No.453999

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第三十五話 それが家族というものだろう?

2012-07-16 11:53:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7811   閲覧ユーザー数:7195

 第三十五話 それが家族というものだろう?

 

 

 昨晩、リンディさんと話し合った後、俺達が寝過ごしているマンションに戻り俺達はすぐに寝入った。

 ちなみにすぐに管理局が捕まえに来る。クロウが俺を襲撃しに来ることも考えた。が、それは無いと判断した。

 それは高町なのはとフェイトの存在だ。彼女達は将来は必ず高等の魔導師になれると言っていいほどの才能を秘めている。

 もし俺達に何かあればこの二人は必ず行動に移す。それは管理局への不信を買い敵になりうるかもしれないという危険性もはらんでいる。

 管理局側も虎の子が悪鬼になって襲い掛かってくるのは避けたいだろう。

二人の性格からそう考えた俺はある意味、とても打算的で最低な男だ。

 

 「やぁあああだぁああああああ!やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだぁあああああああ!!」

 

 そして、そんな俺は遅い朝食をとりながら、昨日の話し合いの結果をプレシアと確認しながらアリシアにも聞かせると、アリシアがその場で仰向けになってじたばたと駄々をこねた。

 

 「ジョ○ョかお前は!大体、俺達の住むところもそんなに離れた所じゃないから…。むしろ近いぞ」

 

 今日から俺達は管理局側が準備していた拠点。の、隣の部屋に行くことになった。

 その為、朝食を取ったら掃除をして、しばらくしたら外で昼食をとり夕方までには引っ越し準備を完了させなければならない。

 

 「なんでフェイトと一緒に住めないの!おかしいじゃん!」

 

 「それが話し合いの結果になったからだ」

 

 あれから話し合いを続けて出てきた結果は、

 

 一つ。お互いの事を尊重しながら協力すること。

 これは俺やプレシアが匿名ながらも管理局に協力する代わりに俺達の衣食住。そして俺達の身の安全の保障をしてくれるそうだ。そのかわり有事の時にはすぐに行動を移せるように手の届くところにいるように言われた。

 さらには高額の報酬までつく。まあ危険手当も出るから当然の額になるのだが、一回の報酬で百万円を超えるなんて…。転生前でも見ることなかった明細書にびっくりだ。まあ、世界の命運をかけ、その上、命を懸けているから当然といえば当然か。

 

 これはスフィアリアクターである俺にも利点がある。

 アサキムとスフィアを巡る戦い。

 アサキムは俺の、正確にはアリシアの中にある『傷だらけの獅子』が熟成するまでは俺達を殺しはしないだろう。

 スフィアは熟成する前に所有者が力尽きると次の適格者を求めて転生する。

 リンディさんに悪いが転生の事は伝えていない。スフィアと似ていて闇の書も転生するということを知らされているのでここで迂闊に喋って彼女達の警戒心を仰ぐ真似はしない方がいいだろう。

 アサキムはスフィアを手に入れることが出来るのなら何でもする。

 それは世界を救うことだろうが滅ぼそうが報酬がスフィアなら同じことだ。

 死なない程度に俺を追い詰めてマグナモードを使わせて熟成を促す。そんなアサキムに勝つには一刻も早くガンレオンを使いこなせるようになり、かつ、スフィアの力を借りなくてもアサキムを退けるだけの技量を収めなければならない。

 対人戦闘や空戦経験を提供してくれる環境として、管理局は格好の場所だった。

 ハイリスク・ハイリターン。

 だが、何もしないままだとアサキムにいいようにやられるのは目に見えている。

 だから俺は強くなる為にも多少の無茶もしなければならない。

 

 そして、二つ目はフェイトの親権をプレシアではなくリンディに渡すということ。

 そのことにアリシアはご立腹だった。

 だが、考えて見て欲しい。

 いくら死んだ人間として、そして別人として判別されたとはいえフェイトがプレシア・テスタロッサの保護下に戻ると仮定しよう

 その状況を見てまた次元犯罪を起こすんじゃないか?なんて考える人が出てくるかもしれない。その証拠に、あの次元犯罪者そっくりのプレシアがそばにいるじゃないか。と。

 一度こびりついた罪歴はなかなか消えない。

 それはフェイトの足かせになるかもしれない。フェイトやプレシアがようやく光の当たる場所に出たのにそれを蹴落とそうとする輩も出てくるかもしれない。

 特に魔法社会でフェイトという魔導師は子どもながらに高評価を受ける立場にある。だが、風評とはひどいもので少しでも穴(この場合だとプレシア・テスタロッサ事件)があるとそれを穿り返して蹴落としたり、それを揺すってフェイトの自由を奪いかねない。

