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IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第二十六話 ~明かされる真実~

Granteedさん

第二十六話です。

2012-07-14 20:43:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9008   閲覧ユーザー数:8586

会議室につくと、目の前のモニターの電源がついており、そこには疲れた顔をしたカルロス・デュノアが映し出されていた。しかし満身創痍のクロウを見た瞬間、カルロスは目を見開き、画面の向こうで席から立ち上がった。

 

「ブ、ブルースト君!?大丈夫かい!?その傷は・・」

 

「あー、気にしないでください、慣れてますから。それに自分で戦って付いた傷ですし」

 

クロウはそう言うが、カルロスの気持ちは収まらないようで、謝り続ける。

 

「いや、それでもすまない。君にそこまでの傷を負わせることになってしまって・・」

 

「とりあえずその話はもういいですから、座らせてもらいます。んで俺を呼び出した用件はなんです?」

 

「うん、あのあとの事後報告と、報酬の件について話そうと思っていたんだけど」

 

「いや、事後報告は私の方からしておいたから、報酬の件について話してやれ」

 

「ありがとう千冬君。それで報酬の件なんだが、何が望みだい?」

 

「ああ、実をいうと報酬は前から決めてあるんだ」

 

そういうと、カルロスが驚いた顔をする。

 

「ほう、じゃあ何がいいんだい?」

 

「そうだな、報酬は~~~だ」

 

「・・・それでいいのかい?君の利益は何も無い様に思えるけど」

 

「ああ、これでいい。あとひとつ、俺から謝らなければならないことがある」

 

クロウがその言葉を発すると、カルロスは全て分かっていたようで、クロウが口を開くよりも早く、言葉を紡ぐ。

 

「分かっている。シャルロットの件だろう?織斑先生から聞いたよ。シャルロットに戦闘を見られた、と」

 

「本当にすまない。あいつには、こんな裏の世界の様な事は関わって欲しくはなかったのに。あんたの思いを全て台無しにしちまった。こんな俺に護衛を頼んでまで遠ざけたかったはずなのに・・」

 

クロウが頭を下げると、カルロスは押し黙ってしまった。しばらくしてカルロスが重い口を開く。

 

「・・顔を上げてくれ。ブルースト君。その事を責めるつもりは僕にはない」

 

「だが・・・」

 

「確かにシャルロットに見られた事は事実だ。しかしそこまでの傷を負いながら戦ってくれた君に対して、僕は非難の言葉を持ち合わせていないのでね」

 

カルロスのあくまでも紳士的な対応にクロウはただただ頭を下げた。

 

「そうか・・・すまない」

 

「もういいよ、ブルースト君。さて、これで僕の話は終わりだ」

 

「じゃあクロウ、お前は医務室に戻るぞ。まだ寝とけ」

 

「おう。じゃあデュノア社長、報酬の件、よろしくお願いしますよ」

 

「分かった。その通りにしよう」

 

「それではカルロス、私達は失礼させてもらう」

 

そう言って二人は出ていく。カルロスもモニターの電源を切った。

 

~翌日・シャルロットside~

 

一昨日、クロウ達の戦闘を見てから、僕は織斑先生に言われた通り、部屋に戻った。翌日は普通に授業を受けたけど、織斑先生とクロウの姿は一度も見かけなかったから、あの時の戦闘に付いても全然質問出来なかった。でも放課後、やっと織斑先生が僕の所に来た。

 

「デュノア、ちょっといいか?」

 

「はい、先生。なんでしょう?」

 

「ついてこい。ちょっと会わせたい人がいる」

 

「分かりました。でも先にあの時の事について教えて・・」

 

「ついてから全て説明してやる。とにかくついてこい」

 

「・・分かりました」

 

シャルルが千冬についていく。しばらくすると会議室の様な所に通された。

 

「私は外にいるからな。何かあったら呼べ」

 

「え?中に誰かいるんですか?」

 

「入ればわかる」

 

そう言うと織斑先生は黙ってしまった。僕は渋々会議室に入ると、そこには人はいなかった。でも正面のモニターがついていて、そこには一人の男の人がいた。

 

「元気そうだね、シャルロット」

 

「っ!・・はい」

 

「まあ、座りなさい」

 

勧められるがままに、モニターの前の椅子に座る僕。正面のモニターに映し出されている男の人は僕の父だった。正直言って僕はこの人が怖かった。これから何を言われるか分かったものではない。もしかしたら織斑先生も僕の性別を偽って入学してきたことをしっているのかな。じゃあ、もう僕は・・。

 

「それで、お話とはなんでしょう」

 

「そうだな、まず最初に・・・すまなかった」

 

そう言うと画面の中の父が頭を下げた。僕はいきなりのことで何が何だかわからなくて、慌てて理由を訪ねた。

 

「え、な、なんですか!?」

 

「これから長い話をする、聞いてくれるかい?」

 

正直言って僕に選択権は無かった。だから頷くしかなかったんだ。何より僕もなぜいきなり父が謝ったのか知りたかった。

 

「・・・はい」

 

「さて、どこから話そうか」

 

カルロスは全てを話した。クロウに説明したのと同じ様に。シャルロットの母親との事、その後のアクシオンとの関係の事、シャルルが狙われていた件も、そのためIS学園に逃がすしか手は無かった事。最後に今回の事の顛末について話した。

 

