No.452431

虚空の生存者

シオンさん

にじファンより移転してきました。
この作品は「境界線上のホライゾン」と「デビルサバイバー2」のクロスオーバーをベースに様々な作品の設定を盛り込んでいます。
不快に思う人はご注意ください。

2012-07-14 00:39:35 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2256   閲覧ユーザー数:2180

 
 

 

 

第1話  深淵の相対者

 

 

 

 

終わりにて放つ叫びは断末魔

では、始まりを伝える一声は何か

配点:(終と始)

 

 

 

 

 

「全っ部、お前のおかげだ。サンキュな」

 

「この先、どうなるか・・・、正直誰にもわからへんけど、

ウチはアンタ忘れへんで?」

 

「世界、上書きされても、絶対に忘れない・・・絶っ対。

・・・それだけ!」

 

「・・・食べて。おいしいよ?」

 

「何つーか・・・オモロかったわ。また何かやるやろ、お前。

したら呼べや・・・絶対な」

 

「アンタには興味ある。

死ぬほど、興味ある」

 

「みんなあなたに感謝してる・・・。もちろん、私もだよ?

だから・・・ご褒美をあげます」

 

「俺は変わった気がする。

何ていうか・・これからは、色んな事にちゃんと向き合うよ」

 

「見えるんだ、俺には。

復元した世界は、きっと前よりいい世界になる」

 

「私は・・・君について来て、良かったと思う。

だから・・・礼を言わせてくれ」

 

「この先に待つ未来次第では、再びお前の敵として、

実力主義を実現してやる」

 

「本当は、もう少し話したかった。

だから・・・世界が、復元しても絶対に忘れたり・・・しない」

 

仲間達の姿が近付き、離れ、そして消えていく。

いや、帰っていく。前と同じ、しかし、確かに変わった日常へと。

そして、最後には少年が一人、残された。

 

「・・・・・・」

 

少年はただ、空を見上げ、

 

「ありがとう」

そして、

「じゃあな」

 

ただそれだけを呟いた。

 

「気づいていたのかい、《輝ける者》」

 

声に振り向くと、そこにいたのは赤と黒のストライプ柄の服を着た白髪の男だ。

 

「なんとなく、程度だけどな」

 

「・・・そうか」

 

男が、顔を伏せる。

 

「これは、私にはどうにもできない。たとえこの身が欠片ではなく万全であったとしても。

・・・それほどまでに、君の存在は大きくなりすぎた。

大きすぎる力は、世界にとって異物だ。だからこれは私の・・・」

 

「お前のせいじゃないし、俺はお前の事、恨んでないよ。むしろ、感謝している」

 

男の言葉をさえぎるように、少年が言葉を紡ぐ。

 

「お前がいなかったら俺たちは何も出来ずにいたかもしれない。

何も選べず、死んでいたかもしれないんだ」

でも、

「俺たちは自分で選んで、ここまで来れた。だから―――――」

 

それは滅多に浮かべない満面の笑みで、

 

「ありがとう、《憂う者》。お前がいてくれて、本当によかった」

 

「・・・・・・!そう、か」

 

飾らない感謝の言葉に男が驚く。

 

「・・・アル・サダクだ」

 

「ん?」

 

「私の名だ。君のおかげで私の憂いは晴れた。故に《憂う者》の名はふさわしくない。

それに、この名の方が気に入っているしな」

 

「そうか。・・・っ!」

 

瞬間、少年の顔が苦痛に歪んだ。

体にノイズが走り、手を見れば、少しづつかすんでいくのが見てとれた。

 

「もう、時間みたいだな」

 

「・・・ああ」

 

天を見上げると、真上を中心として星がゆっくりと回転し始めた。

 

「うん、綺麗だな」

 

満足そうにつぶやいた少年に、男が問いかける。

 

「君はこの結末に後悔していないのか?」

 

「・・・んー」

 

天を見上げたまま、少しだけ考え、

 

「欲を言えば、もう少し生きたかったっていうのはある」

だけど、

「これで良かったと、そう言えるくらいには満足だな」

 

「・・・ああ、君はそういう人間だったな」

 

呆れたような声に少しだけ苦笑する。

 

「・・・すまない」

 

「え・・・?」

 

驚き、振り返る。その瞬間、

 

「くっ・・・?」

 

少年の足元と頭上に複雑で巨大な方陣が展開された。

次いで、方陣の中と外を区切るように光の壁が形成される。

その方陣は少年には見覚えのあるものだった。

場所は長田町、国会議事堂の地下。用途は―――、

 

「召喚用の方陣!?」

 

「正確に言えば、それを反転させたものだ」

 

召喚の方陣の反転。つまり―――、

 

「送還・・・?」

 

「そうだ。これで、君が存在できる世界へと送還する」

 

「って、おい!お前、さっき、自分の事欠片だって言ったよな!

そんな状態でこんな大きな術なんて使ったら・・・!」

 

「・・・ああ、私は実体を保つことが難しくなるだろう」

 

「だったら・・・!」

 

「侮るな、人間!」

 

「っ・・・!」

 

怒声。

その剣幕に怯む少年に、微笑みながら言う。

 

「いつか君は言ったな『友を救うのに理由はいらない』と」

だから、

「私に栄誉をくれ、《輝ける者》よ。『かけがえのない友を救った』という小さな、されど、何物にも代えがたい栄誉を」

 

「―――――――――、ずるい、な」

 

言葉を無くし、俯く少年はそう絞り出すように言った。

 

「そんなこと言われたら、俺はお前をを止められないってこと、分かってるだろ・・・」

 

「だから言っただろう。すまない、と」

 

そうだな、と呟き力なく笑う。

 

「これを持っていくといい」

 

そう言って男が指を鳴らすと、少年の前に一冊の辞典大の本が出現した。

 

「これは?」

 

「君に必要となる物だよ」

 

「・・・そうか。ありがとな」

 

「どういたしまして、と言うんだったね、こういう時」

 

少年が頷くと、男も嬉しそうに笑う。

その間にも、方陣はゆっくりとその輝きを増し、臨界点を迎えようとしていた。

だから―――――

 

「またな、サダク」

 

「ああ、また会おう。天宮 玖狼」

 

その言葉を合図としたかのように方陣の光は炸裂した――――――

 

 

 

 

 

べべベン ベンベン♪

 

弁士

「さて、今回はこれにて終了!

少年、天宮・玖狼は男、アル・サダクの手を借りて異世界へと旅立つのでありました。

彼を待つのは、一体どのような運命でありましょうか。

まぁ、それもこれもこれからのお話。

物語の終わりは、新たな始まりへとなり候。

次回『街中の召喚師』にて、またお会いを」

 

べべベン ベンベン♪

 

 
 

 
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