No.453797

新・少女と覇王の奮闘記 2人の王様物語

コルトさん

赤壁にて決戦を仕掛け、敗北した少女。
目を覚ませば自分が見聞きした事とは違う状態にある世界にいた。
そこである男と出会い、新たなる地で自分の闘いを繰り広げる。

2012-07-16 00:21:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:848   閲覧ユーザー数:800

 

『覇王』

武力・策略を用いて、力によって世界を統べようとする者。

古代中国では、秦の始皇帝、西楚の項羽がそう呼ばれるものであろう。

 

 

・・・その言葉は、一人の少女が背負うには重すぎるものだった・・・

 

 

 

 

 

少女は大河にて数名が乗る小さな船に乗っていた。

先程まで、少女は『王』として大船団を率いて決戦に踏み切っていた。

しかし今は、数名の部下と共に、何とかこの大河を乗り切れるであろう小さな船に乗っている。

なぜ、今、彼女はそんな船に乗っているのか?

 

彼女は後ろを振り向く。

 

普段は静かな水面は、赤い劫火で埋め尽くされ、彼女が率いていた船団はその劫火にて焼き尽くされていた。

少女は決戦に敗北し、何十万と率いた軍は、いまや、数名の将と部下のみとなっていた。

 

 

「さあ、行こうか。我らは敗北した。この地に我らの居場所は、もはや・・・ない!新たな地にて再起を計ろうぞ!!」

 

 

少女は自身についてきてくれる部下の方を向き自分の思いを伝え、また劫火に焼かれる船団の方を向く。

誰にも聞こえない声で一言つぶやいた。

 

 

「私の『覇王』としての物語はここで終わり、ね。」

 

 

 

目を開くと、白い壁のようなものが見えた。

 

 

??『??あれ??何でそんなものが見えるのかしら??』

 

 

どうやら寝台に寝かされていたようだ。

そこは、どこかの書庫のようだ。

竹簡や本が棚や地面にたくさん並べられていた。

 

 

??『ここはどこかしら?私の知っている場所ではないようだけれど・・・』

 

 

先程まで私は・・・

・・・あれ?

どこにいた?

何をしていた?

 

記憶に霧がかかったように鮮明に思い出せない。

 

 

??『確か・・・船に乗っていたような・・・いえ、それは前の記憶ね・・・誰かに会っていた?どこで?前の記憶・・・頭が混乱しているわね。』

 

 

とりあえず、現状を整理するためにも、まずはここがどこなのか確認する必要があるわね。

寝台から降りて、書庫から外に出てみる。

 

・・・周りに違和感がある。

書庫の扉もそうだったが、全体的に物が大きく感じる。

巨人でも住んでるのか?

そんなことを思いながら屋敷の中を歩いてみる。

 

かなり大きな屋敷なのだろう。

部屋の数がとても多いことがわかった。

だが、これだけ部屋の数があるのに人の気配がない。

これだけ大きな屋敷なら使用人くらい歩いていると思うのだが、人に会わない。

 

 

??『昼間なのだから喧騒というか、人の声くらい聞こえてもいいのに・・・』

 

 

無人の屋敷なのだろうか?

いや、それはない。

見てきた部屋には人の住んでいる形跡がある。

書庫も埃をかぶっている状態ではなく、とてもきれいなものだった。

だから、ここは無人の屋敷ではない。

 

 

??『どこかに集まっているのかしら?だったらどこに?もう少し歩いt、ッ!!!!』

 

 

今まで感じたことのないような『氣』。

強烈過ぎて、たじろぎそうだったが堪えた。

 

どこから感じたものか、少し探してみたがすぐにわかった。

廊下を曲がって、外に出ることができる場所がある。

その先、離れのような建物。

そこから感じることができる。

いや、視認できるほどの『氣』。

 

 

??『こんな『氣』を放つことができるなんて・・・人間なのかしら?』

 

 

普段なら安易に不確定な場所にひょいひょいと行くことはないだろう。

しかし、今は情報もなく状況もわからないという混乱状態にあったためか、そこに行ってみるしかないと思ったのだ。

 

離れのような建物に近づくと先程まで感じた『氣』はなくなった。

扉を開けるのに躊躇する。

 

 

??『恐れていては何もつかめない!!・・・だけど・・・』

 

 

開けていいのだろうか?

人がそこにはいるのだろうか?

他の場所に人はいるだろうからそこから探してみるか?

 

様々な思考がよぎっている。

 

そんな時、扉の向こうから声がした。

 

 

??「入ってきてください『曹操さん』。そこに立ってても事態はなにも進みませんよ?」

 

 

何故、私の名を!?

声からして男だろう。

・・・まあ男の言うとおり、ここに突っ立ってても事態は何も進まない。

私は、不安な気持ちを抱きながら扉を開けてみた。

 

 

扉の先には、こちらに背を向けている男がいた。

顔は見えない。

この男が誰かわからない。

だけど、声が出てしまう。

 

 

曹操「曹弥・・・なの?」

 

 

男はこちらを向き笑顔で私に声をかけた。

 

 

男「いらっしゃい、曹操さん・・・お茶でも飲みますか?」

 

 

私と彼の物語はここから始まった。

 

 

 
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