学校の雰囲気も随分と変わったものだ。
昔は戦争で騒がしく何かしてられなかった。
だけど……
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
廊下でお呼びがかかるまで待機しているのだが、教室の中から叫び声が聞こえる。おいおい敵に見つかったらどうすんだ?
……いや、もう終戦を迎えて敵などいないのか。
そこに織斑先生からお呼びがかかった。
「蒼井大和です。よろしくお願いします」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先ほどまでの騒がしさはどうした!?
といわんばかりの静けさ。
誰かが呟いた
「お、男…?」
「ん、あぁ。何でも世界で二番目の操縦者らしいな。一番目じゃないのが悔しいが」
と答えるように言った。
「キ…」
「キ?」
「キャァーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「男よ!それも2人目の!!」
「織斑くんとは違うワイルド系!」
「この世界に生まれて良かった!!」
と口々に叫び始めた
織斑先生が額を抑えながらこちらに話し掛けているがよく聞こえない。
昔パイロット同士が操縦席同士で話していたかのように読唇術を使おう
「コノジョウキョウヲドウオモウ?」
このじょうきょうをどうおもう?
この状況をどう思う?と聞いているのか?
「とても姦しいです」
「ダロウ?ワタシハマイトシコンナカンジダ」
だろう?私は毎年こんな感じだ
「お勤めご苦労様です」
織斑先生は「まったくだ」と答えた後手を叩き、みんなを黙らせた。
「蒼井、お前の席はこの愚弟の隣だ。これにてSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
あれ?ここ軍学校だっけ?まぁ、ISは兵器だからそれなりに厳しくしても問題はないだろうが……
***
一時間目の基礎理論が終わり、次の授業の準備をしていた頃
「えっと蒼井か?これからよろしくな」
と声をかけてきたのは一人の男子だった。
「ん?あぁ、蒼井大和だ。よろしく頼む」
と手を差し出す
「俺は織斑一夏だ。一夏と呼んでくれ」
と、互いに握手を交わす。
「じゃあ、俺も大和でいい」
などと話している間にツリ目のポニーテールをした女生徒が歩み寄ってきた。
「ちょっといいか?」
「ん」「箒?」
大和は知り合いかと聞くと久しぶりに再会した幼馴染らしい。
「篠ノ之箒だ。よろしく頼む。箒と呼んでくれ、名字はその…好きではないからな」と自己紹介してきたので大和もさっきと同じような自己紹介を軽くする。
箒は一夏を借りたいというので積もる話があるのだろうと解釈し一人教室に残ったが判断を間違えたかもしれない。というのも廊下までびっしりと他クラス他学年が男子生徒みたさに集結していた。
しかも女子同士の牽制がある意味戦場より恐ろしい
そこにチャイムが鳴り蜘蛛の子を散らすように女子生徒がさっていくのを見ていた大和はこう呟いた
「やはり、軍学校なのでは?」
と。
二時間目が始まり、大和は先日貰った電話帳に匹敵する厚さの参考書を必死に熟読したため何とか授業にはついていけたのだが、隣の一夏はなぜだか項垂れている。
大和はしかたなしに声をかけてみた
「どうした?項垂れたりして気分でも悪いのか?」
「いや、なにを言ってるのかさっぱり分からなくてな……」
「入学前の参考書はどうした?あの分厚いやつ」
「あぁ、あれな。古い電話帳と間違えて捨てちまったんだ…」
「…それ、織斑先生の前では絶対言うなよ。参考書については俺が貸してやるから」
「あぁ、恩に着る」
「そこ、なにやっている?」
「入学前に貰った参考書を古い電話帳と間違えて捨ててしまっt……」
「あ、バッ…」
スパン!!スパンッ!!
なんで俺まで?私語を慎めと?ごめんなさい。
「後で再発行してやる。一週間以内に覚えろ」
「えっでもあの量を一週間でh…」
スパンッ!!
「やれといっている。いいな?」
キッと厳しい視線を一夏に向ける
「ハイ…」
「後で俺も勉強教えてやるよ」
ポンと肩に手を載せる。
「大和、巻き込んですまないな」
「気にするな。男同士この学園生活は一蓮托生だ。とりあえず今日の放課後にでも重要な用語だけは覚えとけ。そうすればなんとかなる。」
と話していると金髪をロールにした白人の女子が話しかけてきた。
「ちょっと、よろしくて?」
「ん?」「へ?」
といきなり話しかけられたものだから素っ頓狂な声を出してしまった。
「まぁ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではなくて?」
とどこぞの貴族のような感じで言っているのだが今となっては女はISを使える=軍事力になる=女は偉いという風潮があるため、この様な態度を取られてもおかしくはないのだ。
「一夏、知り合いか?」
と、大和はさっきもそうだったからこれもそうだろうと判断し一夏に尋ねるが、一夏の知り合いでもないらしい。
「悪いけど、俺ら君が誰だかしらないし」
それを言うと知らないのが癪に障ったのかバンッと机を叩いてくる
「わたくしを知らない!?イギリス代表候補生にして入試主席のこのわたくし、セシリア・オルコットを知らない?」
「あ、質問いいか?」と一夏。うむ、分からないことがあれば聞くのが一番
「下々の要求に答えるのが貴族の役目、良くてよ?」
「代表候補生って何?」
……っと思っていた時がありました。
「一夏、それ本気でわからないのか?」
「おう、知らん」
「簡単に言うと国家IS操縦者の卵だ。字を見りゃわかるだろ?」
これで納得したのか「おぉ、なるほど」と言っていた。
「つまり、エリートなのですわ!!本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡、幸運なのですよ。その現実をもう少し理解していただける?」
とセシリアが補足説明。
「そうか、それはラッキーだ」
と一夏。馬鹿にしているようにしか聞こえないよ。しているんだろうけど。
「だいたい、男でISを操縦出きると聞いたので少しくらい知性を感じるお方かと思いましたが、期待はずれですわね。まぁでも?わたくしは優秀ですから、ISのことでわからないことがあれば、あなたがたのような人間でも泣いて頼まれれば教えて差し上げてもよくってよ?何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
「入試ってあれか?IS動かして戦うやつ」
と一夏が尋ねる。…入試でなにかあったのか?
