No.454638 二度目の転生はネギまの世界 第十七話翡翠色の法皇さん 2012-07-17 15:34:20 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:10746 閲覧ユーザー数:9791 |
第十七話「忘れ去られていた顔」
さて、ナギをたたき出してから少しして。ようやく帰ってきたナギは、三つの人影を連れていた。
一人は
「何だ、これが噂の『
もう一人は今回会談していた相手、テオドラ。たとえどのような状況にあろうとも、王族としての誇りを失わぬその姿勢。場合によってはただ高圧的としかとられんこともあるのだが……まあいい。
「俺ら逃亡者に何期待してんだこのジャリはよ」
……ラカン。王族相手にその口調は減点ものだ。
まあ、あの筋肉馬鹿に、他人を敬う心があるかと問われれば、微妙だとしか返せんが。
「何だ貴様、無礼であろう!」
「へっへ~ん。生憎ヘラス皇族にゃ貸しはあっても借りはないんでね」
「何ぃ? 貴様何者だ」
「俺は伝説の傭兵剣士ジャック・ラカンだ」
そして、想像通り口論になる。
「それではこちらも挨拶をば」
「む、そういう貴様は何者だ」
気が付いていなかったのか、このガキは。
「お初にお目にかかります、ヘラス帝国第三皇女、テオドラ・バレイシア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミア様。私の名はアラン。『
「あ、あぁ、そなたらがかの有名な『伝説の賞金稼ぎ』か。ならばその横に立つのが『
「『
リュミスは少々いらついているようだ。まあ、あの名は嫌っているからな。
「この護衛の間はリュビと名乗っているわ。その名で呼んで頂戴」
「ふむ。分かったぞ、リュビよ」
そして、ナギが連れて来た三人の最後の一人。テオドラの後ろにひっそりと付き添っていた、侍女服を着たドリルヘアの亜人。一体何故
「あ、アニさん、久しぶりッス」
若干ひきつった笑みで、
「ここで何をしている、シャルテット」
最後の一人の名は、シャルテット……そう、
「報告したっしょ? 第三王女付きッスから」
テオドラに無理やり連れ出され、そして共に捕まった、と。それならば仕方あるまい。密偵である以上、派手に動くわけにもいかなかっただろうからな。
「まあ、それならいい。全てを報告せよ、シャルテット」
「仕方ないッスね」
今まで何も持っていなかったシャルテットの手の上に、漆黒の球体が生じる。それを
とたん、
その流れ込み
「待つのじゃ! シャルテットは、貴様の手の内なのか!?」
「
「黙ってて悪かったッス」
より厳密にいえば、
「帝国上層には……って、おぬし、何人密偵がいるのじゃ!?」
「どうでもいいだろう、そんなことは。知ったところで、誰がそうなのか知らねば意味は存在せん」
「う」
図星を突かれ黙ったテオドラを視界の端にとらえつつ、やや厳粛な場になりかけている
「じゃが……主と主の『
勝手に決めるな。さらに言わせれば、9人となると、
最近こいつらに愛着が湧いてきていることは否定せんが。
「ならば我らが世界を救おう。我が騎士ナギよ。我が盾となり、剣となれ」
「やれやれ。相変わらずおっかねぇ姫さんだぜ。俺は騎士じゃなくて魔法使いなんだが……いいぜ。俺の杖と翼、あんたに預けよう」
剣を突き付けるアリカ。片膝をつくナギ。ふむ、これはいい絵になるな。
さて……ついでに
「ならば我も誓おう。我が身と剣。共に汝に預けよう。そしてこの素顔も」
そのまま、今の今まで顔を隠していたフードと
「ふむ、それが主の素顔か。初めて見たな」
「……は?」
待て。1200万ドルの賞金首を、見たことがないだと!?