 それをさせないためにも過去の功績のあるハラオウンという名前に守ってもらう。

 テスタロッサという有名な科学者の名前を覆い隠すことのできるのは今の所ハラオウンだけなのだ。

 せめて、フェイトが自分の身辺を守り貫き通せるまではハラオウンの保護下にあった方がいいと言うのが俺とリンディの意見だ。

 プレシアも最初はアリシア程にではないが難色を示していた。

 だが、自分のしでかしたことと俺が出来るだけフェイトの傍にいること。リンディ・ハラオウンという立場と人格を比較してしぶしぶながら引き下がった。

 だから、フェイトはフェイト・テスタロッサではなく、近いうちにフェイト・(テスタロッサ)・ハラオウンになるだろう。

 俺も沢高志のままだ。フェイトがテスタロッサの名前を使えないのに俺が使うなんて皮肉過ぎる。

 ちなみにフェイトの意思も尊重するつもりでもあるので彼女が望めばテスタロッサ。を名乗れるだろう。だが、そうなった場合。彼女は過酷な境遇に陥ることは間違いない。

 フェイトの答えを聞くまではあくまでこの路線が主軸だ。

 

 「うー、うー」

 

 「…なあ、アリシア。別に一緒に暮らすことは出来ないけれど一緒に過ごしていけるんだぞ?」

 

 「訳が分からないよ!だって私達は姉妹なんだよ!家族なんだよ!」

 

 うーうー唸っているアリシアの頭を撫でながら俺は優しく諭す。

 五歳だからまだ理解出来ないかもしれないから。簡単に説明してあげた。

 

 「この世界は優しい人だけじゃないんだ。むしろ酷い人や厳しい人の方がいっぱいいる」

 

 なのはやリンディみたいに世界を滅ぼしかけた人間にあそこまで親身になれる人達が珍しい。いや、貴重過ぎる存在だ。

 見て見ぬ振りをする。普通の人なら誰もがとばっちりなど逢いたくはないだろう。

 その俺の言葉にプレシアが声をかけてきた。

 

 「…タカ。もし。…もしもの話よ。フェイトがハラオウンではなく私達(テスタロッサ)を選ぶとしたらあなたはどうするの?」

 

 「…」

 

 プレシアの言葉を聞いた俺は少しだけ考える。その仕草にアリシアの表情が曇った。

 フェイトは頭のいい子だから説明すれば、ここから先自分が生きていくにはどちらが得かは判断できるだろう。

 そして、優しい子でもある。自分が我慢すれば母親であるプレシアに迷惑はかけない。姉であるアリシアにも非難の目はいかないなどと考えなくもないだろう。

 それでも…。

 それでもフェイトがテスタロッサを名乗るというのなら…。

 

 「俺はお前達を全力で守るよ。例え、世界を敵に回しても俺だけは家族(テスタロッサ)の味方でいる」

 

 もし、家族が困っていたら助ける。プレシアのように世界を滅ぼしても助けてくれと頼まれたら俺は助ける。

 …まあ、そんなことにならないように全力で務めるけど。

 そもそも俺をこんな風に育ててくれた前世の家族はおせっかいが多かったのでそんなことはしないでお前自身が幸せになって俺達を安心させろというだろうけど…。

 

 それが家族というものだろう?

 

 「…お兄ちゃん」

 

 それに年下の我儘を。一緒に暮らしていきたいという望み位叶えてやるのが、手伝ってやるのが年上の役割だろう。

 それがお兄ちゃんというものだろう?

 

 「…そう。そうね。あなたはそういう人間だったものね」

 (だから、私もアリシアも彼にここまで心を許した)

 

 ちなみに大人になったら働きなさい。ニートは許しません。そういうのは駄目です。論外です。

 大人になるまで育ててもらったんだから自活しなさい。そこまで俺は面倒みません。

 

 「ほれほれ。さっさと飯食って掃除を始めるぞ」

 

 「うん♪」

 

 アリシアはそう言いながらも俺の腹にグリグリと顔を擦りつける。

 

 「…あ、ケチャップついちゃった」

 

 「このTシャツお気に入りだったのに…」

 

 ちなみ朝食はスクランブルエッグ。アリシアはトマトケチャップ。俺は塩。プレシアは醤油。

 ちなみにこのTシャツ。背中に『家内安全』とロゴがでかでかと描かれたシャツだ。

 

 …センスが悪い?

 うん。前世からよく言われていたよ。

 

 


 
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