「あれ?俺も倒したぞ教官。大和はどうだった?」
おぉ、初めてにも等しいのに教官を倒すとはやるな。と心中で賞賛する。
「ん?俺か?恥ずかしながら織斑先生と相打ちだ」
えぇ!?とクラス全員が信じられないものを見るかのように大和を見る。
「どうした?」と大和は皆の視線を気にしながら問う。
「千冬姉…織斑先生は現役時代世界最強のIS操縦者だったんだ。今は多少腕は落ちているかもしれないけど、それでも世界最強レベルの操縦者ではあるはずだ。」
と一夏が説明をする。その言葉を肯定するかのように皆が頷く。
セシリアに至っては口を金魚のごとくパクパクさせている。
「そ、そんなの嘘に決まっていますわ!!」
とセシリアがビシッと嘘を暴いた刑事のごとく指をさす
「今ここで嘘をついてもしょうがないだろう?それより落ち着け、席につけ、次は織斑先生の授業だ」と宥める大和。
「こ、これが落ち着いていられるわけ………」
キーンコーンカーンコーン。
三時間目のチャイムが鳴り響き、「また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」
と捨て台詞を吐き、自席へ戻って行った。
「それではこの時間あ実践で使用する各種装備の特徴について説明する」
よほど大事なことなのか山田先生ではなく織斑先生が教壇に立っている。山田先生がノートを持つくらい大事なことなのだろう。
「あぁ、でもその前にクラス対抗戦の代表者を決めなければならないな。クラス代表者とはそのままの意味だ。クラス対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会の出席、言うなればクラス長だ。因みにクラス対抗戦は入学時点の各クラスの実力を測るもの。入学時点では対した差はないが競争は向上心を生む。自他推薦は問わない、推薦されたものには拒否権がない。しかし、一度決まると変更できないからそのつもりで。」
ふむ、組長を決めて対抗戦の代表を出そうということか。仮に一夏が選出されて代表戦にでたとしたら、一夏は実践を積むことができるな。
「はい、織斑くんを推薦します」
「私は蒼井くんを推薦します」
「ふむ、織斑一夏と蒼井大和か。他に誰かいるか?」
「えっ俺!?」
と一夏が慌てたかのように言う。
「あぁ、だがお前に他推する権利はあるが、拒否権はない。」
ならばと一夏は手を上げ
「はい、蒼井大和君を推薦します!!」
面倒ごとは嫌いだといわんばかりに元気に言った。
ふむ、ならば
「はい、織斑一夏君を推薦します!!」
と、挙手をしながら言った。
「そんな選出納得が生きませんわ!大体男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!このわたくし、セシリア・オルコットにその屈辱を一年か味わえとおっしゃるのですか!?いいですか!?クラス代表は実力のトップの者がなるべき、それはわたくしですわ!それを物珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までISの修行にきたのであって、サーカスをするきなど毛頭もございませんわ!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならないこと自体、私にとっては耐えがたい苦痛でー」
もう我慢ならん。
「「いい加減にしろ!!」」
2人分の声が重なった。
隣を見ると我慢の限界を越えたのか一夏も机に手をついて立っていた。
「すまない、一夏。今回ばかりは発言権を俺に回してくれ」
一夏は、「お、おう」と席に座り、大和は一つ息をする。
「黙ってりゃいい気になりやがって侮辱をするのが英国流淑女のやりかたか?」
静かに、そして威圧をこめて言う。
「質問に答えろ」
またも静かに言い放つ。
「い、いえ。わたくしはただ…」
と今までの饒舌はどうしたのかセシリアは縮こまっている。
「男にクラス代表がとられるのが嫌だったのか?それとも自分が推薦されなかったのが嫌だったのか?答えてみろ」
「その両方ですわ!!」
セシリアっはもう吹っ切れたかのように言った。
大和は「ほう」と言って言葉をつなげる。
「それが、他国を侮辱する理由になるのか?英国はとても短気な国だな」
「あ、あなた!わたくしの祖国を侮辱いたしますの!?」
「先に侮辱をしたのはそちらであろう?されたくなければしないことだな」
と鼻で笑って見せる。それが頭に来たのか
「決闘ですわ!!」
ビシッと人差し指を大和に向けて言った
「おう、いいであろう。勝者がクラス代表を決める権利を有するということでいいな?」
と挑発的に言って見せた。
「話はついたな。セシリア・オルコット、織斑一夏、蒼井大和の三名は一週間後の月曜日、放課後にて第三アリーナで行う。各員、準備しておけ。あぁ後、蒼井、織斑は1分以内,オルコットは2分以内に指導をしながら倒せ……なにせ私と引き分けたんだ、その位のハンデはあって当然だろう?」と言った。
セシリアは当然のごとくわめいたが全てをスルーし、一夏は「へっ俺も?」と言っていたのでスルーさせてもらった
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伍 「決闘ですわ!!」