「・・・以上がこれまでの全てだ。シャルロットを助けるためとはいえ、辛い態度であたってしまった事を謝りたい」

 

そして再びカルロスは頭を下げる。

 

「顔をあげて下さい」

 

その言葉を聞くと、カルロスはゆっくりと顔を上げる。

 

「えーっと、まだ十分に理解していない部分はありますけど、まずはあなたに感謝します」

 

今度はカルロスが驚く番だった。

 

「・・・え?」

 

「今まで僕と母を大切にしてくださってありがとうございました。・・・でも一つだけ納得出来ない事があります」

 

「何だい?」

 

そうカルロスが問いかけると、シャルロットの顔は怒りに満ちていた。

 

「何でクロウを巻き込んだんですか!?あそこまでの怪我を負わせて、何であの人と戦って、何でですか!?」

 

「そうか、シャルロットは彼の事を知らないんだったな」

 

「え?なんですかそれは・・」

 

「それは私の口からは話せない。彼に許可をとって彼から直接話を聴かなければな。すまないが廊下にいる千冬君を呼んでくれ」

 

そういうと、シャルルは訳がわからないといった顔のままで廊下の千冬を部屋に招き入れた。

 

~屋上・クロウside~

 

クロウは屋上で一人物思いにふけっていた。今頃シャルルとカルロスが会議室で話をしていることだろう。

 

「あれで良かったのか・・・」

 

そう、クロウが要求した報酬というのは、“カルロスとシャルルが話し合い、カルロスが今までの事を全て話す”という物だった。

 

「まあ、家族は仲がいいに越した事はないしな・・・」

 

前の世界でも、家族と不仲な奴、良かった奴などがいたが、何より自分自身の境遇とシャルルがかぶってしまった。父親との問題、かつてクロウもその件で苦しんだ記憶がある。

 

「でもなあ・・・」

 

あの親子だったら自分が手助けせずに、和解するまでは確実に行ったはずだ。多少時間はかかるかもしれないが。その事を考えると、

 

「やっぱ報酬は普通に金を請求した方がよかったかなあ・・・」

 

クロウが理性と本能の間で昨日の決断について考えていると屋上の扉が開き、千冬が入ってきた。

 

「おう、どうした千冬?話し合いは終わったのか?」

 

「いや、まだだ。デュノアがカルロスにお前の事について食ってかかっていてな。お前を連れていかないと話が進まない状態だ」

 

「OKだ。じゃあ行こうか」

 

そう言うと、クロウは杖をつき、歩き始める。まあ、当たり前の事だがクロウの怪我はまだ完全には治っておらず、杖を必要とする状態だった。クロウと千冬が会議室につくと、まだシャルロットがカルロスに詰問していた。

 

「だから、僕が聞いているのは・・クロウ!?」

 

シャルロットはクロウの登場に気づいたらしく、まずクロウがいる事への嬉しさと、次には満身創痍のクロウを見ての悲しみを声に乗せた。

 

「クロウ!?大丈夫なの!?」

 

「まあな、それで、俺に聞きたい事っていうのは?」

 

クロウが椅子に座りながら、尋ねる。シャルルは先程から質問しているであろう言葉を何度もカルロスに向けて繰り返す。

 

「だから何でクロウにあんな事を! 「ストップだシャルル」 ・・・」

 

クロウが遮り、話し出す。

 

「俺から話す。デュノアさん、俺に頼んだ件についてはシャルルには?」

 

「まだ話していないよ。君がきてから、と考えてきたからね」

 

「そうですか・・・」

 

シャルルは話の流れが分からず、困惑している。

 

「え?クロウ、なんのこと?“頼んだ件”って何?」

 

「そうだな、端的に言えば、俺はそこのカルロス・デュノア社長にお前の護衛を頼まれていた」

 

その言葉を聞くとクロウの身の上を知らないシャルルとしては当然だが、びっくりして、聞いてくる。

 

「えっ!!な、何で!?何でクロウがお父さんに護衛を頼まれるの!?」

 

「デュノア、クロウはな 「大丈夫だ、千冬。俺が自分で話す」 ・・そうか」

 

シャルルはいきなりクロウが千冬とタメ口で喋り始めて驚いたらしく、ぽかんとしている。

 

「あのな、驚かずに聞いてくれシャルル」

 

「う、うん。分かった」

 

「俺な、実は23歳なんだよ」

 

「・・・え?」

 

それからクロウは一夏たちに話した事と同じ事を話した。全てを聞いたあと、シャルルはまだ驚いていたが。

 

「えっと、じゃあクロウは、23歳で、元軍人で、この世界に転移してきて、何故か15歳の体になって、お父さんに僕の護衛を頼まれたってこと?」

 

「まあ、大まかに言うとそう言う事だ。ちなみにこのことを知っているのは学園内では千冬、山田、一夏、箒、セシリア、鈴、お前の七人だな」

 

クロウの説明が終わると、おずおずとカルロスが口を開く。

 

「これで納得してくれたかな?」

 

「は、はい」

 

「さて、これで俺の話はおしまいだ。お二人さん、まだ何か話したい事はあるか?」

 

クロウがみんなに言うと、カルロスが言葉を発する。その顔は全てを話してスッキリした、という感情がありありと見てとれた。

 

「シャルロット、いきなりだけど戻って来ないかい?」

 

「え?」

 


 
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