背負ったポニーテールの女の子が、暴走体の前に立っていた。

 

 

 

「ギギ、ギギ……!」

 

「…………」

 

 しかし、少女にはなのは達の声が聞こえてないのか、あるいは恐怖で動けないのか逃げようとしない。

 

 対する暴走体は、先程の爆発に対する怒りを目の前のモノに向けることしか考えにないらしい。

 

 

「ギチギチギチギチィッ!!!」

 

 

 右手の凶刃を、大きく振り上げて。

 

 

「いやあぁぁぁぁっ!!!」

 

「やめろおぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 ズパンと、少女の胴体を上半身と下半身、つまり『真っ二つ』に切り裂いた。

 

 

 ズルリ、とズレ落ちる少女の上半身。

 余りにも現実離れした、悪夢のような光景。

 

 

「うそ……?」

 

「そん、な」

 

 なのは達は絶望するしかなかった。

 

 間に合わなかったのだ、何もかもが。

 いくらなのはに才能があっても、まだ魔法少女になって数日。

 飛ぶこともできなかった彼女ではこうなる前に封印することはできなかった。

 

 

 この世界は、本当に理不尽でどうしようもなかったのだ。

 

 

 

 

 ただし、『暴走体に対しても』だが。

 

「いつから……」

 

 

 声が、聞こえた。

 なのはのものではない、女子の声が。

 

 

「ギ……?」

 

 

「「え……?」」

 

 

 その場にいた全員が声の発声源を探して、呆然とする。

 

 

 

 なぜなら、声の出どころは。

 

 

 

 

「一体いつから、『私達』を真っ二つにしたと錯覚していた? なーんちゃって!」

 

「…………!(ぴょん、ぴょん)」

 

 

 

 

 斬り殺されたはずの少女の上半身だけが、肘をつかって立ち上がり、やけに明るい様子で喋っていた。

 しかも、下半身はぴょんぴょん跳ねている。

 

 

 

 

「正解は私たちは元から『半分』! 『テケテケ』さんと『トコトコ』さんでしたー!」

 


 
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