「確か、見せたくないと言ってましたが。見たことのない顔ですね」
「な」
アルビレオ、貴様もか! しかし、他の奴なら知っているだろう。立ち上がって周囲を見渡す。
「ふむ、どこかで見た気もするが、思い出せんのう」
「ちょ」
さ、最高齢であるゼクトもか……。
「妾もないな」
皇女、それでいいのか……? 最後の頼みの綱は、MMにいたガトウだけ……か。
「ガ、ガトウは……」
「無い……はずだ。どこかで見たか?」
「
別の意味で膝をつき、首を垂れてしまう。この100年以上。賞金稼ぎになってから、確かにアルトリウスとしての顔を見せたことは一度もない。だからといって、1200万ドルの賞金首を知らんと言い切るとは、俺の苦労が台無しにされた気分だ。
「ま、素顔なんてどうでもいいな。仲間なんだしな!」
「そうだな、がはははは!」
「貴様らはどうでもいい」
「「んだと!?」」
この
「「死ね!」」
項垂れる
「<
さらに重力力場系咒式第三階位<
突然重力が5倍になる。それはすなわち、自分の体重の4倍の重さの物を突然背負わされることに等しい。
「げぇ!」
「ぬおっ!」
さすがの二人も、姿勢を崩した瞬間の出来事だったため、強化された重力に逆らうことができずに倒れ伏す。
「おお、思い出したぞ。確かアルト……アルトリウスだったか?」
「思い出したか、ゼクト。そうだ。
ようやく
「いや、生存報告の無いそなたが生きておったとは。長生きはしてみるものじゃ」
「そうか……
「最後の報告が200年は前じゃからの」
旧世界にいる間、
一応真祖ということで手配書はあるが、あまりに長く目撃例がなければ忘れ去られていくのは仕方のないことではある。
よって、よほど詳しくない限りは知る者がいないという事態になっていたのであった。
「馬鹿馬鹿しい……顔を隠しすぎたせいで、顔を忘れられていたとは。確かに我は
「師匠。一体誰なんだ、アルトリウスって?」
「あ~、どっかで聞いたんだが……賞金首のアルトリウス?」
おそらくではあるが、二つ名を聞けば分かる者もここには居るだろう。未だに活動報告のある
「魔法世界人なら、噂くらいは知っていると思うのじゃがの。齢600を超える
「まさか……
「後は、進化し続ける怪物や金色の夜叉あたりが有名じゃの」
ピシ、とテオドラとガキ二人の表情が凍る。それ以外の奴らは無関心だったり知らなかったりで反応は薄い。アリカは『だからどうした』と言わんばかりの表情をしている。
それもそうか。短くない間、アリカの護衛を
「Artorius・R・A・Northright――アランはイニシャルか」
「そこを突っ込むか、詠春」
確かにそこから考えたが。ここで
「ふぅん……アランがその気なら、私も自己紹介するわ。私の本名はリュミスベルン。正式な発音はЯ$ス&ルンよ。リュミスって呼ばれてるわ」
「リュムィスヴェルン……ユミスヴァルン……ルヴィスベルン……? なんつー発音だ!」
「Я$ス&ルンよ。Я$ス&ルン」
ナギが苦戦しているが、さすがの
「そーいやアラ……アルトリウス。相方のリュミスは少なくとも百年は姿を変えてねーが、やっぱ真祖だったりすんのか?」
「少なくとも人外だ。亜人ですらないが、種族は内緒だ、ラカン。それとアランでいい。本名は長いだろう?」
何だろうか。
で、テオドラがいつの間にか涙目になってんだが。タカミチとクルトも同様だ。
「ち、ガキ三人は怯えるだけか。さすがにこたえたか?」
「魔法世界では
アリカが言うように、原作でもキティの二つ名が恐れられていたように、
「いい加減泣き止め。五月蠅い」
「「「はいぃぃ!」」」
余計泣きだしたか。
「大丈夫ッスよ、テオドラ様。アニさんは敵対しない限りは手を出さないッス」
「ほ、本当か? 視られたら死ぬという噂はただの噂なのか?」
「アランをバロールかなにかと思っておるのか? そもそも、見た程度で死ぬのなら、ここにいる全員が死んでおるわ」
「アリカ様の言うとおりッスよ。身内には甘いっすから、アニさんは」
自分のことのように語るシャルテットの頭に鉄拳を叩きこみたかったが、止めた。自傷行為に意味はあるまい。
「やはり今のうちに自己紹介したのは間違いではなかったな。勝利後にすれば、間違いなく大混乱であったな」
「さて、確かにそうなるでしょうけど、結局は変わらないのでは?」
「周囲の心構えがあるかないかでは大きく違うであろう、アルビレオ」
「確かにそうですね。ところで、真祖ともなれ」
「半生の収集なら勝手にしろ。終戦後と言ったのは、
「では早速」
収集は勝手に行わせつつ、周囲を見る。そして、先程の厳粛な状態などかけらも存在しないどころか、本当にあったのかどうかすら疑わしいまでの状況に嘆息する。
先程はこのタイミングしかないと思ったが、時期尚早だったかもしれん。
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紅き翼の秘密基地に到着した一行。そこで開かされるアランの事実に皆驚愕……あれ?